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労働新聞 2019年7月5日号 トピックス

世界のできごと

(6月20日〜6月29日)

G20、協調進まず「液状化」示す
 二十カ国・地域首脳会議(G20サミット)が六月二十八、二十九日、日本で開催され、「大阪宣言」が採択された。世界経済について「成長率は低く、下方リスクが残っている」と指摘したが、それでも具体的対策は打ち出せなかった。貿易分野では、米国の意向で「保護主義と闘う」などの文言が二年連続で見送られた。危機の進展にG20が何ら処方箋を示すことができないことが浮き彫りになった。

米、追い込まれ中国と協議再開
 日本を訪問していた米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は二十九日、会談を行い、五月から中断されていた貿易協議の再開で合意した。米国は三千億ドル(約三十三兆円)分の中国製品への追加関税(第四弾)を先送りした。また、米企業による華為技術(ファーウェイ)への部品供給も認めた。米国による追加関税によって、米経済も悪化、産業界からも反対意見が噴出、二〇二〇年の大統領に向けて対応に迫られた。ただ、つかの間の「休戦」にすぎず、米国による中国への攻勢は今後も続く。

米、イランへ再制裁
 トランプ米大統領は二十四日、イランの最高指導者・ハメネイ師などを対象に、同国への追加制裁に踏み出した。イランが同国に侵入した米軍の無人偵察機を撃墜したことが口実。米国は、ホルムズ海峡でのタンカー炎上などをイランの責任と決め付け、トランプ大統領は「攻撃を十分前に中止した」などと言ってどう喝している。イランは低濃縮ウランの生産速度を高めて米国をけん制、核合意を支持する欧州連合(EU)に対応を迫っている。


中国主席、14年ぶりの訪朝
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を訪問した中国の習近平国家主席は二十日、平壌で金正恩委員長と会談した。中国主席の訪朝は二〇〇五年の胡錦涛主席以来で、金委員長とは三度目の会談。金委員長は二月末の米朝協議が物別れに終わったことを念頭に、「忍耐心をもつ」と述べ、米朝関係の改善に意欲を示した。習主席は朝鮮の立場を支持すると伝えるとともに、米国が対話のテーブルにつくよう呼びかけた。トランプ米大統領との会談を控え、中朝が連携して臨む姿勢を見せた。

トルコ、ロ製防衛システム配備へ
 トルコのエルドアン大統領は二十六日、改めてロシアからミサイル防衛システム(S四〇〇)を購入する考えを示した。北大西洋条約機構(NATO)は反対を表明していた。大統領はG20サミットでのトランプ米大統領との会談でもこの姿勢に変更がないことを伝えた。トルコは安全保障やエネルギー分野ではロシアとの関係を強め、中国とも「一帯一路」への協力を表明するなど、自主的姿勢を打ち出している。

人民のたたかい

(6月20日〜6月29日)


  ドイツ西部ラインライトで二十九日、米空軍基地に対する抗議行動が行われ、欧州各国から市民など約五千人が参加した。同基地は海外にある米空軍基地としては最大規模。参加者は米国によるイランへの挑発行動などを厳しく批判した。
 米国ロサンゼルスで二十七日、日系人団体が第二次大戦中に収容施設として使われたオクラホマ州陸軍施設に不法移民の子どもを一時的に収容するというトランプ政権の計画に対し、抗議集会を開いた。サンノゼなどでも同様の集会が開かれた。日系市民は「強制収容を経験した日系人こそが非人道的な状況に声を上げよう」と訴えた。
 中国・台湾で二十日、エバー航空の客室乗務員(CA)らで構成する職業別労組「桃園市空服員職業工会」がストライキを行った。組合側は旅費日当の引き上げ、過労フライトの改善などを求めている。

日本のできごと

(6月20日〜6月29日)

G20で対米配慮
 二十カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が六月二十八、二十九日に大阪市で開かれた。首脳宣言である「大阪宣言」は拘束力のある合意はほとんどできなかった。安倍首相は会議後、「どの国にとってもウィンウィン」などと述べた。だが、温暖化問題で「締結国は」の条件を加えて離脱した米国に配慮するなど、露骨にトランプ大統領の手先として振る舞い、国際的にひんしゅくを買った。

日米首脳会談、要求に動揺
 安倍首相とトランプ米大統領は二十八日、会談した。日米安全保障体制の「重要性を確認」し、貿易交渉の加速化などで合意した。会談前、トランプ大統領は日米安保について「不公平」と不満を述べ、日本の米軍駐留費負担や兵器購入の増加、農産物市場開放などで揺さぶりをかけた。イラン問題なども協議した。トランプ大統領との首脳会談は十二回目だが、対日要求には際限がない。とくに安保要求については、安倍政権は対応に追われる醜態をさらした。

日中首脳会談、溝は残る
 安倍首相と習近平・中国国家主席が二十七日、会談した。日本での首脳会談は、習主席の下では初めて。習主席が来春、国賓として再来日することをはじめハイレベル相互往来の強化で合意、アジアでの経済連携で協議することなど、米国も意識して「蜜月」を演出した。だが、安全保障問題や「一帯一路」への対応、IT(情報技術)機器調達など、意見の違いにフタをした上でのもの。日中関係の抜本的な改善にはほど遠く。

日ロ首脳会談、領土で前進なし
 安倍首相とプーチン・ロシア大統領が二十九日、会談した。両首脳は、平和条約交渉の継続や、北極圏での液化天然ガス(LNG)生産などで合意した。一方、領土問題では、共同経済活動実験の開始や元島民の墓参を確認したのみ。「外交青書」から「北方四島は日本に帰属」の表現を削除するなど、安倍政権はロシアへの譲歩を重ねた。だが、大統領は「日本が主体的な決定を下せるのか把握する必要がある」とけん制するなど、領土問題での前進はない。

「骨太の方針」、労働法制改悪提案
 政府は二十一日、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。十月の消費税増税方針を確認しつつ、参議院選挙を意識し、最低賃金の全国平均一千円を「より早期に」実現すること、七十歳までの就業機会確保や就職氷河期世代の支援策などを打ち出した。これは「人手不足」への対応策でもある。一方で、負担増を伴う社会保障制度改悪は一部先送りした。それでも、「ジョブ型雇用形態」「労働移動の円滑化」など、生産性向上のための労働法制改悪に踏み込んでおり、秋以降の関連法案に警戒が必要だ。


沖縄慰霊の日、不誠実な首相
 沖縄県は二十三日、沖縄戦で組織的戦闘が終結した日から七十四年目の「慰霊の日」を迎えた。糸満市で開かれた「沖縄全戦没者追悼式」では、玉城知事が「平和宣言」で、名護市辺野古への新基地建設をめぐり、政府に「県との対話による解決」を求めた。だが、安倍首相は「移設は基地を増やすものではない」などと、建設強行を繰り返した。あくまで県民の意思を無視する、政府の不誠実な態度は許せない。

諫早「開門せず」の不当判決
 諫早湾干拓事業(長崎県)の「潮受け堤防排水門」の開門などを求め、長崎・佐賀県の漁業者らが提起した訴訟で、最高裁は二十六日、原告側の上告を退けた。別の訴訟では、「開門」を命じる福岡高裁判決(二〇一〇年)が確定しているが、国は、この福岡高裁判決を無効化することも求めて提訴しいる。有明海漁民の生活が困難さをきわめるなか、国は開門調査に応じるべきだ。

ハンセン病訴訟、家族の被害も認定
 ハンセン病患者への隔離政策により元家族が損害賠償を求めた訴訟で、熊本地裁は二十八日、国の責任を求めて総額約三億七千万円の賠償を命じた。患者はもちろん、家族への深刻な差別を認めた。当然の判決で、国は誠実に謝罪し、即時賠償すべきである。


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