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労働新聞 2018年11月25日号 トピックス

世界のできごと

(11月10日〜11月19日)

APEC、崩壊寸前の国際協調
 パプアニューギニアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が十一月十八日、首脳宣言の採択ができぬまま閉幕した。宣言断念は、一九九三年の初会議以来初めて。会議では、ペンス米副大統領が中国を「不公正な貿易慣行」や「人権」問題などで責め立て、習近平・中国国家主席も「米国第一主義」を批判した。これに先立ち、シンガポールで十五日に行われた東アジア首脳会議でも、副大統領は、自国のアジア侵略の歴史を棚上げして、南シナ海問題を念頭に「帝国と侵略の居場所はない」と中国を一方的に糾弾した。米国の執拗(しつよう)な対中攻勢で、国際協調は崩壊寸前だ。

中国念頭のWTO改革案
 米国、日本、欧州連合(EU)などは十二日、世界貿易機関(WTO)改革案を提示した。加盟国が、WTOに報告しないまま自国産業への補助金交付などを続けた場合、罰則を与える規定創設などを柱とする。改革案は中国に対する揺さぶりを狙ったもの。中国は二〇〇一年にWTOに加盟、その後の輸出主導の経済発展に結び付いた。だが米国は、加盟条件を満たさぬまま中国を加盟させたことを否定的にとらえ、こんにちでは、とくに発展戦略である「中国製造二〇二五」の阻止をもくろみ、日欧も追随している。中国が改革案に反発することは避けがたく、交渉の難航は必至だ。

第1次大戦100年、米国の孤立きわまる
 第一次世界大戦終結から百年にあたる十一日、記念式典がフランスのパリなどで開かれた。マクロン・フランス大統領は演説で、米国の「自国第一主義」などを念頭に「古い悪魔が再度目覚めつつある」とけん制した。メルケル・ドイツ首相なども、同様のコメントを発表したが、トランプ米大統領は一部行事を欠席した。マクロン大統領は北大西洋条約機構(NATO)とは別の「欧州軍」構想を唱え、「米中ロから守る必要がある」と公言したが、トランプ大統領は「非常に侮辱的」などと非難、米仏首脳会談も空々しい雰囲気となった。欧州でも、米国への不信と警戒感が強まっている。


英離脱案、閣議決定も政局不安定に
 メイ英政権は十四日、EU離脱に関する協定案を閣議決定した。だが、合意案はあいまいな点を含む上、英領北アイルランドとアイルランドの国境問題では、二〇年末までに解決策が見つからなければ英国全土をEUとの関税同盟に残す条項を含む。完全離脱の「引き延ばし」ともいえる内容に、財界はおおむね歓迎したが、閣僚の約三分の一が反対、四閣僚が抗議の辞任を表明した。保守党内の強行離脱派は「メイ降ろし」を強め、一方で残留派は国民再投票の運動を強化、世論は分裂を深めている。英国の政局不安定化は、欧州政治や経済に深刻な影響を与えつつある。

人民のたたかい

(11月10日〜11月19日)


  フランス二千カ所で十七日、燃料税増税に反対して二十八万人が集会とデモ行進を行った。パリでは一千二百人がデモした。
 ブルガリア各地で十八日、ガソリン価格高騰に対する抗議活動が行われ、幹線道路などが封鎖された。
 英国のロンドンで十七日、労働組合など数千人が人種差別に反対するデモを行った。
 カナダ郵政公社の労働者による、待遇改善を求めた輪番ストライキが、十日で二十日目に入った。公社側は十六日、同国に手紙を送らないよう、世界に要請することに追い込まれた。
 コロンビアで十五日、大学予算の増額を求めてデモが行われた。
 アルゼンチンの各空港で十六日、賃上げなどを求めて空港職員がストライキに入った。

日本のできごと

(11月10日〜11月19日)

米副大統領と会談、従属深める安倍
 安倍首相は十一月十三日、米国のペンス副大統領と東京で会談した。両氏は「自由で開かれたインド太平洋」の促進に関する共同声明を発表、会談後に開かれる一連の首脳外交でのいちだんの連携強化でも一致した。一方、会談後の共同記者発表で副大統領は、日米通商関係について「物品だけでなくサービスも含めた重要分野の条件を整備する」と語り、実質的な自由貿易協定(FTA)交渉で広範な分野での日本の譲歩を迫った。さらに「日本の防衛強化を助ける。そうした意味でこれから防衛技術を日本に売却していく」と、米国製兵器のさらなる購入も迫った。外交・軍事面で中国包囲のさらなる負担を負わせ、貿易・経済面ではいっそうの譲歩を迫る米トランプ政権の姿勢が顕著に示されたが、安倍政権はこれに付き従うだけだ。

日ロ首脳会談、安保が領土返還の障害
 安倍首相は十四日、シンガポールでのロシアのプーチン大統領と会談した。両首脳は「平和条約締結後に歯舞・色丹の二島の引き渡し」を明示した一九五六年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速化することで合意した。しかしプーチン氏は引き渡し後の両島に米軍基地が置かれることへの懸念を示した上で、「宣言にはどこの主権とするか書かれていない」と、引き渡しについて主権についても協議の対象とする姿勢を示した。プーチン氏の発言は日米安保条約下では米軍基地配備を拒めない日本政府のジレンマを突いており、対米従属下では北方領土返還などかなわないことがあらためて示された格好だ。

規制改革会議答申、選挙にらんだ内容
 政府の規制改革推進会議は十九日、安倍首相に答申した。通信料と端末料金の完全分離による携帯電話の料金引き下げが目玉で、また株式など金融商品と貴金属などの商品先物を一元的に扱う「総合取引所」の二〇二〇年度頃の実現、IT(情報技術)人材を育成するためのプログラミングや英会話などを遠隔教育で推進し五年以内に希望するすべての小中高で実施することや、民泊事業所の届け出手続きの簡素化などが答申された。来年の統一地方選や参議院選をにらんで携帯電話引き下げをアピールする以外は財界の要求を詰め込んだ内容となった。

GDP半年ぶり減、増税環境遠のく
 内閣府が十四日、一八年七〜九月期の国内総生産(GDP)速報値を発表した。物価変動を除く実質で前期比〇・三%減、年率換算では一・二%減となった。マイナス成長は2四半期(六カ月)ぶり。全国で相次いだ自然災害の影響で個人消費が伸びなかったほか、輸出も5四半期ぶりにマイナスに転落した。先行きについて政府は「民間需要を中心とした景気回復が期待される」(茂木経済再生担当相)と楽観姿勢を装おうが、米中貿易戦争など不安材料には事欠かない。国民経済に致命的打撃を与えかねない消費税増税などもってのほかだ。

アベノミクスで地銀7割が減益
 東京証券取引所などに上場する地方銀行八十社の一八年九月中間決算が十五日にまとまった。日本銀行によるマイナス金利政策で本業である貸し出し利ざや縮小が続いた上、米金利の上昇で多くの地銀が保有外債で損失計上を迫られ、全体の約七割に当たる五十五社が減益に。海外事業で三メガバンクがそろって増益となる一方、「地銀業界に厳しい収益環境が続いている」(柴戸・全国地方銀行協会会長)。地方銀行の業績不振は地域経済の低迷と相互にマイナス効果を及ぼしており、主な元凶は安倍政権の経済政策にある。


実習生調査の虚偽発覚
 法務省は十六日、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法「改正」案の審議の前提となる失踪技能実習生の聴取票データの失踪動機の数字が誤っていたと発表した。政府は「賃金等への不満からより高い賃金を求めて失踪する者が約八七%」(山下法相)などと答弁していたが、これが二〇%水増しされていた上、調査で「低賃金」との項目で聞いた結果が集計の際には「より高い賃金を求めて」と変えられていた。外国人労働者の劣悪な労働条件が放置されている現状を覆い隠す詐欺で、安倍政権下で横行するデータねつ造を許してはならない。


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