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労働新聞 2019年7月15日号 トピックス

世界のできごと

(6月30日〜7月9日)

米、イランにどう喝強める
 ペンス米副大統領は七月八日、「米軍は準備を整えている」と、イランへの軍事攻撃の可能性を公言した。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)も「圧力を強化する」と述べた。イランがウラン濃縮度を引き上げたことが口実。濃縮度引き上げは、トランプ米政権が一方的に「核合意」から離脱したことに対抗したもので、欧州に交渉による打開を求める狙い。マクロン・フランス大統領は外交顧問の派遣を決めた。だが、英領ジブラルタル自治政府がイランのタンカーを拿捕(だほ)するなど、米英はイランへの敵視と包囲を強め、緊張をあおっている。

当面の思惑一致で米朝首脳会談
 トランプ米大統領と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の金正恩委員長が六月三十日、板門店で会談した。二月のベトナムでの会談に続く、事実上三回目の首脳会談。大統領は軍事境界線を超え、現職大統領として初めて朝鮮に入った。両首脳は非核化交渉の再開で合意した。終盤には、文在寅・韓国大統領も加わった。大統領選を控え、朝鮮半島の不安定要素を減らして「実績」としたいトランプ政権と、制裁緩和を急ぎたい朝鮮の思惑が合致しての会談。だが、内容は十分に明らかでなく、米側の事情次第で変わり得る。実務者協議がすんなり進む保証はない。

ギリシャ、緊縮への不満で政権交代
 ギリシャの総選挙(定数三百)が七月七日、投開票され、保守・新民主主義党(ND)が五十議席のボーナス分を加えて百五十八議席(八十三増)を得て単独過半数となり、ミツォタキス党首が首相に就任した。チプラス首相の急進左派連合(SYRIZA)は八十六議席(五十九減)で大敗。第三党だった極右「黄金の夜明け」は議席を失い、共産党は十五議席で勢力を維持、SYRIZAから分かれた反緊縮の「現実的不服従戦線」は九議席を得た。約四年半ぶりの政権交代だが、SYRIZAが公約を翻して緊縮財政に転じたことへの批判から、消極的にNDが選ばれたもの。欧州連合(EU)は、結果をおおむね歓迎している。ミツォタキス首相は「減税や投資の拡大により雇用を創出する」と述べたが、欧州金融資本のための緊縮政策は続けざるを得ず、人民の窮乏はさらに長期化することが必至だ。


トランプ、独立記念日で再選策動
 トランプ米大統領は四日、独立記念日の祝賀行事で演説した。独立記念日に大統領が演説するのは一九五一年のトルーマン大統領以来で、大統領は「偉大な米国」を強調した。大規模な軍事パレードも実施、大統領は「宇宙軍もできる」と力説するなど、軍事力による世界支配を誇るイベントとして演出した。会場には抗議デモが押し寄せ、民主党は「政治利用」と批判する点でも異例。居丈高な式典は、再選のためにはなり振り構わぬ、トランプ政権の苦境の裏返しでもある。

人民のたたかい

(6月30日〜7月9日)


  韓国のソウルで四日、「強制動員問題と対日過去清算のための共同行動」が日本大使館前で、日本政府による制裁措置に「経済報復はやめよ」と抗議した。
 韓国のソウルで三日、公共部門非正規職労働者がストライキに入った。十万人の労働者が参加、全国十二地域で大会を開いた。ソウルでは五万三千人が集会を行った。
 イスラエルのテルアビブで八日、エチオピア出身の労働者が警官に射殺されたことに対し、人種差別に抗議してデモ行進した。
 アルジェリアのアルジェで五日、ブーテフリカ前政権を引き継ぐ暫定政権の退陣を求め、数万人がデモ行進を行った。デモは二十回目で、人民の怒りは収まる気配がない。
 米国のニューヨークで六月三十日、性的少数者(LGBT)の権利擁護を訴え、十数万人がデモ行進した。

日本のできごと

(6月30日〜7月9日)

参院選公示、野党共闘も対立軸なく
 第二十五回参議院議員選挙が七月四日、公示され、二十一日投開票に向けた選挙戦が始まった。野党四党は三十二ある改選定数一の一人区で候補を一本化、野党共闘を進めたが、日米関係など国の進路をめぐる重要な課題で自公与党と鮮明な対立軸を打ち立てられず、国民にとっては選択肢の乏しい選挙戦となった。

韓国に事実上の制裁、亡国外交深める
 経済産業省は一日、韓国向けの半導体材料三品目に関して輸出規制を強化すると発表した。世耕経産相は「元徴用工問題に対する対抗措置ではない」と述べた上で、「日韓間の信頼関係が著しく損なわれた」とした。また輸出手続き簡略化の優遇措置を受けられる「ホワイト国」から韓国を除外する手続きにも入った。該当品目は武器に転用されるおそれがある汎用(はんよう)品として輸出管理の対象になっているが、口実に過ぎず、元徴用工問題での対抗措置であることは明らか。居丈高な姿勢にはわが国財界からも批判が続出しており、亡国と孤立の外交にほかならない。

商業捕鯨31年ぶり再開、国内むけ演出
 日本政府は一日、国際捕鯨委員会(IWC)から正式に脱退、三十一年ぶりに商業捕鯨を再開した。初日の操業で捕獲されたミンククジラ二頭が北海道釧路港で水揚げされた。だた海外からの厳しい視線に配慮し、抑制的な捕獲枠を設定、日本領海と排他的経済水域(EEZ)のみで操業する予定。水産庁の長谷長官は「文化と生活様式が次世代に引き継がれる」と述べたが、従来の調査捕鯨より縮小した操業と整合性がない。IWC脱退と商業捕鯨再開は保守層を念頭に置いたパフォーマンスで、有害でしかない。

日土会談、仲介外交支援を依頼
 安倍首相は一日、来日中のトルコのエルドアン大統領と会談し、両国の経済連携協定(EPA)の早期合意に向け交渉を加速することで一致した。首相の先月のイラン訪問を踏まえて緊張が高まる中東情勢について、米国とイランの仲裁をともに行うことを提案した。安倍首相は六月にイランを訪問したものの、何の成果も出せなかった。トルコ首脳にすがって汚名返上をもくろむが、対米従属を一歩も出ない外交には何の成果も見込めない。

日銀短観が連続悪化
 日本銀行は一日、六月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表した。大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は前回三月調査から五ポイント悪化、プラス七となった。悪化は2四半期連続で、米中貿易戦争の影響を受け、生産用機械や自動車などの外需依存産業の低迷が顕著となった。安倍首相側近の萩生田自民党幹事長代行が四月半ばに「六月の日銀短観の結果次第では十月からの消費税増税の延期もあり得る」と発言したことから注目されたが、景気動向指数や月例経済報告に続き、日銀短観でも景気の悪化が鮮明となり、増税強行による国民経済への打撃はいっそう鮮明となった。


高齢者の生活保護、増加の一途
 厚生労働省は三日、全国で生活保護を受給している六十五歳以上の高齢者世帯(一時的な保護停止を除く)が、四月時点で前月から千六百八十七増の八十九万五千二百四十七世帯だったと発表、二カ月連続で過去最多を更新した。生活保護利用世帯百六十三万四千三百五十三世帯の五五%が高齢者世帯で、第二次安倍政権発足直後の二〇一三年四月から六年間で約十八万六千世帯増え、一・二六倍となった。生活保護を利用する高齢者が増え続ける背景には、消費税増税やアベノミクスによる生活必需品の物価値上げなど、安倍政権の悪政があることは明らかだ。

陸自が宮古などに「スパイ部隊」配置
 「琉球新報」は六日、沖縄県の宮古島市と与那国町への陸上自衛隊配備に関し、自衛隊内外の情報を収集・整理する情報保全隊も配置されていることが情報公開請求で明らかになったと報じた。情報保全隊は防衛機密の保護や情報漏えい防止など情報保全業務に従事する部隊で、〇七年に自衛隊のイラク派遣反対の活動をした団体・個人を監視して問題となった。両島への配置は、住民を調査・監視し、島嶼(とうしょ)戦争の対スパイ戦の任務に当たることが想定される。


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