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労働新聞 2018年11月5日号 トピックス

世界のできごと

(10月20日〜10月29日)

米、対中けん制でINF条約破棄
 トランプ米大統領は十月二十日、中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄する意向を示した。同条約は一九八七年、米国と旧ソ連が結んだ。トランプ大統領は「ロシアの条約違反」を理由にあげた。ラブロフ・ロシア外相は、米国が二〇〇二年に弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から脱退したことなどと併せて非難、「戦略的安定に関する新たな条約」を提案した。米国の条約破棄は二月に発表した「核体制の見直し」に照応するもので、中国に対抗した核大軍拡を進める狙い。米国は世界の緊張を激化させている。

米、中米移民対策で軍隊派遣
 マティス米国防長官は二十六日、メキシコ国境に一千人規模の軍隊派遣を承認した。これは、中米諸国から七千人規模の移民集団が米国へ向けて北上していることに対応し、入国を阻止する狙い。一方、メキシコのペニャニエト大統領は、移民に身分保証書を発行、就労や医療支援策を発表した。トランプ政権は「壁建設」など強硬な移民対策を打ち出してきたが、国境で混乱が起これば中間選挙への影響は必至で、綱渡りの対応を強いられている。

ブラジル大統領に右翼候補当選
 ブラジル大統領選挙の決選投票が二十八日行われ、ボルソナロ下院議員(社会自由党)が当選を決めた。ボルソナロ氏は五五%を得、労働党のアダジ元サンパウロ市長に約一〇ポイントの差を付けた。元軍人のボルソナロ氏は札付きの右翼だが、汚職と治安対策を力説することで、前政権下での経済危機と政府の無策に不満をもつ有権者をひきつけた。ただ、同氏は年金改革など緊縮財政をめざしており、国民の反発を受けることは必至。欧州諸国と同様、危機を背景に、既存政党への不満の広がりが印象づけられた。


メルケル首相、党首退任を表明
 ドイツのメルケル首相は二十九日、十二月の与党・キリスト教民主同盟(CDU)大会での党首退任を表明した。バイエルン州に続き、二十八日に行われたヘッセン州議会選挙でも与党が大敗した責任を取った形。首相職は二十一年の連邦議会選挙まで続投する意向だが、難民問題などをめぐる党内闘争が激化、右翼・ドイツのための選択肢(AfD)の躍進が続いている。政権が「死に体」化する可能性もあり、欧州政局に大きな影響を与えかねない。

記者殺人、トルコ「計画的」と発表
 トルコのエルドアン大統領は二十三日、サウジアラビア人記者が同国のサウジ大使館内で死亡した事件について、「計画的な殺害」と発表した。「偶発的事故」としたサウジ側の発表を否定、ムハンマド・サウジ皇太子の関与には言及しなかったものの、全容解明や犯人の引き渡しを求めた。トルコの狙いは、制裁措置に動く欧州諸国などをひきつけ、中東での自国の立場を強化すること。サウジを中東支配の主柱としてきた米国は、サウジの発表への評価を二転三転させ、影響力低下を露呈させている。

人民のたたかい

(10月20日〜10月29日)


  中国・台湾の富士ゼロックスの労働者が二十三日、社員の三割に当たる三百人への首切りに抗議してストライキに突入した。
 韓国のソウルで二十日、差別禁止法制定を求めて数千人のデモ行進が行われた。同法は、性別、障害、人種、出身国家、民族、性的指向などを理由とする差別を禁止する内容。
 イタリア全土で二十五日、鉄道や航空労働者が待遇改善を求めて二十四時間ストに入った。また、フィレンツェでは二十六日、国立美術館などの労働者がストライキに入った。
 カナダで二十二日、郵政公社の労働組合(CUPW)の九千人が、賃上げなどを求めてストに入った。

日本のできごと

(10月20日〜10月29日)

臨時国会開会、増税と改憲に意欲
 第百九十四臨時国会が十日二十四日、召集された。衆参両院で所信表明演説をした安倍首相は、国土強靱(きょうじん)化、地方創生、外交・安全保障に重点を置くことを強調、特に地方創生では「全世代型社会保障」「生涯現役の雇用制度」「即戦力となる外国人材の受け入れ」に言及し、社会保障制度改革を力説することで来年十月からの消費税率引き上げ正当化に躍起となった。また憲法改悪について「憲法審査会で政党が具体的な改正案を示すことで、国民の理解を深める努力を重ねていく」「国会議員の責任を果たそう」と呼びかけ、固執姿勢を鮮明にした。国民犠牲によって米国や多国籍大企業のための政治推進を止めなければならない。

日中首脳会談、「新たな時代」強調
 中国を訪問中の安倍首相は二十六日、習近平国家主席と会談した。日本の首相として七年ぶりの公式訪問。両首脳は「新たな時代」の日中関係構築で一致、「競争から協調へ」などの三原則を確認したとされる。また政府開発援助(ODA)を終了、第三国への経済協力の推進で一致した。「新しい日中関係」の強調は、日中平和友好条約発効から四十年の節目であり、また両国とも米トランプ政権の仕掛ける貿易戦争の中で積極的に関係を改善する狙いがある。しかし安保分野ではほとんど進展がないなど、対米従属下では本格的な日中関係の進展には限界があることも露呈した。

日印首脳会談、中国念頭に関係強化へ
 安倍首相は二十九日、来日したインドのモディ首相と首脳会談を行った。発表された共同声明では、安保分野では外務・防衛閣僚会合(2+2)の新設や自衛隊とインド軍が物資を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)の交渉開始、日印宇宙対話の立ち上げなどで一致した。経済分野では、日本の新幹線方式が採用されるインド高速鉄道事業などに対し三千億円強の円借款供与などインフラ開発での連携に加え、医療での連携拡充やデジタル技術の共同研究など広範囲な事柄についての協議で一致した。日印関係強化は米戦略に沿った中国包囲の一環。安倍首相は日中首脳会談の直後に日印会談を設定することで、あらためて米国に恭順の意を示した格好だ。

明治150年式典、侵略の歴史にふれず
 政府は明治改元から百五十年となる二十三日、「明治百五十年記念式典」を東京で開いた。式辞で安倍首相は明治時代について「列強が植民地支配を進め、その波がアジアにも押し寄せ、わが国は国家存亡の危機に直面していた。独立を守るため当時の人びとは果敢に行動した」などと、明治以降の政府を賛美する一方、日本がアジアで植民地支配を進めたことやその後太平洋にまで侵略戦争を広げたことにはまったく触れず、帝国主義国として隣国を踏みにじった歴史を事実上正当化した。安倍政権を先頭とする明治賛美キャンペーンは軍事大国化と思想統制を狙ったもので、反撃が必要だ。

九州2基地で「米軍拠点化」計画
 日米両政府は二十四日、日米合同委員会で航空自衛隊築城基地(福岡県築上町)と新田原基地(宮崎県新富町)に米軍の武器弾薬庫や戦闘機の駐機場などを整備することで合意した。普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「能力を代替」として両基地に駐機場、燃料タンク、弾薬庫、倉庫などを建設、「緊急時」にそれぞれ戦闘機十二機程度、輸送機一機程度、米兵約二百人を受け入れるなどの内容。普天間にない弾薬庫が造られるなど明らかな機能強化で、「緊急時」も名目にすぎない。「沖縄の負担軽減」を口実にした全国的「米軍基地化」が加速されている。

障害者雇用偽装で報告書
 中央省庁での障害者雇用の水増し問題をめぐり、国の検証委員会は二十二日、報告書を公表した。二十八行政機関の三千七百人が不正に算定されていたことを認定、約十年前の退職者や死亡した人を計上するなど、数十年の長期にわたってずさんな運用が行われていたと指摘した。一方、不正開始の時期や動機、責任の所在などについては十分な解明に至っていない。「水増し」分だけ長年にわたり障害者が雇用の機会を奪われていたことになり、障害者雇用を推進すべき国の不正に対し厳しく責任が問われるべきだ。


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