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労働新聞 2018年7月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月10日〜7月19日)

米、さらに対中関税リスト公表
 米通商代表部(USTR)は七月十日、追加関税一〇%を科す中国からの輸入品リストを公表した。家具、化粧品、野菜など六千三十一品目・二千億ドル(約二十二兆円)にも及ぶ膨大なもので、九月までに発動の可否を決める。中国からの輸入額全体の約半分に関税をかけることになる異常な措置で、米国内の反対も強い。中国を抑え込もうとする米国の通商政策により、米中関係はますます抜き差しならないものとなっている。

NATO首脳会議、米欧矛盾拡大
 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が十一日、ベルギーのブリュッセルで開幕した。会議は、ロシアに対抗する「即応体制の強化」などを盛り込んだ共同宣言を採択した。トランプ米大統領は欧州への天然ガスの輸出拡大を意図して、ロシアからの購入計画を進めるドイツを「ロシアの捕虜」と批判、制裁さえ示唆した。さらに、加盟国が国防費を対国内総生産(GDP)比四%に高めるよう要求、欧州諸国は反発した。結局、共同宣言を前倒しで発表し「結束」をアピールせざるを得なかった。通商問題を絡めた米国のゴリ押しで、「米欧冷戦」と言われるほど、米欧矛盾の激化が露呈した。

米ロ首脳会談、具体的前進なし
 トランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領が十六日、フィンランドのヘルシンキで会談した。両首脳は新戦略兵器削減条約(新START)の延長など「関係改善」をアピールしたが、米国は、ウクライナ問題やシリア内戦などでは踏み込めなかった。トランプ大統領は会談後、選挙への介入を否定するプーチン大統領に同調したが、翌日には撤回に追い込まれた。トランプ政権は、中間選挙を前に「ロシア疑惑」の払拭と、貿易問題を抱える中国や欧州をけん制することを狙った。だが、司法当局がロシア軍当局者十二人を起訴するなど、米国内で高まるロシアへの警戒感に押された格好だ。


中欧首脳会議、米けん制で連携
 李克強・中国首相とトゥスク・欧州連合(EU)大統領、ユンケル欧州委員長らは十六日、北京で首脳会議を開いた。共同声明では、世界貿易機関(WTO)の改革を通じて「多国間貿易体制を守る」と明記、中欧投資協定の早期締結や、イラン核合意の「完全で効果的な履行」、パリ協定を履行する上での協力についても話し合われた。中国は会談に先立ち、反体制活動家の妻のドイツへの出国を容認するなど、「人権」でも欧州への配慮を見せた。中欧は連携をアピールすることで国際政治上の地位を確保、「米国第一」のトランプ政権をけん制した。

人民のたたかい

(7月10日〜7月19日)


  英国のロンドンなど四十カ所で十三日〜十五日、トランプ大統領の欧州訪問に対してのべ十万人が抗議行動を行った。フィンランドのヘルシンキでも十五日、一万二千人がデモした。
 米アマゾンのセールス「プライムデー」に合わせ、スペインで配送センターの労働者一千八百人が十六日、賃金カットや休暇取得の制限の撤回などを求めてストライキに入った。ドイツ、イタリアなどでも同様の行動が取り組まれた。
 フランスとの国境に近いイタリアのベンティミリアで十四日、各国の閉鎖的な移民政策に抗議し、三千人がデモ行進を行った。
 韓国の金属労組十二万人が十三日、賃上げと不公正取引の是正を求めてストライキに突入した。ソウルでは、三万人が現代自動車本社に向けてデモ行進した。建設労組は十二日にソウルで、賃金支給保証制度などを求めて大会を行い、三万人が参加した。
 ハイチのポルトープランスで十四日、約五〇%の燃料価格引き上げに反対し、モイーズ大統領の辞任を求めるデモが行われた。住民が暴徒化したことで、首相が辞任に追い込まれた。

日本のできごと

(7月10日〜7月19日)

豪雨災害対策で自公与党に批判
 西日本を襲った記録的豪雨の被害対策で、安倍政権や自公与党への国民的批判が高まっている。会期末の迫った国会で、与党はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案の参議院内閣委員会での審議を強引に推し進めて可決を強行、災害対応に率先して職責を果たすべき石井国交相をカジノ担当相として審議に張り付けるなど、被災地軽視の姿勢に終始した。七月十四日に広島県の被災地を視察した石井国交相が、被災者から激しい言葉を浴びせられる一幕もあった。米多国籍大企業への手土産でもあるIR実施法成立に血眼になり、復興・復旧をないがしろにするなど言語道断だ。

党利党略の参院6増成立
 参議院の定数を六増やす公職選挙法改正案が十八日、自公両党の賛成多数で可決、成立した。埼玉が二、比例代表が四それぞれ増える。比例代表の一部に、拘束名簿式の特定枠も導入する。現状の「徳島・高知」「鳥取・島根」の合区を維持しつつ、合区によって立候補できない候補者を特定枠で救済する狙い。徹頭徹尾、自民党の事情で導入する制度であり、党利党略そのものだ。

日欧EPA署名、農業・酪農は大打撃
 日本と欧州連合(EU)は十七日、経済連携協定(EPA)に署名した。世界の国内総生産(GDP)の約三割を占める巨大な自由貿易圏ができることとなるが、酪農を中心に日本農業、とくに北海道の地域経済が多大な打撃を受けることは避けがたい。安倍政権には欧州との経済関係強化で中国に対抗する狙いもあるが、欧州は中国との連携を強化しており、思惑はうまくいかないだろう。

仏とACSA締結へ、中国対抗を意識
 訪仏した河野外相は十三日、自衛隊と仏軍が物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)に署名した。日本のACSA締結は米国、豪州、英国に続く。十四日にはルドリアン仏外相と会談、安全保障やエネルギー、環境など、海洋政策全般に関する政府間対話を始めることで一致した。「自由で開かれたインド太平洋戦略」を外交方針に掲げ、米国の戦略に沿って海洋進出を強める中国に対抗する安倍政権は、太平洋にニューカレドニアなどの海外領土を持つフランスとの連携強化を図っている。

概算要求、6年連続上限なし
 安倍政権は十日、来年度予算編成で、各省庁が財務省に予算を要求する際のルールとなる概算要求基準を閣議了解した。成長分野に四・四兆円超の特別枠を設け、また来年十月にもくろむ消費税増税対策に充てる予算はこれとは別枠とする一方、六年続けて歳出上限は定めなかった。各府省の要求総額が百兆円を超えるのは確実で、すでに防衛省が自衛隊の軍備拡充や米軍再編関連経費を含め過去最大の五兆三千億円程度を計上する方向で調整に入るなど、米国や多国籍大企業のための政治に国民の血税が青天井で投入されようとしている。

日米原子力協定延長、米従属深める
 日米原子力協定が十七日、発効後三十年の満期を迎え、自動延長された。今回の延長以降、協定は日米どちらかの一方的な通告でも終了可能となった。これにより、他国に理不尽な要求を突きつける米国のトランプ政権下で米側が協定破棄をちらつかせ、自国に有利な形で日本にエネルギー政策の見直しを迫ることも予想される。そうなれば、日本の核・原子力政策は、いっそう米国に縛られることは避けがたい。


日銀議事録、リーマン危機想見通せず
 日銀は十七日、二〇〇八年一〜六月の金融政策決定会合の議事録を公表した。米国の低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題に端を発した世界的な金融不安がくすぶる中の六月会合では、審議委員からは大型破綻を警戒する意見が出される一方、金融危機よりも原油高によるインフレを懸念し利上げを主張する声もあった。白川総裁(当時)は「大手金融機関が突然破綻する危機、最悪期はたぶん去った」との認識を示していた。世界経済を空前の危機に陥れた同年九月のリーマン・ショックを読み切れず、打撃を和らげる有効な先手を打てなかった状況があらわになった。


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