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労働新聞 2019年6月15日号 トピックス

世界のできごと

(5月30日〜6月9日)

アジア安保、支持されぬ対中包囲網
 シンガポールで六月一日、アジア安全保障会議が開かれた。シャナハン米国防長官代行は南シナ海問題や台湾問題で中国を非難した。中国の魏国防相は「主権や安全保障、発展上の利益の侵害は許さない」と反論、米国の「航行の自由」作戦を批判した。シャナハン代行は、米国の「インド太平洋戦略」を説明する中で、地域の国々に国防費の増額を求めた。だが、「軍備競争には加わらない」(グエン・チー・ビン・ベトナム国防次官)など、アジア太平洋で対中包囲網を企てる米国への反発は根強い。

中ロ首脳会談、米の巻き返し策に警告
 中国の習近平国家主席は五日、ロシアを訪問し、プーチン大統領と会談した。プーチン大統領は中ロ関係を高く評価、習主席も「国際課題への中ロの提案を増やす」と応じた。また、サンクトペテルブルクの国際経済フォーラムでも演説、大統領は、米国による中国・華為技術(ファーウェイ)排除などを批判、「米主導で形成された世界経済秩序が現状に合わず、中国など台頭した国々へ米国が貿易戦争を仕掛けている」とも指摘した。主席も「覇権主義を背景に新しい問題が起きている」と応えつつ、ロシアの「一帯一路」へのいっそうの協力を呼びかけた。中ロは連携し、米国への対抗を強めている。

中国、対米貿易協議で反論
 中国商務省は二日、米国との貿易協議に関する報告書を公表した。報告書は「誠意がない」と米国を批判し、対抗関係の長期化も辞さない姿勢を示した。合意の前提条件として、(1)米国のすべての追加関税撤廃、(2)中国による米国製品の購入を現実的なものとすること、(3)合意のテキストで適切なバランスを保つことを挙げている。中国はレアアースの対米輸出規制・禁止を示唆(しさ)、米国内では価格転嫁が景気に悪影響を及ぼし始めており、トランプ政権は自らの首を絞めている。


EU、イタリアへ「制裁」警告
 欧州連合(EU)は五日、イタリアの財政状況についてEUの基準を逸脱しているとし、制裁手続きが「正当化される」との報告書を公表した。イタリアの二〇一八年の公的債務は国内総生産(GDP)比一三二・二%で、ユーロ圏ではギリシャに次ぐ高さ。しかし、コンテ政権は増税や歳出削減に慎重な上、与党の極右「同盟」は大幅減税を打ち出し、四月には求職中の低所得者層向けに最大月七百八十ユーロ(約十万円)を支給する最低所得保障(ベーシックインカム)も始めた。政権内の対立も激化し、英国の離脱問題と併せ、EU内の混乱を深めている。

人民のたたかい

(5月30日〜6月9日)


  チリで六月三日、教育労働者がピニェラ政権へ教育・労働条件の改善などを求め無期限ストを行った。首都サンティアゴでは約七万五千人がデモ行進、参加者は教材不足や教室の老朽化などの実態を告発するとともに、政権が歴史や美術を主要科目から外す方針を打ち出したことを厳しく批判した。
 英国ロンドンで四日、トランプ米大統領の訪問に抗議するデモが行われ約七万五千人が参加した。デモではトランプ大統領の「未熟さ」をあらわす「赤ちゃんバルーン」も登場。バーミンガムなど主要都市でも同様の行動が行われた。
 ブラジルで五月三十日、ボルソナル政権による教育予算削減の動きに反対するデモが行われ、約百五十の主要都市で百万人を超える学生や教育労働者が参加した。全国学生連合(UNE)が主催、ナショナルセンターの労働者中央統一(CUT)も共同した。
 韓国の蔚山で三十一日、現代重工業の臨時株主総会に合わせて金属労組組合員など約四千人が会場前で座り込みと抗議行動を行った。労組は分割によって雇用関係や労働組合活動に深刻な打撃を受けると主張している。

日本のできごと

(5月30日〜6月9日)

「百年安心」崩壊を自認
 金融庁の金融審議会は六月三日、報告書「高齢社会における資産形成・管理」をまとめた。定年後、九十五歳までに夫婦で約二千万円の資金が必要と試算。公的年金制度だけでなく、個人による資産運用が必要だとし、足りなければ「地方への移住」などを行うべきとしている。審議会には金融団体が多く参加、国民の資産を食い物にする狙いが露骨。原案に「公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性」とされていたように、二〇〇四年に「百年安心」などとした現行年金制度の破綻は鮮明。政府は、年金の財政検証を参議院選挙後に先送りするなど、姑息(こそく)そのもの。安倍首相は「誤解を与えるもの」などと釈明したが、国民の生活を保障すべき政府の責任を放棄したもので許しがたい。

自民公約、「外交」が前面に
 自民党は七日、参議院選挙の公約を発表した。(1)外交・安全保障(2)経済再生(3)人生百年時代(4)地方創生(5)災害対策・国土強靱(きょうじん)化(6)憲法改正で構成される。外交を最初に置いたのは、二十カ国・地域(G20)サミットの「成果」をアピールする狙いだが、内容は日米同盟を「より強固に」というもの。経済政策では、人工知能(AI)などで「人手不足や少子高齢化の課題を解決する」とした。憲法改定では具体的時期は明記しなかった。「激動する国際情勢などの課題に立ち向かう」と大言壮語しているが、実態は対米従属政治の継続・強化だ。

規制会議、限定正社員など提言
 政府の規制改革推進会議(議長・大田政策研究大学院大教授)は六日、安倍首相に第五次答申を提出した。労働時間を限定する「ジョブ型正社員」や兼業・副業の推進など労働市場の改革が中心で、後継者難の企業に対する地方銀行の出資規制緩和なども盛り込んだ。解雇の金銭解決制度は見送られたが、「ジョブ型正社員」の早期検討を求めた。「多様な働き方」の名の下、労働者への支配を強化して企業の競争力を上げようという狙いが露骨だ。

初のIT大綱、ここでも対米従属
 政府のIT総合戦略本部(本部長・安倍首相)は七日、会合を開き、初の「IT(情報技術)政策大綱」を決定した。デジタル政策の方向性を示すもので、IT産業の国際競争強化だけでなく、中国・華為技術(ファーウェイ)への制裁などで米国と歩調を合わせる狙い。大綱では、政府調達での認証制度導入、「データ流通圏」の構築が掲げられ、月末のG20サミットで提案される見通し。IT分野でも、対米従属を強化するものだ。

サイバーめぐり日米協力強化
 岩屋防衛相は四日、来日したシャナハン米国防長官代行と会談した。両者は、宇宙・サイバー空間での日米の連携を推進することなどについて討議し、サイバー共同演習や有人宇宙ステーションへの日本の参加などで大枠合意した。中国に対抗するもので、米国の意図も「日本の防衛大綱は米国の防衛戦略を補完する」(シャナハン代行)と露骨。わが国は、ますます米国の対中国戦略に取り込まれつつある。


日ロ2+2、違いが露呈
 日ロ両政府は五月三十日、東京で外務・防衛担当閣僚協議(2+2)を開いた。六月中旬にウラジオストクで海上自衛隊とロシア海軍が共同訓練を行うことなどを確認した。一方、ロシアは日本による陸上配備型迎撃ミサイルシステム(イージス・アショア)に懸念を表明、北方領土での軍事演習も正当化するなど、相違点も露呈。安倍政権は、ロシアとの協力を北方領土問題の解決につなげるもくろみだが、ロシアの狙いは日米同盟にくさびを打つことで、溝を埋めるのは容易ではない。


イージスめぐりデータゴマかし
 「秋田魁新報」は六月五日、イージス・アショア配備のための調査結果の誤りを報じた。候補地である陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)周辺住民の反対意見を受け、県の求めに応じた「再調査結果」だが、十九の候補地のデータが誤っていた。岩屋防衛相は陳謝したが、候補地に「変わりはない」とも述べた。後日行われた住民説明会では、担当職員が居眠りし、参加した住民の怒りに油を注いだ。政府の「新屋ありき」のデタラメな態度の反映で、計画は白紙撤回以外にない。


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