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労働新聞 2018年7月15日号 トピックス

世界のできごと

(6月30日〜7月9日)

米、対中制裁発動で争奪激化
 トランプ米政権は七月六日、「知的財産侵害」を理由に、中国に対して三百四十億ドル(約三・八兆円)相当の追加関税を強行した。すでに表明している、五百億ドル(約五・五兆円)の追加課税の一部で、中国のハイテク製品八百十八品目にまで及ぶ大規模なもの。特に、中国のハイテク産業振興策である「中国製造二〇二五」への打撃を狙ったもの。中国は「最大規模の経済戦争」と猛反発、報復関税を実施した。世界経済に大きなリスクとなっているが、トランプ大統領はさらなる追加措置を明言、中国の対米貿易黒字を二千億ドル圧縮することも求めている。米国が仕掛ける貿易戦争には際限がない。

EU離脱めぐり英政権混乱
 英国のジョンソン外相は九日、欧州連合(EU)離脱をめぐるメイ首相の方針に反発して辞任した。メイ首相はEUとの「自由貿易圏」創設や、EUと工業製品の規格を共通化する方針を提案していたが、単一市場・関税同盟からの撤退、二国間での自由貿易の拡大を主張する閣僚との対立が激化、前日にはデービスEU離脱担当相が辞任していた。EUのバルニエ首席交渉官は、メイ首相の方針を「いいとこ取り」と一蹴(いっしゅう)した。十月までに合意できなければ、取り決めのないまま離脱期限を迎え、英国とEUにまたがる経済圏が混乱に陥る可能性が出てきた。

米朝協議、米の一方的要求続く
 ポンペオ米国務長官は六日、米朝首脳会談後初となる高官級協議のために朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を訪問、金英哲副委員長と会談した。米側は「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)に固執、一方的要求を繰り返した。朝鮮側は米朝間の交流拡大や朝鮮戦争の終結宣言に向けた取り組みを提案、非核化と同時並行でこれらの課題について進める方針を改めて表明した。ポンペオ氏は「多くの進展があった」と強調したが、強い経済制裁を続けつつ、中止を表明していた米韓合同軍事演習の再開もにおわすなど、朝鮮に圧力をかけ続けている。


メキシコ大統領選で政権交代
 メキシコで一日、大統領選挙が行われ、新興政党の国家再生運動(MORENA)のロペスオブラドール元メキシコ市長が得票率五一%を得て当選した。上下両院選挙でもMORENAを主体とする勢力が過半数を占め、首長選でも躍進した。同国では一九九〇年代以降、北米自由貿易協定(NAFTA)を境に貧困と格差が拡大、既成政党への国民の怒りが高まっていた。トランプ米政権が「移民排斥」を叫び、NAFTA再交渉で圧力をかけていることへの不満もあり、米国を厳しく批判しているロペスオブラドールへの支持が高まっていた。

人民のたたかい

(6月30日〜7月9日)


  米国全土で六月三十日、移民分離政策に抗議するデモが行われ、数十万人が参加した。ワシントンでは三万人が参加、ホワイトハウスに抗議した。
 ベルギーのブリュッセルで七月七日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に参加するトランプ米大統領に抗議するデモが行われ、約二千人が抗議の声を上げた。デモでは「トランプはゴミ箱へ」などと記されたプラカードが掲げられた。
 英国ロンドンで六月三十日、メイ政権が進める国民保健サービス制度の縮小などの緊縮政策に反対する行動が行われ、約四万人が参加した。
 オーストリアのウィーンで三十日、労働時間の上限延長に反対する集会が開かれ、約十万人が参加した。昨年発足した極右との連立政権は上限規制を現行十時間から十二時間、週六十時間まで延長する法案を提案している。
 パレスチナ自治区ラマラで七月二日、トランプ米政権が近く提示するといわれる「和平案」の阻止を訴える抗議デモが行われ、数百人が参加した。

日本のできごと

(6月30日〜7月9日)

RCEP加速だが合意は困難
 日中印や東南アジア諸国連合(ASEAN)など十六カ国が七月一日、東京で、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)閣僚会合を開き、「年内の実質的妥結」に向けた交渉加速で一致した。RCEPが合意されれば、環太平洋経済連携協定(TPP11)を超え、世界の人口の約半分、国内総生産(GDP)で約三割を占める経済圏となる。従来、安倍政権は中国を含むRCEPに消極的だったが、米国がTPPから離脱、中国などに「貿易戦争」を仕掛けるなか、TPPを基礎に高い自由化水準を持ち込もうとする狙い。だが、中国やインドなどは過度の自由化に慎重で、五年の協議を経ても、全十八分野中、合意できているのは二分野のみ。年内合意はきわめて困難だ。

西日本で大豪雨、急がれる復旧
 七月上旬の西日本での記録的豪雨によって、広島・岡山・愛媛県を中心に河川氾濫や土砂被害が多発、二百人以上が死亡、または安否不明となっている。電力、鉄道などのインフラが大きな被害を受け、十五府県で約二万三千人が避難を強いられた。企業活動でも、ダイハツの四工場、マツダ二工場などで稼働休止に追い込まれた。政府は七府県に災害救助法が適用したが、一刻も早い復旧を急がなければならない。

国民投票法案が審議入り
 衆議院憲法審査会は四日、憲法改「正」手続きを定めた国民投票法の改「正」案の趣旨説明を行った。内容は、商業施設への共通投票所設置を柱としたもので、国民投票において投票率を上げるためのもの。ただ、与党もカジノを中核とする統合型リゾート(IR)実施法案などを優先し、今国会での成立は見送る予定。野党は同法案の採決に反対しているが、立憲民主党はテレビなどのCM規制を主張するなど、改「正」自身には前向き。改憲への地ならしを許してはならない。

外務省、泥縄の朝鮮対応
 河野外相は五日、オーストリアのウィーンで天野・国際原子力機関(IAEA)事務局長と会談した。外相は、IAEAが朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への査察を行う場合、初期費用の負担や専門家の派遣を行うと表明した。米国の意を受け、朝鮮の非核化に「貢献」する狙い。また、外務省は一日、北東アジア課を分割して、朝鮮を担当する同第二課を創設した。朝鮮敵視政策が破綻するなか、外交立て直しを急ぐものだが、泥縄的だ。朝鮮は「遅ればせながら朝鮮半島問題に介入しひと山当てようという、悪賢い打算」などと批判しているのも当然だ。

日米、中国対象に新レーダーを開発
 日米両政府は五日までに、イージス艦が使用する次世代レーダーを共同開発する検討を始めた。探知能力を、現在の約二倍の一千キロに高めるもので、朝鮮だけでなく、中国東北部やロシア沿海州がすっぽりと入る。共同研究となれば、二〇一四年の武器輸出三原則の廃止と防衛装備移転三原則策定以降、初の本格的な日米共同開発となる。米国の中国敵視政策を補完する策動がますます強まっている。

文科省支援事業めぐり贈収賄
 東京地検特捜部は四日、文部科学省の私立大学支援事業での便宜の見返りとして、自分の子供を東京医大に「裏口入学」させたとして、佐野・同省科学技術・学術政策局長を受託収賄の疑いで逮捕した。便宜を依頼した臼井理事長と鈴木学長は辞任に追い込まれた。支援事業は「私立大学研究ブランディング事業」で、「特色ある研究」を行う私立大学六十校を選定するもの。加計問題と同様の「国政私物化」というだけでなく、「アメとムチ」で大学を競わせる、安倍政権による教育行政が腐敗の温床となっている。


見せしめのオウム死刑執行
 法務省は六日、オウム真理教元代表の松本死刑囚ら幹部七人の死刑を執行した。一日にこれだけの死刑執行は、戦後初めての異常さ。地下鉄サリン事件などへの真相究明が不十分なままの執行は、二〇年の東京五輪を控え、さらに天皇の代替わり前の「決着」を意識したものとされる。長引く不況を背景に階級矛盾が高まるなか、政権の「強さ」を打ち出した反政府団体への「見せしめ」でもあり、治安管理強化の狙いがある。


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