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労働新聞 2020年7月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月10日〜7月19日)

米、南シナ海などで中国を攻撃
 ポンペオ米国務長官は七月十三日、南シナ海問題について「中国の海洋権益に関する主張は完全に違法」と決めつけた。オランダ・ハーグの仲裁裁判所の判断から四年目に際して表明したものだが、米国が中国の主張を公式に否定するのは初めて。長官は、「中国に領有権の主張を侵害されている世界中の全ての国を支援する」ために「あらゆる手段を尽くす」と、強硬姿勢を示した。さらに米国は「国防権限法」暫定規則を公表、華為技術(ファーウェイ)など五社と米政府との契約を禁止した。併せて「人権」を口実に、中国のハイテク企業従業員へのビザ(査証)を制限した。米国の攻勢には際限がないが、南シナ海問題で中国と係争するフィリピンが米国と一線を画すなど、国際的支持は得ていない。

IMF、米成長を下方修正
 国際通貨基金(IMF)は十七日、米国経済に関する年次審査報告書を公表した。二一年の実質国内総生産(GDP)成長率は三・九%を予測、六月時点から〇・六ポイント下方修正した。ただ、二〇年は財政出動などの効果として、▲八・〇%の見通しを▲六・六%に上方修正した。他方、同報告書は「新型コロナウイルスの感染者数が再び増加し、部分的な経済活動の停止が起こる可能性がある」としている。大統領選挙を控えたトランプ政権は、七月中にも二兆ドル(約二百十兆円)規模の第四弾経済対策を発動する方針。だが、米国での感染は拡大し続けており、さらなる下方修正を迫られる可能性も高い。

G20、「大きなリスク」明記
 二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が十八日に開かれ、共同声明が採択された。声明は、世界経済の「より大きな下方リスク」を指摘、「すべての利用可能な政策手段を引き続き用いる」などと明記した。デジタル課税については、合意できなかった。さらに、合意済みの発展途上国の債務返済の猶予措置(二〇年末まで)の「延長の可能性を検討する」とした。途上国が債務危機に陥ることを避ける狙い。加えて、先進諸国は債務の「透明性」を求めており、主な債権国でもある中国をけん制するもの。すでに返済猶予を要請した国は四十二カ国に達する。途上国の債務は、世界の大きなリスク要因となっている。

中国の記録的水害が拡大
 中国で長江流域での水害が広がっている。六月からの大雨により、十七日までに四百以上の河川で洪水が発生、湖北省、江西省、安徽省など二十七省で三千八百七十三万人が被災、死者・行方不明は百四十一人に達した。農産物や豚肉の産地も被害を受け、損失は約八百六十二億元(一・三兆円)と推定されている。中国はコロナ禍をひとまず封じ込め、四〜六月期の成長率は2四半期ぶりにプラスに転じた。被災は中国経済の持ち直しに水を差し、コロナ禍の下で、世界経済の回復も遅らせる可能性がある。

人民のたたかい

(7月10日〜7月19日)

 米国オレゴン州ポートランドで十八日、人種差別への抗議デモが暴動に発展、警官組合のビルを放火した。市内では、デモ参加者が連邦当局に拘束されるなど弾圧が強まり、市長が抗議する事態となっている。
 スペインのマドリードで十五日、バルセロナにある日産自動車の労働者約一千五百人が工場閉鎖に抗議してデモ行進を行い、政府に対策を求めた。日産は五月末に閉鎖を発表、年内の閉鎖開始をもくろんでいる。
 ブルガリア全土で十四日、ポリソフ首相の辞任を求めるデモが行われた。行動は六日連続で、政権とマフィアの結託を非難した。
 アフリカ・マリのバマコで十三日、三月議会選挙の暫定結果を認めないケイタ大統領の退陣を求めてデモ行進が行われた。これに警官隊が発砲、負傷者が出た。

日本のできごと

(7月10日〜7月19日)

GoTo迷走、東京除外へ
 赤羽国土交通相は七月十六日、観光需要喚起を狙ったGoToトラベル事業から東京都を除外する方針を示した。新型コロナウイルスの感染再拡大が深刻化する中、旅行喚起策が地方へ感染を広げると日本医師会や全国知事会など各方面からの疑問や批判を受けたものだが、有効な対策とは程遠い。そもそも同事業は八月実施予定だったが、旅行会社などの声を受けて四連休初日の七月二十二日からの前倒し実施が決まるなど迷走が続いた。東京除外を受けたキャンセル料補償をめぐっても二転三転し、安倍政権は失政を重ね続けている。

骨太の方針、雇用の不安定化さらに
 安倍政権は十七日、二〇二〇年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定した。「新型コロナウイルス感染症の下での危機克服と新しい未来」を主題とし、感染抑止と経済活動の両立に向け、行政や社会のデジタル化を推進することを掲げた。感染症対策として「保健所の体制強化」を掲げるが、歴代自民党政権が三十年間で保健所を半減させたことの反省はなく、保健所の増設・増員も盛り込まれなかった。一方で社会保障予算の「自然増」圧縮や高齢者医療・介護の負担増など削減路線は着実に進めると明記した。雇用についても、「ジョブ型正社員」の普及や「成果型」の労働時間管理、裁量労働制促進の方針を示すなど、不安定化と淘汰をいっそう推し進めるとした。感染防止は飾りにすぎず、財界の要求する改革が詰め込まれた内容となった。

豪雨の被害拡大、コロナ禍が追い打ち
 熊本県を中心とした記録的豪雨の被害が拡大、九州各地や岐阜県や長野県まで洪水や土砂災害が相次ぎ、十四日には島根県の江の川が氾濫した。被害は異例の長期に及び、七月上旬の各地点の降水量の合計が観測史上最多となった。加えて、コロナ禍と感染対策は避難生活や復旧作業の大きな足かせとなり、前例のない二重被害が現場を襲った。住民や自治体の自助努力には限界がああり、政府にはまさに前例にとらわれない直接支援が求められている。だが、安倍政権はこの段になっても「GoTo」実施に固執するなど被害地ないがしろで、非人道的なまでの扱いだ。

防衛白書、「中国の脅威」さらに強調
 河野防衛相は十四日、閣議で二〇二〇年版防衛白書を報告、了承された。中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の軍事動向をはじめ日本周辺の脅威をこれまでより強調、特に中国の軍拡に対しては「安全保障上の強い懸念」と明記、尖閣諸島周辺の接続水域で確認された中国公船の活動が過去最多となったことなどを「力を背景とした一方的な現状変更の試みを執拗に継続している」と批判した。またコロナ感染の世界への広がりを自国に有利な国際秩序づくりや影響力の拡大に利用することへの警戒感も示した。

木更津にオスプレイ配備、機能強化へ
 陸上自衛隊は十日、垂直離着陸機オスプレイの木更津駐屯地(千葉県木更津市)への「暫定」配備を始めた。陸自はすでに今年三月に同駐屯地の第一ヘリコプター団の下に初のオスプレイ部隊を新編、隊員約四百三十人の体制を発足させており、今後も段階的に配備を進め、二〇二一年度末までに十七機体制とする計画。防衛省は「暫定」配備を五年以内とし、佐賀空港(佐賀県)への配備をもくろんでいるが、米軍横田基地(東京都)へのオスプレイ配備などとも合わせた日米軍事一体化と基地機能強化の一環で、「暫定」はごまかしに過ぎない。

立民国民、解散にらみ合流急ぐ
 立憲民主党は十五日、国民民主党に両党の合流についての提案書を示した。両党が一度解散、新党を結成し党名を「立憲民主党(通称・民主党)」とする内容。立民の枝野代表は十九日に両党の基本理念や政策に大きな違いはないとの認識を強調した。解散・総選挙をにらんだ受け皿づくりを急ぎたい焦りが見えるが、憲法問題や原発政策などでは隔たりは大きく、両党の地方組織や支持者からは異論も相次いでいる。間に合わせの合流は旧民主党の劣化再生にほかならず、おおよそ労働組合が期待・支持できるものではない。


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