ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2020年8月5日号 トピックス

世界のできごと

(7月20日〜7月29日)

ポンペオ、中国の体制転覆叫ぶ
 ポンペオ米国務長官は七月二十三日、「共産主義の中国を変える」と、体制転覆を公然と呼びかけた。また、習近平国家主席を「全体主義の信奉者」などと、敵視政策の水準をさらに引き上げた。また、北大西洋条約機構(NATO)参加国や、主要七カ国(G7)を念頭に、香港問題などで対中姿勢を改めないとどう喝、「踏み絵」を迫った。王毅・中国外相は、「世界を新冷戦に引きこもうとしている」と反論した。

米豪2プラス2、思惑に違いも
 ポンペオ米国務長官は二十八日、オーストラリアを訪れ、外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)を開催、モリソン首相とも会談した。共同声明は、南シナ海問題などで中国を非難した。オーストラリアは、南シナ海での中国の領有権を否定する書簡を国連に送るなどしているが、一方で「対中関係は重要」(ペイン外相)と、米国と一線を画す姿勢も示している。

米があらぬ嫌疑で、中国領事館を閉鎖
 米南部テキサス州ヒューストンにある中国領事館が二十四日、閉鎖された。これは、米国は総領事館を「スパイ活動と知的財産窃取の中心地」などと決め付け、閉鎖を求めたもの。地元市長は「総領事館を再開することを希望する」と発言している。米側の一方的姿勢に対し、中国は四川省成都にある米総領事館の閉鎖を求めた。大統領選で劣勢に立つトランプ政権が、支持率回復を狙ったものであると同時に、中国の台頭を許さないという米国の姿勢そのもの。しかし、ウィキリークス問題で暴露されたように、米国こそが世界一の工作員国家である。

EU、コロナ「復興基金」で合意
 ベルギーのブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)首脳会議は二十一日、コロナ危機からの復興のため、七千五百億ユーロ(約九十二兆円)の「復興基金」創設で合意した。二〇二一〜二七年のEU中期予算(一・八兆ユーロ)も合意した。大規模な債務共有化は初で、念願の財政統合が進む可能性がある。反対していたオランダなども、補助金枠の削減で折り合った。特徴は、再生可能エネルギーや燃料電池の開発など、環境やデジタル部門に予算を投じること。英国の離脱などで結束に疑問符がついていたEUが求心力を取り戻せるか、予断を許さない。

新STRAT、核軍拡進めたい米国
 米国とロシアは二十八日、オーストリアのウィーンで来年二月に期限切れとなる「新戦略兵器削減条約」(新START)の延長協議を開いた。ロシアは前提条件のない延長に前向きな姿勢を示したが、米国は中国を加えた新たな枠組みを主張した。米国は、一九年に中距離核戦力(INF)全廃条約を離脱した理由にも中国を挙げた。また、一八年の「核態勢見直し計画」(NPR)で、先制核攻撃能力の向上を進めた。保有核弾頭数で、米国は中国の一五倍以上もある。中国を口実に核軍縮に背を向ける米国こそ、世界の脅威だ。

人民のたたかい

(7月20日〜7月29日)

 ヨルダンのアンマンで二十二日、賃上げを求める教育労働者約二千人がデモを行った。政府は組合幹部を不当逮捕するなど弾圧を強めている。
 米国のシアトルで二十五日、人種差別に抗議する数千人のデモが行わた。ポートランドでは「ママたちの壁」と呼ばれる女性を中心としたグループなどが警官隊に対抗した。
 スペインのバルセロナで二十三日、エアバスの工場で働く労働者約二千人がデモ行進を行った。同社は一万五千人もの人員削減計画を発表、うちの九千人がスペインの労働者。
 イスラエルのエルサレムで二十五日、ネタニヤフ首相のコロナ対応に抗議するデモが行われ、首相の汚職疑惑も非難した。二十日には、約四万人の看護師が人手不足の解消や待遇改善を求めるストライキを行った。

日本のできごと

(7月20日〜7月29日)

コロナ陽性者が1千人超え
 新型コロナウイルス感染の新規陽性者が七月二十九日、初めて一千人を超えた。感染者は東京圏だけでなく、愛知、大阪・兵庫、福岡、沖縄などにも広がっている。中川・医師会会長は「迅速にPCR検査を広く行う」べきと危機感を表明。こうしたなか、安倍政権は二十二日から、感染を拡大させるGoToトラベル事業を強行した。また厚労省は、介護施設や保育所などに新たに約八千万枚の布マスクを配布する方針を打ち出したが、実情を見ない施策に反発が続出、わずか二日で撤回に追い込まれた。一方、政府・与党や小池都知事などは、休業要請に従わない場合の罰則規定を盛り込む新型インフルエンザ対策特別措置法の改悪案を喧伝している。無策・愚策を法改悪で乗り切ろうとする姿勢は許し難い。

コロナまん延、地位協定が疎外
 政府と在日米軍は二十九日、在日米軍基地における新型コロナウイルス対策を共同発表した。沖縄県などの米軍基地で陽性者が相次ぐなか、遅すぎる「対策」だ。内容は米軍自身がPCR検査を行うというもので、入国後十四日間は「行動制限」のみで「隔離」されない。「感染源」となっている各基地に直接飛来するチャーター機は野放しで、日米地位協定の問題である。米国など百四十六カ国・地域からの入国が原則禁じられたままであるにもかかわらず、米軍への配慮は異常だ。

最上川氾濫、全国で水害続く
 山形県を流れる最上川が二十九日、記録的豪雨によって数カ所で氾濫、住宅浸水で三千人近くが避難を強いられた。とくに、田畑の冠水など農業に甚大な被害を与え、被害総額は約一千億円に達するとされる。今回は、雨が止んだ後、水量の増加によって中流域で氾濫が起きたことが特徴。南九州に続いてが全土で豪雨被害頻発するなか、政府の対応は遅れに遅れ、今氾濫は激甚災害の指定さえない。被災者の立場に立った復旧・復興を急ぐべきだ。

日銀、デジタル通貨の実験開始へ
 日銀は二十日、デジタル通貨(CBDC)実証実験のためのグループを設けた。日銀は「当面の最優先事項の一つ」(木村局長)といい、政府も「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に「検討」を盛り込んでいる。だが、米フェイスブックの「リブラ」構想、中国も準備を先行させるなか、立ち後れは明らか。何より、わが国は米ドル体制に縛られたままで、「限界付き」のものでしかない。

最低賃金目安示さず、据え置き
 厚労省の中央最低賃金審議会小委員会は二十二日、二〇二〇年度の最低賃金の目安を示さなかった。目安の提示がなかったのは、リーマン・ショック直後の〇九年以来。日本商工会議所など経営側が、コロナ危機を口実に「凍結」を主張、連合はこれを打ち破れなかった。各都道府県はこの目安を踏まえ、八月下旬までに最低賃金を定める。近年、最低賃金は毎年三%程度の引き上げが続いたが、それでも、労働者の最低限の生活を保証するには不十分。それどころか、東京など都市部と地方の格差は開く一方で、労働組合の闘いが問われている。

コロナで解雇増、問われる労組の役割
 厚労省は二十九日、新型コロナウイルスの感染拡大に関連した解雇や雇い止めの人数(見込みを含む)が、四万三十二人に達したと発表した。コロナ危機の発生以降、一カ月で約一万人増加している計算で、全体のうち一万五千人以上が非正規労働者。業種別では、宿泊業だけでなく、製造業でも六千人を超える。ただ、全国の労働局やハローワークを通じた情報に限られ、「氷山の一角」にすぎない。さらに、「希望退職」を募る企業も、上半期だけで上場企業の四十一社と昨年比で倍増。雇用情勢の危機が深まっている。

「黒い雨」訴訟で被爆者と認定
 広島地裁は二十九日、原爆投下後に放射性物質を含んだ「黒い雨」を浴びたにもかかわらず、国の定めた「援護対象区域」外だったことから被爆者健康手帳の交付申請を却下された処分の取り消しを求めた訴訟で、原告勝訴の判決を下した。そもそも、「区域」は国が救済範囲を狭めるために設定したもので、判決が手帳の交付を命じたのは当然。原告はいずれも七十歳以上で、直ちに補償措置を行うべきだ。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2020