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労働新聞 2020年3月15日号 トピックス

世界のできごと

(3月1日〜3月9日)

コロナ感染世界に拡大、強権発動も
 世界保健機関(WHO)は三月七日、新型コロナウイルスへの感染が急速に拡大し、世界で十万人を超えたと発表した。とくに、欧州、米国での感染者発見が増えている。米ニューヨーク州はクオモ知事が非常事態を宣言、カリフォルニア州も同様の措置をとった。イタリアのコンテ首相は八日、軍と警察を動員し、ミラノを含む北部十四県を封鎖、次いで全土に移動制限を課すことに追い込まれた。人口の約四分の一、一千六百万人を封じ込める未曾有(みぞう)の事態で、違反者には罰則が科せられる。第一次大戦中の「スペイン風邪」以来、百年ぶりの感染症危機が、世界を大きく揺さぶっている。

FRB緊急利下げ、混乱収まらず
 米連邦準備理事会(FRB)は三日、新型コロナウイルスの感染拡大のリスクを理由に、〇・五%の緊急利下げに踏み切った。フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標は一・〇〇〜一・二五%となる。だが、株式市場などは続落とパニック状態が続いている。これは、投資家が事態を緊急利下げを行うほどの深刻さと受け止めたことと併せ、利下げの数時間前に先進七カ国(G7)会合が行われたにもかかわらず、欧州中央銀行(ECB)や日銀が協調対応を打ち出さなかったこと、さらに原油急落が拍車をかけた格好。世界経済の危機はいちだんと加速化している。

OPEC+、原油減産合意できず
 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどによる「OPEC+」は六日、オーストリアのウィーンで会合を開いた。会議は、経済減速を理由にサウジアラビアが提案した日量百五十万バレルの減産強化案をロシアが拒否し、決裂した。これにより原油価格は一バレル=四〇ドル強まで下落した。決裂の理由は、二大産油国のロシアとサウジが互いにシェアの維持をもくろんだこと。ムハンマド皇太子による改革の財源として価格維持を狙ったサウジの思惑は外れ、会議後、逆に増産に踏み切った。二〇一六年以降続いてきた原油価格下支えの仕組みが崩れ、原油など資源国の苦境が強まる可能性がある。

レバノンがデフォルト表明
 レバノンのディアブ首相は七日、償還期限が迫る十二億ドル(約一千二百六十億円)の外貨建て国債について、支払い延期を表明した。事実上の債務不履行(デフォルト)宣言。レバノンは、長期に続いた内戦からの復興費用を対外借入に依存、シリア内戦や原油安の追い打ちを受け、政府債務は国内総生産(GDP)の一七〇%に膨らんだ。規模の小さい国とはいえ、世界経済のリスクが高まるなかでの破綻で、新興諸国を中心に、世界への連鎖となりかねない。

人民のたたかい

(3月1日〜3月9日)

 国際女性デーの八日、世界で女性の地位向上を求め、暴力に反対する行動が行われた。スペインのマドリードでは十二万人、バルセロナでは五万人が参加、賃金や権利の平等などを求めた。ドイツのベルリンでは、極右勢力への反対も訴えられた。フランスのパリでは六万人がデモ行進を行い、年金制度改悪にも反対した。チリのサンチアゴでは十五万人が参加、コロンビアのボゴタでは数千人がデモを行った。アルゼンチンでは、人工妊娠中絶の合法化などを求めた全国ストが闘われた。メキシコのメキシコ市では八万人のデモの翌九日、同国初の「女性スト」が行われ、暴力に抗議した。韓国でも六日、午後三時までの早期退勤ストが行われた。
 ドイツのベルリンで七日、福島第一原発事故一周年を機に、反原発を訴える行動が行われ、数千人が参加した。
 ベルギーのブリュッセルで六日、地球温暖化対策を求めるデモが行われ、四千人が参加した。

日本のできごと

(3月1日〜3月9日)

一斉休校、経済と生活に打撃と混乱
 安倍首相が新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためとして要請した全国の小中高校・特別支援学校の一斉休校が三月二日から始まった。唐突に学校生活を打ち切られた生徒や、子どもの臨時休校によって仕事を休まざるを得なくなった働く親、職員の手当てに追われた学童保育など現場に多大な混乱と打撃を強いたほか、学校給食関連業者も多大な損失を被っている。政府は国の予備費二千七百億円を活用し補償に充てる姿勢を示すが、安倍首相自身が同日国会で「専門家の意見を伺ったものではない」と独断だったことを認めており、補償は当然。首相の「実行力」を演出するために国民に混乱と犠牲を強いた、歴史的失政だ。

特措法改悪に野党協力、犯罪的役割
 安倍首相は四日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、野党五党の党首らと国会内で個別に会談した。首相は新型インフルエンザ対策特別措置法改定に協力を要請した。立憲民主党の枝野代表は「不要」との立場を示しつつも審議に最大限協力する考えを示した。現行法の対象に新型コロナウイルスを追加、また同法に基づいた「緊急事態宣言」で都道府県知事に付与される権限が拡大強化される内容。野党共同会派は九日に宣言に国会の事前承認を求める修正案をまとめたが、安倍政権にはこの改定を実質的な戒厳令を可能とする緊急事態条項導入を含めた憲法改悪への布石にする思惑があることは明白。徹底抗戦どころか、協力する野党は犯罪的な役割を担った。

排外主義で失政隠す入国制限
 政府は九日、中国と韓国からの入国を制限する一連の措置を発動した。両国発の航空機・船舶で到着した旅客に対し二週間の待機と公共交通機関の利用自粛を要請することが柱。ビジネスや学術・文化交流に大きな打撃を与えるもので、日本国内の観光産業にいっそう大きな打撃を与えている。「新型コロナウイルスの流入阻止」が口実だが、すでに国内感染が広がった状況下での効果は専門家からも疑問視されている。韓国からは「非友好的で非科学的」と猛反発し対抗措置を発表、世界保健機関(WHO)からも「政治的な争いは必要ない」と苦言を呈された。排外主義で新型コロナウイルス対策の初動の遅れを覆い隠そうとする安倍政権らしい、きわめて悪質な手法だ。

高齢者と低所得者負担増の年金改革法
 安倍政権は三日、年金改革法案を閣議決定した。二〇二二年四月から年金の受給開始年齢を七十五歳まで拡大、また働く六十〜六十四歳の年金を一部減らす在職老齢年金も基準を緩める。税や保険料負担の増大などで高齢者は長く働かざるを得ない状況にあるが、これを年金制度からも促す内容。また、同年十月から百一人以上の企業で、二四年十月からは五十一人以上の企業で働く短時間労働者にも厚生年金を適用、中小企業や低所得者の負担を増やして年金基金の縮小を食い止めようとするもの。安倍政権の掲げる「全世代型社会保障」は、高齢者と低所得者の負担増にほかならない。

大企業利益のための種苗法「改正」
 安倍政権は三日、種苗法「改正」案を閣議決定した。今国会で成立させ二一年四月の施行をもくろむ。法案には自家増殖の原則禁止と罰則も盛り込まれている。「優良品種の海外流出防止」や「種苗の知的財産権強化」などを名目とするが、採種・増殖の権利が奪われ煩雑な手続きが強いられるなど、農業者に混乱と不利益は不可避で、地域農業の実態に合わない。「改正」は農業競争力強化支援法や種子法廃止とセットで多国籍大企業による利益独占を促進させるもので、許してはならない。

GDP改定値、安倍政権の失政反映
 内閣府は九日、一九年十〜十二期の国内総生産(GDP)改定値を発表した。物価変動を除いた実質で前期比一・八%減と速報値の一・六%減から下方修正され、年率換算は七・一%減(速報値六・三%減)と大幅な落ち込みとなった。また七〜九月期も〇・四ポイント下方修正されて〇・一%増で、消費税増税前の駆け込み需要があったにもかかわらずほぼ「ゼロ成長」となった。経済低迷の中で増税を強行した安倍政権の失政があらためて明白になった形だ。


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