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労働新聞 2018年12月5日号 トピックス

世界のできごと

(11月20日〜11月29日)

英のEU離脱で協定結ぶが
 欧州連合(EU)は十一月二十五日、ブリュッセルで開いた臨時首脳会議で英国のEU離脱についての協定を全会一致で承認した。英国がEUに「手切れ金」四百億〜四百五十六億ユーロ(約五兆千五百億〜五兆八千七百億円)を支払うことや、二〇二〇年末までの移行期間の設定(最長二年の延長可能)などを定めた。メイ首相は十二月十一日にも下院で協定を採決する方針を示したが、「EUでの議決を失いながらEUルールに従う協定で、残留よりひどい」との声が与党・保守党内からも噴出、採択のあてはない。否決されてもEUは再交渉に応じない構えで、混乱はやみそうもない。

ウクライナめぐり緊張再び
 ロシアは二十五日、同国が一四年に併合したクリミア半島付近のケルチ海峡でウクライナ海軍の艦船三隻を砲撃、拿捕(だほ)した。ロシア側はウクライナ艦船が黒海のロシア領海に侵入したとしているが、ウクライナ側は引き返した際に砲撃されたと主張している。この問題を受けて、北大西洋条約機構(NATO)が緊急会合を開くなど、米欧はロシアへ非難を集中、トランプ米大統領は二十カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて行われる米ロ首脳会談の中止を発表した。対ロ制裁の強化論が高まる可能性がある。

台湾地方選で蔡与党、大敗
 中国・台湾で二十四日、統一地方選が投開票され、計二十二の県・市の首長選で蔡英文当局与党の民進党が、現有十三ある首長ポストを六に半減させて大敗した。とくに結党ゆかりの地で「牙城」である高雄市でも野党・国民党が勝利するなど、蔡当局に対する台湾住民の不満の高まりを強く印象づけた。大敗を受けて蔡氏は民進党主席を辞任した。「独立論」を隠しながらもトランプ米政権と対中封じ込め政策に呼応してきた蔡与党の敗北は、米国にとっても打撃となった。


EU、対伊制裁議論へ
 EU欧州委員会は二十一日、巨額の財政赤字経常が問題となっていたイタリアの一九年予算に関し、公的債務を削減するよう求めたEUの財政規律に反するとの見解を示し、制裁も視野に入れた手続きの開始が妥当と結論づけた。同国では六月にEU懐疑派の連立政権が発足。失業者などに一定額を支給する「最低所得保障」など巨額の財源が必要な政策を掲げていた。実際に財政赤字を理由に制裁が発動されれば、EUの発足以来初めて。最終的には、最大で国内総生産(GDP)の〇・二%に相当する罰金を科す可能性がある。

人民のたたかい

(11月20日〜11月29日)


  フランス全土で二十四日、マクロン政権による燃料税引き上げ計画に反対するデモが行われ、十万人以上が参加した。デモは「黄色いベスト運動」と名づけられ、各地で高速道路の封鎖、ショッピングセンターへの通行阻止など実力闘争が闘われている。
 欧州各地で二十三日、通販大手アマゾンの労働者が劣悪な労働条件に抗議して一斉行動を行った。ドイツでは二カ所の配送センターでストライキが、英国では五カ所の配送センターでデモが行われた。行動は大規模なセールが行われた「ブラックフライデー」に合わせたもので、労働者は「われわれはロボットではない」と訴えた。
 カナダ・オタワで二十三日、郵便公社の労働者が賃上げや処遇改善を求め、ストを行った。十月中旬から行われた断続的なストの一環。トルドー政権はストを圧殺する「職務復帰法案」を提案、怒りは政府に向かっている。
 チェニジアで二十二日、公務労働者約六十五万人が全土でストライキに入った。首都チェニスには数千人が結集した。これは賃上げに反対する国際通貨基金(IMF)の圧力に屈したシャヘド政権に抗議するもの。

日本のできごと

(11月20日〜11月29日)

増税をゴマかす消費税対策
 安倍首相は十一月二十二日、二〇一九年十月に予定する消費増税への経済対策として、中小小売店でクレジットカードなどで決済した際に五%のポイント還元を検討する考えを示した。このほか、プレミアム商品券の導入も検討されている。ポイント還元の期間は、東京五輪前までの九カ月。だが、経済には「需要の先食い」以上の効果はない上、小売店のシステム改修費用の負担は不可避で、税制上の負担も重い。消費者にとっても、複数の税率が共存する混乱に加え、五輪後には一気に増税となる。増税を国民に「納得」させるためのデタラメな措置だ。

入管法改悪案を衆議院で可決
 衆議院本会議で二十七日、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法「改正」案を自民、公明、維新などの賛成多数で可決し、参議院に送付した。与党は安倍首相の外遊前の衆院通過を急ぎ、審議はわずか十七時間。しかも詳細は未定な上にデータ改ざんが発覚するなど法案の体をなしていない。財界に奉仕し、日本人を含む全労働者の待遇悪化につながるものだ。

韓国大法院、三菱重工にも賠償命令
 韓国大法院(最高裁)は二十九日、三菱重工業に対し、韓国人元徴用工や元女子勤労挺身隊員への損害賠償を認めた。新日鉄住金に対する判決に続くもの。また韓国は二十一日、従軍慰安婦問題に関する「和解・癒やし財団」の解散を発表した。文在寅政権は、合意当初から異論が多かった韓国世論に応えた。日本外務省は反発しているが、財団の解散を止める法的根拠はない。韓国での歴史見直しの流れに沿ったもので、誠意ある対応を行わなかったわが国歴代政権の責任だ。

沖縄県知事の要求に応じず
 安倍首相と玉城・沖縄県知事が二十八日、会談した。玉城知事が名護市辺野古への新基地建設の断念を求めたのに対し、首相は「計画通り」と表明した。会談は政府と県による約一カ月の協議を受けてのものだが、安倍政権は基地建設を強行する意思を崩さなかった。玉城知事は、国交相による埋め立て承認撤回の執行停止に、総務省の国地方係争処理委員会に審査を申し立てるほか、二月に県民投票を行って対抗する意思を示した。県民意思を踏みにじり続ける安倍政権は、許しがたい。

防衛費増額を米国に約束
 政府は二十八日までに、米国に複数年度の防衛費総額を提示する方針を決めた。中期防衛力整備計画(中期防)による五年間の防衛費総額を、北大西洋条約機構(NATO)式算定に基づいて伝えるもので、トランプ政権の武器購入要求に応えたもの。同算定によると五年間の防衛費総額は約三十七兆円で、現中期防期間の約二十五兆円を大幅に上回る。政府はステルス戦闘機F35を最大百機、計一兆円以上で追加購入する検討に入り、護衛艦・いずもを空母に改修する計画も打ち出した。トランプ政権への奉仕は際限がない。


財界のための大阪万博が決まる
 博覧会国際事務局(BIE)は二十三日、フランスのパリで総会を開き、二五年国際博覧会(万博)を大阪で開くと決めた。大阪では一九七〇年以来の開催。大阪府は人工島・夢洲でカジノを含む統合型リゾート(IR)の開業もめざしており、その「場つなぎ」というもくろみもある。政府は経済効果を約二兆円と試算、二〇年の東京五輪に続く景気浮揚策として位置付けるが、効果は一過性。財界に奉仕するとともに、日本維新の会を憲法問題などでひき付ける狙いもある。


日産・三菱、ゴーン会長を解任
 日産自動車は二十二日に臨時取締役会を開き、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕されたゴーン会長を解任した。三菱自動車も二十六日、同様の決定を行った。ゴーン容疑者は、報酬の過少申告などを行ったとされるが、日産と親会社ルノーの統合をめざしたことが反発を買ったという報道もある。背景には、自動車業界の激しい競争がある。この問題をめぐって、世耕経済産業相は二十二日、パリでルメール・フランス経済・財務相と会談、両社が「協力関係を維持する」ことを「強く支持する」との共同声明を発表した。国内五工場を閉鎖、二万人もの労働者を解雇したゴーン会長のなれの果てだ。


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