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労働新聞 2018年10月5日号 トピックス

世界のできごと

(9月20日〜9月29日)

国連総会、「米国第一」に批判集中
 国連総会の一般討論演説が九月二十五日、ニューヨークの国連本部で始まった。演説したトランプ米大統領は「米国第一」を鮮明にさせ、「グローバリズムを拒絶する」と明言する一方、「貿易不均衡は全く許容できない」と中国を非難。またイランなどを批判し、イスラエル非難決議を理由とする国連人権理事会からの離脱も正当化した。これに対し、「誰も黙ってはいられない」(エルドアン・トルコ大統領)、「経済テロ」(ロウハニ・イラン大統領)などの非難が相次ぎ、マクロン仏大統領は「パリ協定に従わない国とは貿易協定を結ぶのをやめよう」とまで呼びかけた。翌日の安全保障理事会の閣僚級会合でも、米国は根拠を示さず「中国による選挙干渉」を騒ぎ立て、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への制裁履行を迫った。中国やロシアは反発、朝鮮への「制裁緩和」を主張した。米国の孤立と影響力低下は、ますます際立っている。

米、「対ロ」口実に対中制裁
 トランプ米政権は二〇日、ロシアに対する制裁強化法に違反し、ロシアから地対空ミサイルなどの軍事装備品を購入したという理由で、中国共産党中央軍事委員会幹部らへの制裁措置を実施した。資源と並ぶ輸出品である軍需を標的にすることでロシアを締め付け、同時に中国への制裁で「中ロ同盟」にくさびを打ち込む狙い。併せて、ロシアからの武器購入計画を進めているインドやトルコなどをけん制するもくろみもある。中国は「強烈な憤慨」を表明、通商摩擦に加え、米中対立は激化の一途だ。

疑惑続々で米政権弱体化
 トランプ米大統領は二十八日、連邦最高裁判所のカバノー判事候補に関し、連邦捜査局(FBI)による捜査を指示した。カバノー氏は大統領が強く推す保守派だが、性的暴行疑惑が浮上したため、早期の「幕引き」を狙った。だが、中間選挙への影響を恐れ、共和党内にさえ起用への反対が強い。米政府内では、「ロシア疑惑」に関する資料の機密解除を大統領が拒否したことへの批判や、ローゼンスタイン司法副長官が大統領解任を画策していた問題も浮上、まさに「内憂外患」状態。政権の求心力は弱体化している。


産油国、トランプの要求を拒否
 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどが二十三日、アルジェリアのアルジェで原油増産をめぐり協議した。参加国は、六月末に合意した「日量百万バレル増」を達成するために努力することを確認、トランプ米大統領がイラン制裁を見越して求めていた、いっそうの増産要求に応じなかった。イランは米国を非難して欠席、サウジアラビアも米国の唱える「供給不安」を否定した。中間選挙前にガソリン代値下げなどで「成果」を印象づけたいトランプ政権のもくろみは失敗した。原油価格は現在の「一バレル=約八〇ドル」水準から上昇する可能性があり、世界経済のリスクとなりつつある。

人民のたたかい

(9月20日〜9月29日)


  米国サンフランシスコで二十二日、従軍慰安婦像と碑文が設置されて一年となったことを記念し、支援者がデモ行進を行い、日本に謝罪を求めた。
 ナイジェリアで二十七日、石油産業などの労働組合が最低賃金の引き上げを求めて無期限ストに入った。同国では、物価が約二倍に上昇している。
 インドのニューデリーで二十五日、作業中に死亡した下水道労働者の遺族らが政府に抗議して座り込みを行った。下水道労働者は、廃物を素手で取り除く劣悪な労働を強いられている。
 スイスのベルンで二十二日、男女間の賃金平等を求めるデモ行進が行われ、労働組合員約二万人が参加した。
 パレスチナ・ガザ地区で二十八日、イスラエルによる封鎖に抗議し、数千人がデモ行進を行った。イスラエル軍は少年を含む七人を虐殺、人民は投石などで対抗した。

日本のできごと

(9月20日〜9月29日)

自民総裁選、安倍3選も地方で苦戦
 自民党の総裁選挙が九月二十日、投開票された。安倍首相が石破元幹事長を破り三選された。党内七派閥のうち五派閥から支持を受けた国会議員票では約八一%の支持を得たものの、党員票では約五五%と過半数をわずかに超えた票しか獲得できなかった。地方を中心に安倍政権への不満がうっ積していることを示す結果で、今後の政権運営と内外政治がいっそう行き詰まりを深めることは不可避だ。

米国に屈し事実上のFTA交渉開始
 日米首脳会談が二十六日、米ニューヨークで行われた。両首脳は二国間の関税交渉を開始、モノの取引を円滑にする物品貿易協定(TAG)の締結をめざす方針で合意した。日本はこれまで米国に環太平洋経済連携協定(TPP)への復帰を求めてきたが、大統領の要求に屈した格好。安倍首相は「自由貿易協定(FTA)とはまったく異なる」と強弁するが、米国側は「FTA交渉開始で合意」と明言しており、TPP以上の農産物関税削減などを迫られることは必至。交渉中は自動車関税引き上げを発動しないことの見返りに農業を売り渡す、売国的裏切り。また、自動車への制裁も避けられたわけではない。また米国復帰を前提にTPP締結の音頭を取ってきた日本政府に対する各国から不信を買うことも避けられず、安倍政権は大きく国益を損なおうとしている。

自衛隊が米核爆撃機と東シナ海で訓練
 航空自衛隊の複数の戦闘機が二十七日、東シナ海から日本海の上空で核兵器の搭載も可能な米空軍の戦略爆撃機B52と共同訓練を実施した。中国も領有権を主張する尖閣諸島がある東シナ海での共同訓練が明らかになるのは異例。通商問題をはじめ米中対立が激しくなっているが、日米共同軍事行動は軍事的に中国を包囲する狙いだけでなく、経済交渉でもけん制する狙いもある。米国による軍事・経済での中国包囲に加担する安倍政権の姿勢は、アジアの共生や平和を阻害するものだ。

沖縄・読谷で米兵住居侵入事件
 米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)所属の陸軍兵が七日午後十時半頃、高校二年の女子生徒と生後五カ月の妹の二人が居合わせた読谷村内の民家に、上半身裸で不法侵入する事件を起こしていたことが二十日、地元紙などで報道された。身の危険を感じた女子生徒は女児を抱えながら家を飛び出し、近所に助けを求めて保護された。翌日、同基地所属の陸軍上等兵が住居侵入容疑で逮捕された。同村議会は日米両政府に強く抗議する意見書と決議を全会一致で可決した。こうした怒りは当然で、日米地位協定などで米軍・米兵の野放図な蛮行を許している安倍政権は重罪だ。

朝鮮学校無償化、大阪高裁で逆転敗訴
 大阪朝鮮高級学校(大阪府東大阪市)を高校授業料無償化制度の対象から除外した国の処分が不当だとした訴訟の控訴審判決が二十七日、大阪高裁であった。国の処分を違法と判断した一審・大阪地裁判決を取り消し、学校側の訴えを退けた。昨年七月の一審判決では、同校を除外した国を「政治的意見に基づいており、教育の機会均等の確保をうたった無償化法の趣旨に反している」と判断、処分を取り消し、国に無償化の義務づけを命じていた。朝鮮学校の無償化除外をめぐっては、大阪、東京、名古屋、広島、福岡の朝鮮学校の学校法人や生徒らが提訴しているが、高裁レベルの判断は初めて。安倍政権の朝鮮敵視に呼応した不当判決で許されない。

浄化後も基準の2万倍の放射性物質
 福島第一原発の敷地内のタンクにたまる汚染水について、東京電力は二十八日、一部のタンクからストロンチウム90などが放出基準値の最大約二万倍にあたる放射性物質が検出されていたことをあきらかにした。東電や経済産業省が分析した除去設備(ALPS)で処理した浄化後の汚染水約八十九万トンのうち、八割超が基準を上回っていた。東電はこれまでALPSで処理すればトリチウム以外の六十二種類の放射性物質を除去できると説明していた。東電は測定値を公表していたが、積極的には説明せず、今年八月に福島県などで開かれた経産省の公聴会で批判が集まっていた。東電や国の無責任な体質がまたも明らかになった。


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