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労働新聞 2020年2月15日号 トピックス

世界のできごと

(1月30日〜2月9日)

英国がEUを正式に離脱
 英国は二月一日、欧州連合(EU)から離脱した。国民投票から約三年半。当初は二〇一八年三月までに離脱交渉をまとめるはずだったが、議会が三度も合意案を否決し混乱が続いた。今後、EUとの関係について交渉が本格化するが、英国は関税障壁なしの貿易継続を求める一方、金融などの規制・ルール面などは企業寄りに独自に緩和する方針。こうした英国に対してEU主要国は「貿易交渉は冷たく臨む」(マクロン仏大統領)、「英国は強力な競争相手」(メルケル独首相)と突き放す声が大半で、交渉の難航は必至。また英国からは企業が相次いで撤退するなど、代償は大きい。

トランプ、一般教書演説
 トランプ米大統領は四日、両院合同会議で一般教書演説を行った。大統領は、北米自由貿易協定(NAFTA)放棄、中国への貿易戦争などを列挙し「偉大な米国の復活」などと自画自賛。米軍に二兆二千億ドル(約二百四十兆円)を投じたことや、北大西洋条約機構(NATO)加盟国への負担増を「成果」とした。先のイラン革命防衛隊司令官の殺害を居直り、ベネズエラなどへの干渉を強める姿勢も見せた。一方、「警察官役はわれわれの職務ではない」などと、軍事力を投入できる余裕のなさもにじませた。十一月の大統領選に向けて政権の「実績」をぶち上げたもの。だが、大型減税と歳出拡大で財政赤字は年間一兆ドル(約百兆円)にふくらみ、経済成長率も鈍化が予想されており、足元は危うい。

トランプ「無罪」も、分断深まる
 トランプ米大統領のウクライナ疑惑に関する上院での弾劾裁判は五日、「権力の乱用」と「議会に対する妨害」という訴追条項について、いずれも「無罪」とした。上院は共和党が多数で、大統領は訴追を免れた。民主党が多数の下院では、弾劾が議決されていた。大統領は疑惑を「魔女狩り」と居直り、大統領に不利な証言をしたとされる駐欧州連合(大使)らのスタッフを更迭、十一月の大統領選に向けて気勢を上げた。だが、大統領の「正当性」に根強い疑念が残る事態はまったく変わらなかった。世論の対立と相まって、米国の分断は深まっている。


WHOが「緊急事態宣言」
 世界保健機関(WHO)は一月三十日、新型コロナウイルスについて「緊急事態」に該当すると宣言した。WHOによる宣言は史上六件目。世界的な感染拡大を受けて、中国を拠点とする企業の生産・物流も大きな影響を受け、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は「世界景気に短期的な減速をもたらす可能性」を指摘した。感染症の危機が、政治・経済両面で大きな影響を及ぼしている

人民のたたかい

(1月30日〜2月9日)


 ヨルダンのアンマンで一月三十一日、トランプ米政権の中東「和平」案に抗議するデモが行われ、数千人が参加した。パレスチナのヨルダン川西岸各地でも三十日、抗議行動が行われた。イスラエルのテルアビブでも二月二日に左派政党や人権団体などがデモを行った。
 フランス各地で二日、マクロン政権による年金制度改悪などの攻撃に抗議するデモが行われた。この抗議行動は昨年から」六十四週目に突入、パリでは国民議会に向けてデモ行進、南部モンペリエでも約千人がデモに参加、警官隊と衝突した。
 ドイツ全土で五日、同国東部のテューリンゲン州首相選挙で極右「ドイツのための選択肢」(AfD)の支持を受けた候補が勝利したことに抗議するデモが行われ、数千人が参加した。こうした抗議の声に押されて、翌六日、この州首相は辞任に追い込まれた。

日本のできごと

(1月30日〜2月9日)

補正予算成立、軍備拡大が顕著
 二〇一九年度補正予算案が一月三十日、参議院本会議で可決・成立した。総額は約四兆五千億円で、政府は二〇年度本予算と合わせた「十五カ月予算」と位置付け、景気対策と災害からの復旧・復興対策を目玉にしている。だが、F35戦闘機や空中給油機購入の分割払い前倒しが大半の軍事費四千二百八十七億円や、マイナンバーカードの普及と連動したキャッシュレス決済のポイント還元事業に一千五百億円をつぎ込んでいる。四・四兆円もの赤字国債発行で、財政はさらに深刻。米軍需産業とわが国大企業の利益のための項目が目白押しだ。

自衛艦が出航、中東の緊張あおる愚策
 海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が二月二日、アラビア海に向けて横須賀基地を出航した。哨戒機はすでにオマーン湾とアラビア海北部で活動中。安倍政権は「調査・研究」を口実に、国会審議さえなく派兵を強行したが、米主導の「有志連合」と歩調を合わせた派兵で、日本の軍事大国化をめざすもの。米国によるイラン敵視とデタラメな中東「和平案」などで、中東の緊張が増すなか、すすんで「火中の栗」を拾おうとする愚策で、わが国の孤立を深めるだけだ。

日英戦略対話で孤立に助け船
 茂木外相とラーブ英外相が八日、東京で戦略対話を開いた。英国の欧州連合(EU)離脱に伴う新たな経済協定について、早期の交渉開始で一致したほか、外務・防衛担当閣僚会議(2+2)の開催でも合意した。英国のEU離脱後初の戦略対話で、欧州との協議が難航するなか、日本を重視する姿勢を示したもの。安倍政権にとっても、中国に対抗する「自由で開かれたインド太平洋」に英国を引き込み、政治大国をめざす動きの一環。だが、中国通信大手ファーウェイへの態度などでは溝があり、不一致は残ったままだ。

政府、感染症対策で対応後手に
 新型コロナ肺炎を「指定感染症」とする政令が一日、施行された。政府の初動は完全に遅れ、判明した感染者だけで二百人を超えた(クルーズ船を含む)。政府は、入国制限の対象拡大や「発熱外来」の設置、検査キットの開発促進、旅館業などへの資金繰り支援策などを打ち出した。全国知事会も、情報発信の強化や財政出動を求めた。だが、厚労相が表明したクルーズ船乗船者への全数検査を官房長官が否定するなど、政府の対応はぶざまそのもの。国民の不安は拡大しており、政府の責任は重大だ。

金融庁、地銀への締め付け強化
 金融庁は七日、「地域金融機関の経営とガバナンスの向上に資する主要論点(案)」を公表した。「地域銀行の経営とガバナンスの実効性の向上に資するため」と称し、経営理念、地域社会との関係、業務プロセスの合理化や他機関との連携など八項目について「主要な論点を整理」するとしている。金融庁は、春にも地銀経営者との個別対話も始める。事実上、地銀に、メガバンクや大手証券会社の傘下での再編を促すもの。巨大金融資本による地域への収奪強化を招き、住民には窓口消滅などで犠牲を強いるものだ。


給与総額が6年ぶりに減少
 厚労省は七日、毎月勤労統計(速報)を公表した。一九年の現金給与総額(名目)は月平均三十二万二千六百八十九円(前年比〇・三ポイント減)で、六年ぶりの減少。パートタイムは九万九千七百五十八円で、昨年とほぼ同じ。フルタイム労働者の名目賃金は〇・三ポイント増えたが、低賃金のパート比率が〇・六五ポイント増の三一・五三%で過去最高となったことが、全体を下押しした。わずかな最賃引き上げだけでは、労働者の環境を改善できないことは明らかだ。


経産省、処理水放出へ世論誘導
 経産省は一月三十一日、東京電力福島第一原発で発生する処理水の処分法を話し合う小委員会に、報告書原案の修正版を示した。内容は、一日百七十トン増え続ける処理水を、海洋放出、または水蒸気放出させるとし、海洋放出を「より確実」などとした。放射性物質トリチウムを含む処理水は昨年末で百十八万トンにも達するが、政府は漁民などの反発を押し切って放出に踏み切る構え。小委員会はセレモニーにすぎない。国際的批判も不可避だ。


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