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労働新聞 2019年5月15日号 トピックス

世界のできごと

(4月20日〜5月9日)

米中協議が不調、さらなる制裁へ
 米国と中国との経済閣僚級協議が五月九日、ワシントンで行われた。交渉に先立ち米通商代表部(USTR)は二千億ドル(約二十二兆円)分の中国製品の追加関税を一〇%から二五%に引き上げると一方的に発表、対中圧力を強めた。この間の協議で、米国が要求してきた中国の為替政策の「透明化」や知的財産権の保護などで協定文も作成されたが、米国は産業補助という国内政策にまで「きわめて危険」(ナバロ大統領補佐官)と踏み込み、圧力を高めた。今回の協議の不調を受け、米国は制裁を課していない残りすべての中国製品(約三千二百五十億ドル)を対象に「第四弾」を示唆(しさ)、中国への攻撃を止める気配はない。米国による中国への圧力、対立構造は長期化の様相を呈している。

存在感増す「一帯一路」
 中国が提唱する経済圏構想「一帯一路」の第二回首脳会議が四月二十六日、北京で始まった。二〇一七年に続く二度目で、ロシア、イタリア、シンガポールなど前回を上回る三十七カ国の首脳をはじめ百五十カ国以上の代表が参加した。基調講演を行った習近平国家主席は「『一帯一路』の共同建設を高い質での発展方向に沿って不断に前進させる」と表明した。併せて、中国が途上国を借金漬けにしているという米国などからの非難に対し、「各国の法律を尊重する」と応えた。会議では総額六百四十億ドル(約七兆千億円)余りの事業協力とその推進を盛り込んだ共同声明が採択された。米国による対中圧力が強まるなか、中国の存在感の高まりが示された。

イランへの挑発強める米国
 トランプ米大統領は五月八日、イラン産金属の全面禁輸を命じる同国への追加経済制裁を発表した。先にポンペオ米国務長官は、昨年十一月に再発動した禁輸制裁からわが国など八カ国・地域を除外した猶予措置を撤廃すると表明していた。一方、イランのザリフ外相と同日、モスクワで会談したラブロフ外相は「無責任な行動」と米国を批判した。中国もイラン原油の輸入を継続する考えを示した。米国は空母打撃群を中東地域に派遣、その後ろ盾を受け、イスラエルもイランへの軍事的挑発を強めており、警戒が必要だ。


朝鮮の金委員長、初の訪ロ
 ロシアを初めて訪問した朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の金正恩委員長は四月二十五日、ウラジオストクでプーチン大統領と会談した。両国関係の発展強化、朝鮮半島を含む東アジア地域における戦略的な関係強化で一致した。また朝鮮半島全体の非核化プロセスについて大統領は「(朝鮮の)安全と主権の保証が必要」と、一方的な核放棄を求める米国を強くけん制した。また、〇八年末以来中断している六者協議を念頭に、国際的な枠組みの必要性を強調した。二月の米朝首脳会談で一方的な朝鮮の「武装解除」が失敗した米国は経済制裁など圧力を継続しているが、朝鮮はロシアなどとの連携で克服しようとしている。

ベネズエラ、右派のクーデター失敗
 ベネズエラで三十日、マドゥロ政権の転覆を狙う野党指導者のグアイド国会議長がクーデターを呼びかけたが、失敗した。ボルトン米大統領補佐官はベネズエラ軍と国民にグアイド氏を支持するよう求めた。米国はベネズエラに経済制裁を課すなど圧力を強めきた。グアイド氏を支持した兵士はわずかで、多くの首謀者は亡命に追い込まれた。マドゥロ大統領は勝利宣言を発し、五月一日のメーデーには首都カラカスに政権を支持する約四十万人の労働者がデモ行進を行った。米国の策動はまたも失敗に終わった。


5G国際会議、ファーウェイ排除せず
 チェコが主催する次世代通信規格(5G)に関する国際会議が五月三日、プラハで開催された。米国や欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)、日本など約三十カ国・機関が参加した。採択された議長声明ではどの通信機器を採用するかは各国の判断に任せるとした先のEUの方針を確認、米国が排除を要求するファーウェイを名指しで議論することはなかった。すでにEU各国では現行の4Gで採用している国もあり、5Gでも使用を検討する国は少なくない。米国のファーウェイ排除が国際的にも理解されていないことが浮き彫りとなった。

人民のたたかい

(4月20日〜5月9日)


  アルゼンチン全土で四月三十日、マクリ政権の緊縮政策に抗議するストライキが実施された。ブエノスアイレスでは労働者が道路を封鎖、公共料金の引き上げに抗議した。
 英国ロンドンで五月三日、原潜導入五十周年を記念する式典に抗議する行動が行われた。反核団体などの呼びかけで約五百人が参加、「ダイ・イン」を行った。
 チェニジアのチェニスで二日、ガソリンスタンドの労働者が賃上げを求める三日間のストライキを実施した。

【世界のメーデー】
 メーデー発祥の地である米国シカゴで労働者が待遇向上や差別反対を訴え、国境を超えた団結を誓った。メーデー起源の記念碑が立つ現場周辺に労組関係者ら数百人が集まり、ホテル従業員や公務員らが次々にマイクを握った。米航空業界の従業員は「時給十二ドルでは生活できない」と苦境を訴え、大幅賃上げを要求した。
 韓国で民主労総などの労働団体による集会が開かれた。ソウルでは三万人が結集、参加した労働者は、 非正規職撤廃、 財閥改革、 朝鮮半島の平和統一などを要求した。また、民主労総、韓国労総と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の朝鮮職業総同盟は同日、共同声明を発表し、昨年の南北首脳会談で採択された「板門店宣言」「平壌共同宣言」の履行に向けて協力するとした。
 フランス全土では約三十万人以上がメーデー集会に参加、パリではデモが行われ労働組合員や「黄色いベスト」運動からなど数万人が参加した。参加者は賃金や年金引き上げ、公正な課税政策などを要求した。
 ドイツでは労働組合総同盟(DGB)の呼びかけで全土で三十八万人以上が集会に参加した。労働者らは極右勢力への反対を訴えた。欧州連合(EU)の経済自由化政策も批判した。
 スペインでは各地で集会やデモが行われ、マドリードでは約三万人がデモ行進を行った。
 フィリピンのマニラでは約五千人の労働者らがデモ行進、最賃引き上げなどを要求した。とくに短期雇用契約を押し付ける「労働契約化」の廃止を強く求めた。


日本のできごと

(4月20日〜5月9日)

衆議院補選で与党が連敗
 衆議院沖縄三区、大阪十二区の補欠選挙が四月二十一日、投開票された。沖縄では、「オール沖縄」勢力が支援する無所属の屋良候補が大勝、「基地反対」の意思を改めて示した。大阪では、日本維新の会の藤田候補が当選した。第二次安倍政権の発足以降、自民党が補選で敗れるのは「不戦敗」を除くと初めて。なお、共産党は大阪で現職参議院議員を無所属で立候補させたが、従来の同党候補の得票にも及ばず惨敗した。

地方選後半戦、投票率最低に
 第十九回統一地方選挙の後半戦が二十一日、投開票された。五十九市長選、二百八十三市議選、六十六町村長選、二百八十二町村議選、東京特別区十一区長選、同二十区議選が行われた。市議選では、自民党が六百九十八議席(六十四増)と議席を維持したが、共産党は六百十五議席で五十七減となった。公明党は九百一人の候補すべてが当選した。そのほか、立憲民主党は百九十七議席など。投票率は四二〜六五%前後で、ほとんどで史上最低を記録、ここでも対抗軸がなく相乗りを重ねる野党の無力さが際立った。

新天皇即位を最大限に利用
 新天皇の即位に伴う「朝見の儀」が五月一日、行われた。安倍首相は「誇りある日本の輝かしい未来、人びとが美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ時代を創り上げていく」(国民代表の辞)などと述べた。天皇を利用し「強い日本」を印象づける狙い。衆議院も九日、新天皇即位への賀詞を全会一致で可決した。「国民統合」を強力に推進する支配層の策動で、追随する野党は許せない。

日米首脳会談、貿易交渉促進で合意
 訪米した安倍首相とトランプ大統領が四月二十六日、ワシントンで会談した。首相は、日米物品貿易協定(TAG)交渉の早期妥結に協力する意思を示し、五月訪日時の妥結を求める米側に配慮した。米中間の通商交渉が行き詰まるなか、大統領選挙を控えるトランプ政権は「成果」を焦りを深めている。大統領はとくに、農業関税の撤廃と為替問題を取り上げたが、安倍政権にとって妥協が容易でないもので、日米関係をめぐる矛盾はさらに激化する。

「外交青書」、北方領土問題で裏切り
 政府は四月二十三日、二〇一九年度版「外交青書」を閣議決定した。対ロシア政策では、従来の「北方四島は日本に帰属」との文言を削除、領土問題での譲歩に道を開いた。韓国に対しては、元徴用工訴訟やレーダー照射事件などを「韓国側による否定的な動き」と記すなど、排外主義をあおった。一方、対朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)では、トランプ米政権に配慮し、「圧力を最大限まで高めていく」との敵視の文言を削除した。安倍首相は「条件なし」での日朝首脳会談にも言及した。だが、領土問題だけでなく、南北朝鮮との関係改善のメドはなく、安倍外交は行き詰まりを深めている。


二階、「一帯一路」会議に参加
 中国を訪問した二階・自民党幹事長は二十六日、中国が主導する経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議に出席した。訪問には、中西・経団連会長や長沢JA全農会長、堀坂・旅行業協会副会長らが同行した。習主席は、外国企業の投資を保護する法整備について説明した。「一帯一路」について、米日は「相手国に過剰債務を押しつけている」と批判しているが、日本側は与党から派遣することで関係強化に動いた。日米基軸と対中関係強化の狭間で、安倍外交の悩みは深い。


V4と首脳会談、中国けん制強める
 欧州訪問中の安倍首相は二十五日、スロバキアのブラチスラバで、チェコ、ポーランド、ハンガリーの東欧四カ国(V4)首脳と会談した。日欧経済連携協定(EPA)の発効に伴う関係強化で、東欧で投資を拡大させる中国に対抗する狙い。日本とV4との首脳会議は昨年十月に続き三回目で、中国の影響力拡大への焦りがにじんでいる。だが、オルバン・ハンガリー首相は同時期に北京で開かれた「一帯一路」国際会議への参加を優先して会議を欠席するなど、安倍政権の思惑はうまくいっていない。


日中韓・ASEANがスワップ拡大
 日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)は五月二日、フィジーで財務相・中央銀行総裁会議を開いた。会議は、アジア通貨危機後の「チェンマイ・イニシアチブ」を強化し、新興国の金融危機の際に米ドルを供給することに加え、円や人民元も対象とすることをめざすことを決めた。新興諸国の通貨不安定化に対処する狙いだが、米ドルを相対化させることにもつながるもの。ただ、日本政府は「必ず円が人民元より先行する」と述べるなど、中国対抗の意思を隠していない。


原発、「テロ対策」で困難深まる
 原子力規制委員会は二十四日、原子力発電所に設置が義務付けられている「テロ対策施設」が完成しない場合、原則として運転停止を命じることを決めた。とくに、九州電力川内原子力発電所一号機(鹿児島県)では設置期限が二〇二〇年三月に迫っており、停止の可能性が高まっている。関西電力、四国電力でも遅れが予想される。小手先の対策を理由とする「停止か運転か」ではなく、原発自身の停止・廃炉、エネルギー政策の転換こそが必要だ。


連合メーデー、賃上げへの言及弱く
 連合は二十七日、第九十回メーデー中央大会を開いた。神津会長はあいさつで、SDGs(持続可能な開発目標)として、「ディーセント・ワーク」(働きがいのある人間らしい仕事)や「ジェンダー平等」に触れ、参議院選挙での組織内候補の勝利に言及した。だが、労働者の生活改善の最大要素である賃上げ、とくに昨年実績を下回った春闘への総括は乏しかった。闘わなければ労働者の要求に応えられず、ナショナルセンターとしての役割を果たせない。


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