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労働新聞 2018年9月5日号 トピックス

世界のできごと

(8月20日〜8月29日)

「米国第一」反映したNAFTA交渉
 トランプ米大統領は八月二十七日、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で大筋合意したと発表した。自動車の輸入関税ゼロの条件として、両国からの部材調達比率・現行六二・五%を七五%に引き上げ、部材の四〇〜四五%を時給十六ドル(約千八百円)以上の地域で生産することを求める「賃金条項」を設け、米国からの部材調達を増やす狙い。両国間で乗用車の輸入量が一定水準を超えた場合、米国が最大二五%の関税を適用できる内容も盛り込まれた。これにより、自動車各社はコスト上昇や生産効率低下を強いられ、供給網の見直しは必至。カナダとの交渉が残っているが、同国の乳製品の関税制度や貿易紛争の解決制度を巡って激しく対立、合意は依然厳しい。自由貿易体制はまさに「風前の灯」で、米国による各国への犠牲の押し付けが本格化している。

米またも対中制裁発動
 トランプ米政権は二十三日、「知的財産侵害」を口実として、中国からの半導体、電子部品などの輸入品百六十億ドル(約一兆八千億円)分に二五%の関税を上乗せする制裁措置を発動した。中国は同日、同規模の報復措置で応じた。米中間の協議で、米側は執拗(しつよう)に「中国製造二〇二五」の取り下げを要求、為替問題でも圧力をエスカレートさせてきた。トランプ政権は、中国に対し、経済・安全保障を含む本格的な攻勢を強めている。

進む南北和解の一方、圧力強める米
 南北の離散家族の再会事業が二十日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の金剛山で始まった。一五年十月ぶりで、今年四月の南北首脳会談で合意していたもの。南北は、事業拡大と連絡事務所の開設でも合意するなど、九月に予定される再度の首脳会談に向け融和策を続けている。一方、米国は、朝鮮が「非核化へ後ろ向き」とけん制、戦争終結宣言に消極的姿勢に終始、米韓合同軍事演習の再開を示唆(しさ)した。ポンペオ国務長官の訪朝も中止された。また、この問題でも中国への圧迫を強化し、朝鮮半島の平和に背を向けている。


ギリシャ危機収まるも
 ギリシャへの欧州連合(EU)の金融支援が終了した。二〇一〇年から三次にわたった支援の融資額は国際通貨基金(IMF)拠出分を加えると約二千九百億ユーロに達する。同国は予算策定の自由を奪われ、年金削減や増税、公営部門の民営化などの国民犠牲策を押し付けられた。結果、国内総生産(GDP)は危機前の約四分の三まで縮小、失業率は二七%、なかでも若者の失業率は六〇%にまで達する。それでも、債務返済は六〇年まで続く。ソブリン(国家債務)危機は、近隣トルコの混乱で再燃する気配さえあり、予断を許さない。

人民のたたかい

(8月20日〜8月29日)


  米国ワシントン州で二十九日、教育労働者数千人が賃上げを要求するストライキに突入、デモには保護者なども参加した。教員ストは今年三月から全米各州で展開されている。
 米国のシカゴで二十六日、反戦団体がシリアやパレスチナでの米国の作戦に抗議し、さらに移民排斥政策に反対してデモ行進を行った。
 米国全土で二十一日、受刑者が生活環境や仮釈放手続きの改善を求めて、座り込みとハンガーストライキに入った。ストは、七月にサウスカロライナ州で受刑者七人が死亡したことを契機とする暴動を受けてのもの。
 南米パラグアイで十八日、アブドベニテス政権が徴兵制の強化策を打ち出したことに抗議し、全国高校生連合などが抗議声明を発表した。
 スウェーデンのストックホルムで二十五日、同地で開かれた人種差別・極右政党のデモに対抗するデモが行われ、数百人が参加した。

日本のできごと

(8月20日〜8月29日)

佐賀県オスプレイ受入、横田も配備
 佐賀県の山口知事は八月二十四日、陸上自衛隊の新型輸送機オスプレイの佐賀空港への配備受け入れを表明した。山口氏は二〇一五年の知事選で、配備「再検討」などを公約して当選したが、百億円の着陸料の支払いや「漁業振興基金(仮称)」の創設を口実に県民を裏切った。また、防衛省は二十二日、米空軍のオスプレイ五機が十月一日に横田基地(東京都福生市など)に配備されると発表した。沖縄県以外への配備は初めて。いずれも、地域住民から強い反発の声が上がっている。

防衛白書、中朝の脅威あおる
 小野寺防衛相は二十八日の閣議に、一八年版「防衛白書」を報告した。中国の海洋進出を「地域・国際社会の安全保障上の強い懸念」などと、警戒感を強めた。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)も「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と、前年以上に敵視をあおった。また、「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長=三村・日本商工会議所会頭)が、防衛計画大綱の議論を始めた。安倍首相は、サイバーなどで優位に立つことが「死活的に重要」と述べ、陸海空の枠を超えた米軍との連携強化や、電子戦への対応などが論議される見通し。中国への敵視を強化する米戦略に、わが国をいちだんと組み込む危険なものだ。

インドなどと防衛連携強化へ
 インド、スリランカ訪問中の小野寺防衛相は二十日、ニューデリーでシタラマン・インド国防相と会談した。日印が軍需物資を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向けた協議を始めることや、米印空軍の共同訓練への自衛隊のオブザーバー参加が決まった。米印海軍の合同演習への参加に続くもので、陸自への拡大も検討されている。スリランカとは同国海軍への支援が協議される見通し。安倍政権が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」に基づくもので、存在感を高める中国に対抗するものだ。

日米知事会、24年ぶりに開催
 全国知事会と全米知事会による交流会議「日米知事フォーラム」が二十七日、東京で開かれた。日米相互の投資拡大を目的に開かれたもので、二十四年ぶり。トランプ政権が「貿易戦争」を仕掛け、日本にも自由貿易協定(FTA)などさらなる市場開放を迫るなか、この要求をかわすための世論づくりを狙い、安倍政権が後押ししたもの。だが、トランプ米大統領が六月の日米首脳会談の際、「真珠湾を忘れない」と安倍首相をけん制したことや、日朝間の極秘接触に米側が不信感を示していたことが発覚するなど、日米間の矛盾は深刻の度を増している。

国民代表、盛り上がらず
 国民民主党の代表選が二十二日、告示された。玉木共同代表と津村元内閣府政務官が立候補、一九年の参議院選挙に向けた「野党共闘」への対応が主な争点で、九月四日の臨時党大会で選出される。国民民主党は連合の民間産別などが支持しているが、世論調査での支持率は一%にも達しない。働き方改革関連法で与党と妥協するなど、安倍政権と対抗できない実態の必然的帰結。所属議員の離党も続き、党分解の可能性さえある。

米軍がシェルターを準備
 在日米軍は二十三日、弾道ミサイルから米兵を防護するための移動式シェルターを、日本国内四カ所に配備する計画であることを明らかにした。予定地は、Xバンドレーダーのある車力(青森県つがる市)、経ヶ岬(京都府京丹後市)、嘉手納(沖縄県沖縄市など)、普天間(同宜野湾市)の各基地。日本の安全どころか、米軍基地の危険性が証明されるものだ。


障害者雇用で官庁が不正
 厚生労働省は二十八日、省庁の八割・二十七行政機関、三千四百六十人分の雇用障害者数の水増しが行われていたと発表した。障害者手帳の確認漏れや期限切れを放置したずさんなものが多く、最大は、国税庁で一千人以上。一九七六年以降、国や自治体、企業は一定割合以上の障害者を雇うことを義務付けられているが、率先すべき国が違法行為に手を染めていた。加藤厚労相は「来年中の達成」を求めるとしたが、歴代政権、さらに安倍政権の反省なき態度は許しがたい。


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