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労働新聞 2020年4月5日号 トピックス

世界のできごと

(3月20日〜3月29日)

パンデミックが全世界規模に
 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が全世界的なものとなっている。三月二十九日までに、世界の感染者数は七十万人を突破、死者も三万人を超えた。米国が感染者十五万人超えで最大の感染者国になった。イタリア十万人以上、スペイン八万人以上など欧州で計四十一万人以上、アジア十万人超、中東五万人超、中南米一万人超、アフリカとオセアニアが約五千人など。非常事態も広がり、世界の人口の四割以上が何らかの行動制限を課される事態。エチオピアのアハメド首相は、債務帳消しと緊急支援を求める声明を発表した。パンデミックは、医療費を削減してきた南欧や、先進国の収奪で医療環境がぜい弱な新興諸国に甚大な影響を与えている。

G20、パンデミックで協調演出
 二十カ国・地域(G20)首脳は二十六日、新型コロナウイルスへの対応をめぐりテレビ会議を行った。会議は、パンデミックに「団結し立ち向かう」とし、財政「五兆ドル(約五百五十兆円)超を投入する」との声明をまとめた。各だが、二十六日のG7外相会議では、ポンペイオ米国務長官が新型コロナウイルスを「武漢ウイルス」と呼ぶことを主張、共同声明がまとまらなかった。各国は自国での対処に手いっぱいで、協調は容易ではない。

米感染拡大で首切り激化
 米労働省は二十六日、二十一日までの新規失業保険申請件数(季節調整済み)を発表した。申請は一週間で三百二十八万三千件に達し、前週の一一・六倍に急増。リーマン・ショック直後、二〇〇九年三月の六十六万件も大きく超えた。トランプ大統領は三月初旬に「対策は万全」などと言っていたが、米国内の感染者数はすでに世界最大。企業は労働者にすさまじい犠牲を押し付けており、闘いは必至だ。

中国、財政出動を決める
 中国共産党政治局会議は二十七日、新型コロナ対策として財政出動を拡大する方針を決めた。財政赤字の国内総生産(GDP)に占める比率(現二・八%)を引き上げ、〇七年以来の特別国債発行に踏み切る。四月の全国人民代表大会で正式決定する。中国はリーマン・ショック後、四兆元(約五十三兆円)の財政出動で世界の需要をつくり出した。今回も財政出動なしに国民の困窮を救えないことは明らかだが、前回は鉄鋼などの「過剰」を生み出しており、財政出動は「諸刃の剣」だ。

バーゼル3、延期に追い込まれる
 主要国の銀行監督当局で構成するバーゼル銀行監督委員会の上位機関・中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ(GHOS)は二十七日、自己資本規制「バーゼル3」の本格実施を一年延期して二〇二三年からにすると発表した。新型コロナの感染拡大による、世界経済の急速な落ち込みに対応するため。規制がより厳しくなるバーゼル3の実施に備え、金融機関が融資の回収を急ぎ、企業倒産が増大することを避ける狙い。金融機関の「健全性」のために一七年に合意されたものだが、コロナ恐慌を前に、後戻りを余儀なくされた格好だ。

人民のたたかい

(3月20日〜3月29日)

 米国ピッツバーグ市の清掃労働者が二十五日、保護具と危険手当を求めて集会を行い、ごみ収集作業を放棄するストライキを行った。オレゴン州ポートランド市のカフェでは、労働者が一時解雇に抗議して座り込みを行い、年休分の賃金を勝ち取った。
 カナダのオントリオ州ハミルトン市の清掃労働者も二十三日、対策を求めて作業を拒否した。
 米国ニューヨーク州のクオモ知事が二十日、住宅ローンの支払いや差し押さえに九十日間の猶予を与えると発表したことを機に、同州を中心に、軒先や窓辺に白いシーツを広げて家賃の支払い猶予を求める運動が広がっている。
 イランの最高指導者ハメネイ師は二十二日、米国が新型コロナウイルス対策をめぐる「支援」を呼びかけたことに対して、「米国でも(医療)資源が不足しているのに奇妙な話」と指摘、経済制裁を強化しながら「支援」を申し出る米国の「二枚舌」を非難した。

日本のできごと

(3月20日〜3月29日)

東京五輪延期、国民負担増は必至
 新型コロナウイルスの世界的感染流行(パンデミック)を受けて、安倍首相は三月二十四日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長に対し、今夏に予定していた東京五輪・パラリンピックを一年程度延期することを提案、IOCは同日臨時理事会で承認した。安倍首相は「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証に」などと開催意義を強調、後日日程も決められた。しかしパンデミック収束のメドは立たず、大会組織委員会の森会長でさえ「神頼み」という状況で、「無神経のきわみ」と米紙からも批判されるありさま。延期にかかる巨額の追加負担の分担も決まっておらず、国民負担増は必至。いわゆる「五輪利権」に群がる巨大企業のための延期は論外で、今からでも五輪を中止・返上すべきだ。

国や都が一転して強い自粛要請
 東京都の小池知事は五輪延期が発表された翌日の二十五日、緊急会見を開き、都民に週末の外出の自粛を要請した。これまでの「持ちこたえている」との認識からから一転、「感染爆発」「重大局面」「ロックダウン(都市封鎖)」などと危機感をあおり立てた。また厚労省も同日、感染が「まん延している恐れが高い」とする報告書を報告した。これまで日本の感染検査数が諸外国に比べて圧倒的に少なく、専門家からも「過少発表」との指摘があったが、五輪延期直後の姿勢一変がそれを裏付けた格好。五輪開催のために感染を野放しにし国民の命と安全を犠牲にしてきた安倍政権と小池都政はきわめて罪が重い。

第3弾の経済対策、大言も内容乏しく
 安倍首相は二十八日、新型コロナの感染拡大を踏まえ、過去最大規模の緊急経済対策を策定することを会見で発表した。「リーマン・ショックを上回るかつてない規模」「前例にとらわれない」などとして名目国内総生産(GDP)の一割以上の規模を明言、経済減速の影響を受ける個人や中小企業に現金を給付するとした。しかし自粛要請で打撃を受けた事業者への直接補填には「税金による損失補償はしない」と難色を示し、「別の仕方や給付金という形を考えている」と具体案は提示さず、所得減少世帯への現金給付額についても口をにごした。諸外国が徹底した自粛と補償を一体で断行しているのに比べても、あまりに無責任だ。

20年度予算成立、軍事費過去最大
 二〇二〇年度予算が二十七日、参議院本会議で可決・成立した。一般会計の歳出総額は一九年度当初に比べ一・二%増の百二兆六千五百八十億円で、八年連続で過去最大を更新した。軍事費も七年連続で増加、五兆二千五百七十四億円と過去最大となった一方、社会保障費の伸びは抑えられた。新型コロナウイルス対策には予備費の範囲内で対応しただけで、本予算の組み替えや修正に応じなかった。消費税増税や新型コロナウイルスで国民経済が大きな打撃を受けるなか、まったく不十分な対応だ。

学校再開指針、一方で自粛、現場混乱
 文部科学省は二十四日、新型コロナウイルス感染症対策として、四月の新学期を迎える学校の再開に向けた指針を都道府県教育委員会などに通知した。安倍首相が独断で決めた三月からの一斉休校が学校関係者や業者など広範囲に混乱と経済的な打撃を与えた。この批判が学校再開方針の背景にあるが、一方で自治体は住民に対する外出や移動の自粛要請も強めており、矛盾する方針に現場では混乱が続いている。休校・再開の判断もともに政局がらみで根拠に乏しく、判断を現場に丸投げする無責任な政策である。

ミサイル部隊新設、対中包囲
 陸上自衛隊は二十六日、垂直離着陸機オスプレイを運用する輸送航空隊を木更津駐屯地(千葉県)に、地対艦ミサイル部隊を宮古島駐屯地(沖縄県)にそれぞれ新設したと発表した。また警察庁は二十七日、沖縄県・尖閣諸島など国境周辺の離島を警備する国境離島警備隊を新設すると発表した。百五十一人態勢で発足させる。米海兵隊も二十六日、今後十年の再編計画を公表、ミサイル能力と機動性を兼ね備えた沿岸連隊を新編成し、沖縄に駐留する第三海兵遠征軍に配備する。日米で歩調を合わせた対中包囲の軍事強化がいっそう進められている。


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