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労働新聞 2020年5月15日号 トピックス

世界のできごと

(4月20日〜5月9日)

米の「研究所発生説」のデマ破たん
 トランプ米大統領は五月六日、新型コロナウイルスの感染拡大に関して、日本の真珠湾攻撃や同時多発テロとなぞらえ、中国非難を鮮明にした。米国は「中国共産党は代償を支払うことになる」(ポンペオ国務長官)などと、中国武漢市の研究所がウイルス発生源だと何度も明言していた。だが、いまだに証拠は出せず、「確信はない」(ポンペオ国務長官)と言い出す始末。米国に同調してきた各国からも、「発生源は武漢市の研究所ではないことを示す情報を入手した」(モリソン・オーストラリア首相)と発言するなど、トランプ政権は孤立している。感染収束のメドが立たない、トランプ政権のあせりの深さを示すものだ。

新興国の資金流出、危機「発火点」も
 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は四月二十九日、米国債などを制限なく購入するなど量的緩和政策の維持を決めた。欧州中銀も同様の姿勢を示した。一方、新興国からの資金流出は止まらず、感染拡大が本格化した一月二十日〜四月末までの流出した域外マネーは約千億ドル(約十・七兆円)と、リーマン・ショック時の約四倍。新興国通貨は急落、四月末には対ドル相場でブラジル・レアルが約二七%、南アフリカランドも二五%超下げた。ブラジルなどの産油国は原油安の打撃も重なり、エクアドルは事実上の債務不履行(デフォルト)に陥った。通貨安が新興国のドル建て債務負担を増加させ、危機爆発の「発火点」となる可能性も否定できない。

米、戦後最悪の失業率
 米労働省が五月八日に発表した四月の雇用統計は失業率が戦後最悪の一四・七%にまで達した。就業者数も前月比▲二千五十万人となった。新型コロナウイルスの感染拡大が直撃した。失業率は前月から一〇・三ポイントも上昇、リーマン・ショック時のピークや第二次世界大戦後の最悪期を超え、大恐慌直後以来、八十年ぶりという歴史的水準。二〇二〇年一〜三月期の実質国内総生産(GDP)速報値でも、年率換算で前期比四・八%減と、十一年ぶりの大幅な落ち込みとなった。次の四〜六月期も二ケタの大幅マイナスが確実。トランプ政権は経済活動の再開への動きを強めているが、あらゆる産業が雇用の持続力を失い、回復は容易ではない。再選をめざすトランプ大統領の求心力は急速にしぼんでいる。

コロナ危機で世界の半分が失業の恐れ
 国際労働機関(ILO)は四月二十九日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で全世界の労働者の約半数にあたる十六億人が失業する恐れがあるとの報告書を発表した。外出制限などでタクシードライバーや建設労働者など公式統計にあらわれにくい「非公式経済」の就業者数の収入が激減しているという。就労時間も今年四〜六月の労働時間が昨年十〜十二月と比べて一〇・五%減少すると予測、これは三億五百万人が失職する計算になる。

韓国、軍事費削り、コロナ対策
 韓国国会は三十日、新型コロナウイルス対策として全世帯に支給する「緊急災害支援金」の財源などを柱とする第二次補正予算を可決した。同予算ではF ステルス戦闘機や海上ヘリ、イージス艦などの軍事費予算九千八百九十七億ウォン(約八百五十億円)の削減が行われ、総額十二兆二千億ウォンが支援金に投じられる。先の総選挙では文政権の与党が大勝したが、こうした政権の姿勢に国民の支持も高い。

人民のたたかい

(4月20日〜5月9日)

 米国のニューヨークやカリフォルニアなどで五月一日、通販大手のアマゾンやウォルマートなどの労働者が同時ストライキを行った。労働者は感染防止策の徹底、危険手当の支給などを求めた。四月二十七日には、ミネソタ州にあるアマゾンの集配センターの労働者が感染防止対策の強化を求めてストを行った。
 米国のワシントンで七日、看護師労組である全国看護師組合(NNU)が医療体制の整備を求めデモを行った。ホワイトハウス前に集まった人びとは新型コロナで命を失った看護師八十八人と同じ数の靴を並べ、トランプ政権の医療軽視の姿勢に厳しく抗議した。
 パラグアイの首都アスンシオンで五月五日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた経営悪化を口実としたメディアグループの大量解雇に抗議する集会が行われた。記者などは、解雇を容認する政府にも怒りを向けた。

【世界のメーデー】
 米国カリフォルニアでは国際港湾倉庫労組(ILWU)が新型コロナウイルスの感染防止のため十分な防具品の支給を求めて、八時間にわたってオークランド港を封鎖した。
 ドイツではナショナルセンターである労働総同盟(DGB)が「連帯すれば孤立しない」とのスローガンの下、デジタルデモを行った。ホフマンGDB議長は失業や社会的不平等の拡大に警鐘を鳴らし、労働者への犠牲押し付けを許さない行動を強調した。
 フランスでは労働総同盟(CGT)がネット上でのデモを呼びかけ、多くの労働者が参加した。パリでは市民が家のバルコニーに出て、鍋やフライパンを叩いたり、プラカードを掲げた。
 スペインでは労働者委員会(COO)が「路上を埋め尽くすことはできないが、ネット上でいつも通りに労働者の権利を守るため声を上げよう」と呼びかけた。  ポルトガルでは首都リスボンで労働総同盟(CGTP)などによる数百人の集会が行われた。参加者は、三メートルの間隔を保った。
 ギリシャではアテネの国会議事堂前で労働者や学生が距離を保ちながらデモを行った。
 韓国のソウルで金属労組がメーデー集会を開き、約三百人が参加した。労働者は大量解雇の動きを厳しく批判、「すべての解雇禁止」「雇用は国家の責任」「開け、財閥の金庫」などのプラカードを掲げた。公共運輸労組も集会を開催、労働者約五百人は、すべての解雇禁止・総雇用保障、非正規職整理解雇中断、 公共医療強化、社会安全網拡大などを要求した。

日本のできごと

(4月20日〜5月9日)

緊急事態宣言を延長
 政府は五月四日、六日が期限であった改定新型インフルエンザ対策特措法による緊急事態宣言を、全国を対象に三十一日まで延長することを決めた。安倍首相は期限を待たずに解除する可能性や、追加財政措置の検討に言及した。だが、解除までの道筋は示さず、国民に忍耐を強いるだけ。とくに、専門家会議が示した、オンライン会議などの「新しい生活様式」を、何らの政治的議論もなく「指針」として打ち出すのは無責任きまわりない。一方、外出規制など罰則を伴った法改悪には「当然検討されるべき」と、国民への統制強化には前向き。国民の命は「二の次」の政権は倒すしかない。

20補正予算案が成立
 二〇二〇年度補正予算が四月三十日、参議院本会議で可決・成立した。新型コロナウイルス対応に伴う経済対策を盛り込み、一人当たり十万円の現金給付や中小企業支援策など。一般会計歳出は二十五兆六千九百億円だが、PCR検査や人工呼吸器などの整備などの医療体制整備の費用が一兆八千九十七億円にすぎないのに対し、「GoToキャンペーン」など収束後の消費喚起策が一兆八千四百八十二億円に達する。国民の切実な要求である、コロナ対策の充実にはきわめて不十分なものだ。

家賃補助で与党合意
 自公両党は五月八日、新型コロナウイルス対策として、中小事業者などへの「特別家賃支援給付金」で合意した。収入が大幅に減った事業者に家賃の三分の二を助成するもので、中小は上限月額五十万円、個人事業主は二十五万円で、最大六カ月分支給する。自治体による支援策への財政支援や、困窮する学生への支援策も盛り込む予定。当然の措置だが、迅速に十分な支援が行われなければならない。

大阪など、店名公表で締め付け強化
 吉村・大阪府知事は四月二十四日、インフル特措法に基づき、休業要請に応じないパチンコ店六店の名前を公表した。外出自粛を強化する狙いで、小池・東京都知事、黒岩・神奈川県知事、鈴木・北海道知事、森田・千葉県知事らも同様の措置をとった。設備維持費のかかる同業界では、自治体などの休業補償ではきわめて不十分で、経営破綻の危機にある。「休業できるものならしたい」という店側の言い分には道理がある。わざわざフリップで店名を示す吉村知事らの行動は、業界を自らの失政への批判をそらすためのスケープゴートにするものだ。

検察庁改悪案に批判広がる
 自公与党は五月八日、検察官の定年を六十五歳に引き上げ、内閣の判断で同「役職定年」を延長できるようにする検察庁法改悪案の委員会審議を強行開始した。野党は森法相の出席を求めたが与党は拒否、維新を除く野党の大部分は欠席した。与党は、国家公務員の定年を六十五歳に引き上げる国家公務員法改定案などと一本化して批判を逃れようとしているが、安倍政権に近いとされる黒川・東京高検検事長の定年延長を「後付け」で合法化し、検事総長就任に道を開くものとされる。三権分立の原則にさえ反する暴挙に対し、日弁連、俳優や演出家などが次々に反対を表明している。

改定外為法は諸刃の剣の可能性
 財務省は八日、改定外為法の施行に伴い、海外投資家からの出資を事前審査する企業を公表した。上場企業の一四%・五百十八社が対象で、原子力、宇宙、電力、通信などが含まれ、政府は製薬などにも拡大する方針。審査開始は六月七日で、これまで「一〇%以上」だった事前届け出基準を「一%以上」に引き下げる。また、事後報告を求める指定企業も発表、同四二%・一千五百八十四社を挙げた。安全保障上の投資規制は独立国として当然だが、政府の主な狙いは、海外展開を活発化させている中国企業への対抗。だが、米欧投資家にさえ批判の声が強く、海外勢に支えられたわが国株式市場にはマイナスとの声もある。「株価連動内閣」と呼ばれる安倍政権は、深いジレンマに陥っている。

防衛省、辺野古設計変更を申請
 防衛省は四月二十一日、名護市辺野古に建設する基地の設計変更を沖縄県に申請した。埋め立て海域で見つかった軟弱地盤に杭を七万本以上、最大七十メートルまで打ち込むなどの内容。ただし、杭打ちで地盤の軟弱さを克服できるかどうかは不明。玉城知事は「工事の手続きを一方的に進めようとしている」と批判、申請を認めないことを示唆(しさ)した。県が申請を却下すれば、埋め立てに続く法廷闘争となる。県民の意思を無視し、あくまで工事を強行しようとする安倍政権の態度は度しがたい。

広がる大企業の一時帰休
 コロナ禍を口実に、大企業が次々と一時帰休を打ち出している。JR西日本は五月八日、駅員や運転士など、一日あたり約一千四百人に一時帰休を行うと発表した。ANA(全日空)も、発表済みの一時帰休の対象をグループの約九割、四万二千人に拡大する。神戸製鋼所も五月から、本社と加古川製鉄所(兵庫県加古川市)などで約一万人に一時帰休を行う予定。すでに日本製鉄やJFEも一時帰休を決めており、リストラはますます広がっている。危機の長期化は不可避で、経営陣が拠点閉鎖や首切りに踏み込む可能性が高まっており、警戒が必要だ。

プレミアム商品券申請わずか4割
 政府が昨年十月の消費税増税時の対策として導入した「プレミアム付き商品券」の申請率が、四割程度にとどまったことが四月二十日までに分かった。同券は子育て世帯と住民税非課税世帯を対象に、三月末までの使用期限で発行された。だが、低所得者は申請しなければならいこと、低所得であることが周囲に知られるなどの問題があった。何より、明日の生活も厳しい人びとにとって、二万五千円の商品券を受け取るためとはいえ、事前に二万円を出費することは大きな負担。利用が伸び悩んだことは当然で、景気対策としての効果もきわめて限定的。さまざまなハードルを設けることで財政出動額を抑えようとする、政府の姿勢こそ問題だ。


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