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労働新聞 2018年2月15日号 トピックス

世界のできごと

(1月30日〜2月9日)

トランプ政権、新核戦略を発表
 トランプ米政権は二月二日、今後五〜十年の新たな核戦略の指針として「核体制の見直し(NPR)」を発表した。核使用の条件を「非核攻撃」にも広げ、「使える」小型の核弾頭など新型核兵器の開発を打ち出したことが最大の特徴。核軍備増強はオバマ政権時代からの継続だが、昨年末に発表された「国家安全保障戦略」で、中国やロシアを名指ししたことと関連し、世界支配を維持するためになり振り構わぬ姿勢を公言したもの。だが、政府機関が閉鎖に追い込まれるなど財政状況が深刻さを増す米国にとって、軍拡は自国の衰退を早めることは必至だ。

トランプ一般教書で大投資打ち出す
 トランプ米大統領は一月三十日、一般教書演説を行った。「誇り高き米国の建設」を掲げ、戦後最大の一・五兆ドル(約百六十三兆円)規模のインフラ整備を打ち出した。「ロシアゲート問題」などで政権支持率が低迷するなか、大型減税と併せて、秋の中間選挙に向けた対策。また、朝鮮民主主義人民共和国への敵視のほか、中国、ロシアを「ライバル」と名指しした。だが、大型投資が経済再生に資する保証はない上、長期金利の上昇と財政状況のさらなる悪化は必至。結局、演説で述べた「不公平な貿易協定を転換」など、他国に犠牲を強いる以外に手段はなく、米国の危機と国際的孤立はますます深まることになる。

世界的株安、危機が露呈
 米国のダウ工業株三十種平均が二日、六百六十六ドル下げと、リーマン・ショック直後以来の大幅下落を記録した。以降も世界的に株価の乱高下が続いている。直接には、米国の雇用統計が「好調」であったことから、インフレ懸念が広がって長期金利が上昇したこと。底流には、世界的な金融緩和による「カネ余り」と、日本を除く中央銀行が「出口」に動き投機マネーの流れが変調をきたしたことがある。株価などのバブルをあおることで、危機を先延ばししてきた手口の行き詰まりを示す。新興諸国からの資金流出や財政赤字国の破綻の危機をはらみながら、世界経済の危機はますます深刻化しつつある。


ドイツ、大連立で合意
 ドイツで七日、メルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社民党(SPD)による連立協議が合意に達した。両党とも、昨年九月の総選挙以来続く「政治空白」を嫌う支配層の意をくんだ形だが、野党第一党となる「ドイツのための選択肢」(AfD)の台頭を抑える狙いもある。正式発足にはSPDの党員投票を経なければならないが、辞任を表明したシュルツ党首が外相に就任予定であることに下部党員が反発しており、今後も曲折は不可避。欧州の中心国であるドイツの政治リスクは、依然として高いままである。

人民のたたかい

(1月30日〜2月9日)


  ドイツの金属労組(IGメタル)が一月三十一日、六%の賃上げと週二十八時間労働を求めてストライキに入った。三日に渡るストには、五十万人が参加し、時短要求を勝ち取った。
 フランス全土で三十日、介護労働者と看護師がストライキを行い、政府による介護予算削減に抗議した。主要五労組の七千人が参加した。
 フィンランドで二月二日、失業給付の削減に反対し、二十万人がストライキを行った。
 ブラジル・サンパウロ市で一月三十日、年金生活者ら二千人が社会保障制度改革に反対してデモ行進を行なった。
 韓国で一日、民主労総公共運輸労組郵便局施設管理団支部が時限ストを行った。集会には五百人が参加し、直接雇用や賃上げを求めた。
 ベトナム・ドンナイ省の工業団地にある韓国系縫製工場で九日、労働者約一千人が、給与未払いに抗議してストライキを行った。

日本のできごと

(1月30日〜2月9日)

日韓首脳会談、南北対話妨害に始終
 安倍首相は二月九日、平昌冬季五輪の開会式出席に合わせて韓国の文大統領と会談した。首相は五輪を機に南北融和を前進させる大統領に「(朝鮮民主主義人民共和国の)微笑外交に目を奪われてはならない」「対話のための対話は意味がない」「米韓軍事演習を延期すべではない」など時論を展開、従軍慰安婦問題をめぐる日韓合意についても「新たな措置を求める韓国の方針は受け入れられない」などとごう慢な姿勢に始終した。大統領は内政干渉じみた発言に不快感を示したという。その直前に会談した米国のペンス副大統領と歩調を合わせた南北対話への妨害策動は、南北朝鮮人民の意思に背を向け、アジアの信頼を失うものだ。

河野外相、米新核戦略を強く支持
 河野外相は三日、米国のトランプ政権の核戦略指針について「米国による抑止力の実効性確保と日本を含む同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを明確にした」と高く評価する談話を発表した。外相は八日にも国会答弁で「(ロシアと)小型核レベルでも相互抑止が成立、核使用の敷居はむしろ上がる」「核抑止と核軍縮は相反するものではない」と、米国の新核戦略を擁護した。朝鮮など他国には核放棄を迫る一方、米国の核開発は手放しで支持する属国ぶりをあらためて示した。

陸自ヘリ墜落、背景に過重な任務
 陸上自衛隊目達原駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)所属の戦闘ヘリコプターが五日、同県神埼市の民家に墜落、乗員二人が死亡した。近年、自衛隊では墜落などの事故が相次いでおり、昨年は五月に北海道北斗市の山中に陸自連絡偵察機が墜落し乗員二人が死亡、八月には青森県沖の日本海で海自ヘリが墜落し乗員二人が死亡、一人が行方不明になり、十月には浜松市沖で空自ヘリが墜落し乗員三人が死亡、一人が行方不明となった。米軍機事故も同様に相次いでいるが、背景には日米両政府が朝鮮半島の緊張をあおり任務負担を増加させている実態がある。

前途多難な成長戦略実行計画
 政府は一日、成長戦略を検討する「未来投資会議」(議長・安倍首相)を開催、今通常国会に約三十本の成長戦略関連法案を出すことを盛り込んだ二〇一八年の実行計画を了承した。首相は「社会が激変しようとするなかで行政は民間を後押しするエンジンに」と危機感を述べ、最重要課題と位置付ける働き方改革関連法案のほか、規制を一時凍結するサンドボックス制度など生産性革命法案、企業再編を促す産業競争力強化法改正案などを盛り込んだ。今年九月の総裁選に向けて成長戦略関連法案を今国会で確実に成立させて財界にアピールしたい安倍首相だが、働き方改革には労組や野党が「残業代ゼロ法案」と反対している。企業再編は中小企業の淘汰(とうた)でもあり、保守基盤をいちだんと掘り崩す。内外の反発は必至で、政権の思惑はすんなりとは進まない。

アベノミクス下で実質賃金また減少
 厚生労働省は七日、二〇一七年の毎月勤労統計調査(速報値)を発表した。実質賃金は前年比〇・二%減と、二年ぶりのマイナスに。月平均の現金給与は〇・四%増の三十一万六千九百七円と四年連続のプラスだったが、電気料金やガソリン代の上昇など消費者物価指数がそれを上回る〇・六%上がり、賃金の伸びが物価に追い付いていない状況。一六年に五年ぶりのプラスとなった実質賃金だが、翌一七年には再び前年を割り込んだ格好。安倍首相は春闘で経済界に「三%の賃上げ」を要請、アベノミクス失政による国民生活の貧窮化をごまかそうと必死だ。

困窮者の住宅火災、背景に悪政
 札幌市にある共同住宅が一月三十一日に全焼、十一人が死亡した。同施設は築五十年ほどの旅館を改築した木造二階建てで十六人が入居、ほとんどが六十五歳以上の単身高齢者で、十三人が生活保護受給者だった。身寄りのない低所得高齢者らが住む施設などで多くの人命が奪われる火災は毎年のように起きているが、背景には不十分な国の住宅政策の下、安全面で問題のある住宅・施設が生活に困窮し住まいを失った高齢者らの受け皿にされている実態がある。安倍政権は生活保護費の生活扶助や住宅扶助の引き下げを進めており、責任は重大だ。


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