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労働新聞 2018年4月5日号 トピックス

世界のできごと

(3月20日〜3月29日)

中朝首脳会談、米国にらみ関係改善
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の金正恩・労働党委員長が訪中、三月二十六日に習近平国家主席らと会談した。金委員長の外国訪問は初めて。金委員長は「(米韓が)平和安定の雰囲気をつくり出す」なら「金日成主席と金正日総書記の遺訓に基づき朝鮮半島の非核化」は実現できると述べたとされる。国家関係の改善だけでなく、事実上、両党関係の再開でも合意した。南北・米朝首脳会談の開催合意でアジア情勢が流動化し始めるなか、中国は朝鮮との関係改善で影響力を保持し、米国をけん制することを狙った。朝鮮は、中国の支持確保で米国の包囲を打ち破ろうと、自主外交を進めている。

米、中国を主敵に貿易戦争開始
 トランプ米大統領は二十二日、「知的財産権の侵害」を口実に、中国製品に高関税を課す大統領令に署名した。通商法三〇一条(スーパー三〇一条)を根拠とし、情報通信機器など約一千三百品目に二五%、総額約六百億ドル(約六・三兆円)の関税を課すと想定される。二十三日には、鉄鋼やアルミニウムの輸入制限を発表、即日実施した。諸国は強く反発、主たる標的にされた中国は対抗措置を準備し始めた。中間選挙を前にしたトランプ政権が、自国の衰退を巻き返すためになり振り構わぬ「貿易戦争」を始めざるを得なくなったもので、世界のリスクをさらに拡大させる。

G20、共同声明で米国をけん制
 アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれていた二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は二十日、共同声明を採択して閉幕した。声明は、世界経済の「下方リスク」を確認、米国の金利上昇などに伴う市場変動に「注意を喚起」した。さらに、米国を念頭に、保護主義の広がりに「さらなる対話と行動が必要」とうたった。世界なIT(情報技術)企業への課税について二〇二〇年までに合意をめざす方針も確認した。会合では、ムニューシン米財務長官が「(輸入制限は)不公正な貿易慣行に対応したもの」と責任を中国に転嫁したが、米国への批判が相次いだ。米国の策動により、国際協調はますます崩れている。


米欧がロシア外交官追放
 米国と欧州十七カ国は二十六日、英国での「元スパイ暗殺未遂事件」を口実に、ロシア外交官らの国外追放を発表した。なかでも、米国は六十人を追放、シアトルのロシア領事館を閉鎖させた。米大統領選挙への「介入」を理由とした制裁に続き、米国はロシアへの圧力と包囲をさらに強化している。関与を否定するロシアは、「同等の報復措置」をとるとして、外交官の追放を示唆(しさ)している。ただ、ドイツからの追放はわずか四人にとどまり、与党内にも反対がある。ギリシャも慎重姿勢を崩さないなど、米欧の足並みは必ずしも一致していない。

人民のたたかい

(3月20日〜3月29日)


  フランス各地で二十二日、マクロン政権による十二万人の公務員削減や有給休暇廃止などに抗議する大規模なストライキやデモが行われ、交通機関の運休が相次いだ。パリでは約五万人がデモを行い、徹底抗戦を呼びかけた。
 スペイン・カタルーニャ州で二十六日、プチデモン前自治州首相がドイツで拘束されたことに抗議し、数千人がデモ行進を行った。
 韓国・ソウルで二十四日、全国労働者大会が開かれ、二万人の労働組合員が参加した。参加者は、最低賃金政策、非正規労働者の正規化、財閥の改革などを要求した。
 インドネシアのジャカルタで二十七日、配車アプリで働く運転手数百人が、待遇改善を求めて、大統領官邸までデモ行進した。
 米国全土八百カ所で二十四日、銃規制強化を求める「命のための行動」が行われ、高校生を中心に百万人が参加した。ワシントンでは八十万人が結集した。

日本のできごと

(3月20日〜3月29日)

佐川氏証人喚問で疑惑深まる
 学校法人森友学園との国有地取引での財務省の決裁文書改ざん問題をめぐり、当時の理財局長だった佐川前国税庁長官の証人喚問が三月二十七日、衆参両院の予算委員会で行われた。佐川氏は「刑事訴追を受ける恐れがある」として五十五回も証言拒否を乱発、一方で安倍首相や妻の昭恵氏、政権関係者などから改ざんの指示があったのか問われた場合のみ「ございません」と断言するなど、政権に責任が及ぶことを回避する答弁に始終した。与党はこの証人喚問をもって「首相らの疑惑は晴れた」などと幕引きを図っているが、疑惑はむしろ深まり、国民の目には安倍政権が官僚に責任を押し付けて逃げおおせようとしているようにしか映りようがない。

米が対日制裁発動、安倍首相を一蹴
 トランプ政権は二十三日、鉄鋼とアルミニウムに対する輸入追加関税措置を発表、即日実施した。トランプ大統領は「安倍首相らはほくそ笑んでいる。そんな日々はもう終わりだ」などと名指しで批判した。忠犬のごとく米国に擦り寄ってきた「実績」などを根拠に、日本が対象外となるという「観測」を振りまいてきた安倍政権には打撃。米国は日米自由貿易協定(FTA)によるいちだんの市場開放を求めることが確実。わが国財界は「しっかりと対応してほしい」(榊原・経団連会長)と、安倍政権に注文を付けた。経済同友会の小林代表幹事は、環太平洋経済連携協定(TPP11)などで、世界経済における日本の「主導権」を主張した。通商問題をめぐり、財界内にさえ対米矛盾が拡大している。

陸自に「日本版海兵隊」発足
 陸上自衛隊は二十七日、全国の部隊を一元的に指揮する「陸上総隊」と離島奪還作戦の専門部隊「水陸機動団」を新設した。相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に配備される水陸機動団は「日本版海兵隊」と位置付けられ、朝霞駐屯地(東京都、埼玉県)に設置される陸上総隊の直轄。二個の水陸機動連隊のほか、水陸両用車を装備する戦闘上陸大隊、支援部隊など約二千百人態勢で構成される。前線への迅速な部隊投入体制づくりが狙いで、「南西諸島の防衛強化」を目的に掲げているが、集団的自衛権の行使を可能とする安保法制下では米軍と共同した海外侵攻作戦も可能になる。自衛隊創隊以来、最大の改革とも位置付けられている組織改編は、中国対抗・包囲を狙う米国のアジア戦略に沿ったものだ。

中学道徳初の検定、「愛国心」評価へ
 文部科学省は二十七日、二〇一九年度から使用される中学校の道徳などの教科書検定結果を公表した。新たに正式教科となる道徳の教科書検定は、昨年度に小学校で行われ、中学校では初。〇七年に学校教育法で義務教育の目標に愛国心教育が盛り込まれるなど道徳の教科化への動きが徐々に進み、「いじめ」などを口実に政府の教育再生実行会議は教科化を提言、小学校は一八年度、中学校は一九年度からの導入が決まっている。教科書を使って「国を愛する態度」などを生徒に教え、一人一人を評価する授業が始まるが、その内容には今後いっそう警戒が必要だ。

天皇訪沖、軍事要塞化の旗振りも
 天皇・皇后は二十七日、沖縄を訪問した。在位中では最後となる今回の沖縄訪問は、明治政府が武装した兵士や警官を従えて首里城に押しかけ廃藩置県を布達した「琉球処分の日」に行われ、中国をにらみ自衛隊の配備・強化が進められている与那国島を初めて訪問、住民と交流した。マスコミは沖縄に「寄り添う」などと報じるが、米国のアジア戦略に沿った南西諸島の軍事機能強化の側面支援で、許し難い。

都議会で「デモ封じ条例」成立
 東京都議会は二十九日、「改正」迷惑防止条例を賛成多数で可決した。条例には「つきまとい」など四類型だった規制対象に「名誉を害する事項を告げること」など三類型が追加された。だが、この「名誉を害する」を理由に、デモ行進なども捜査機関の腹ひとつで取り締まりが可能になる。「東京版治安維持法」などとも言われる今回の条例改定は、政権批判の国会前デモなどを封じたい安倍政権への小池都知事からの援助であり、到底認められない。


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