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労働新聞 2020年7月5日号 トピックス

世界のできごと

(6月20日〜6月29日)

WHO、「終息」に展望なし
 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は六月二十九日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は「終息に近づいてさえいない」と述べた。全世界の感染者は一千万人を突破、死者は五十万人に達した。米国やインドなど新興国で新規感染者が増加、とくに、ブラジルをはじめとする中南米の感染者数が欧州を越えている。オーストラリア、日本、中国などでも増加に転じている。米国では、カリフォルニア州などで、店舗営業の規制再強化に追い込まれた。コロナ禍はますます深刻化している。

経済見通しさらに引き下げ
 国際通貨基金(IMF)は二十四日、「世界経済の見通し」を公表した。現状を「類例のない危機」とし、今年の成長率は▲四・九%で、経済損失は二年間で一二・五兆ドル(約一千三百兆円)に達する見通しだとした。国別では、米国▲八・〇%、ユーロ圏▲一〇・二%)、中国一・〇%など。IMFは二十五日に「国際金融安定報告書」改定版を公表、先進諸国における株価回復と消費者心理との間に「乖離」があるとし、「大きな懸念」を明記した。世界経済の危機がさらに深刻化しており、影響の長期化は不可避だ。

米金融機関の経営不安顕在化
 米連邦準備理事会(FRB)は二十五日、大手三十四銀行の健全性審査(ストレステスト)の結果を公表した。それによると、コロナ禍により貸倒損失が最大七千億ドル(約七十四兆円)に達する可能性があるという。一部銀行は、自己資本比率が国際基準の七%を下回る危険性もある。経営不安に直結しかねないという理由で、機関ごとのテスト結果は公表しなかった。併せて、三十四行に自社株買いと配当増額の一時停止を要請した。株価下落を恐れ、欧州中央銀行(ECB)が下した「配当停止」は求めなかったが、FRB内からさえ異論が噴出、危機対応に頭を悩ませている。

米国、南シナ海問題で介入強める
 ポンペオ米国務長官は二十七日、シンガポールで行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で、南シナ海情勢について「地域の安全や安定を損なう可能性のある最近の動向、重大な事件」について「懸念」という表現を盛り込む議長声明が採択されたことを「歓迎」した。声明は、中国がスプラトリー(南沙)諸島などを管轄する行政区を設置したことなどをけん制するものとされる。だが、声明は中国の名指しを避け、関係国による対話と解決を促す趣旨。米国の狙いはアジア諸国を対中国包囲網に引き込むことで、「航行の自由作戦」も継続している。アジアへの干渉は許し難い。

仏地方選、与党に厳しい審判
 フランスで二十八日、統一地方選が投開票された。新型コロナへの懸念で投票率が過去最低の四一%前後(前回は六二%)となるなか、マクロン大統領の与党「共和国前進」がマルセイユ、リヨンなど都市部で敗れて後退した。一方、緑の党が大きく前進、極右・国民連合が中規模都市で初めて勝利し、パリでは社会党などが前進した。マクロン政権による、燃料税引き上げや年金制度改悪などの改革政治は激しい抵抗に直面した。感染症対策でも、大統領は「勝利」宣言したものの、死者は世界第五位の約三万人。こうした政治に、厳しい審判が下った。

人民のたたかい

(6月20日〜6月29日)

 韓国のソウルで二十日、「非正規職緊急行動」が集会を開き、コロナ禍を口実とした非正規労働者の解雇に抗議し、市内をデモ行進した。
 米国ニューヨーク市での性的少数者(LGBT)暴動「ストーンウォールの反乱」から五十一年にあたる二十八日、LGBTと黒人への差別に反対する数千人のデモが行われた。
 米国カリフォルニア州のディズニーランドで二十七日、新型コロナからの防護策が不十分だとして、「リゾート労組連合」が車両デモを行った。

日本のできごと

(6月20日〜6月29日)

専門家会議廃止、恣意的な感染対策も
 西村経済再生担当相は六月二十四日、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議を廃止して新たな会議体をつくる方針を表明した。同会議は二月に政府の対策本部の下に専門家らを構成員に発足、医学的見地から対策を助言するなどしてきた。だが、安倍政権は三月からの一斉休校を助言も得ずに決め、また緊急事態宣言の解除をめぐっても慎重な立場の同会議と経済を優先したい政権の間で温度差が露呈していた。また同日、同会議は「次なる波に備えた専門家助言組織のあり方について」と題する提言をまとめ、政府と助言組織との関係で責任範囲と役割を明確化し政府が政策の実行に責任を負うことなどを提起していた。新会議体には経済人などを参加させる予定で、これまで以上に恣意的な感染拡大への対策がまかり通るおそれがある。

ボルトン「日本が朝鮮和平妨害」
 ボルトン前米大統領補佐官(国家安全保障担当)の回顧録が二十三日に発売された。その中で、二〇一八年にトランプ大統領と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の金委員長との史上初の米朝首脳会談で始まった交渉の中で、ボルトン氏らとともに日本政府が交渉の進展を妨害しようとトランプ氏に働きかけた内幕を明かした。回顧録によると、安倍首相は交渉が「行動対行動」の原則で進むことを嫌がり、ボルトン氏の持論だったリビア方式による短期間での非核化をトランプ氏に提言、朝鮮戦争の終戦宣言に対してもボルトン氏と首相は反対し、首相が大幅譲歩をしないようトランプ氏にくぎを刺した。米国以上に朝鮮半島和平の妨害を続ける安倍政権の犯罪的行為があらわになった格好だ。

歴史わい曲で世界遺産取り消しも
 韓国政府は二十一日、長崎など八県二十三施設で構成する「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産の登録取り消しを求める書簡を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に発送することを表明した。同遺産の登録をめぐっては、韓国政府が長崎市の端島(軍艦島)の炭鉱など七施設について「戦時中、朝鮮人が強制徴用された施設がある」として反対したが、日本は登録決定後に徴用政策を説明するセンター設立を表明、韓国が支持に転じた。しかし十五日から一般公開されたセンターでは、徴用された朝鮮半島出身者への差別的な扱いを否定する元島民の証言が紹介されていた。日本政府による歴史的事実のわい曲は際限がない。

嘉手納基地火災でガス、住民後回し
 米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)で二十二日、基地内の化学物質を保管する危険物取扱施設で火災があり、人体に悪影響がある塩素ガスが一時、空気中で施設から約三百メートルの範囲に渡って漂った。米軍側は塩素ガスを含んだ煙は基地内にとどまり周辺住民への影響はなかったと発表したが、沖縄市、嘉手納町、北谷町でつくる嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)は根拠が薄いと反発、また三連協に連絡があったのは火災発生から四時間後で、その間に住民が被害を受ける可能性も十分にあった。以前として基地周辺住民の安全・安心軽視が横行しており、許しがたい。

改定卸売市場法施行、大手優先の恐れ
 改定卸売市場法が二十一日に施行された。一八年六月に成立した同法では、国・自治体の管理責任が縮小されるなど規制緩和が実施される。国内外の卸売市場で大手流通資本の進出が進むなか、大資本優先の市場運営や中小市場業者の買い出し人締め出しがさらに加速することなどが懸念されている。食のインフラと位置付けられる卸売市場で、本来重視されるべき食の安全や取引の公共性が軽視されることにいっそう注意を払う必要がある。

小売販売額、初の2カ月連続二桁減
 経済産業省は二十九日、五月の商業動態統計(速報)を発表した。小売業販売額は前年同月比一二・三%減で、一三・九%減だった四月より減少幅は縮んだが、二カ月連続の二ケタ減は比較可能な一九八〇年以降で初めて。減少率は過去三番目の大きさで、また前年水準を下回るのは三カ月連続。基調判断は「下げ止まりがみられる」と楽観をあおったが、戦後最大規模の経済打撃を如実に示すもので、政府の経済対策の遅れはこれに拍車をかけかねない。


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