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労働新聞 2019年2月5日号 トピックス

世界のできごと

(1月20日〜1月29日)

ダボス会議、支配層の危機感強まる
 世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)が一月二十二日、スイスで始まった。今年は、第四次産業革命、「貿易戦争」、地球温暖化などが共通テーマとなった。世界経済に関しては、国際通貨基金(IMF)が成長見通しを引き下げたことなどが反映、悲観的意見が強まった。また、ポンペオ米国務長官はビデオ出席で、中国を「好戦的で全体主義の国」と非難、王岐山・中国国家副主席は「国家主権を尊重」すべきとけん制した。投資家のソロス氏が「(米中)冷戦が熱い戦争になる恐れがある」と述べる一幕もあった。支配層・投資家は、危機の深化に危機感を強めている。

米、ファーウェイを起訴
 米司法省は二十八日、中国通信大手・ファーウェイ(華為技術)幹部と法人を起訴した。同社はイラン制裁への「違反」などの容疑を否定、中国政府も「背後に政治なたくらみがある」(外務省)と非難した。次世代技術において優位を維持しようとする米国の安全保障上の必要性が背景にある。米国による中国への攻勢は、ますます激しい。

米「閉鎖」一時解除も再発も
 トランプ米大統領は二十五日、メキシコ国境の「壁」建設費を含まない、三週間の「つなぎ予算」に署名した。これにより、昨年末から続く政府機関の一部閉鎖が解除された。だが、大統領は支持層に配慮して「壁」への執着を捨てておらず、問題の先送りにすぎない。過去最長の政府閉鎖には与党内からさえ批判が強まり、政権支持率も下落、特別検察官による「ロシア疑惑」捜査の報告も迫り、政権の求心力は急速に低下しつつある。


英離脱修正案可決も再交渉困難
 英国下院で二十九日、十五日に否決された欧州連合(EU)からの離脱協定案について、アイルランドとの国境問題での修正を含む案が承認された。「合意なき離脱を拒否する」案も僅差で可決された。これに基づき、メイ首相はEUに離脱協定の再交渉を求める方針。だが、EUは応じない構えで、マクロン・フランス大統領は「(英国が)新たなプロセスの開始を望むのであれば受け入れる」と、選挙や国民投票などを行うべきと示唆(しさ)した。強硬離脱の可能性が高く、欧州経済・政治に重大な影響が予想される。


米、ベネズエラへの干渉強める
 ベネズエラで二十三日、野党のグアイド国会議長が「暫定大統領への就任」を宣言した。トランプ米政権はこれをすぐさま支持、さらに国営石油会社を制裁対象に指定、軍事介入の可能性も示唆している。米国は二〇一七年夏の制憲議会選挙以降、同国への干渉を強化している。この影響で同国はハイパーインフレに陥り、軍の一部によるクーデター計画も発覚した。マドゥロ政権は米国を「帝国主義による侵略」と非難、断交する方針を表明した。中国・ロシアはマドゥロ政権への支持を表明した。米国による干渉、政権転覆策動は許しがたい

人民のたたかい

(1月20日〜1月29日)


  オーストラリアの鉄鋼大手ブルースコープの労働組合は二十八日、ニューサウスウェールズ州の工場で二十四時間ストライキに入った。
 オーストラリア建国記念日である二十六日、先住民アボリジニへの敬意を欠くものと批判する数千人規模のデモが各地で行われた。
 韓国のソウルで二十二日、火力発電所の非正規労働者が警官により殺害された事件の真相究明を求め、代表団がハンストに突入した。
 スーダン全土で二十四日、パンの値段を三倍に引き上げたバシル政権の退陣を求めるデモが行われた。デモは約一カ月前から続いており、四十人以上が死亡している。


日本のできごと

(1月20日〜1月29日)

通常国会開会、政権苦境反映
 第百九十八回通常国会が一月二十八日、召集された。会期は六月二十六日までの百五十日間。施政方針演説を行った安倍首相は第二次政権六年間の「経済成長」を延々と説明、さらに自らが掲げる「全世代型社会保障への転換」について「高齢者の皆さんへの福祉サービスを削減するとの意味ではまったくない」と国民の不安打消しに躍起になった上、消費税増税に伴う景気対策も強調した。改憲については「各党の理解が深まることを期待」と言及するにとどめた。統一地方選挙や参議院議員選挙を前に安全運転に徹した格好だが、内外に難問が山積している状況の反映でもある。

不正統計問題、基幹統計に広く拡大
 厚生労働省による不正統計問題で、総務省は二十四日と二十八日、政府の五十六ある基幹統計のうち不適切な処理が確認されたのは二十三統計三十四件に上っていると発表した。国土交通省の建設工事統計でデータの数値に誤りがあったほか、総務省の住宅・土地統計や財務省の法人企業統計、文部科学省の学校教員統計など九統計で、計画通り集計されていないなどの事項があった。厚労省では不適切調査の内部調査も不適切であることが露呈するなど問題は拡大の一途で、陰に陽に「安倍政権の成果」を裏付ける統計を求めてきた政権の罪はきわめて重い。

日ロ首脳会談、またも領土前進なし
 安倍首相は二十二日、ロシアのプーチン大統領とモスクワで会談した。一九五六年の日ソ共同宣言を交渉の基礎とした平和条約締結に向け、二月に予定される外相会談などで交渉を前進させることで一致した。しかし領土問題での具体的な前進は今回も皆無で、北方四島での共同経済活動などでの確認にとどまった。「日ロ平和条約締結に全力を尽くす」と息巻いて二十五回目の日ロ首脳会談に向かった首相だが、帰国後は会談について口を閉ざさざるを得なかった。

実効性ない教員「働き方改革」
 中央教育審議会は二十五日、教員の働き方改革の方策を文科相に答申した。一日平均十二時間近くに上る公立小中学校の教員の負担軽減が急務となっているが、教職員定数の拡充や一人当たりの授業時数削減は盛り込まれず、自治体に対し答申に則して勤務時間の上限を規則や条例で定めるよう求めるのみ。また校内清掃や部活動での外部人材活用、登下校の見守り活動を学校から保護者・地域に移管するなどの業務縮減策が盛り込まれたが、実効性には疑問符が付く。また中教審は同日、勤務時間の上限に関するガイドラインも決定、超過勤務時間を最大月百時間未満と「過労死ライン」以上を認めた。教員の働き過ぎを何ら是正する内容ではなく、政府の責任は重い。

日銀、危機感も現状緩和策維持
 日本銀行は二十二と二十三日、金融政策決定会合を開いた。「米中貿易摩擦などさまざまな動きには注意を要する」「リスクが高まってきている」などの声が多く出され、「政策対応の準備をしておくべき。何か大きな危機が起きるまで行動しないという態度は望ましくない」と追加緩和の検討を求める声もあったが、「現状の国内景気については緩やかに拡大している」などとして現状の金融緩和策(長短金利操作)の維持を賛成多数で決めた。日銀の決定は世界経済の見通しに危機感を抱きつつも、追加緩和の余地が乏しいことを示している。


19春闘、自動車は統一ベア要求せず
 経団連主催の労使フォーラムが二十八日に開催され、一九年春闘が事実上スタートした。経団連の中西会長はベアについて「多様な方法による年収ベースの引き上げを」「自社の支払い能力を踏まえ主体的判断で柔軟に」と消極姿勢に始終した。これに対し連合の神津会長は「賃上げの過程で拡大した大企業と中小企業などとの格差がこのまま景気不安が強まれば永久に固定される」と訴え、二%程度を基準としたベア要求を掲げた上で、格差是正と中小企業賃上げ原資確保のために大企業に取引価格適正化も求めた。一方で自動車総連は今春闘で前年まで四年連続で掲げてきたベア統一要求額を示さないことを決め、また全トヨタ労連は昨年に引き続きベア額を非公表とするなど、はじめから経営側の意向に沿った要求に徹している。


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