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労働新聞 2019年7月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月10日〜7月19日)

G7、「リブラ」に危機感表明
 主要七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が七月十七日、フランス北部シャンティイで行われた。議長総括では「リスクは依然として下方に傾いている」「貿易と地政をめぐる緊張は増大」と、米国による中国などに対する経済戦争に危機感を示した。だが、「国際的な協力及び枠組みを強化」と一般的な意思表明に終わり、具体策は打ち出せなかった。会議では米フェイスブックが検討している「リブラ」などのデジタル通貨に対する懸念が示された。とくに、金融制裁を外交カードに使ってきた米当局は神経をとがらせている。デジタル通貨の進展は、ドル支配に象徴される金融世界を一変させる可能性をはらんでいる。

米、対イラン「有志連合」壁に
 米国防総省は十九日、サウジアラビアへの米軍駐留を再開すると発表した。また、米国は日本やインド、欧州、中東など六十カ国を集め、「有志連合」構想への協力を要求した。また、十八日にはホルムズ海峡でイランの無人偵察機を撃墜、イランへの軍事的圧力を強めている。だが、フランスは「有志連合」への懸念を表明、すでに船舶保護のため艦船を派遣しているインドも参加しない方針。イランへの非難を強めている英国でさえ、欧州各国との共同による船舶保護の方針を示すなど、米国と一線を画す姿勢だ。米国のイラン包囲網の形成は、同盟国からも冷ややかな視線を受けている。

デジタル税制めぐり、対立厳しく
 米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は十日、フランスが二〇一九年中に導入をめざすデジタルサービス税を不当とし、報復関税の発動を視野に調査を行うと発表した。調査には「通商法三〇一条」を適用する。フランスによる新税制はすでに成立、国内で二千五百万ユーロ(約三十億円)以上の売上高を持つIT(情報技術)企業に三%を課税するもの。米国の干渉にフランスは反発している。デジタル課税のルールづくりをめぐっては、IT企業の利益を守りたい米国と欧州などの対立が続いている。技術覇権争いの側面も相まって、米国は同盟国であるフランスにも脅しをかけている。


米、トルコに圧力も効果なく
 トルコは十二日、ロシア製ミサイルシステム「S400」の搬入が始まったと発表した。早ければ年内に運用が始まる。米国はトルコに計画撤回を要求、ステルス戦闘機F35の売却を見送るなど圧力を続けてきた。米国の圧力をよそに、ロシアは最新鋭戦闘機スホイ35の売却をトルコに提案するなど、トルコも加盟する北大西洋条約機構(NATO)の弱体化を狙い攻勢を強めている。米国では下院がトルコへの経済制裁を求める決議を採択、ボルトン大統領補佐官などが圧力強化を求めている。だが、ロシアを後ろ盾としたトルコへの影響は限定的で、米国のいっそうの求心力低下を印象付けている。

人民のたたかい

(7月10日〜7月19日)


  米国ワシントンで十六日、移民への一斉摘発に抗議するデモが行われ、数百人が参加した。参加者は、移民・税関執行局(ICE)の閉鎖を訴えた。
 米国ミネソタ州で十五日、小売り最大手のアマゾンの倉庫で働く労働者が六時間のストライキを行った。ストは恒例セール、プレミアムデーに合わせたもので、労働条件の改善を求めた。また、ドイツでも十四日から同様のストが行われ、約二千人が参加した。
 米国自治領プエルトリコのサンファンで十九日、政府高官の汚職や知事の差別発言などに抗議するデモが行われた。主要労組が共同で呼びかけたもので、約二十万人が知事に辞任を迫った。
 韓国ソウルで十六日、民主労総がゼネストに合わせ集会を開き、約七千人の組合員が参加した。労働法改悪の阻止、非正規職の撤廃、財閥の解体を求め行われたもので、約五万人が参加した。

日本のできごと

(7月10日〜7月19日)

米、イラン「有志連合」で協力迫る
 米国は七月十九日、ホルムズ海峡周辺でイランに圧力をかける「有志連合」をめぐる会合を開いた。詳細は明らかでないが、加藤・自民党総務会長は「法律の範囲内で何ができるか」などと、参加の可能性を探る方向性を示した。マスコミも「旗幟(きし)を鮮明にすることが必要」(産経新聞)などと、参加を後押ししている。野党は「必要なら新しい立法をせざるを得ない」(長妻・立憲民主党代表代行)などというが、米国の要求に対して、明確に抗してはいない。イラン包囲網への参加は、日本の中東での孤立をさらに深めるもので、許されない。

文大統領、日本の制裁を非難
 河野外相は十九日、南官杓・駐日韓国大使と会談した。外相は、元徴用工判決をめぐる仲裁委員会の構成に韓国が応じなかったことに抗議し、「戦後の国際秩序を根底から覆すに等しい」などとなじった。外相は、大使の発言を遮って「無礼」と発言するなど、外交上も異例で居丈高な態度をとった。文在寅大統領と与野党五党は十八日、日本に輸出規制措置の撤回を求める共同発表文を公表した。韓国は、日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の見直しを示唆(しさ)するなど、日韓関係の悪化は泥沼状態だ。

沖縄県が再度国を提訴
 沖縄県は十七日、名護市辺野古への新基地建設をめぐり、国が埋め立て承認撤回の効力を取り消したのは違法として、福岡高裁那覇支部に提訴した。埋め立て承認は、県が昨年撤回し、石井国交相が四月に取り消した。総務省の「国地方係争処理委員会」は六月、沖縄県の主張を退けた。県は行政事件訴訟法に基づく裁判も提訴する予定で、法廷闘争は続く。県民運動とこれと連帯する全国の闘いで、政府・司法を包囲することが求められている。

マイナンバーカード拡大策
 政府は十四日までに、マイナンバーカードとハローワークカードやお薬手帳、教員免許状などの証明書類を一体化し、三年後までに一億枚以上の発行を目標とすることを決めた。ハローワークカードは求人紹介や雇用保険手続きで、お薬手帳は障害者手帳や処方薬の履歴を記録するもの。マイナンバーカードには国民に不安感が根強く、五月時点の交付枚数は約一千七百万枚にとどまっている。これらの施策は五月に成立したデジタルファースト法に基づくもので、国民の管理強化を狙う策動だ。

夏のボーナスが7年ぶり減少
 全産業の夏のボーナス平均支給額が八十三万九千八百四十四円(前年比〇・三七%減)であることが、「日経新聞」の調査で十日までに分かった。支給額は七年ぶりのマイナスとなった。背景は、世界的景気低迷や米国による「通商戦争」による企業業績の悪化。製造業、非製造業の双方でマイナスになったのは、リーマン・ショック直後の二〇〇九年以来。業種別では、不動産・住宅で二ケタ下落したのが最悪。ただ、大手企業のボーナスは前年の収益で決まるため、業績悪化の影響はこれから本格化する可能性が高い。


外国人実習生の採用進む
 小売業を中心に、外国人技能実習生の採用が進んでいる。イオンリテールは十七日までに、ベトナム人実習生を十二人採用し、八月からスーパーに配属することを決めた。関東を地盤とするヤオコーなども、外国人技能実習生の採用拡大を決めている。すでに劣悪な労働環境が指摘される外国人労働者のさらなる待遇悪化を防ぎ、全労働者の労働条件悪化につながることがないよう、労働組合が監視することが求められている。

首相と政府、ハンセン病談話で隔たり
 安倍首相は十二日、「ハンセン病家族訴訟」に関して談話を発表した。政府も「声明」を公表した。談話は、患者家族にも「厳しい偏見、差別が存在したことは厳然たる事実」と認め、「政府として(中略)心からお詫び」するなどとした。他方、閣議決定された政府声明は、厚労相などの責任について「受け入れることができません」とし、人権啓発などについても「法的義務を負うものではありません」としている。首相談話のきれい事と裏腹に、患者と家族をないがしろにする政府声明こそが、安倍政権の本音だ。


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