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労働新聞 2018年8月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月30日〜8月19日)

米国のトルコ制裁で危機が波及
 トランプ米大統領は八月十日、トルコから輸入する鉄鋼・アルミニウムに二〇〜五〇%の追加関税を課すことを発表した。これを機に、トルコの通貨リラは約二割も下落、年初来の下落幅は四割に達した。米国は、トルコ政府が二〇一六年のクーデター未遂事件への関与容疑で牧師を拘束したことを口実にしている。米連邦準備理事会(FRB)の金利引き上げにともない、新興諸国は資金流出に直面しているが、制裁がこれに拍車をかけた。影響は、新興諸国や経済関係の強い欧州に及び、アルゼンチンなどが利上げに追い込まれた。トランプ政権の策動が、世界の危機を深刻化させている。

米、対中制裁第3弾強行へ
 トランプ米大統領は一日、中国からの輸入品二千億ドル(約二十二兆円)分に二五%の追加関税を検討するよう、通商代表部(USTR)に指示した。これは、七月に発表していた一〇%の追加関税案を強化するもの。中国への制裁は第三弾となり、九月初旬の発動が有力。中国は「米国が問題をエスカレートさせる行動に出れば、中国は必ず反撃する」と反発、六百億ドル(約六兆七千億円)分の報復関税案を発表した。なかでも、液化天然ガス(LNG)に二五%の関税を課すとしたことは、一七年秋の米中首脳会談での合意を見直すというメッセージとされる。覇権維持をもくろむ米国による対中「貿易戦争」は際限がない。

米、ロシアにも新たな制裁措置
 米国は八日、英国で起きたロシア元情報機関員の暗殺未遂事件を口実に、ロシアへの新たな経済制裁を発動すると発表した。ロシア人外交官を国外追放にした措置に続くもの。ロシアは、米国が説明さえ拒否したことに強く抗議し、対抗措置の検討を始めた。制裁は、八月中に電子部品などの製品や技術の輸出を禁じ、さらに三カ月以内に追加措置を行うとされる。七月の米ロ首脳会談で見せた「関係改善」姿勢が国内で批判を受けたトランプ政権が、中間選挙前に「失地回復」を図ろうとしたもの。中長期的には、ロシアの軍事的対抗を抑え込む狙いがある。


独ロ首脳会談、米国と一線画す
 メルケル・独首相とプーチン・ロシア大統領が十八日、ドイツ北東部メセベルクで会談した。プーチン大統領が首脳会議のためにドイツを訪問するのは、クリミア半島の併合以来、初めて。両首脳は、ロシアから欧州への天然ガス海底パイプライン「ノルト・ストリーム2」の建設推進を確認した。すでに、一本目の「ノルト・ストリーム」は開通済みで、二〇年の稼働をめざす。同計画をめぐっては、トランプ米大統領が「ドイツはロシアの捕虜」と述べるなど不快感を示していた。ドイツは、米国と一線を画す姿勢を示した。

人民のたたかい

(7月30日〜8月19日)


  インド西ベンガル州で七日、茶農園の労働者など四十万人以上が賃上げを求めて三日間のストライキに突入した。
 米国ワシントンで十二日、白人至上主義者によるデモ行進に対し、一千人以上がカウンター・デモを行い、「人種差別主義者は出ていけ」と声を上げた。
 フランス・パリのエッフェル塔で一日、当局による運営方法の一方的変更に抗議して労組がストライキに入り、塔を閉鎖に追い込んだ。
 ニュージーランドの小学校教師が十五日、賃上げを求めて初のストライキを行い、一千二百校以上が休校になった。
 中国・台湾の台北で十四日、日本政府に従軍慰安婦への謝罪を求める抗議集会が行われた。
 中国・香港の清掃員が六日、待遇改善を求めて六時間のストライキを行った。労働者は、水を飲むことさえ許されないことに抗議した。

日本のできごと

(7月30日〜8月19日)

日銀が緩和修正、アベノミクス限界に
 日銀は七月三十、三十一日、金融政策決定会合で金融政策の一部修正を決めた。金融緩和を「当分の間」続けるとした上で、現在ゼロ%程度に誘導することとしている長期金利を〇・二%程度まで容認、マイナス金利政策も縮小し、「二%程度」としている物価目標の達成時期を二〇二一年まで先送りした。「日銀依存」で「デフレ脱却」を進めてきた安倍政権、アベノミクスが完全に破綻したことを示すもので、今後の日本の国家財政が危機の様相を深めている。

FFR初会合、次回は9月に
 米ワシントンで八月九、十日、日米の新通商協議(FFR)初会合が開かれた。FFRは今年四月の日米首脳会談で設置が決まった閣僚級の貿易協議で、茂木経済再生担当相とライトハイザー米通商代表(USTR)は、自由貿易協定(FTA)や自動車、農産品など互いの関心について相互の要求を確認しただけで対立を回避、九月に次回の会合を開くことで合意した。十一月に中間選挙を控える米トランプ政権には、FFRを通じて対日貿易赤字の大幅な削減につながる成果を勝ち取る思惑がある。安倍政権によってさらに国益が譲り渡されるおそれがある。

食料自給率38% 過去2番目の低さ
 農林水産省は八日、一七年度の食料自給表を発表した。供給熱量では三八%と前年度と変わらず過去二番目の低い水準となった。潜在的な生産力を示す食料自給力指標は一・五%減、生産額でも六五%と前年から二%低下した。農地面積も四百四十四万ヘクタールと三万ヘクタール減った。農家の高齢化に伴う生産基盤の弱体化と農畜産物の輸入攻勢が食料自給率を低迷させている。だが、安倍政権は環太平洋経済連携協定(TPP)など自由貿易協定を進めており、食料安全保障はなおざりにされる一方だ。

膨れ上がる陸上イージス配備費
 小野寺防衛相は七月三十日、陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)、むつみ演習場(山口県萩市)への配備を狙っている陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」について、本体の導入経費が一基あたり約千三百四十億円になると発表した。防衛省は当初、本体に施設整備費などを合わせて総額約二千億円と説明していたが、教育訓練費や維持・運用経費、さらに迎撃ミサイル配備費用、電力・燃料費、搭載ミサイルなども加えると総計で約六千億円に達するとの試算もある。陸上イージスは米戦略の補完が目的で、巨額の血税支出は到底許されない。

高齢者の医療・介護負担さらに増
 政府は八月一日、高齢者が医療・介護サービスを利用した際の自己負担を一部引き上げた。医療では、七十歳以上で年収三百七十万円未満で住民税を課されている場合、通院医療費の上限が月四千円増の一万八千円に。三百七十万円以上は月八万七千六百円に設定していた通院時の負担上限を廃止、入院と合わせた世帯上限額を年収ごとに現役世代と統一した。介護では利用者の自己負担割合(原則一割)を「現役並み」収入がある六十五歳以上について二割から三割に引き上げた。安倍政権下での際限ない負担増で、高齢者の命や健康がいっそう脅かされている。

普天間二小、5カ月で671回避難
 昨年十二月に普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属のヘリの窓が校庭に落下した普天間第二小学校で、米軍機が上空一帯を飛ぶ際に児童が避難した回数は、二月十三日から七月二十日までに六百七十一回にも上ったことが、市教委の調査で分かった。一日平均四・二回で、児童が登校しない日もあるため実際の平均避難回数はさらに多く、最多は三月六日の二十三回。米軍は落下事故の謝罪はしたが、上空の飛行禁止には応じていない。米軍はもちろん、日本政府の罪も重大だ。


沖縄県の翁長知事が死去
 沖縄県の翁長雄志知事が八日、がんのため死去した。六十七歳。那覇市長だった翁長氏は、一四年の県知事選挙で保革の立場を超えて名護市辺野古の新基地建設に反対する「オール沖縄」の候補として出馬、新基地建設容認の当時の現職を打ち破り初当選した。日米両政府からすさまじい圧力を受ける中で最後まで反対を貫き、県民運動の発展に大きく寄与した。


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