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労働新聞 2019年12月15日号 トピックス

世界のできごと

(11月30日〜12月9日)

米下院、ウイグル人権法を可決
 米下院は十二月三日、「ウイグル人権法案」を可決した。中国・新疆ウイグル自治区でウイグル人が「弾圧」されているとし、米政府に「厳格な対応」を定めるもの。対応の内容は、中国セキュリティー関連企業への禁輸や資産凍結、中国当局者へのビザ発給禁止などの制裁措置を含んでいる。ザキル自治区主席は、「国際法に深刻に違反し、あからさまな内政干渉」と反発した。「香港人権・民主主義法」に次ぎ、米国による中国への圧迫に際限はない。

デジタルめぐり米仏対立が激化
 トランプ米大統領とマクロン・フランス大統領がは三日、英国ロンドンで会談した。トランプ大統領は、仏政府が導入したデジタルサービス税の是正を求め、同国製品への二十四億ドル(約二千六百億円)の制裁関税実施にも言及した。デジタル税は、IT(情報技術)大手企業の売上高三%に課税するもので、事実上、米アマゾンなどを対象とする。フランスは自国企業と市場を守るとともに、国際課税ルールづくりを主導する意図で導入した。イタリアなども同様の税制を導入している。暴利をむさぼる巨大企業への国際的批判が高まっていることの反映で、欧州の態度は道理があるものだ。

NATO、内部の溝は依然深刻
 英国ロンドンで行われていた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が四日、閉幕した。会議は「ロンドン宣言」を発表、宇宙空間での防衛強化と、中国の「脅威」への対応をうたった。北マケドニア共和国の加盟も承認された。だが、米国による軍事費増額要求や華為技術(ファーウェイ)の排除要求に対して欧州諸国の異論が残っており、シリア情勢をめぐるクルド人勢力への態度でもトルコが異論を述べている。創設七十年を迎えたNATOだが、マクロン・フランス大統領が「脳死状態」というほど、米欧同盟は形骸化しつつある。


イラクで首相辞任、政権弱体化
 イラク国会は一日、アブドルマハディ首相の辞任を承認した。十月以降拡大した、高失業などに抗議するデモに追い込まれたもの。サレハ大統領は後任候補を指名するが、各政党の協議が難航することは確実。イラクにあるイラン在外公館が放火される事態も起きている。隣国のイランを敵視し、いまだイラクに軍隊を駐留させている米国の干渉が強まることも予想される。イラクの政治不安定化は長期化・深刻化し、中東全体に波及する可能性がある。

人民のたたかい

(11月30日〜12月9日)


 フランスで五日、年金制度改悪案に反対して、国鉄職員や教職員労組などが全国ストライキに入った。鉄道の約九割が運休、学校の約半分が閉鎖となった。全国二百五十カ所でデモ行進が行われ、百五十万人以上、パリでは二十五万人が参加した。
 ドイツで三日、米IT大手アマゾンの従業員二千人以上によるストライキが終了した。ストはサービス従事者労組が呼びかけ、賃上げと労働条件の改善を求めたもので、十一月末の「ブラックフライデー」から続いていた。
 コロンビアで四日、ドゥケ政権による年金制度改悪などに反対し、全国ストライキが闘われた。十一月末以降、三回目。
 アルジェリアのアルジェで六日、ブーテフリカ前政権後崩壊後、初の大統領選を控え、数万人が前大統領の側近が出馬していることに抗議した。
 国連気候変動枠組み条約第二十五回締約国会議(COP )が開かれているスペインのマドリードで六日、気候変動への対策を訴えるデモ行進が行われ、数万人が参加した。米国の二百八十カ所でも、同様の行動が行われた。

日本のできごと

(11月30日〜12月9日)

臨時国会閉幕、長期政権の腐敗あらわ
 第二百臨時国会が十二月九日、閉幕した。米国に一方的に譲歩し国内農産物市場を売り渡した日米貿易協定の承認や、公立学校教員に変形労働制を導入し多忙化に拍車をかける教員給与特別措置法の改定が強行された。一方、安倍首相は「桜を見る会」疑惑を追及されることを回避するため野党が求めた会期延長に応じず、執着する憲法改悪の手続きを定める国民投票法改定案の採決は見送られた。「政治とカネ」をめぐる問題で二閣僚が相次いで辞任に追い込まれるなどもあって国会審議は進まず、中東海域への自衛隊派兵は閣議決定で強行する方針。歴代最長となった安倍政権だが、権力集中に伴う腐敗や矛盾の蓄積も進み、今後の政権運営は安泰ではない。

安倍首相が改憲姿勢鮮明に、焦りも
 安倍首相は九日、臨時国会の閉会を受けて記者会見し、改憲について「必ずや私の手で成し遂げていきたい」と改めて意欲を示した。また自民党は安倍首相(党総裁)が憲法九条への自衛隊明記などを訴えるメッセージ動画を作成、党所属の全国会議員と各都道府県支部に配布した。改憲への強い執着をあらためて示した背景には、自身の願望や総裁四期目をにおわせて影響力維持を図る狙いがあると同時に、中国に対抗した日本の軍事大国化への焦りもある。

初の日印2プラス2、中国けん制
 日印両政府は十一月三十日、ニューデリーで初の日印外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を行った。安全保障協力の戦略的深化を確認し、自衛隊とインド軍が物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)の交渉加速や航空自衛隊とインド空軍の戦闘機訓練を日本で開催する方針で一致した。インドとの戦闘機訓練が実施されれば米国、英国、オーストラリアに次いで四カ国目。共同声明では、安倍首相の掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想を踏まえ、公海での「航行の自由」や「上空飛行の自由」を重視する姿勢を打ち出した。安倍政権は日本の軍事大国化と、中国を抑え込みたい米国の意をくみ、インドとの軍事的関係強化にまい進している。

米軍佐世保基地、侵略性さらに
 米海軍は六日、佐世保基地(長崎県佐世保市)に最新鋭の強襲揚陸艦「アメリカ」を配備した。米海兵隊ステルス戦闘機やオスプレイの運用を前提に設計された初めての強襲揚陸艦で、全長・排水量ともに大型化、対地攻撃能力が強化され侵略的性質を強めている。佐世保基地の艦隊を統括するケイチャー司令官は「自由で開かれたインド太平洋地域を守る」と、中国を念頭に置いた強化であることをにおわせた。陸上自衛隊の「日本版海兵隊」とされる水陸機動団発足などとも併せ、基地機能強化が進められている。

消費税増税で景気悪化が鮮明に
 内閣府は六日、十月の景気動向指数(速報値)を発表した。景気の現状を示す一致指数は九四・八(一五年=一〇〇)で、前月比五・六ポイント低下し、一三年二月以来の低水準となった。消費税増税により小売店の売り上げが減少したことなどが原因で、五年前の増税後を超える減少。また総務省が六日発表した十月の家計調査では一世帯(二人以上)あたりの消費支出は二十七万九千六百七十一円で、実質で前年同月比五・一%減と、消費税増税時の一四年四月(四・六%減)よりもマイナス幅が拡大。東京商工リサーチが九日発表した十一月の全国企業倒産件数も、前年同月比一・四%増の七百二十八件で三カ月連続で前年同月を上回った。安倍政権による増税強行で、国民生活と営業は悪化の一途だ。


景気悪化が深刻化、三年ぶり経済対策
 安倍政権は五日、経済対策「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を閣議決定した。政府が経済対策を打ち出すのは一六年八月以来。一九年度補正と二〇年度当初予算の両案を合わせた「十五カ月予算」という位置付けで、国・地方の財政支出は一三・二兆円で民間の支出も加えた事業規模は二十六兆円。「災害からの復旧・復興」「経済の下ぶれリスクを乗り越える支援」「未来への投資と東京五輪後の対策」の三つを柱とする。安倍首相は「アベノミクスの成果を前進・加速させる」と豪語したが、国民経済悪化への対応を迫られた格好。強気と裏腹に悪政に対する国民の反撃におびえている。


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