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労働新聞 2019年2月15日号 トピックス

世界のできごと

(1月30日〜2月9日)

虚勢と自賛の一般教書演説
 トランプ米大統領は二月五日、上下両院合同議会で一般教書演説を行った。二〇一七年末に行った減税などをあげて「かつてないほど繁栄」などと自賛、さらに今後十年で一兆五千億ドル(約百六十兆円)ものインフラ投資をぶち上げた。メキシコ国境における「壁」建設についても執念を見せた。通商面では「公正な貿易を実現」などと、中国への圧力の「成果」を誇示した。安全保障面では、中国とロシアを名指しして、中距離核戦力(INF)廃棄条約からの離脱を居直り、ベネズエラやイランへの圧殺攻撃も正当化した。また朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の金正恩委員長との二回目の首脳会談も発表した。下院多数派の民主党へ協調も呼びかけたが、ロシア疑惑追及などもあり対立解消のメドはなく、足元の経済も揺らいでいる。二〇年の大統領選に向けて、内外の苦境を虚勢と自賛で糊塗(こと)する演説だ。

「離脱ありき」の米INF破棄
 ポンペオ米国務長官は一日、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄することを発表した。ポンペオ氏はロシアが同条約に違反していると決め付け、非締結国である中国に対してもミサイル戦力を強化していると非難、破棄を居直った。一方的な米国の姿勢にロシアは反発、プーチン大統領も同条約の履行義務の停止で応じた。トランプ大統領は中国などを念頭に新たな条約締結をめざす意向を示したが、中ロの不信感は根強い。トランプ政権は「ミサイル防衛の見直し」など核態勢の強化を公言しており、INF条約はその障害となる。まさに「離脱ありき」の発表だ。

FRB、利上げの一時停止を示唆
 米連邦準備制度理事会(FRB)は一月三十日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、世界経済の先行き不透明感を背景に、追加利上げの一時休止を示唆(しさ)した。パウエル議長は米国による対中「貿易戦争」や政府機関の一時閉鎖などを挙げ、「力強い経済状況とは矛盾」と述べ、追加利上げを当面実施しない姿勢を見せた。また金融市場の動揺の回避に向け、FRBの金融資産を圧縮する計画についても修正する姿勢を示した。追加利上げにブレーキがかかった格好で、米経済の不透明さを強く印象付けた。


仏独英がドル決済回避、イランと貿易
 仏独英の三カ国の外相が三十一日、欧州企業がドル建ての決済システムを回避し、イランとの貿易を行うための特別目的事業体(SPV)「貿易取引支援機関(INSTEX)」を発足させたと明らかにした。新組織は仏で登録され、米国の対イラン制裁再開後もイランとの貿易を継続する。イランが石油とガスを輸出し、代わりに欧州連合(EU)から製品を購入するなどの制度が検討されている。仏独英が株主で、今後、他国の参加も見込まれている。イランも新組織発足を歓迎した。米国は昨年、イラン「核合意」から一方的に離脱、経済制裁を再発動させたが、仏独英の動きはこれに風穴を開けるものである。

人民のたたかい

(1月30日〜2月9日)


  ブラジル南東部ミナスジェライス州で一月三十一日、鉄鉱石大手バーレ社の鉱山ダムが決壊した事故をめぐり、住民が会社を追及する集会を開いた。
 ドイツ西部ドルトムントで二月四日、金属労組(IGメタル)傘下の鉄鋼工場労働者が大幅な賃上げを求めるストライキを行った。ストは各地に広がっている。また、繊維産業の労働者も同日、賃上げを求めストに入った。
 フランス全土で二月九日、「黄色いベスト」運動のデモが行われ、五万人以上が参加した。十三週連続で、パリでは約四千人が参加した。
 韓国のソウルで九日、昨年十二月に火力発電所での作業中に事故死した下請け労働者を悼むデモが行われ、約二千五百人が参加した。政府は発電所などの非正規労働者約二千二百人を正社員化する案を提示した。


日本のできごと

(1月30日〜2月9日)

2・7兆円の第2次補正予算成立
 二〇一八年度第二次補正予算が二月七日、参議院本会議で自民・公明・日本維新の会などの賛成で可決、成立した。予算総額は約二・七兆円で、災害対策を理由とするインフラ整備や環太平洋経済連携協定(TPP)対策が柱。財源は、建設国債の発行や前年度予算の剰余金など。予算案の審議は、衆議院ではわずか二日。不正統計問題で首相出席の集中審議を行うことと引き換えに早期成立を認めた、野党の腰砕けは顕著。これでは、安倍政権と闘えない。

日独首脳会談、「対中国」で一致
 来日したメルケル・ドイツ首相と安倍首相が四日、会談を行った。両首脳は、日欧経済連携協定(EPA)発効など経済関係強化で一致、データ分野などでの連携でも合意した。メルケル首相は従来、中国を十一回も訪問する一方、来日はわずか五回目であるなど「日本軽視」の姿勢が目立った。だが、「米国第一」のトランプ政権の登場、技術移転を求める中国の姿勢、英国の欧州連合(EU)離脱など不安定な欧州情勢を念頭に、日本との関係強化でバランスを取ろうとしている。ドイツの戦略外交に比して、安倍政権はあくまで「日米基軸」の枠内だ。

新基地設計変更、建設根拠崩れる
 沖縄県名護市辺野古への新基地建設予定地の軟弱地盤が、最深部で九十メートルに達することが、八日までに明らかになった。軟弱地盤は海底まで三十メートル、地中六十メートルに及び、建設は事実上不可能。政府は沖縄県に改良工事のための設計変更申請を行う予定だが、玉城知事は拒否する構え。工事自体にも問題を抱えることが明らかになったことで、新基地建設はいちだんと困難なものとなった。政府は、直ちに工事を断念すべきである。

安倍政権、北方領土問題で後退
 北方領土返還要求全国大会が七日、開かれた。安倍首相らはあいさつで、従来使っていた「固有の領土」「北方四島の帰属問題」との言葉を避け、大会アピールでも「(ロシアによる)不法占拠」との表現が消えた。この前日、安倍首相は衆議院予算委員会で、北方領土の引き渡しに先立って日ロ平和条約を締結する意思を示した。いずれも、ロシアを刺激しないよう配慮したものだが、妥協を重ねることで、四島一括どころか、二島(歯舞・色丹)返還さえ危うくなりかねない。安倍政権の裏切りに警戒を強化すべきだ。

国民・自由合流で身内からも異論
 国民民主党は五日、全国幹事会を開き、自由党との合流について討議した。玉木代表が統一会派を手始めに野党の連携強化をめざす方針を示したのに対し、一部県連から「大義がなければ認められない」などの声が上がった。両党は、原子力政策や消費税増税への対応などで違いを残し、合流が順調に進む保証はない。立憲民主党も社民党と統一会派をつくり、参議院の野党第一党をめぐる争いが激しい。いずれも国民の要求そっちのけで、国会内の「数合わせ」にすぎない。


労使交渉、経営側の姿勢厳しく
 中西・経団連会長と神津・連合会長が五日、会談した。神津会長は「(戦後最長の景気拡大には)実感が持てていない」と、二%程度のベースアップ(ベア)を求めたが、中西会長は自己啓発などの「総合的な処遇改善」と賃上げを「車の両輪」とし、ベアには慎重姿勢を崩さなかった。安倍政権は昨年、「三%」のベア目標を示したが、世界経済の悪化を背景に態度を硬化させる財界の意を受け、交渉から身を引いた。自動車総連がベア実額を示さないなど、連合内の足並みも乱れている。労働組合には、性根を据えた闘いが求められている。


豚コレラ、急がれる支援策
 愛知県豊田市の養豚場で六日、豚コレラの発生が確認された。同農場から子豚を買った長野、岐阜、滋賀、大阪の農場にも感染が拡大、約一万五千頭の殺処分が決まった。五府県(飼養頭数は全体の五%)のみならず、全国への影響が懸念される。市況悪化で全国の養豚場経営に重大な打撃を与える可能性もある。しかも、TPPなどの発効で豚肉への関税引き下げが進むなかでの事態。昨年秋に岐阜県で感染が発見されていたが、国による防疫態勢の甘さが拡大を招いた。


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