ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2020年2月5日号 トピックス

世界のできごと

(1月20日〜1月29日)

ダボス会議、「再定義」展望なし
 スイス東部ダボスで行われていた世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)が一月二十四日、閉幕した。五十回目の会議は、資本主義の深刻な危機を前に、その「再定義」をテーマに約三千人が集まった。だが、妙案が出るはずもなく、「市場経済の革新力や技術力」を力説して楽観論をあおったトランプ米大統領は孤立した。「株主資本主義の見直し」などの方向は出たものの、実効性はなく、世界の支配層は展望を描けない。

米、中東「和平」案に値せず
 トランプ米大統領は二十八日、新たな中東「和平」案を発表した。パレスチナに独立国家の建設を容認するとしつつ、エルサレムを「イスラエルの不可分の首都」とし、ヨルダン川西岸の入植地でのイスラエルの主権を求めるなど、和平案の名にさえ値しない内容。パレスチナをはじめ、米国への反発が高まっている。一方、プーチン・ロシア大統領は二十三日、イスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相、アッバス・パレスチナ自治政府議長と会談した。議長が中東和平でのロシアの役割に期待を述べるなど、ロシアが影響力を増している。

WTO運営めぐり中欧が合意
 欧州連合(EU)と中国、ブラジルなど十六カ国は二十四日、世界貿易機関(WTO)の紛争処理制度について、暫定的な上訴制度の設置をめざすことで合意した。現在、WTOの紛争処理の上級委員会(最終審に相当)は、本来七人の委員が一人のみで機能不全状態。これは、米国が補充や再任を拒否しているため。暫定制度は合意国間の紛争にのみ適用するもので、米国や日本は含まれない。WTOは、冷戦崩壊後の一九九五年に米国が主導して設立し、世界に貿易と投資の自由化を強制してきた。だが、トランプ政権は深刻な国内矛盾を背景に中国の途上国扱いを非難するなど、自らがつくりあげた制度をぶち壊している。


新型肺炎深刻化で中国経済に影響
 中国政府は二十三日、新型肺炎の拡散を防ぐために湖北省武漢市を封鎖、二十五日にはすべての団体旅行の中止を命じた。また、春節(旧正月)連休の延長も決めた。これにより、中国国内の企業は次々と休業の延期を打ち出した。中国で生産などを行う企業が生産計画の見直しに迫られることは不可避で、世界のサプライチェーン(供給網)にも打撃。日本などへの観光旅行も急減し始めた。世界的に株価が低迷するなど、低成長にあえぐ世界経済にとって新たな難題となってきた。感染症の流行は、経済のグローバル化の一つの帰結でもある

人民のたたかい

(1月20日〜1月29日)


 フランスで二十一日、労働総同盟(CGT)傘下の電力労働者らが年金制度改悪に反対してストライキに入った。パリ南郊への電力供給が、二時間にわたって停止された。政府は改悪案のうち、年金受給開始年齢を六十二歳から六十四歳へ引き上げる部分を撤回したが、二十四日には、全国で百三十万人が参加するデモ行進が行われるなど、闘いが続いている。
 イラクのバグダッドで二十四日、米軍の撤退を求めて数万人がデモを行った。
 スイスのチューリヒで二十二日、ダボス会議に抗議するデモが行われ、一千人以上が温暖化対策を要求した。
 米国百都市以上で二十五日、イランへの軍事攻撃に反対するデモ行進が行われた。ワシントンのホワイトハウス前での集会では、「米軍は中東から撤退を」の声が上がった。
 インド全土で二十六日、イスラム教徒を差別する市民権修正法に抗議し、数十万人がデモを行った。
 チリ各地で二十七日、教育制度の無償化を求め、高校生が授業をボイコットした。

日本のできごと

(1月20日〜1月29日)

施政方針演説で国民負担増明言
 第二〇一通常国会が一月二十日、召集された。安倍首相は、衆参両院で施政方針演説を行い、実質賃金の低下や物価高、消費税増税で貧窮する国民生活をよそに「アベノミクスの成果」を誇示、世代間対立をあおりながら高齢者にいちだんの負担を押し付ける「全世代型社会保障」を強調した。外交・安全保障政策については、従来からの「積極的平和主義」を繰り返した上で、締結から六十年を迎えた日米安全保障条約、日米同盟を「かつてなく強固」などと誇り、対米追随で政治軍事大国化をめざす姿勢を強調した。安倍政権を打倒しなければ国民大多数の政治は実現できないことがあらためて如実になった。

「桜」疑惑やIR汚職で答弁拒否続く
 衆議院予算委員会が二十七日に始まり、安倍政権は首相主催の「桜を見る会」の私物化疑惑やカジノを中核とする統合型リゾート(IR)事業にからむ汚職事件、元閣僚らの公選法違反疑惑などの追及を受けた。首相らは疑惑について「記録廃棄」「個人情報」「捜査中」を口実にことごとく答弁を拒否する、不誠実な姿勢に終始した。自民議員は「新型コロナウイルスの感染拡大対策を優先しろ」などと問題をすり替える大合唱で、なり振り構わぬ逃げの姿勢だ。疑惑と汚職にまみれ切った安倍政権の体質があらわになり、国民の不信と怒りは増す一方だ。

新型肺炎を「緊急事態条項」に悪用
 新型肺炎拡大を改憲と緊急事態条項導入キャンペーンに利用する動きが政権与党周辺で相次いでいる。二十八日の衆議院予算委員会で馬場・日本維新の会幹事長は、自民改憲案の緊急事態条項の議論が必要で「感染拡大はいいお手本」と発言。安倍首相は「憲法審査会で与野党の枠を超えた活発な議論を」などと答えた。その後も自民内からは「緊急事態の一つの例、憲法改正の大きな実験台」(伊吹元衆院議長)など、同調の発言が続いている。感染拡大を「戒厳令」に道を開く策動を許してはならない。

米高官「思いやり予算」増を要求
 米国務省のナッパー副次官補(日韓担当)は二十四日、米国が日本に大幅な増額を求めている在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)について「日本を含む同盟国はもっと多くのことができるし、すべきだ」と発言、現行の日米の「思いやり予算」特別協定は二〇二一年三月末に失効することから、新協定に向けた交渉を念頭に増額を要求した。米側は昨年、日本側に約八千八百億円(約八十億ドル)の負担を求めたと報じられた。衰退する米国は世界の覇権維持のために日本など同盟国を、これまで以上に徹底して利用する姿勢を強めている。

立民と国民の合流破談、野党共闘後退
 立憲民主党と国民民主党の両幹事長は二十一日、協議が続いていた合流について「当面見送り」方針を確認した。協議再開の期日や条件も決められず、合流の気運は当面消滅した。協議は昨年十二月、通常国会冒頭での解散・総選挙に備え、これまで合併に慎重だった立民の枝野代表が国民の玉木代表に持ちかけて始まった。しかし、国民を吸収合併し党名を残すよう訴えた立民と、党名変更と概ね対等な役員人事を求めた国民とが主導権を争って歩み寄れなかった。また「桜」や「IR汚職」などで解散が遠のいたとの見方から、合流を急がなかった。とくに国民内部の流動化が強まる気配だ。総選挙に向けた合流気運とともに「野党共闘」も後退した格好だが、両党の合流がわが国支配層の望む保守二大政党制に向けた一歩であれば、労働者や国民大多数が歓迎すべきではない。


沖縄で米ヘリ墜落も政府は「着水」
 米海軍MH60ヘリコプターが二十五日、沖縄本島東の沖合約百八十キロの公海上に墜落した。米軍は同墜落事故を最も重大な「クラスA」に分類したものの、日本語では「着水」と発表、防衛省も足並みをそろえた。米軍や防衛省は一六年十二月に名護市の沿岸部でオスプレイが墜落・大破した事故も「不時着」とするなど、事故のわい小化を繰り返している。沖縄県内では事故日から陸上自衛隊の離島防衛専門部隊・水陸機動団(長崎県)と米海軍・海兵隊による共同訓練が始まっており、訓練激化で県民の安全はいっそう脅かされている。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2020