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労働新聞 2018年6月15日号 トピックス

世界のできごと

(5月30日〜6月9日)

分裂と混乱深めるG7サミット
 カナダ東部シャルルボワで開かれていた主要七カ国首脳会議(G7サミット)は六月九日に閉幕した。トランプ米大統領が欧州連合(EU)やカナダに鉄鋼・アルミの追加関税を課した直後に行われた会議で、貿易問題をめぐり米国と他の参加国との議論が紛糾した。最終的に「ルールに基づく国際的な貿易体制が極めて重要」「保護主義と闘う」などの内容で文書(コミュニケ)に合意したが、会議後にトランプ氏が承認を撤回するなど、分裂と混乱のうちに終わった。G7は米国衰退の影響で国際的対応力を鈍らせ、いっそうの機能不全に陥っている。

SCO、G7横目に国際的影響力誇示
 中国とロシアを軸とする八カ国で構成する上海協力機構(SCO)首脳会議が九日、中国山東省青島市で開幕した。SCOには昨年からインドとパキスタンが参加、加盟国総人口は三十億人を超え、世界人口の半数に迫った。今回は印パ加盟後の初首脳会議で、オブザーバーとしてイランのロウハニ大統領も出席した。会議で採択された青島宣言では「経済のグローバル化が保護主義の脅威にさらされている」「国際社会は協調して問題解決を」とうたい、トランプ米政権の横暴に結束して対応する姿勢を示した。また米国が離脱を表明したイラン「核合意」の順守を要求、米朝首脳会談についても「段階的な非核化」とそれに伴う「見返り」の提供を支持、朝鮮民主主義人民共和国の「後ろ盾」としての役割を誇示した。内部の不協和音で低迷するG7を横目に、SCOは国際的影響力をいっそう強めている。

アジア安保会議で米が対中批判強める
 アジア太平洋地域の国防幹部らが集まり、地域の課題を話し合うアジア安全保障会議(英国際戦略研究所主催)が三日、シンガポールで閉幕した。米国のマティス国防長官は演説で南シナ海の人工島に中国がミサイル配備を配備していることなどについて「脅迫と抑圧を目的に軍事利用できる」と指摘、また今年の多国間海上訓練「環太平洋合同演習(リムパック)」から中国を排除した理由を「透明性と協力という演習の目的と一致しない」として、中国批判のトーンを上げた。米国は、在日米軍を傘下に置く太平洋軍を「インド太平洋軍」に改称するなど、南シナ海やインド洋への影響力を日英豪印なども関与させながら強めたい思惑だが、一方で中国は東南アジア諸国(ASEAN)と南シナ海での紛争を回避する「行動規範」の条文づくりの交渉を始めるなど、米国の対中牽制・包囲は思惑通りに進む見通しはない。

人民のたたかい

(5月30日〜6月9日)


  米国ラスベガスの地域労組約五万人が六月一日、自動化設備の導入反対や雇用安定、賃金引き上げ、セクハラ防止などを要求してストライキに突入した。ホテルやカジノで配送ロボットや無人注文システムなどの自動化設備を導入する動きが加速、仕事が奪われることへの危機感が高まっている。
 ヨルダンで五月三十日、政府の進める大規模な緊縮策を含む税制改革に反対し労働組合がゼネストを宣言、抗議運動が始まった。アンマンなど少なくとも七都市で数千人がデモに参加(写真)、医師会や弁護士会などもストを行い、政府と国際通貨基金(IMF)に抗議した。政府は改革案撤回に追い込まれた。
 南アフリカのヨハネスブルクの大規模病院で三十一日、労働者百人以上が残業手当や特別手当の支払いを求めるストライキを行った。病院を一部封鎖し患者とともに立てこもったほか、車のタイヤに火を付けて救急車の通行を妨害するなどした。
 ブラジル政府は三十一日、ディーゼル油の一時引き下げなどを実施した。同国で十一日間にわたって行われた燃料高騰に抗議するトラック運転手のストライキが実を結んだ。

日本のできごと

(5月30日〜6月9日)

国会終盤、悪政と腐敗は際限なし
 働き方改革関連法案が五月三十一日、衆議院本会議で、自民党、公明党などの賛成多数で可決され、参議院に送られた。衆議院内閣委員会では八日、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案の採決が見送られたが、審議時間はわずか十八時間という短さ。また、財務省は四日、森友学園問題での調査報告書を公表した。そこでは、佐川理財局長(当時)が、安倍首相の国会答弁後、文書改ざんの方向を「決定づけた」と認めた。二十人の処分のほか、麻生財務相の給与一年分の自主返納が発表されたが、あまりに軽い。国会は終盤だが、安倍政権による民主主義破壊と腐敗は底なしだ。

日米首脳会談、破綻つくろう
 安倍首相とトランプ米大統領は七日、カナダ・シャルルボワで会談した。対朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)政策について「『最大限の圧力』という言葉はもう使わない」と、大統領が政策修正を匂わせるや、首相も「経済協力」に言及して歩調を合わせざるを得ず、米朝会談で拉致問題を取り上げることを請うた。新たな通商協議(FFR)を七月に開くことでも合意、大統領は「(首相は)軍用機や農産物などの輸入を増やすと表明した」と明言、自由貿易協定(FTA)の締結に意欲をみせた。日米同盟の乱れを印象づけまいと腐心し、米国の要求に屈する安倍政権の売国性は露骨だ。

日中枠組み、ホットラインは先送り
 自衛隊と中国軍が偶発的衝突を避けるための「海空連絡メカニズム」が八日、運用を始めた。五月の日中首脳会議で合意されたもので、防衛当局間のホットライン、艦船・航空機が連絡を取り合う無線周波数や言語の設定、防衛当局の定期交流が柱。ただ、運用対象地域に沖縄県・尖閣諸島周辺を含めるかどうかはあいまいなまま。今回はホットラインの開設も先送りされている。日本が米戦略に追随する限り、日中間の平和は保障されない。

骨太方針原案、PB黒字化先送り
 政府の経済財政諮問会議は五日、本年度の経済財政運営の基本方針(骨太の方針)原案を示した。基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化は「二〇二五年度をめざす」としつつ、社会保障費の伸びを抑える目標値を削除し、一九年の消費税再増税の際の景気落ち込みを抑えるための対策を「検討」とするなど、国民犠牲策ばかりと受け取られないよう腐心した。わが国の累積債務はさらに深刻化する。安倍政権の悪政のてん末だ。

骨太方針、外国人受け入れで転換
 政府は五日の「骨太の方針」原案で、「人手不足」を理由に、新たな在留資格を創設して外国人材を受け入れる方針を示した。農業、介護、建設、宿泊、造船の五業種で五十万人以上を想定、最長十年の滞在を認め、さらに専門性が認められれば在留期間の上限をなくす。政府は「移民政策とは異なる」としているが、単純労働者の受け入れを公認するもの。外国人労働者はすでにわが国経済を支えているが、多くが低賃金で劣悪な労働を強いられている。このままでの受け入れ拡大は、労働者全体の待遇悪化につながる。

規制改革、農林業中心に企業奉仕
 政府の規制改革推進会議(議長=大田・政策研究大学院大学教授)が四日、答申を提出した。マンションなどでのガスの一括購入、オンラインでの服薬指導解禁などが盛り込まれた。農林水産業では、いちだんの土地集約や市場改革、農協改革の推進など、企業参入を進める策が続々。一方、「限定正社員」の普及や解雇規制の緩和などの雇用関連は、働き方改革関連法案の審議への影響を恐れて先送りせざるを得なかった。財界からすれば「小粒」で、改革加速の要求はさらに強い。


経団連会長に中西氏
 会談連の定時総会が五月三十一日に開かれ、日立製作所の中西会長が、榊原・東レ顧問に代わって新会長に就任した。中西会長は、成長戦略、規制緩和や財政の構造改革、経済外交の推進を課題として掲げた。中西氏は日立社長時代、電力事業の大リストラや鉄道、原子力発電所の輸出などでらつ腕を振るった。日本企業が急速な技術革新に立ち後れ、国家財政を中心に危機を抱えるなか、打開を急ぐ財界の意思が反映した人事だ。


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