ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2018年6月5日号 トピックス

世界のできごと

(5月20日〜5月29日)

米朝会談「中止」表明も一転
 トランプ米大統領は五月二十四日、六月十二日にシンガポールで予定されていた朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との初の首脳会談の中止を表明した。ペンス副大統領やボルトン大統領補佐官らが朝鮮に一方的核放棄を迫り、韓国との航空戦訓練を強行、朝鮮の強い反発を招いていた。また、トランプ大統領は朝鮮の姿勢を習近平・中国国家主席の「影響」と決め付け、中国をもけん制した。だが、朝鮮は首脳会談の必要性を改めて表明すると、トランプ大統領はそれに飛びつき、「中止」表明の翌日には一転して開催に前向きな言動を繰り返した。中国やロシア、そして韓国などが主導する形での和平プロセスが進むことを恐れる、米国の右往左往ぶりを示している。

2回目の南北首脳会談、自主性堅持
 韓国の文在寅大統領と朝鮮の金正恩委員長が二十六日、板門店の朝鮮側施設で二回目の首脳会談を行った。両首脳は、四月に署名した「板門店宣言」の履行を確認、六月に離散家族の再会について議論する南北閣僚級会談を行うことや、赤十字会談の実施で合意した。朝鮮半島全体についての非核化に向けた努力も確認した。また朝鮮は、米国が一方的に中止を宣言した米朝首脳会談の実現へ「確固たる意思」を表明、南北が共に努力することでも一致した。米国の干渉を排し、朝鮮半島の平和環境の醸成に向けた南北首脳の確固たる意思が示された。

伊で続く混乱、世界のリスクに
 今年三月のイタリア総選挙で躍進した「五つ星運動」と極右「同盟」は二十日までに新政権における政策内容で合意、コンテ・フィレンツェ大学教授を新首相に指名した。だが、マッタレッラ大統領は経済相への欧州連合(EU)懐疑派の起用を拒否、大統領は二十八日、国際通貨基金(IMF)元高官を次期首相に指名、再選挙を命じた。その後、「五つ星」と「同盟」は、コンテ氏首班の連立政権で合意した。両党は歳出拡大で消費や経済成長を促すとともに、大型減税や失業者などへの最低所得保障の実施、難民への規制強化策で合意している。政治空白に終止符は打たれたものの、ユーロ圏一の公的債務を抱える同国の政治的混乱により、欧州債務危機の再燃がしかねない事態となっている。


ドイツ、独自外交活発化
 訪中したドイツのメルケル首相が二十四日、北京で李克強首相と会談した。十一回目の訪中となるメルケル首相は「自動運転分野で中国との交流を深めたい」と明言、李首相も「興隆する新たな科学技術革命に両国で向き合いたい」と応じた。メルケル首相は、米国のイラン「核合意」離脱と新たな制裁を批判、李首相も同意した。メルケル首相は訪中に先立ち、ロシアも訪問するなど、「米国第一」を掲げるトランプ政権のけん制を強く意識した外交を活発化させている。

人民のたたかい

(5月20日〜5月29日)


  韓国のソウルで二十八日、民主労総が最賃制度改悪に抗議するストライキの突入集会を開催、約五千人が参加した。
 ブラジル各地で二十一日、トラック労働者が燃料費の高騰に抗議するストライキを行った。労働者らは道路を封鎖、生活物資の高騰に苦しむ市民も合流した。
 フランス全土で二十八日、マクロン政権による緊縮政策などに反対するデモ「人民の波」が行われ、二十八万人が参加した。二十一日には賃上げを求め、公務員制度改革に反対するストライキが全国で行われ、パリでは約一万五千人が抗議デモを行った。
 モロッコのカサブランカで二十日、米在イスラエル大使館のエルサレム移転に抗議し、パレスチナ連帯デモが行われ、約一万人が参加した。

日本のできごと

(5月20日〜5月29日)

「働き方改革法案」委員会で強行可決
 「働き方改革関連法案」が五月二十六日、衆議院厚生労働委員会で過労死遺族が傍聴するなか、自民党、公明党、日本維新の会などの賛成で強行可決された。法案は、残業時間の上限規制や一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」導入などを含む。多国籍大企業の競争力強化のため、労働者には過労死レベル以上の残業が容認される。厚労省が、法案の基礎となったデータを改ざんしたことも明らかになっている。与党は六月二十日までの会期を延長してまで成立を狙っているが、廃案に追い込む以外にない。

悪法続々審議入り
 カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案が二十二日、衆議院で審議入りした。国内三カ所にカジノ設立を認めるもので、「依存症」対策はきわめて不十分なもの。また、衆議院農林水産委員会では二十三日、卸売市場法と食品流通構造改善促進法の改悪案の審議が本格化した。企業による卸売市場開設を認め、市場運営を企業に有利なものとすることに道を開くもの。すでに審議入りした環太平洋経済連携協定(TPP11)関連法案と併せ、悪法が次々と審議入りしている。

日ロ首脳会談、領土問題進展なし
 安倍首相とプーチン・ロシア大統領による首脳会談が二十六日、モスクワで行われた。両首脳は、北方領土での共同経済活動を進めるための民間事業者による調査団の派遣や日ロの外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の年内開催などで合意した。今回が二十一回目の首脳会談となるが、北方領土問題の進展はほとんどない。共同経済活動でさえ、事業の前提となる制度面での合意ができておらず、ロシアは「返還後」の米軍駐留を警戒している。領土問題の進展なき融和策には、保守層からさえ不満が高まっている。

さらなる社会保障費削減もくろむ
 政府は二十一日の経済財政諮問会議で、将来の社会保障費の見通しを公表した。二〇四〇年の社会保障給付費は年間百九十兆円になるという。この推計は、「財政危機」をあおり社会保障給付削減の世論づくりを進める狙い。政府の財政審議会は同日、二五年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を黒字化すること、債務残高の対国内総生産(GDP)比を一八〇%台前半とすることなどを提言した。安倍政権は社会保障費の伸びを毎年五千億円以下に抑える措置を続けているが、さらなる給付削減は必至だ。

「農業白書」、将来展望示さず
 政府は二十二日、一七年度版の「農業白書(食料・農業・農村の動向)」を閣議決定した。TPP11署名、日欧経済連携協定(EPA)協議など、農業を取り巻く環境はさらに厳しいが、四十九歳以下が働くコメ農家での規模拡大が進んでいることを自賛するのみ。種子生産を都道府県に義務付ける「種子法」廃止については説明すらない。「白書」は、衰退が進む日本農業を再生させる展望を示していない。

自民、大軍拡を提言
 自民党の安全保障調査会の主要メンバーが二十四日に会合を開き、政府が今年末に見直す「防衛計画大綱」「中期防衛力整備計画」(中期防)に向けた提言案をまとめた。将来の防衛予算の「参考値」として、「GDPの二%」を明記することを含む。一八年度予算で計算すると、防衛費は十兆円を超える。米国が北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国に要求しているものと同水準で、武器輸出拡大を狙う米国に奉仕し、米軍を補完して中国に対抗する狙いだ。


加計・森友めぐり次々暴露
 中村・愛媛県知事は二十一日、加計学園の獣医学部新設をめぐる問題で、同学園理事長と安倍首相が一五年に面談したという記録を公表した。だが、首相は面会を否定、一七年まで新設計画を知らなかったとの説明を繰り返した。加計学園は「面会は誤った情報」などとのコメントを発表、首相を側面支援した。中村知事が厳しく批判したのは当然。森友学園問題でも、財務省が「廃棄」としていた土地売却交渉記録が国会に提出された。ここでも、麻生財務相が文書改ざんを「悪質でない」などと無反省な言動に終始、安倍政権による国政私物化は底なしだ。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2018