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労働新聞 2019年1月25日号 トピックス

世界のできごと

(12月10日〜1月19日)

米の対中攻勢いっそう強まる
 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は十二月二十九日、電話会談を行った。米国による一方的な関税引き上げなどで激化する米中対立の激化を受け、世界経済の動揺を抑えようという方向性では一致した。中国は二十三日、進出した外国企業に対する技術移転の強要の禁止を明文化した「外商投資法」の草案を発表、一月七日には北京で米中次官級協議が行われ、中国が米国製品の輸入拡大を約束するなど、一定の合意はあった模様だが、交渉はなお継続されている。しかし、十六日には米司法当局が米携帯電話大手からロボット技術を盗んだ疑いで華為技術(ファーウェイ)を捜査することが表面化、議会でも中国の通信機器メーカーを念頭に米国からの輸出禁止をめざす動きが出るなど、トランプ米政権による中国に対する攻勢は止むことがない。

英、「合意なきEU離脱」現実化へ
 英下院は一月十五日、欧州連合(EU)からの離脱協定案を採決し、賛成二百二、反対四百三十二の二百三十票という大差で否決した。メイ政権とEUが十一月に合意した協定案は離脱日の三月二十九日以降「移行期間」を設け、二〇二〇年末までに現状の通商関係を維持するというもの。この協定案に対し、与党・保守党からも「主権が回復できない」との声が上がって約四割が造反、労働党も「政府の壊滅的敗北」(コービン党首)と批判、内閣不信任案を提出するなど、メイ政権は袋小路に追い込まれている。最悪のシナリオと言われる「合意なき離脱」が現実化、金融機関が国外に拠点や資産を移す動きも加速している。イングランド銀行は国内総生産(GDP)が一年以内に最大八%縮小し、英経済は戦後最悪の不況に陥ると警告している。EU内で二位、世界では五位の経済規模の英国の動揺は世界経済全体へ波及しようとしている。

「壁」予算で対立、続く政府機関閉鎖
 メキシコ国境への壁建設の予算成立を求めるトランプ米大統領と民主党との対立による政府機関の一部閉鎖が続き、十九日には過去最長を更新中。連邦予算約一兆三千億ドル(約百四十二兆円)のうち約七五%は与野党で合意が成立したものの、残りの約二五%が未成立で、暫定予算も十二月二十一日に失効、約八十万人の連邦職員はこの間無給で、一部は自宅待機を強いられている。トランプ大統領は十九日には壁建設予算を民主党が認めることを条件に移民規制を緩和する意向を示したが、民主党は拒否、事態収拾のメドは立っていない。一月三日には米議会が開会、十一月の中間選挙で下院多数派を占めた民主党がトランプ大統領のロシア疑惑追及へ本格的に乗り出すなど、与野党の分断は深く、米社会はいっそうの混迷に陥っている。


米、ミサイル防衛で新指針
 トランプ米大統領は十七日、「ミサイル防衛見直し」(MDR)と称する戦略文書を発表した。MDRは宇宙空間にセンサー網を配備、ミサイルを発射時から追跡、破壊するというもの。オバマ前政権時に策定された前回のMDRではミサイル防衛の対象を朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)とイランに絞っていたが、今回は中国とロシアを加えた四カ国を「脅威」と決め付けた。すでにトランプ政権は国家安全保障戦略、国家防衛戦略、核態勢の見直しを発表しており、衰退と相対化する米国の力をいっそうの軍事力強化で補おうという悪あがきの一環だ。


中朝、米に制裁解除要求で一致
 中国を訪問した朝鮮の金正恩委員長は八日、北京で習近平国家主席と会談を行った。金委員長の訪中は昨年以降四回目。会談では今年が中朝国交樹立七十周年であることをを念頭に、戦略的な意思疎通のいっそうの強化で合意、朝鮮半島の平和と安定を守る上で核問題の究極的な平和的解決の立場を引き続き堅持することで一致した。金委員長は昨年の米朝首脳会談における共同声明を誠実に実行する意思を重ねて表明、習主席も米国などを念頭に朝鮮の立場を尊重すべきと応じた。十八日には訪米した金英哲・朝鮮副委員長がトランプ大統領と会談、二回目の米朝首脳会談を二月下旬に開催することで合意したが、経済制裁の解除など敵視政策の放棄を求める朝鮮に対し、米側はあくまで核放棄の先行を求めており、朝鮮半島情勢は予断を許さない。


中東で火種つくる米の策動
 中東諸国を歴訪しているポンペオ米国務長官は十日、エジプトのカイロで「地域に標的があらわれれば、空爆を継続する」と演説、引き続き中東への関与政策を継続することを示した。十二月、トランプ大統領が突如、シリアからの米軍撤退を表明したが、それを打ち消す格好。また、「中東は米国の国益」とも明言、敵視しているイラン封じ込めのため、中東諸国に米主導による「中東戦略同盟」の構築を呼びかけた。米国と関係の深いエジプトやサウジアラビアを前面に立たせ、米国は後方からそれを支えようというもの。こうした動きは中東に新たな紛争の火種をつくろうというもので許されない。

人民のたたかい

(12月10日〜1月19日)


  米国ワシントンなどで一月十日、予算執行に伴う政府機関の一部閉鎖と賃金未払いに抗議する職員らによるデモが行われた。ワシントンでは数百人が参加、大統領官邸にデモ行進した。
 米国ロサンゼルスで十四日、公教育での人員削減などに反対し、統一教員組合(UTLA)三万人以上がストライキに突入した。
 カナダのオンタリオ州にある米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)で十一日、工場閉鎖計画に反対する抗議集会が行われた。下請けを含め三万人への影響が出る。労働者は「われわれはどこにも行かない」と訴えた。
 フランス全土で十二日、マクロン政権に抗議する「黄色いベスト運動」によるデモが九週連続で行われ、約八万四千人が参加した。パリでは八千人が街頭に繰り出した。デモは翌週も行われた。
 インド全土で八、九日の両日、モディ政権による大企業優先の経済政策に反対するストライキが行われた。労組組織が合同で呼びかけ農民なども合流、「全国で二億人が参加」という。
 アルゼンチンのブエノスアイレスで十二月二十七日、夜間学校の閉鎖計画に反対する二十四時間ストライキが行われ、市当局に抗議した。
 チュニジア全土で一月十七日、公務員の賃上げを拒否する政府に抗議するストライキが闘われ、空港や港湾施設などが閉鎖に追い込まれた。政府は国際通貨基金(IMF)から二十八億米ドル(約三千五十億円)の融資を受けた見返りに、公務員の賃上げ凍結を策動している。

日本のできごと

(12月10日〜1月19日)

19年度予算案を閣議決定
 安倍政権は十二月二十一日、二〇一九年度予算案を閣議決定した。一般会計は百一兆四千五百六十四億円で、当初予算としては過去最高。十月に予定される消費税増税のための対策費約二兆円のほか、防衛費は五年連続の過去最高で、とくに米国からの有償軍事援助(FMS)は前年度比二千九百十一億円も増え七千十三億円。公共事業費も六兆九千九十九億円と一六%もの大幅増。一方で社会保障費は、薬価引き下げのほか、七十五歳以上の高齢者医療費自己負担割合の据え置きなど、さらに縮減される。新規国債発行額は三十二兆七千億円と、依然として高水準のままで、二五年度に先送りされた「基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化」はきわめて困難。米国や大企業への奉仕の一方、国民にさらに犠牲を強いる予算案だ。

臨時国会閉会、多数の悪法成立
 第百九十七臨時国会が十日、閉会した。今国会では、外国人労働者の受け入れを拡大する改悪入管法、漁業権を企業に渡す改悪漁業法、改悪水道法などの悪法をはじめ、政府が新たに提出した十三法案がすべて成立した。全法案の成立は、約十一年ぶり。政府・与党は、一月からの通常国会において、一九年度予算案のほか、憲法改悪のための国民投票法案、歳費削減を含む国会議員歳費法の成立を図る方針。安倍政権を追い詰め、打ち破る国会内外の闘いが求められている。

首相年頭会見、国民犠牲の強化を公言
 安倍首相は一月四日、年頭会見を行った。「今こそ戦後日本外交の総決算を行っていく」と、北方領土問題や拉致問題の解決を打ち出したが、展望はない。憲法改悪については、年末に改憲案を提示して与党内からさえ不満が出たにもかかわらず、「できる限り広範な合意が得られることを期待したい」と開き直った。また、「全世代型社会保障元年」などと打ち上げたが、実際に進めていることは、社会保障予算の大幅削減と消費税増税だ。その増税についても「全て国民の皆さまにお返しするレベルの十二分な対策」などと言うが、低所得者・高齢者にはほとんど恩恵はない。アベノミクスが完全に行き詰まるなか、「国民ダマし」は続かない。

新大綱、中期防で米追随の軍拡さらに
 政府は十二月十八日、新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画(中期防)」を閣議決定した。大綱は、「米国の認識」としつつ「世界的・地域的な秩序の修正を試みる中国やロシア」と明記、その戦略的競争で米国に奉仕することをあからさまにさせた。中期防は、今後五年間の防衛費を二十七兆四千七百億円と拡大。陸上配備型迎撃ミサイルシステム(イージス・アショア)二基、ステルス戦闘機F35四十五機の導入のほか、護衛艦二隻の「空母化」、宇宙やサイバーを含む全領域での能力融合などが打ち出された。米戦略に追随した軍拡策動には際限がなく、アジアの平和を脅かすものだ。

レーダー照射口実に「反韓」あおる
 岩屋防衛相は二十一日、前日に韓国駆逐艦から海上自衛隊哨戒機に火器管制レーダー照射を受けたとして、「きわめて危険」などと韓国政府を非難した。発表は、韓国が「遭難した朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)船舶を捜索するためにレーダーを稼働した」と伝えたことを無視し、一方的になされた。安倍政権は「米軍なら即座に撃沈」などと粋がるが、類似事案は世界で日常茶飯事で、右翼の田母神元航空幕僚長でさえ「危険ではない」と述べるほど。元徴用工裁判や慰安婦問題などを口実に、政府は韓国への排外主義をあおっている。このような態度では、アジアで信頼をなくすばかりだ。


IWC脱退、日米協定見直しこそ必要
 政府は二十六日、クジラ資源の管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を表明した。これにより、一九年七月から約三十年ぶりに商業捕鯨が再開されることになった。だが、捕鯨可能海域は日本の排他的経済水域(EEZ)内に限られ、再参入を予定する企業もない。日本が商業捕鯨から撤退したのは、一九八四年、スーパー三〇一条などでの対日制裁を恐れた中曽根政権が、日米捕鯨協議で「完全撤退」に合意したこと。この見直しこそが肝心。IWC脱退は、安倍政権による「強い日本」の演出である。


日立撤退で原発輸出が破綻
 日立製作所は一月十七日、英国で進めている原子力発電所建設計画の凍結を決めた。日立は日本政府の後押しを受け、総事業費三兆円で二基の建設をめざしていたが、英政府からの追加支援のメドが立たず、三千億円もの損失を計上する見込み。背景は、「安全」対策費の高騰に加え、中国やロシアの国有企業が存在感を高めていること。日本は旧民主党政権時代から、「成長戦略」の目玉として原発輸出を掲げてきた。すでに東芝が海外での原発事業からの撤退を表明、トルコでの事業も断念が確実となるなど破綻が鮮明だ。


政府の県民投票妨害工作が明らかに
 沖縄県名護市辺野古への新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票をめぐり、宮崎・自民党政調会長補佐が作成した文書が、十五日までに明らかになった。文書は、市町村長が投票事務を履行しなければ「違法」としつつ、各市町村議員に対し、県民投票実施予算の否決に「全力を尽くすべき」と呼びかけている。不参加自治体を増やすことで正統性を低めようという、安倍官邸の意向を受けたもの。地方自治に対する重大な侵害で許しがたい。県民運動に追い詰められた、安倍政権の苦境を示すものだ。「不参加」を表明している宜野湾市、石垣市など五市当局は、市民の意思表明の機会を奪うべきでない。


不正調査で国民生活に重大な影響
 厚生労働省による毎月勤労統計において不正調査が行われていたことが十二月二十八日、判明した。従業員五百人以上の事業所は全数を調査する規則だが、遅くとも二〇〇四年以降、一部しか調査していなかった。一八年からは、不正な「補正」も行われていた。同調査は、失業給付や労災による休業補償給付の算定に使われているため、地方公務員の育児・介護休業手当などが過少給付されていた。政府はあわてて、追加給付に必要な費用として一九年度予算案を六億五千万円増額修正したが、厚労省は〇四年〜一一年の一部資料を廃棄済みで、すべての追加給付は不可能に近い。安倍政権下では、裁量労働制をめぐる問題などでデータ改ざんなどが相次いでいる。アベノミクスがウソまみれであることは明白だ。


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