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労働新聞 2019年11月15日号 トピックス

世界のできごと

(10月30日〜11月9日)

米、パリ協定離脱で「蚊帳の外」
 米トランプ政権は十一月四日、国連に対し、地球温暖化対策の国際条約である「パリ協定」からの離脱を正式に通告した。すでにトランプ大統領は、同協定からの離脱を表明していた。世界第二位の二酸化炭素(CO2)排出国である米国の一方的な離脱は内外から批判を集め、米国内でも人口の過半数を占める州・自治領で同協定の目標達成に取り組んでいる。五日に訪中したフランスのマクロン大統領は「中国と欧州連合(EU)は断固として(同協定の目標達成に)協力する」と表明した。CO2の排出削減、エネルギー開発などで、米国は取り残されようとしている。

RCEP年内妥結見送り
 日本や中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など計十六カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳会合が十一月四日、バンコクで行われたが年内妥結が見送られた。インドから緊急輸入制限(セーフガード)の不備や貿易赤字拡大への懸念を理由に参加見送りが表明され、交渉そのものからの離脱も示唆(しさ)された。インドは対中貿易赤字を抱え、関税引き下げでさらに中国製品が流入し、国内産業への打撃を不安視していた。これは同国の自主的選択でもある。米国は中国をけん制するため、インドをRCEPに関与させる思惑もあったが、つまずいた格好となった。

東アジアサミット、米の存在低下鮮明
 東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国や米国、ロシア、中国、韓国などによる東アジアサミットが十一月四日、バンコクで開催された。会議では米国のオブライエン大統領補佐官が南シナ海問題で中国への非難を展開したが、大統領選挙を優先して正副大統領が欠席するなど、米国のアジアでの存在感低下を逆に印象付けた。南シナ海問題をめぐってはベトナムやフィリピンから中国への警戒感も示されたが、首脳声明では域内での紛争の平和解決をめざすことが謳われた。


アルゼンチン、IMFに「支払不可」
 アルゼンチンのフェルナンデス次期大統領は七日までに、国際通貨基金(IMF)への債務について「支払いができない」と、返済繰り延べを求めた。マクリ前政権とIMFは総額五百六十三億ドル(約六兆千五百億円)の融資枠の設定で合意していた。IMFは要求に応じる姿勢を見せているが、交渉が難航すればデフォルト(債務不履行)につながり、世界経済へ波及する可能性をはらんでいる。

人民のたたかい

(10月30日〜11月9日)


 チリで十一月八日、ピニェラ政権の緊縮政策に反対するデモが各地で行われた。首都サンティアゴのデモでは多くの人びとが大統領府まで迫った。チリでは十月に地下鉄運賃の値上げに端を発した抗議行動がこれまでの低賃金、高い教育、医療費、一部のエリート層による富の独占への怒りに広がっている。またその余波で、同国で開催予定であったアジア太平洋経済協力会議(APEC)などの国際会議が断念に追い込まれた。
 韓国のソウルで九日、民主労総が全国労働者大会を開き、労働法制改悪に抗議した。約十万人の労働組合員は、国会議事堂前までデモ行進し、警官隊と対峙(たいじ)した。
 ドイツで七日、同国最大の航空会社ルフトハンザの客室乗務員の労働組合が二日間のストライキを行った。ストは十月二十日の警告ストに続くもの。組合は二万人以上いる客室乗務員の手当の増額を経営側に要求している。
 オランダで六日、政府の教育予算が不十分と訴える教育労働者のストライキが行われた。ストはアムステルダムやハーグなど全土に広がった。

日本のできごと

(10月30日〜11月9日)

英語民間試験見送り、政権に打撃
 萩生田文科相は十一月一日、大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入について、来年度からの実施を見送ると発表した。政府は同制度の実施を民間に「丸投げ」する無責任な態度に終始、企業による独占の弊害や一部政治家と業者のゆ着などが指摘されていた。高校生や現場からの、地方や貧困層に不利などの批判に対しても、文科相は「身の丈に合った受験にすればよい」と格差を容認していた。見送りは当然で、安倍政権には打撃。政府は「二〇二四年度の実施」をめざすとしているが、完全に撤回すべきだ。

日韓対話、溝埋まらず
 安倍首相と文在寅・韓国大統領は四日、タイのバンコク郊外で対話した。両首脳が話し合うのは一年一カ月ぶりで、大統領が高官級協議の検討を提起したのに対し、首相は元徴用工問題などでの韓国の「対応」を求めた。「そこまでの大きな評価をするのは難しい」(茂木外相)というほど、元徴用工問題や軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について具体的前進はなかった。関係改善を求める世論の前に安倍政権は会談を行わざるを得ず、対韓強攻策・排外主義と米日韓同盟との狭間で動揺している。

共産党8中総、綱領改定案を提示
 共産党は四、五日、第八回中央委員会総会を開き、十六年ぶりの綱領一部改定案を示した。内容は多岐に及ぶが、二二年までに「野党連合政権」の樹立をめざすとした。その必要性から、中国の「人権」問題などを指摘、「社会主義の原則や理念と両立し得ない」とし、現綱領にある「社会主義がめざす新しい探求」などを削除する。政権入りのために中国敵視の合唱に加わろうというもので、米国やわが国支配層にさらに屈服する裏切りだ。

米軍の規則違反横行が発覚
 米軍第一海兵航空団(沖縄県)の調査報告書で二日、海兵隊岩国基地(山口県岩国市)所属の戦闘機部隊で規則違反が横行していることが発覚した。違反行為は、手放し操縦や飛行中の読書などで、重大事故につながりかねないもの。報告書は、部隊内に「薬物乱用、アルコールの過剰摂取」などがあると指摘。同部隊では、昨年十二月の高知県沖での墜落や、一六年に沖縄県沖で空中接触事故が起きている。しかも、米軍は沖縄での事故を日本側に報告さえしていなかった。青森県六ケ所村でも、米軍戦闘機が模擬弾を民有地にに落下させる事故が起きた。国民の命が脅かされ続けている。

軍備めぐり米国への奉仕が露呈
 会計検査院は八日、国費の不適切な経理などを指摘した「決算検査報告」を安倍首相に提出した。今回は災害対策事業の調査が中心だが、米国からの有償軍事援助(FMS)についても指摘された。それによると、日本側による支払い後、予定をすぎても納入されていない軍需品が五年間だけで約三百五十億円分に上る。安倍政権の下で米国からの武器購入額は拡大の一途だが、政府機関の一部からさえ指摘されるほど、米国に搾り取られている実態が暴露された格好だ。


台風による農林水産被害推計
 農水省は一日、台風十五、十九、二十一号による農林水産関係の合計被害額が、二千百八十八億円に上ったと公表した。コメの浸水や果樹農家への打撃など被害は甚大で、さらに拡大することが必至。政府の非常災害対策本部は八日、一九年度予算の予備費から一千三百億円を、中小企業や農業の再建のため支出することを決めた。だが、建物や設備の復旧費補助は宮城、福島、栃木、長野の四県のみが対象で、補助も最大四分の三どまり。被災者の苦難を救うにはきわめて不十分だ。


交付金エサに医療改革促す
 厚生労働省は八日までに、予防医療への取り組みが不十分な自治体に「罰則」を科すことを決めた。すでにある、健康診断の受診率や後発医薬品の使用割合などが高い自治体に交付金を厚く配分する制度を拡充し、一部項目に減点方式を採用する。六月に決定した「成長戦略実行計画」に基づくもので、「予防医療」を口実にしながら国の医療費負担を減らすことが狙い。気候や食生活が異なる自治体間に、同一の基準を持ち込むことは、国民の健康増進にもつながらない。


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