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労働新聞 2018年11月15日号 トピックス

世界のできごと

(10月30日〜11月9日)

米中間選、上下「ねじれ」となる
 米国の中間選挙(上院三十五、下院四百三十五、州知事選三十六州)が十一月六日、投開票された。トランプ政権発足後、初の全国規模の選挙。上院では共和党が過半数を維持したが、下院では民主党が過半数を奪還し、上下院「ねじれ」となった。選挙戦では移民政策などトランプ政権そのもの是非が問われ、投票率も過去五十年間でもっとも高い四七%を超えた(前回三六・七%)。民主党は政権への批判票を一定取り込んだが、議席の伸びは事前予測より鈍く、有権者の不満を必ずしも糾合できなかった。また、民主党にもトランプ政権の移民政策を支持する候補がいるなど、与野党は政策面で必ずしも対立していない。「米国第一」の内外政治は続き、世界をいっそう混乱させるであろう。

米、不当なイラン再制裁
 米国は五日、対イラン制裁の再開を強行した。トランプ政権は五月、「イラン核合意」から一方的に離脱することを表明、原油輸出や金融などの分野で再制裁の準備を進めてきた。制裁対象は七百件を超え、イランから原油を輸入する各国企業も制裁対象とされた。米政府は自国経済への悪影響を避けるため、日本や中国、インドなどについては最長百八十日間の猶予を与えたが、すでに百社以上がイランから撤退している。一方的な制裁再開に対し、イランは強く反発、原油輸出を続けることを表明した。欧州各国もトランプ政権を批判するなど、各国は米国への警戒心を高めている。

米中対話、対立の根深さ浮き彫りに
 米国と中国は九日、ワシントンで閣僚級の「外交・安全保障対話」を開催した。十一月末に行われるアルゼンチンでの主要二十カ国・地域(G20)首脳会談に合わせて予定している米中首脳会談に向けた地ならし。貿易問題では引き続き協議することで合意されたが、米側は自国の移民政策などを棚に上げ、中国の「人権問題」を持ち出したり、南シナ海での「航行の自由作戦」を合理化した。「中国への封じ込め政策を追求していない」(ポンペオ国務長官)との言葉とは裏腹に、中国への非難に終始した。中国の楊政治局員は「米国は中国の支配権と安全保障上の利益を侵害すべきではない」と反論、米中間の対立の根深さが改めて浮き彫りとなった。


国連がキューバ制裁解除求め決議
 国連総会は一日、キューバへの経済制裁を解除することを求める決議を圧倒的多数で可決した。決議は「米国によって科せられている経済、商業、金融の制裁を終結させる必要がある」としている。同様の決議は二十七年連続。全百九十三カ国中、賛成百八十九、反対が米国とイスラエルの二カ国のみ(無投票二)。ロドリゲス・キューバ外相は、米国の経済制裁を「虐殺行為に等しい」と厳しく批判した。総会決議に法的拘束力はないが、トランプ米政権への各国の警戒感の高まりを強く示した

人民のたたかい

(10月30日〜11月9日)


  英国ロンドンで三日、緊縮政策で多くの図書館が閉鎖に追い込まれていることに抗議する集会とデモが行われた。公務員労組などが呼びかけた。
 オーストリアのウィーンで七日、極右・自由党のキクル内相の辞任を求めるデモに約八百人が参加した。
 イランのテヘランで四日、米国による再制裁に反対するデモが行われ、数千人が「米国に死を」と声を上げた。
 米国カリフォルニアなどで一日、米IT(情報技術)大手グーグルの労働者らがストライキを行った。同社従業員がセクハラ被害を告発したにも関わらず、加害者である幹部に多額の退職金が支払われたことに抗議するもの。
 コロンビア各地で十月三十一日、高等教育への予算拡充を求めるデモが行われ、約五千人がデモ行進した。

日本のできごと

(10月30日〜11月9日)

入管法改悪案を閣議決定
 政府は十一月二日、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改「正」案を閣議決定した。新たな在留資格「特定技能」を創設することで単純労働者を受け入れるもの。しかも、受け入れ枠は未定で、業種なども詰められていないデタラメな法案。現状でさえ劣悪な外国人労働者の労働環境をさらに悪化させ、日本人を含む全労働者の待遇引き下げにもつながる。安倍首相は「移民政策ではない」と強弁しているが、財界の要求に応じた政策変更で撤回以外にない。

韓国最高裁が賠償を命令
 日本による朝鮮半島への植民地支配中の徴用(強制)労働に関し、韓国人四人が新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟で、韓国大法院(最高裁)は十月三十日、計四億ウォン(約四千万円)の支払いを命じた高裁判決を支持した。日本企業に賠償を命じた判決が確定するのは初めて。安倍首相は「あり得ない判断」などと非難、請求権は一九六五年の日韓請求権協定で「解決済み」との態度。だが、日本政府は米軍の原爆投下に対する「個人の請求権」を認めており、明らかな二重基準。植民地支配への謝罪と反省をかたくなに拒否する安倍政権の姿勢、さらに同調する野党の大部分こそが問題だ。

防衛省、辺野古工事を強行再開
 防衛省は十一月一日、沖縄県名護市辺野古への新基地建設のための埋め立て工事を強行再開した。石井国交相(公明党)が十月三十日、沖縄県による埋め立て承認「撤回」の効力を停止したことを受けたもの。玉城県知事は県民投票による意思表示のほか、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」への審査申し出などで対抗する意思を示した。停止措置は、沖縄県が指摘した軟弱地盤などの諸問題を一顧だにしないもので、安倍政権の県民無視の姿勢を如実に示すものだ。

水産改革関連法案を閣議決定
 政府は十一月六日、「水産改革関連法案」を閣議決定した。漁業権を漁協や漁業者に優先的に割り当てる規定を廃止、遠洋・沖合漁業での漁船のトン数規制をなくすなどで、企業などの参入を促進することが狙い。約七十年ぶりの制度大幅見直しとなる。わが国沿岸漁業は、地方の疲弊や高齢化、さらに東日本大震災などで危機的状況にある。政府は「意欲のある漁業者を確保」(吉川農水相)などと言うが、「企業が一番活躍しやすい国」(安倍首相)の漁業版で、沿岸漁業者や漁協の権利を奪う悪法だ。

危険性顧みぬ原発賠償据え置き
 原子力委員会の有識者会議は十月三十日、原子力発電所事故の損害賠償制度見直しに関して、賠償措置額を現行(一千二百億円)に据え置くことを決めた。これを受け、政府は原賠法改「正」案を国会に提出する見通し。報告書案への意見公募では、措置額の引き上げや電力会社などの責任明確化を求める意見が多く寄せられたが、無視された。福島第一原発事故における賠償額が九兆円(措置額の七十倍以上)に迫るなか、金額据え置きは無責任そのもので、大事故の危険を直視しない政府と電力業界の姿勢を示している。

連合、賃上げ「4%程度」を決定
 連合は十一月一日、中央討論集会を開き、二〇一九年春闘で二%程度のベースアップ(ベア)、定期昇給と合わせ「四%程度」の賃上げを要求する方針を示した。神津会長は「これまで以上に賃金水準にこだわりを」などと述べた。連合中央は要求手法を、企業規模や年齢などに応じた「実額要求」へと見直すことを検討しているが、今回は盛り込まれなかった。いずれにしても、この要求水準では労働者の生活難は打開できない。大幅賃上げを求めた闘いが求められている。


東芝、5年で7千人の大リストラ
 東芝は八日、今後五年間の中期経営計画を発表した。設備投資や研究開発費に計一兆七千億円を振り向け、人工知能(AI)やインフラ関連の開発力を強化する。一方、労働者の五%、七千人規模の人員削減を打ち出した。「希望退職」のほか、定年退職者の不補充で行うというが、投資資金をねん出するためであることは明白。急速な技術革新が進んで企業間の国際競争が激化するなか、労働者への犠牲押し付けは断じて許しがたい。


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