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労働新聞 2019年10月25日号 トピックス

世界のできごと

(10月10日〜10月19日)

G20、「リブラ規制」で合意も
 二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が十月十七日、米ワシントンで開かれた。トランプ米政権による中国、欧州連合(EU)などに対する貿易戦争や英国のEU離脱をめぐる混乱で二〇一九年の世界の経済成長率が低水準となる見通しのなか、各国の協調姿勢は見られなかった。会議は米フェイスブックが主導する「リブラ」などのデジタル通貨について、「深刻なリスク」とする合意文書をまとめた。一方、中国はリブラと米ドルとの連動を不安視し、対抗するデジタル通貨の発行を準備している。デジタル通貨の規制では一致したものの、またも機能不全状態を見せつけた。

EU離脱めぐり合意も、また暗礁
 英下院は十九日、英国とEUが合意した新離脱案の採決を見送る決議を下した。新案は焦点だった北アイルランドの国境問題をめぐり、英国がEUの関税同盟に残留する「安全策」の削除などが盛り込まれた。また二〇二〇年末までの移行期間終了後、名目上は英国全土がEUとの関税同盟から抜けるが、北アイルランドのみ関税手続きをEU基準に合わせる。ジョンソン英政権に閣外協力している北アイルランドの地域政党である民主統一党は、本案への不支持を表明した。十月末の離脱に向けては英・EU双方で議会手続きが必要だが、依然として展望はない。

米、トルコへ譲歩強いられる
 トルコのエルドアン大統領は十七日、同国を訪れたペンス米副大統領と会談し、シリア北部でのクルド人勢力への軍事攻撃の停止で合意した。トランプ米大統領はシリアからの米軍撤退を表明、その間隙にトルコは軍事作戦を始めていた。あわてた米国はは攻撃を自制するよう子どもじみた親書を送ったが、トルコに一蹴(いっしゅう)されていた。今回の「停戦合意」も安全地帯の範囲を特定しないなど実効性に乏しいもので、トルコによる攻撃が続いていると見られる。合意ではトルコへの経済制裁の解除に言及するなど、米側の一方的譲歩が目立った。


IMF、「リスクは下方」と発表
 国際通貨基金(IMF)は十六日、「国際金融安定性報告書」(GFSR)を発表、「世界的な金融緩和が金融システムのもろさを助長」と指摘した。利下げが投資マネーを刺激、企業の借金や新興国の外債債務が膨らみ、経済が混乱するリスクを強調した。その上で「リスクははっきりと下方に向いている」と危機感を示した。十五日に発表した最新の世界経済見通しでも、一九の成長率予想を七月時点から下方修正し、金融危機直後の〇九年以来で最低の三・〇%とし、貿易戦争などの地政学的リスクの高まりにも言及した。新たな危機の到来に処方箋が見当たらないことを印象付けた。

人民のたたかい

(10月10日〜10月19日)


 米国シカゴで十七日、教職員組合(CTU)二万五千人が、賃上げや労働条件、教育環境の改善を求めるストライキを行った。米国では昨年から、ウェストバージニア、ケンタッキーなどで同様のストが行われている。
 チリのサンティアゴで十九日、地下鉄など公共交通機関の運賃引き上げに反対する学生などのデモが行われた。ピニェラ政権は運賃引き上げの撤回に追い込まれた。
 スペイン北東部カタルーニャ自治州のバルセロナで十八日夜、独立派指導者への禁錮刑判決に抗議するデモが行われ、約五十万人が参加した。またゼネストも行われ、航空便が欠航したり、商店が店を閉じた。
 韓国で十一日、全国鉄道労組が賃金制度の改善や要因不足の解消などを求め、ストライキを行った。鉄道公社と労組との間で一定の合意があったものの、公社側はこの合意の履行を先延ばししていた。同日、中部の世宗特別自治市で行われたスト突入集会では、文在寅政権へ公約通り、労働者の要求を実現するよう訴えた。

日本のできごと

(10月10日〜10月19日)

台風被害、急がれる復旧
 台風十九号が十月十二、十三日、東日本を中心に甚大な被害をもたらした。歴史的豪雨で七県七十一河川の百二十八カ所が決壊、浸水被害は四万棟以上に達した。死者八十人、行方不明十人にのぼり、避難生活を強いられている住民は一週間後でも約三千九百人にのぼり、停電や断水、集落の孤立も解決していない。農林水産業の被害額は約三百八十三億円など、経済活動にも重大な被害を与えた。政府は非常災害対策本部を設け、十八日に「特定非常災害」に指定した。二階・自民党幹事長は「まずまずに収まった」と発言、撤回に追い込まれた。その後の降雨などで被害は膨らんでいる。安倍首相は予備費七・一億円の支出を表明したが、追加支出を急ぐべきだ。

首相、自衛隊の中東派兵指示
 安倍首相は十八日、国家安全保障会議(NSC)の四大臣会合で、中東への自衛隊派遣の検討を指示した。菅官房長官は活動範囲は「オマーン湾などを中心に」とし、要衝であるホルムズ海峡には言及しなかった。安倍政権は、米国からの「有志連合」(海洋安全保障イニシアチブ)への参加要求と、イランとの友好関係の間でジレンマを深めていたが、「情報収集」のための「独自派遣」を名目に派兵に踏み込む構え。だが、現行法との整合性など課題は山積み。米国は「核問題」を口実にイランへの包囲を強化しており、派兵はこの片棒を担ぐものだ。

日米貿易協定の影響、試算はデタラメ
 政府は十八日、日米貿易協定の影響試算を発表した。国内総生産(GDP)が約四兆円(〇・八%)押し上げられるという。だが、これは交渉さえ始まっていない対米自動車関税撤廃を前提にしたもので、デタラメきわまりないもの。国内農業生産は、環太平洋経済連携協定(TPP11)と合わせて千二百億〜二千億円減少するとされており、国民経済への被害は重大だ。

中国念頭に「外資規制」
 政府は十八日、外資規制を強化する外為法改定案を閣議決定した。安全保障上重要な日本企業への外国資本の出資などへの規制を強化するもので、海外投資家が一%以上の株を保有するときに事前届け出を求め、国が審査するというもの。明らかに、中国への対抗を目的としたもの。政権発足時から「対日直接投資拡大」を呼びかけてきた安倍政権の姿勢と矛盾し、米欧などからさえ「日本への投資に支障が出かねない」との懸念の声があるほどだ。

政府、PAC3など朝鮮敵視を強める
 防衛省は十一日、東京・市谷の同省内に地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)を展開した。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)による短距離弾道ミサイル発射を口実としたもので、展開は昨年七月以来。また、水産庁は十八日、漁業取り締まり船と朝鮮漁船が衝突した際の映像を公開した。公開は、対朝鮮強硬策をアピールし、情報開示で与野党の不満を防ぐ狙い。朝鮮との「無条件での対話」を主張する安倍政権だが、突出した朝鮮敵視政策を繰り返す限り対話は不可能で、国際的にも孤立するだけだ。


厚労省、さらなる年金制度改悪を準備
 厚生労働省は十八日、公的年金の受給開始年齢を七十五歳まで選択できるようにする案を社会保障審議会に提示した。併せて、六十五歳より前倒しで受け取る場合の、受給額の減額幅をわずかに圧縮する。厚労省は二〇二〇年の通常国会に関連法案の提出をめざしている。受給開始年齢を七十五歳まで遅らせると、受給額は八四%増額となる。厚労省はこうしたインセンティブで年金財政の危機を先延ばしするもくろみだが、「百年安心」などとした現行制度の破綻はすでに明白だ。

セブン&アイが大規模リストラ
 セブン&アイ・ホールディングスは十日、二二年度末までに百貨店とスーパー事業の人員の二割に当たる三千人を削減すると発表した。百貨店では、そごう川口店(埼玉県川口市)、西武大津店(滋賀県大津市)など五店を閉鎖する。コンビニエンスストアのフランチャイズ加盟店との利益配分も見直す。ネット通販の普及などで収益力が低化していることへの対応策としている。だが、労働者への犠牲転嫁は許されない。自治体も、地域経済に対する社会的責任を果たさせるべきだ。


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