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労働新聞 2020年7月15日号 トピックス

世界のできごと

(6月30日〜7月9日)

米、「香港」口実に対中攻撃
 米トランプ政権は七月六〜七日にかけて中国のチベット自治区当局者へのビザ(査証)制限、中国製アプリへの禁止検討など、矢継ぎ早に中国への圧力を強めている。中国が六月三十日に「香港国家安全法」を施行したことが口実。香港をめぐる問題について中国は「内政問題」として言いがかりを一蹴、妥協しない姿勢だ。一方、先の黒人殺害事件に端を発する全米での抗議行動により、トランプ政権が叫ぶ「人権」が偽りであることが見透かされている。大統領選での劣勢が伝えられるなか、対中攻勢でかわそうという悪あがきである。

コロナ拡大の中、米WHO脱退
 米トランプ政権は七日、世界保健機関(WHO)から脱退することを国連に正式に通知した。脱退は来年七月六日となる。トランプ大統領は新型コロナウイルスの感染拡大について中国に一方的に責任を押し付け、WHOにも「中国が完全に支配している」と言いがかりをつけてきた。しかし、足元では、新型コロナウイルスによる死者は十三万人以上、感染者も三百万人に迫る勢い。米国はWHOへの最大の資金拠出国で、脱退により感染症対策が滞る恐れもあり、一方的脱退は国内外から批判を集めている。失策を覆い隠すために中国攻撃のボルテージを上げるトランプ政権だが、国内での支持低下と「失望させられる反動」(ドイツ)との発言に見られるように、国際社会における影響力の後退をいっそう加速化させている。

政権基盤固めたロ憲法改正
 ロシアで一日実施された憲法改正の是非を問う全国投票が即日開票され、賛成が約七八%に達し、改憲が決まった。改憲案は大統領の任期について「通算二期」とした上でこれまでの任期を含めないなどの内容で、プーチン大統領が五選出馬することを可能にしている。大統領の権限強化も謳われた。対外関係では国境画定を除いた領土割譲の禁止条項も盛り込まれている。コロナ禍で国内経済が振るわぬなか、プーチン政権は経済分野をはじめ中国との関係強化を図る姿勢だ。改憲成立は、対中攻撃を強めたいトランプ政権にとっても大きな障害となる。

米、駐独兵力削減
 トランプ米大統領は六月三十日、ドイツに駐留する米軍を九千五百人削減する案を承認した。これによりドイツ駐留米軍は二万五千人程度の規模となる。トランプ大統領は以前から、ドイツが北大西洋条約機構(NATO)に十分な予算を支出していないなどとして駐留米軍の削減を言明してきた。削減する一部はインド太平洋方面に再配備する案が検討されているように、軍事力をいっそう「対中国」にシフトするためのものでもある。ドイツ国内からは、駐留米軍の存在がロシアと良好な関係を築く上で「負債」との声が出ているなど、「自国優先主義」を強める米国と距離を取りたいドイツの姿勢も垣間見える。

人民のたたかい

(6月30日〜7月9日)

 ギリシャのアテネで七月九日、デモ活動などを規制する新法に抗議し、一万人以上がデモ行進した。急進左派連合(SYRIZA)をはじめとする野党は、景気後退局面に入る前に、政府批判を封じる狙いだと批判している。
 フランスのパリのルーブル美術館で六日、ツアーガイド数十人がマスク姿でモナリザのポスターを掲げ、新型コロナウイルス感染に伴う危機と観光客喪失を乗り切るための政府支援を求めてデモを行った。
 フィリピンのマニラで三日、ドゥテルテ大統領が「反テロ法」に署名したことに抗議するデモや集会が開かれた。同法は「テロ」と見なされればあらゆる表現が罪に問われ、令状なしで最長二十四日間拘束することができる。

日本のできごと

(6月30日〜7月9日)

九州、東海豪雨で甚大な被害
 九州全域と中部・東海地方を中心に、七月三日以降、歴史的豪雨に襲われ、八十四河川百カ所で氾濫が起きた。堤防決壊、住宅浸水などが多数発生、九日現在で六十二人が死亡、三千二百人が避難生活を強いられている。政府は五日に「豪雨非常災害対策本部会議」を設置した。菅官房長官は「激甚災害に指定の見通し」と述べたが、政府は政策総動員で復旧・復興を進めなければならない。

自民、共産、中国への敵視強化
 自民党外交部会と外交調査会の合同会議は七日、習近平・中国国家主席の国賓来日を中止するよう政府に求める決議をまとめた。中国が香港国家安全維持法を施行したことが口実。当初案は国賓来日の「中止を要請する」であったが、経済関係を念頭に表現を弱め、「要請せざるを得ない」となった。米国と中国の狭間で、国のカジ取りにジレンマを深める与党の内情が反映したもの。志位・共産党委員長も安全維持法に「厳しく抗議し、撤回を求める」談話を発表、中国敵視の輪に加わった。訪日は日中両首脳間で合意したことであり、誠実に履行すべきだ。

自民、「敵基地攻撃」論強まる
 自民党の検討チーム(座長・小野寺元防衛相)は六月三十日、相手国基地を攻撃する「敵基地攻撃能力」保有に関する議論を始めた。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」断念を口実にしたもの。河野防衛相は「自衛の範囲に含まれ、可能」と表明、「自衛反撃能力」と言い換える姑息(こそく)な意見もあった。だが、自民党内からさえ「論理の飛躍がある」(岩屋前防衛相)との異論が出るほど。七月中に提言をまとめる予定だが、米戦略と結び付いた軍事大国化策動を許してはならない。

ロシア改憲で安倍「領土返還」破綻
 ロシアのプーチン大統領は七月三日、憲法改定による「領土割譲禁止条項」は北方領土が念頭にあると明言した。国後島には、本条項を刻んだ「記念碑」が建てられた。ラブロフ外相は、日ロ平和条約交渉について、領土問題の解決後に条約を締結するという日本側方針に「合意していない」と強調した。安倍首相は二十七回もプーチン大統領と会談、事実上の「二島返還論」への後退を「新しいアプローチ」などと正当化してきたが、それさえロシアの国内法で封じられた形。民族の利益を売り渡してきた責任は重大だ。

都知事選、投票率が大きく低下
 東京都知事選が五日、投開票され、自民・公明などの支持を得た現職の小池知事が約三百六十六万票を得て再選された。次点は宇都宮元日弁連会長(立民、共産、社民が支持)で、山本・れいわ新選組代表、小野前熊本県副知事(維新推薦)が続いた。選挙戦では、小池知事のデタラメなコロナ対策はほとんど暴露されず、深刻な雇用や中小企業対策などはまったく議論にならなかった。投票率は五五%と前回から四・七三ポイントも下落した。投票日前後からコロナ感染者は急増、小池都政は早速困難に直面している。

GPIFが巨額の損失
 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は三日、一〜三月期の資産運用結果を公表した。コロナ禍による株価急落で、運用損は過去最悪の十七兆七千七十二億円に達し、一九年通年でも八兆二千八百三十一億円の赤字。巨額損失は、安倍政権がアベノミクスを演出するため、GPIFによる株式投資比率を二四%から五〇%に引き上げたこと。しかもGPIFは、国会開会中の損失額公表を拒否していた。損失拡大は、国民への年金支給額の減額につながりかねない。

ふるさと納税で最高裁判決
 ふるさと納税制度をめぐり、対象自治体から除外された大阪府泉佐野市が決定取り消しを求めた上告審判決で、最高裁は三十日、市側の逆転勝訴判決を下した。同制度めぐって、政府は一九年、返礼品の割合を「三割以下」とするなどの基準を設けた際、過去の泉佐野市の返礼品状況に基づいて除外を決めていた。判決は、市の返礼品が「社会通念上の節度を欠いた」としつつ、国の除外措置を「予定していると解するのは困難」とした。自治体間で税源を奪い合う同制度が招いた混乱で、制度自身の廃止以外にない。


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