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労働新聞 2020年2月25日号 トピックス

世界のできごと

(2月10日〜2月19日)

ミュンヘン安保会議、米欧矛盾さらに
 各国首脳がドイツに集まるミュンヘン安全保障会議が二月十六日、閉幕した。同会議は、欧米の安保会議で最も権威があるとされる民間主催のもの。今回は北大西洋条約機構(NATO)の空洞化を前提に「消える西側」をテーマに開かれた。マクロン仏大統領は「強い欧州」を力説、米国に頼らない戦略対話を欧州各国に提案した。英国の欧州連合(EU)離脱で、域内唯一の核保有国となったフランスの「核の傘」を視野に入れたもの。シュタインマイヤー独大統領も「国際社会の理念を退けている」と米国を批判、ポンペオ米国務長官は「ひどい誇張」とやり返し、中国、ロシアなどの「脅威」にすり替えた。大国外交だが、欧州の独自性の強まりとして注目できる。

米、対EU関税を強化
 米通商代表部(USTR)は十四日、航空機大手エアバスへの補助金を口実に、EUに報復関税を拡大した。航空機への追加関税を現行の一〇%から一五%に引き上げる。トランプ米政権は昨年十月、ワインなどに追加関税を実施、米欧対立が激化していた。航空機の国際競争が激化するなか、事故で苦境にある米ボーイングを救済する狙い。米欧間には、自動車、農産品、デジタル課税など懸案が山積み。「成果」を焦るトランプ政権は、同盟国にもなり振り構わぬ攻勢に出ている。

米比地位協定を破棄通告
 フィリピンのドゥテルテ政権は十一日、米国に「訪問米軍地位協定(VFA)」の破棄を通告した。同協定は、米軍のフィリピンでの軍事演習などを取り決めたもので、通告後百八十日を経過すると失効する。ドゥテルテ大統領は「米兵に偏った特権が与えられている」など、協定の不平等性を理由にあげた。それだけでなく、米政府が、麻薬捜査における「超法規的措置」を批判していることが背景にあるとされる。米比相互防衛条約は維持され、ドゥテルテ政権が失効前に態度を変える可能性があるものの、アジアでの対中包囲網をめざす米国には打撃だ。


アルゼンチン、IMFを拒否
 国際通貨基金(IMF)の押し付ける融資条件への怒りが広がっている。アルゼンチン財務省は十一日、国債償還金十四億七千万ドルの支払いを九月末まで延期すると通告した。グスマン経済相は海外ファンドを非難、IMFの融資条件も拒否した。ゲオルギエバIMF専務理事も譲らぬ姿勢をみせており、協議が決裂する可能性もある。IMFをめぐっては、レバノンが支援要請に追い込まれる一方、エクアドルなど中南米各国では緊縮策への抗議が広がっている。リーマン・ショック後に世界的に膨らんだ政府債務問題の帰結で、先進諸国も例外ではない

人民のたたかい

(2月10日〜2月19日)


 韓国のソウルで十日、公共運輸労組ガス公社非正規支部が、公社社長との面談を求めて社長室を占拠した。同時にストライキに突入、非正規社員の正規職への転換を要求した。
 ブラジルで十七日、石油公社ペトロブラス(PB)での約四百人の解雇撤回を求めた労働者のストライキに対して、労働高等裁判所(TST)は「違法」と断じた。ストには全国二万一千人の労働者が参加している。
 ドイツ東部のチューリンゲン州のエアフルトで十五日、極右「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持で選ばれた州首相を辞任に追い込んだことに続き、一万八千人が極右に対抗し、迎合した既成政党を批判してデモを行った。
 メキシコ各地で十四日、女性への暴力に抗議し、デモ行進が行われた。きっかけはメキシコ市で、夫の残虐な暴力によって殺された女性の遺体が発見されたこと。

日本のできごと

(2月10日〜2月19日)

新型肺炎で国の対応の遅れに批判続出
 新型コロナウイルスによる肺炎などの感染拡大を受け、安倍首相は二月十四日、新型ウイルス対策本部で専門家会議の設置を表明した。前日に国内で初めて死亡が確認されたことを受けての決定だが、一月三十一日に世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を出してから半月が経過しており、あまりに遅い。政府の緊急対策本部が設置されたのも、国会で野党議員から中国への渡航歴がない日本人の感染が確認され政府対策を迫られた翌日の三十日で、後手後手に始終している。安倍首相や閣僚が後援会や地元行事を優先させて対策本部の会合を欠席したり会合後に宴会に興じていたことにも怒りが集中、集団感染が確認されたクルーズ船へのずさんな対応には海外からも批判が噴出している。事態の拡大と深刻化を招いた責任は主要に安倍政権にある。

政府が新型肺炎の緊急対策、責任重大
 安倍政権は二月十四日、総額百五十三億円の緊急対応策の第一弾を閣議決定した。中国などからの帰国者らへの支援や国内感染対策の強化、水際対策の強化、影響を受ける産業への支援、国際連携の強化が盛り込まれた。新型コロナウイルスの簡易診断キットや抗ウイルス薬、ワクチンなどの研究開発を支援するほか、政策金融公庫などに五千億円の緊急貸付・保証枠を設け、観光業など影響を受けている中小企業を支援する。新型肺炎は観光にとどまらず日本経済と国民生活に広範囲に深刻な打撃を与え、事態を深刻化させた国の責任は重大。今後の対策は国民から厳しく追求される必要があるだ。

GDP大幅減、消費税増税が直撃
 内閣府は十七日、二〇一九年十〜十二月期の国内総生産(GDP)速報値を発表、物価変動の影響を除いた実質で前期比一・六%減、年率換算で六・三%減と大幅な落ち込みとなった。安倍政権が強行した消費税増税で個人消費は二・九%減、クリスマス商戦や年末商戦の時期やキャッシュレス決済へのポイント還元などの政府の増税対策も大幅落ち込み回避には至らなかった。経済をけん引する設備投資も三・七%減となった。今年に入ってからは新型肺炎の拡大で世界経済は大きな打撃を受けており、さらなる経済失速は不可避。政府は二月の月例経済報告で「景気は緩やかな回復局面にある」などと粉飾するが、経済失政は明白だ。

国家私物化の検事定年法解釈変更
 安倍首相は十三日、検事長を含む検察官の定年延長を認めないとしてきた従来の政府見解を変更したことを表明した。検察庁法では検事総長は六十五歳定年、それ以外の検察官は六十三歳定年と定め、延長の規定はない。しかし安倍首相は自身に忠実な黒川東京高検検事長を検察トップの検事総長に起用する布石として黒川氏の六十三歳の誕生日直前に定年延長を閣議決定、これが違法だとの指摘が国会の内外で上がっていた。手先を要職に就けるためには法解釈をねじ曲げることもいとわない安倍政権に、国家私物化の罪状がまた一つ付け加えられた。

ミュンヘン安保会議で中国包囲に暗躍
 茂木外相と河野防衛相は十五日、ミュンヘン安保会議の行われたドイツを訪問した。会議に出席した茂木氏はアジア安保をテーマにしたパネル討議で安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想を力説、米国の意にも沿って中国の海洋進出への警戒感をあおった。また河野氏は欧州を中心とした各国の国防相と会談し、インド太平洋地域において防衛協力を進めることを訴えた。フランスのパルリ国防相とは外務・防衛担当閣僚会議(2+2)の開催に向け調整した。中国包囲網に欧州各国を引き込もうと、この会議でも暗躍した。


陸自「海兵隊」が沖縄初の日米訓練
 陸上自衛隊の水陸機動団が十三日、金武ブルービーチ(沖縄県金武町)を中心に行われた米海軍・海兵隊と合同での水陸両用訓練を終えた。「日本版海兵隊」といわれる同団は一昨年三月に発足され、今年に入ってからも米本土や九州、北海道で米軍との合同訓練を行ってきたが、沖縄県内で行うのは初めて。防衛省は同団を米軍と一体となって東シナ海や南シナ海に遠征させる構成を視野に入れており、今回の共同訓練はその地ならし。日米軍事一体化と中国包囲網構築が加速している。


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