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労働新聞 2018年5月15日号 トピックス

世界のできごと

(4月20日〜5月9日)

南北首脳会談、平和協定で合意
 韓国の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の金正恩・朝鮮労働党委員長は四月二十七日、板門店で十一年ぶり、三回目の南北首脳会談を行った。会談は、「南北は、わが民族の運命は我々自身で決めるという民族自主の原則を確認」するという民族自決の立場を宣言、朝鮮半島の非核化や、年内に朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換などを内容とする「板門店宣言」で合意した。文大統領が今秋、平壌を訪問することでも合意した。この会談について中国など周辺国をはじめ、欧州各国も歓迎を表明した。米国も「勇気づけられた」(トランプ大統領)という姿勢だが、一方で朝鮮に「二〇二〇年までの核放棄」を突きつけており、六月に行われる米朝首脳会談に向け、駆け引きが続いている。

2回目の中朝会談、米国を強くけん制
 朝鮮の金・労働党委員長は五月七日、中国・大連を訪れ、習近平国家主席と会談した。金委員長は三月に北京を訪れて習国家主席と会談しており、今回は二回目の会談。金委員長は先の南北首脳会談について説明、核放棄に向けて米国による敵視政策の転換の重要性を改めて指摘、習主席も朝鮮によるこの間の対話姿勢を高く評価した。六月に予定されている米朝首脳会談に向け、朝鮮へ一方的な核放棄を迫るトランプ政権に対し、中朝連携で警告を発するものとなった。

米、中国へ「貿易戦争」
 ムニューシン財務長官、ライトハイザー通商代表部(USTR)ら米国の通商代表団と中国の劉鶴副首相らによる米中の貿易摩擦をめぐる協議が四日、行われた。米側は中国に対し、対中赤字(二〇一七年で約三千八百億円)を二〇年までに二千億ドル圧縮することや、米国を上回る関税率の製品をなくすこと、また「中国製造二〇二五」への補助金を停止することを迫った。一方中国側は、ハイテク製品の対中輸出制限の緩和や世界貿易機関(WTO)協定上の「市場経済国」の認定などを求めた。実質的な協議は以降に持ち越されたが、「米国第一」を掲げるトランプ政権は秋の中間選挙も見据えながら、中国に対する本格的な「貿易戦争」を仕掛け始めた。その影響は世界経済にも響くもので、全世界を巻き込むものである。


米国がイラン核合意から一方的に離脱
 米国のトランプ大統領は八日、米国が二〇一五年にイランや欧州諸国などと結んだ「核合意」から離脱すると発表、停止していた経済制裁を再開する方針を表明した。オバマ前政権下で締結された核合意は国連安保理決議のお墨付きも得ていたが、トランプ大統領は「弾道ミサイル開発を制限していない」「周辺国でテロ組織を支援している」などとして一方的に離脱した。背景には、秋の中間選挙に向けてユダヤ票を取り込む狙いがある。中長期的には、ロシアや中国へのけん制策だ。破棄後、イスラエルがシリア領内のイランの拠点に空爆を繰り返すなど、軍事的緊張と人民の反米感情が高まっている。合意破棄により、米国の国際的孤立と影響力低下がさらに進むことは避けがたい。

ロシアのプーチン政権、4期目発足
 ロシアのプーチン大統領が七日、モスクワで就任宣誓を行った。通算四期目で、さらに六年の任期を務める。三月の大統領選挙で得票率七六%と大勝したが、米欧からの経済制裁などで景気が低迷するなど国内政治には難題も抱えている。ただ、シリア問題では対立するトルコ、サウジアラビアさらにイスラエルとの関係も強化するなど、多面的外交で国際的影響力も高めている。プーチン政権の政権運営は、米国の今後をも大きく左右する。

アルゼンチン、IMFへ支援要請
 アルゼンチンは八日、通貨ペソの急落を受け、国際通貨基金(IMF)に支援要請したことを明らかにした。支援策は三百億ドル(約三兆二千七百億円)の融資枠を設け、通貨防衛に当てる。米長期金利上昇のあおりを受け、ペソは対ドルで急落していた。アルゼンチンによる〇一年にデフォルト(債務不履行)は、前年のIMFの緊急支援がその引き金になったとも見方も強い。米連邦準備理事会(FRB)が緩和政策の「出口」を進めるなか、通貨安が新興諸国に波及すれば危機が拡大する可能性もあり、予断を許さない。

人民のたたかい

(4月20日〜5月9日)


  南アフリカのヨハネスブルクで四月二十五日、政府提案の最賃額が不十分だと抗議するデモが行われ、数千人が参加した。政府案は時給二十ランド(約百七十五円)。三十労組八十万人を要する南ア労働組合評議会は政府案の撤回と大幅賃の上げを求めている。
 ドイツのベルリンで二十四日、アマゾンで働く労働者や市民がデモ行進を行った。独最大のメディア企業がアマゾン創業者を表彰したことに抗議したもの。独ではアマゾンで働く労働者が過酷な労働条件に抗議してストライキなどで闘っている。
 ドイツで二十四日、オペル自動車工場がある東部アイゼナハで同社の労働者千四百人が会社側の人員削減などに反対する集会とデモを行った。
 フランスのパリで五月五日、マクロン政権の改革攻撃に抗議する行動が行われ、約十万人が参加した。参加者は「一年でもうたくさん」と連呼した。
 韓国で四月二十四日、同国のシャネルで働く労働者が最賃に満たない賃金引き上げを求め各地でストを行った。
 米国西部のアリゾナ州で二十六日、公立学校の教育労働者が教育予算の増額を求めストを行った。労働者は州議会に向けてデモ行進した。

【世界のメーデー】
 韓国では民主労総が全国で集会を開催、ソウルでは約二万人の労働者が詰め掛け、整理解雇の中止や同一労働同一賃金の実現などを求めた。
 フィリピンのマニラでは数千人がデモ行進、ドゥテルテ政権に対して、労働法制の改正を迫った。
 米国では全国で集会やデモなどが取り組まれた。ワシントンでは賃金引き上げ、労働者の権利拡充とともに、トランプ政権の下で深刻化する人種差別に反対する訴えが行われた。各地のファストフード店では賃上げや労働条件の向上を求めるデモも行われた。
 フランスではマクロン政権による公共部門解体攻撃に反対するデモ行進が各地で行われた。パリでは青年・学生も合流した。
 ドイツでも各地で集会、デモが行われ、約五百カ所三十四万人が参加した。

日本のできごと

(4月20日〜5月9日)

日中韓首脳会談、「圧力」で孤立
 安倍首相、李克強・中国首相、文在寅・韓国大統領による、二年半ぶりの日中韓首脳会談が五月九日、東京で開かれた。会談は、会談の定期開催や自由貿易協定(FTA)交渉の加速、朝鮮半島の「平和と安定」などを含む共同声明を発表した。だが、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の「核放棄」へ「圧力をかけ続ける」という日本と、対話と「非核化」を並行させるべきとする中韓との溝は埋まらなかった。日中韓の関係強化はままならない。

日中、日韓首脳会談
 安倍首相と李克強・中国首相による日中首脳会談が九日、開かれた。会談は、トランプ政権が仕掛ける対中「貿易戦争」を横目に、日本の金融機関による人民元建て投資への規制緩和や通貨交換(スワップ)協定の再開に向けた協議入りなど、経済を中心に実務レベルの合意が進んだ。同日の日韓首脳会談では、シャトル外交の加速、拉致問題解決に向けた協力などを確認した。だが、両会談とも、歴史問題などの懸案を棚上げにして「雪解け」を演出したもの。中韓とも安倍首相に朝鮮との対話を促すなど、日本の孤立と立ち後れは鮮明だ。

安倍首相が中東訪問
 安倍首相は四月二十九日から、中東のアラブ首長国連邦(UAE)など四カ国を歴訪した。UAEとは経済・防衛面での協力、ヨルダンには資金拠出を表明した。イスラエル、パレスチナとの会談では、中東和平への「直接対話」を呼びかけたが、「非常に厳しい」(アッバス・パレスチナ自治政府大統領)などと拒否された。トランプ米政権が、大使館移転などで批判を受けるなか、安倍政権は「独自性」を装って米戦略を側面支援した。

ADB総会で中国に対抗
 アジア開発銀行(ADB)が五月五日、フィリピンのマニラで年次総会を開いた。中国の余蔚平財政副部長が「アジアインフラ投資銀行(AIIB)や新開発銀行(BRICS銀行)などとの協力を強めるべき」「『一帯一路』など地域協力の枠組みとの連携を深めるべき」と呼びかけたのに対し、麻生財務相は「質の高いインフラ投資」を強調して対抗した。財務相は、中国を念頭に「意図的に貸し込んで取り上げるのは不幸」とまで難クセを付けたが、中国の存在感の高まりの前に同調する国はなく、「負け犬の遠吠え」にしかならなかった。

安倍政権の不祥事は「底なし」
 政府は四月二十四日、女性記者へのセクハラが報じられた福田財務省事務次官の辞任を了承した。だが、福田氏は犯行を否定、麻生財務相も「セクハラ罪はない」などと擁護を繰り返した。財務省では、佐川国税庁長官が決裁文書の改ざんで辞任したのに続く不祥事。野党六党はこれに先立ち、財務相の辞任などを求めて審議を拒否した。安倍政権・与党は、「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、柳瀬元首相秘書官の参考人招致に応じざるを得なくなった。また元秘書官は、当初否定していた、学園関係者との面会の事実を認めた。これにより国会は「正常化」されることになったが、安倍政権の腐敗と不祥事は「底なし」で、国民はあきれ果てている。

TPP11が審議入り
 米国を除く十一カ国が署名した環太平洋経済連携協定(TPP11)関連法案が五月八日、衆議院で審議入りした。同協定を「成長戦略の切り札」とする安倍政権は、メキシコが国内手続きを終え、トランプ米政権が日本に新たな通商協議(FFR)を迫るなかで焦りを深め、六月の会期末までの成立を狙っている。だが、政府試算でさえ、農業生産額が畜産物を中心に最大一千五百億円も減るなど、国内産業への被害は甚大。国民各層の批判に加え、国会日程の関係で関連法案の成立は難航が予想され、安倍政権の通商戦略の実行は容易ではない。


財政債権目標年をさらに先送りへ
 政府の経済財政諮問会議は四月二十四日、六月に発表予定の「財政健全化計画」について議論した。基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化する目標年度を、従来から五年先送りし、二〇二五年度とする方向で検討に入った。一九年十月に予定する消費税再増税の際の景気対策や「教育無償化」への財政充当が理由だが、社会保障費の伸びを年五千億円程度に抑える目標は踏襲する。この目標年度でさえ、名目年三%以上の成長率を前提にしたもので、実現のあてはない。「先進国最悪」の財政状況を打開する方策はなく、際限のない国民犠牲策が進む。

国民民主党が結成
 希望、民進両党は五月七日、新党「国民民主党」の設立大会を開いた。希望の党の玉木代表、民進党の大塚代表が共同代表に就任し、「新たな政権を担う核」と宣言した。連合中央が結党を後押ししたが、参加したのは旧民進党系議員の六割にも及ばぬ六十二人で、立憲民主党に及ばず野党第二党にとどまった。閣僚経験者を中心に参加しない議員が相次ぎ、さらに保守系は「新希望の党」として分裂した。綱領や結党宣言を見る限り、歴代対米従属政治に対する評価やこれを転換する姿勢は皆無で、安倍政権への対抗軸にはなり得ない。一九年の参議院選挙を前にした「数合わせ」にすぎず、国民が期待していないのは当然だ。


連合メーデー、低調に
 連合が主催するメーデー中央大会が二十八日に開かれ、四万人の労働者が参加した。「働く者のための働き方改革」などをスローガンに掲げ、神津会長はあいさつで「長時間労働の是正や同一労働同一賃金に魂を入れ込む」などと述べた。だが、政府が提出した「働き方改革」関連法案への態度はあいまいで、わずかに、残業代をゼロにする「高度プロフェッショナル制度」は「趣旨が異なる」と述べるのみ。旧民進党の分裂で政党あいさつさえ行えず、一時間弱で終了する低調な集会となった。大幅賃上げと悪政との闘いに、現場労組の闘いと連携が求められている。



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