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労働新聞 2018年8月5日号 トピックス

世界のできごと

(7月20日〜7月29日)

米・EU合意も不信根強く
 トランプ米大統領と欧州連合(EU)のユンケル委員長は七月二十五日、ワシントンで会談し、関税撤廃に向けた交渉を開始することで合意した。交渉中は米国が検討していた自動車・同部品の輸入制限の発動を控え、実施済みの鉄鋼・アルミニウムの輸入制限も再検討する。EUが米国産大豆や液化天然ガス(LNG)の輸入を増やすことでも合意した。中国を念頭に、知的財産保護や技術移転の強要防止で協力することもうたった。トランプ政権としては、矛先を中国に絞る狙いがある。ただ、ユンケル委員長は、「あらゆる論理、歴史に反している」と米国を改めて批判するなど、欧州の米国不信は根深いままだ。

BRICS、影響力の広がり示す
 南アフリカで開かれていたBRICS第十回会議は二十七日、「ヨハネスブルク宣言」を採択し、閉幕した。BRICSの国内総生産(GDP)合計は世界の二三・六%(二〇一七年)と、米国と同水準にまでなっている。宣言では、米国を念頭に「他国の安全保障を犠牲にして自国の安全を強化すべきではない」とうたい、気候変動に関する「パリ協定」やイラン核合意の意義を強調した。朝鮮半島問題でも、平和的手段を通じた解決の必要性を訴えた。また首脳級会議では、アフリカ九カ国と協議。トルコやアルゼンチンなどとも経済連携を話し合うなど、影響力の広がりを強く印象付けた。

合意進める朝鮮に圧力かける米国
 朝鮮戦争の休戦協定締結から六十五年を迎えた二十七日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は六月の米朝首脳会談の共同声明に基づき、朝鮮戦争で死亡・行方不明になった米兵の遺骨五十五体を米側に引き渡した。米側は「歓迎」の意を示したものの、「共同声明」に盛り込まれた「朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築」については何ら具体的な行動を取っていない。二十日には、朝鮮国内の「人権問題」を口実とした「北朝鮮人権法」の延長を決めるなど、「共同声明」に逆行するかのような姿勢も取っている。


米豪、容易に進まぬ対中包囲網
 米国とオーストラリアによる外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)が二十三日、米カリフォルニア州で開かれた。共同声明では、第三国も含めた安保協力の強化を明記、中国を強くけん制した。豪州は一方で、「いつも米国と意見を同じくするわけではない」(ビショップ外相)と明言している。米トランプ政権は中国に貿易戦争を仕掛け、安全保障面でも包囲網を強めているが、米国への警戒感も根強く、包囲網づくりは容易ではない。

人民のたたかい

(7月20日〜7月29日)


  欧州英国を結ぶ鉄道であるユーロスターの労働者で組織する鉄道・海運・運輸労組(RMT)は二十八日、人員削減に反対し、乗客の安全対策を求めるストを行った。
 ロシア各地で二十八日、プーチン政権による年金支給開始年齢を引き上げに抗議するデモが行われた。モスクワのデモには約十万人が参加、「私たちは年金で暮らしたい。働きながら死にたくない」などのスローガンが訴えられた。
 アイルランドの格安航空会社のライアンエアーの労働者は二十四日、欧州各国でストを行った。組合は賃上げや雇用などの労働条件の改善を求めている。経営側はストを口実とした解雇攻撃を予告しており、国際運輸労連(ITF)などが国境を越えた組合への支援を呼びかけている。
 アルゼンチンのブエノスアイレスで二十日、マクリ政権が国際通貨基金(IMF)からの融資との引き換えに公共料金引き上げなど緊縮政策を打ち出していることへ抗議するデモが行われた。同地で開かれる主要二十カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議に合わせて行われた。

日本のできごと

(7月20日〜7月29日)

通常国会が閉会、悪法次々
 第百九十六回通常国会が七月二十二日、閉会した。政府が提出した六十五の法案中、六十本が成立した。成立率は九二・三%で、第二次安倍政権以降で三番目の高さ。過労死容認の「働き方改革関連法」のほか、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法、党利党略で参議院の定数を増やす改正公職選挙法、憲法改悪を前提にした成人年齢の引き下げなど、多数の悪法が成立した。森友・加計学園問題も、真相究明にはほど遠い。安倍政権は、西日本豪雨への対応を急ぐべきとの声が高まるなか、悪法成立を押し切った。

IR実施法を強行可決
 参議院本会議で二十日、IR実施法が自民・公明・維新などの賛成で可決・成立した。安倍政権はトランプ米政権の意に従い、憲法改悪で維新の協力を取り付けるために強行可決を図った。今後、三カ所のカジノ設置をめぐる自治体の誘致活動が本格化することになり、大阪府、北海道、長崎県などが開業をめざしているとされる。なおざりの依存症対策などへの批判が根強いなかでの暴挙だ。

翁長知事、移設承認を撤回
 翁長・沖縄県知事は二十七日、名護市辺野古への新基地建設に関し、前知事による埋め立て承認を撤回する方針を表明した。政府が予定する八月の土砂搬入前に撤回する予定。知事は、承認の際の「留意事項」に反して工事が進められていることや、大浦湾側の軟弱地盤などを指摘、「承認処分の効力を存続させることは公益に適合しえない」と述べた。それでも政府は、裁判所への執行停止申し立てなどで工事をゴリ押ししようとしている。撤回方針は県民の意思を代弁したもので、全国で支持する世論と運動が求められている。

遅すぎる、西日本豪雨の激甚指定
 政府は二十四日、西日本豪雨を中心とする大雨を激甚災害に指定することを閣議決定した。指定により、復旧事業に対する国から自治体への補助率が一〜二割引き上げられる。このため、予備費からの四千億円の支出や、被災中小企業の借り入れを債務保証する「災害関係保証」の適用なども決めた。当然の措置だが、歴史的な被害に比してまったく不十分なもの。しかも、安倍政権は昨年末、最速一週間で激甚指定をできるようにしたにもかかわらず、被災から二十日近くが経っての指定は遅すぎる。国民の命を軽視する安倍政権の性格が如実に示された。

自民議員、LGBTへの差別公言
 自民党の杉田水脈衆議院議員(比例中国)が二十四日までに、LGBT(性的少数者)に対する暴言を含む文章を月刊誌に寄稿したことが分かった。杉田議員は、LGBTのカップルについて「子供をつくらない、つまり『生産性』がない」などと決めつけ、行政サービスから除外べきと述べた。子供を持つかどうかを「生産性」という尺度で測る、断じて許せないもの。だが、二階幹事長は「人それぞれ」などと擁護した。安倍政権の反動的性格を示すものだ。

最低賃金引き上げ、いまだ不十分
 厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は二十五日、一八年度の最低賃金の目安を時給八百七十四円(二十六円、三・一%増)にすることを決めた。これに基づき、各都道府県が最低賃金額を決める。三%前後の賃上げは三年連続だが、このペースで上がり続けても、政府が目標とする一千円を超えるのは二三年度。正規・非正規の格差を埋めるどころか、国民の貧困を解決するにはほど遠く、即時の大幅賃上げが必要だ。最賃引き上げには、安倍政権が労働組合を取り込む狙いもあり、警戒が必要だ。


トヨタ、静岡工場を閉鎖へ
 トヨタ自動車は二十日、静岡県裾野市の生産工場を二〇年に閉鎖、宮城・岩手の二工場に集約することを決めた。「国内生産三百万台体制」を維持するためのコストダウンとしているが、約一千百人の労働者がすべて異動できるはずもなく、地域経済にも大きな打撃。トランプ政権が自動車輸入への追加関税を検討しているほか、自動車業界をめぐっては電気自動車(EV)化、シェアリングなど激変している。さらなる再編は不可避だが、労働者や地域へのしわ寄せは許せない。


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