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労働新聞 2018年5月25日号 トピックス

世界のできごと

(5月10日〜5月19日)

米中高官級協議、ひとまず「保留」
 米国と中国がワシントンで開いていた、二回目の高官級協議が五月十八日、終了した。共同声明では、米国の貿易赤字削減のため、中国が米国産資源や農産物の輸入拡大、サービス分野の市場開放を進めることで合意した。ただ、米側求めた数値目標の設定や、「中国製造二〇二五」での補助金停止などは拒否された。ムニューシン米財務長官は「貿易戦争を当面保留する」と述べ、知的財産権をめぐる対中制裁を棚上げして協議を継続するとした。トランプ政権は中間選挙を前に「実績づくり」を急いだが、中国を抑えこむ戦略的狙いは変わらず、圧力がこれで終わることはない。

米国、朝鮮圧迫を継続
 米韓両軍は十一日、航空戦闘訓練「マックス・サンダー」を開始した。演習には、核兵器を搭載できる米戦略爆撃機B52やステルス戦闘機F35など約百機が参加した。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は「板門店宣言」に対する「重大な挑戦」と批判、十六日に予定していた南北閣僚級会談の中止を表明した。朝鮮は米国にも、米朝会談に「応じるかどうかを考慮する」と警告した。これを受けて韓国は、訓練にB を投入しないとした。朝鮮の狙いは、朝鮮の一方的核放棄を主張するボルトン大統領補佐官ら米国をけん制すること。六月の首脳会談に先立ち、米国は朝鮮に圧力をかけ続けている。

米、イラン制裁を強化
 米財務省は十日、米国によるイラン「核合意」離脱に伴う追加制裁を発表した。革命防衛隊との関与を口実に、イランの九個人・団体の資産凍結、米国企業との取引禁止などを課した。他国とイランとの原油取引を制限する制裁措置の再開も表明している。イランは、ザリフ外相が欧州、中国、ロシアを訪問するなどで包囲を打ち破ろうとしている。欧州諸国は「核合意」の保持を表明、イランに進出済みの欧州企業が米国の制裁の例外となるかどうかで、米欧矛盾も激化している。米国への国際的批判は高まるばかりだ。


大使館移転への抗議広がる
 米国によるエルサレムへの大使館移転に対し、パレスチナ人民の憤激が高まっている。パレスチナ自治区ガザで十四、十五日、デモ行進が行われ、イスラエル軍の弾圧で死傷者は三千人近くに達した。十五日はイスラエルの建国で七十万人以上が難民となった「ナクバ(大惨事)」から七十年目にあたる。同日、国連安全保障理事会の緊急会合が開かれたが、ヘイリー米国連大使はイスラム原理主義組織・ハマスに責任を転嫁、移転を正当化した。イスラエルへの批判は国際的に高まり、擁護する米国は孤立を深めている。

マハティール氏が首相に返り咲き
 マレーシアで十日、総選挙で初めての政権交代となったことを受け、野党連合議長のマハティール氏が首相に返り咲いた。野党は、ナジブ政権による増税や腐敗に対する国民の批判の受け皿になった。かつて東アジア経済協議体(EAEC)を提唱したマハティール氏が、対アジア外交などでどのようなかじ取りを行うか、注目される。

人民のたたかい

(5月10日〜5月19日)


  韓国で十日、文在寅政権発足一周年に際し、キャンドルデモを主導した「民衆総決起闘争本部」が「民衆共同行動」に改組された。
 韓国で十一日、公共文化芸術機関で働く照明、音響などの労働者が、人員補充を要めてストライキに突入した。
 ノルウェーで十五日、国営放送局(NRK)の労働者一千七百人が、他社との賃金格差の是正を求めてストライキに入った。
 イラン全土で十八日、イスラエル・エルサレムへの米大使館移転を非難してデモ行進が行われた。参加者は、「米国に死を」「イスラエルに死を」と叫んだ。

日本のできごと

(5月10日〜5月19日)

TPP11承認案、今国会で成立へ
 米国を除く環太平洋経済連携協定加盟十一カ国による新協定(TPP11)の承認案が五月十八日、衆議院本会議で自公与党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。憲法の定めにより今国会での成立が確定した。衆議院外務委員会での審議はたった六時間で、本会議では賛成討論さえ行わない拙速ぶり。政府・与党は、農業だけでなく国のあり方そのものをうらなう重大な協定の批准をまともな審議もせず強行、売国政権の本性をあらわにした。

島サミット、中国対抗随所に
 日本が議長国として福島県いわき市で開催していた第八回太平洋・島サミットが十九日、閉幕した。一九九七年から三年に一度開催されており、太平洋島しょ国十六カ国・地域の首脳らが参加した。安倍首相は「自由で開かれたインド太平洋戦略」への協力を求め、海上保安能力が低い島嶼国への支援策を打ち出した。また、影響力を増す中国の支援を「返済能力を無視したインフラ開発」などと批判した。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対しても洋上で物資を移し替える「瀬取り」を含む制裁回避戦術に「深刻な懸念」を表明した。米戦略に沿って中国封じ込めの役割を買って出ている。

「働き方」で虚偽データ2割も削除
 厚生労働省は十五日、労働時間の調査結果に大量の虚偽データが含まれていた問題で、調査対象の一万千五百七十五事業所のうち二割強に当たる二千四百九十二事業所のデータに「異常値」があったとして削除したと発表した。問題とされたのは「二〇一三年度労働時間等総合実態調査」で、一日の労働時間が二十四時間を超えるなど九百六十六事業所のデータを裁量労働制の千五百二十六事業所データとともに撤回した。同調査は、働き方改革関連法案作成の基礎。虚偽データに基づいた同法成立を押し通そうとするなど、与党の態度は暴挙そのものだ。

「働き方」で修正・協議の動き次々に
 自公与党と維新は十八日、働き方改革関連法案の焦点となっている高度プロフェッショナル制度(高プロ)などの一部修正で大筋合意した。高プロ適用に同意後も自らの意思で撤回できる規定を盛り込むなどの内容だが、制度悪用の歯止めにさえならない。また十七日には神津・連合会長が菅官房長官と面会、非正規雇用労働者の処遇改善などを求めたが、高プロ反対は「自粛」した。与党に屈し、実質的に悪政推進の尻押しをする「協議」は、労働者への裏切りでしかない。

GDP2年ぶり減、安倍政権の弊害
 内閣府は十六日、一八年一〜三月期の国内総生産(GDP)速報値を発表した。実質の季節調整値で前期比〇・二%減、年率換算で〇・六%減と、二年三カ月ぶりのマイナス成長となった。野菜やガソリンなどの値上がりで個人消費が低調だったほか、住宅投資も落ち込んだ。政府は「天候による一時的な要因」を強調したが、安倍政権下で実質賃金が下がり続けるなど家計・国民経済の疲弊が根底要因であり、政治が原因の「人災」だ。

陸上イージス、秋田・山口配備を明言
 小野寺防衛相は十五日、政府が二三年度の導入を計画している地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備先について、秋田、山口両県を候補地としていることを明言した。政府は昨年、同二基の導入を閣議決定、今年度予算に地質・測量調査などの経費を計上している。政府は「朝鮮の弾道ミサイル」を口実にし、東アジアの緊張を高める姿勢を変えずに一基約一千億円もの同機導入を進めようとしている。


沖縄の世界自然遺産登録、基地が障害
 国連教育科学文化機関〈ユネスコ〉の諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)は十五日、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島県、沖縄県)の世界自然遺産登録を「登録延期」と評価した理由を公表した。IUCNは、沖縄本島にある米軍北部訓練場が指定範囲が断片的で生物学的な持続可能性の基準に合致しないと指摘、訓練場の返還地も管理計画に入れることや、固有種が生息する現訓練場に管理が及ぶよう調整メカニズムを設けるなどを提案した。世界遺産登録を振興策にともくろんでいた政府には痛手だが、真っ当な指摘だ。


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