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労働新聞 2019年3月25日号 トピックス

世界のできごと

(3月10日〜3月19日)

米予算案、国防費増大で赤字拡大
 米トランプ政権は十一日、二〇二〇会計年度の(一九年十月〜二〇年九月)の予算教書を公表した。総額四兆七千億ドル(約五百二十兆円)。国防費として七千五百億ドル(約八十三・三兆円)を計上、前年度から四・七%増。空軍省の傘下に宇宙軍を新たに創設すると明記し、極超音速ミサイルなどの開発強化も盛り込んだ。併せて、インフラ投資に二千億ドルを求めた。一方、民生費などの非軍事分野の裁量的経費は過去最大九%減。財政赤字は一兆千十億ドル(約百二十二兆円)に膨らむと試算、二年連続の赤字となる。再選に向けて大盤振る舞いの予算案だが、財政悪化は足元を揺さぶる。

米政権、初の拒否権
 トランプ米大統領は十五日、メキシコ国境の壁建設費用を捻出するために出した国家非常事態宣言を無効とする連邦議会の決議に対し、拒否権を発動した。トランプ政権が拒否権を行使するのは初めて。大統領は先月、軍の施設を建設する基金などの予算を議会の承認なしに壁の建設費に組み替えられる国家非常事態を宣言していた。だが、十四日には上院で十人以上の共和党議員が宣言を無効とする決議案に賛成。拒否権行使で「公約実現」を図るが、身内の造反が広がっている。

英、EU離脱を議会に丸投げ
 英下院は十四日、二十九日に迫った欧州連合(EU)からの離脱を少なくとも六月末までに延期するようEUに要請する政府同議案を可決した。EU首脳会議で承認されれば延期となるが、EU側が条件としている離脱合意案は十二日に否決済み。メイ首相は再び合意案を採決する意思を示したが、事実上議会に判断を委ねる方針。再度否決されれば「合意なき離脱」が現実化し、首相の退陣など英国の混乱はもとより、世界経済への影響が必至だ。


イタリア、「一帯一路」参加へ
 イタリアのミラネージ外相は十四日、習近平・中国国家主席の歴訪に合わせ、中国が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」への参加を表明する見通しを明らかにした。外相は「具体的に実利を重んじる必要がある」と述べた。すでにコンテ首相も参加の意思を示していた。EUは首脳会議で、新たな対中政策「戦略見解」を採択する予定だが、ポルトガルやギリシャなど十三カ国がすでに「一帯一路」の覚書を結んでおり、足並みは揃わない。

人民のたたかい

(3月10日〜3月19日)


  アルジェリアの首都アルジェで十五日、ブーテフリカ大統領の在任延長に反対する行動が行われ、百万人以上の人びとが参加、政権打倒を叫んだ。また、天然ガスや石油関連労働者もストライキに突入した。同国の軍は一九九二年以来、国内を「非常事態宣言」の下に置き、政権を牛耳り、国民への抑圧を続けてきた。
 米国ワシントンで十五日、地球温暖化対策へ背を向けるトランプ政権に抗議して授業をボイコットした高校生や中学生らの集会が開かれた。同日、世界中の高校生らが行った「気候ストライキ」に呼応したもの。フランスインドなどでも同様の行動が取り組まれた。
 フランス全土で十九日、マクロン政権による公務員削減攻撃に反対し、賃金などの引き上げを求める統一ストライキとデモが行われ、約三十万人が参加した。今回の行動は労組や学生たちが主導、この間闘われてきた「黄色いベスト運動」に呼応する形で行われた。
 韓国のソウルで十二日、現代起亜車の非正規職労働者たちが労働部に直接雇用是正命令を出すことなどを要求して、労働庁前で座り込み行動を行った。労働者らは同社による不法な派遣の実態を告発、政府に対策を要求した。


日本のできごと

(3月10日〜3月19日)

日銀、デタラメな景気判断
 日銀の金融政策決定会合は三月十五日、景気が「緩やかに拡大」との認識を維持し、現行の緩和政策の継続を決めた。黒田総裁は「前向きの循環メカニズムに変化は生じていない」などと述べたが、国際通貨基金(IMF)などの予測、さらに直近の政府発表などから見ても現実的ではない。「物価目標二%程度」のアテもない。世界経済の後退は顕著で、米国や欧州が再緩和に動く可能性さえあるなか、日銀の金融政策は完全な手詰まり状態だ。

東日本大震災8年、復興は途上
 東日本大震災から八年目を迎えた十一日、各地で追悼行事が営まれた。政府主催の追悼式で、安倍首相は復興は「着実に」進んでいるなどと述べた。だが、今なお五万人以上が避難生活を強いられており、福島第一原子力発電所は廃炉のメドさえ立たない。約一万八千五百人にのぼる死者・行方不明者を出した震災からの復興はいまだ途上であり、国民大多数のための復興を急がなければならない。

管理強化もくろむデジタルファースト
 政府は十五日、デジタルファースト法案を閣議決定した。行政手続きを原則的に電子申請に一本化し、転居申請などをインターネット上で完結できるようにするほか、マイナンバーカードの普及を促すために「通知カード」を廃止するなどの内容。行政効率化で公務員削減につなげるほか、米巨大企業に押される国内ハイテク企業の利益に貢献することが狙い。国民への管理強化、高齢者には負担となるほか、情報漏えいの可能性もあり、決して国民大多数の利益となるものではない。

日韓局長級会談、排外主義崩さぬ政府
 日韓局長級会談が十四日、ソウルで行われた。元徴用工問題で「経済的な報復措置などによる対立悪化は避けることが望ましい」との認識で一致したものの、日本側が求めた日韓請求権協定に基づく政府間協議に、韓国は応じられるはずもなく物別れとなった。原告による資産売却手続きが進むなか、安倍政権内には「関税引き上げ」(麻生財務相)など報復論が浮上、排外主義が強まっている。歴史に無反省な、安倍政権にこそ責任がある。

強制不妊手術、不誠実な一時金対応
 与党ワーキングチームと超党派議連は十四日、旧優生保護法下で強制不妊手術を強いられた被害者に一時金三百二十万円を支払う法案を決めた。法案には「深くお詫びする」とはあるが、国の責任は明記されていない。七地域で提訴されている慰謝料要求額に比して、一時金額は問題にならない低額。国の責任を回避し、選挙での争点化回避を狙う姑息(こそく)なもの。被害者への誠実な謝罪と補償が必要だ。


中労委、コンビニ店主の団交認めず
 中央労働委員会は十五日、コンビニエンスストアのオーナーを「独立した事業者」とし、本部との団体交渉権を認めないとの判断を示した。「コンビニ加盟店ユニオン」による申し立てに対し、岡山県と東京都の労働委員会はオーナーの「労働者性」を認めたが、これを覆す判断。長時間労働を強いられる実態を無視し、二十四時間営業を見直す流れに逆行するものだ。


春闘、昨年下回る回答
 自動車、電機などの主要企業が十三日、春闘での回答を始めた。連合による第一回回答集計では、ベアを含む賃上げは平均二・一六%で、昨年比百三十八円低い。トヨタ自動車はベア込みで一万七百円で、要求額の一万二千円を下回った。電機も月一千円で妥結した。安倍政権は一九春闘では「賃上げ」の数値目標を掲げず、財界も世界経済の「不透明さ」を理由に出し渋った。闘いなしの春闘を続ける連合中央幹部は猛省すべきである。


レオパレス不正は会社ぐるみ
 大手不動産レオパレス21による施工不良のアパートが一千三百件以上発覚した問題で十八日、外部調査委員会が中間報告書を公表した。創業者である元社長が違法建築に関与したことを認め、物件が適法かの判断を専門的に行う部署がなかったことも指摘した。全国で七千七百人が転居を迫られているが、すでに引っ越せたのはわずか四百人余り。一九九八年の建築基準法改悪で完了検査などが民間開放されたことが、不正をまかり通らせた背景だ。


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