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労働新聞 2020年4月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月30日〜4月9日)

コロナ対策、米の振る舞いに反発
 トランプ米大統領は四月七日、世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルスへの対応をめぐって、「中国寄りだ」と一方的に決め付け、予算拠出の一時停止を行う意思を示した。WHOのテドロス事務局長は「必要なのは団結」と、米国の姿勢を諌めた。またトランプ大統領は三日には医療用マスクの輸出を停止を表明、同製品をカナダや中南米諸国へ輸出しないよう米企業に命じた。米国の独善的な姿勢について、カナダのトルドー首相は「誤り」と批判した。また欧州の政府高官からは、米国が市場価格をはるかに上回る価格で医療用マスクを買い付けている事例に批判の声が上がっている。米国の存在は、感染拡大防止の障害物でしかない。

EU危機打開策、効果に疑問符
 欧州連合(EU)のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)は九日、新型コロナウイルスの世界的感染拡大の経済的影響に対応する総額五千四百億ユーロ(約六十四兆円)の対策で合意した。救済基金である欧州安定化メカニズム(ESM)を活用し、最大二千四百億ユーロ相当の与信枠を提供することが柱になる。EU内ではイタリアやスペインなどが大規模な対策資金を確保するための「コロナ債」などと呼ばれる共通債の導入を求めていたが、ドイツやオランダが反対姿勢を崩さず結論を先送りしていた。とりあえず合意に至ったが、未だ感染拡大が止まらないなか、欧州経済を立て直すには力不足との指摘も多い。

全世界4割が失業・賃下げの危機
 国際労働機関(ILO)は七日、新型コロナウイルスの感染拡大による影響について報告書を発表した。全世界の労働人口の約三八%にあたる十二億五千万人が解雇や賃金削減の危険に直面するとしている。また、今年の第二四半期(四〜六月)中に全世界の総就労時間が前期比で六・七%減少すると推計、これは労働者一億九千五百万人が職を失うのと同じ計算になる。ILOは雇用維持のために各国政府に対して大規模な支援策を打ち出すよう求めた。また、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は九日、今年「世界恐慌以来で最悪の不景気に落ち込む」と発言した。

米、ベネズエラへ圧殺強める
 米国のポンペオ国務長官は三月三十一日、ベネズエラへの経済制裁解除と引き換えに事実上政権の退陣を迫る政権移行案を発表した。米トランプ政権はベネズエラのマドゥーロ政権に非人道的な経済制裁を科して転覆を策し、先月にはマドゥーロ大統領を「麻薬の密輸」などの罪で起訴した。当然にもベネズエラは「譲歩すべきなのはトランプ政権」とする声明を出して拒否した。同国でも新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、米国はこうした危機まで利用してベネズエラを屈服させようとしている。

人民のたたかい

(3月30日〜4月9日)

 フィリピンのケソン市で四月一日、約百五十人の住民が食料の配給などを求めて抗議行動を行った。マニラでは新型コロナウイルスの感染防止のため都市隔離が行われ、収入源を失った住民の困窮が広がっている。
 フィリピンのマニラで四日、労組・五月一日運動(KMU)の労働者が、「イタリア労働者との連帯」を掲げてデモ行進を行った。
 米国ニューヨークで三月三十日、インターネット通販大手のアマゾンの労働者がストライキを行った。このストは同社の集配センターで新型コロナウイルスの感染者が出ているにも関わらず、安全対策を怠っている経営側に対して、施設の一時閉鎖、給与補償などを求めて行われたもの。労働者は「労働者の健康を守れ」などのプラカードを掲げ、抗議行動を行った。同様のストはデトロイトなどでも行われた。

日本のできごと

(3月30日〜4月9日)

緊急事態宣言を発令
 安倍首相は四月七日、新型コロナウイルスの感染拡大に関して、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を発令した。発動地域は、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の七都府県で、五月六日まで。知事は住民に「外出自粛」などを求め、建物などの収用も可能となる。ただ、政府と東京都が休業を求める業種で対立、矛盾も露呈した。今回は、立憲などの野党や財界、一部識者が「早期発動」やさらなる法改悪を求めた。「感染防止」を口実に国民の権利を制約、事実上の「部分改憲」でもある宣言を許してはならない。

「見かけ倒し」の緊急経済対策
 政府は七日の臨時閣議で、新型コロナに伴う緊急経済対策を決めた。財政支出は三十九兆五千億円、事業規模は過去最大の百八兆円だが、後に納付される税や社会保険料の猶予分(約二十六兆円)を含めた「かさ上げ」。国民への給付はわずかに約六兆円で、目玉の「三十万円給付」は条件が厳しく、国民の状況を救うには遅い。与党内でさえ不満の声が強い。「全世帯にマスク二枚」よりも、早急な現金給付を行うべきだ。

危険な検索・位置情報提供
 高市総務相は三月三十一日、NTTドコモなどの通信・インターネット事業者に対し、顧客の検索履歴や位置情報などの統計データの提供を求めることを発表した。新型コロナウイルスの感染拡大による、クラスター(小規模な感染集団)の早期発見につなげるという理由。データは「個人が特定されないよう加工」するというが、国民のプライバシー侵害、思想傾向を含む国民監視体制につながりかねないもので、強い警戒が必要だ。

経団連が私欲丸出しの緊急提言
 経団連は三十日、新型コロナ対策に関する「緊急提言」を発表した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を「世界経済に大きな打撃を与えている」と評価、輸送従事者の隔離措置の適用除外、運輸業者への税還付・課税減免、無人搬送車導入の設備投資助成、IT投資(ロボット導入等)への支援強化などを求めている。大企業支援策の強化と併せ、危機を口実にした規制緩和を求めるもので、「省力化」などで雇用減少につながるものだ。

高年法改悪案が成立
 高年齢者雇用安定法(高年法)等改悪案が三十一日、参議院本会議で可決・成立した。業務委託などを可能とすることで、高齢労働者を労基法や最賃法などの適用除外とするもの。ほとんどの高齢者が働かなければ生活できない状況にあるなか、貧困化をさらに進める悪法。「働き方改革」の一環である「雇用によらない働き方」を進める突破口でもある。賛成した立憲など野党の責任は重大だ。

介護など負担増が追い打ち
 国民の生活と営業がいちだんと苦境に陥るなか、四月一日から各種の国民負担増が実施された。大企業労働者を中心に、介護保険料が人によっては六〇%、年一万円以上引き上げられた。食用油や銀行の振込手数料なども値上げされ、プラスチック製レジ袋も一部有料化された。負担増は、「コロナ禍」による国民生活の悪化に追い打ちをかけるものだ。

超大金持ちが史上最高に
 国税庁は三月三十一日、二〇一八年分の「申告所得税標本調査結果報告」を発表した。申告所得が百億円を超える「超大金持ち」は三十一人(平均所得は百六十二億円)で、過去最高だった一三年(十八人)を大きく上回った。三十一人の所得の大部分が株式譲渡所得。本来、五五%の所得税(住民税含む)が課せられるべきだが、優遇税制で一八・八%しか納税していない。アベノミクスが、一握りの富裕層のためのものであることの証左だ。

コロナ破綻続く
 東京商工リサーチは四月八日、三月の新型コロナウイルス関連の経営破綻が二十五都道府県四十五件になったと発表した。宿泊業十二件、飲食業七件、食品製造業六件などで、中小零細企業が圧倒的。リサーチは「経営基盤の脆弱な零細・中小企業を中心に、さらに増える勢い」とするが、「氷山の一角」。即時の救済策が必要だ。


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