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労働新聞 2018年2月5日号 トピックス

世界のできごと

(1月20日〜1月29日)

ダボス会議、米国の姿勢に批判噴出
 スイス東部のダボスで一月二十三日から、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が開かれた。トランプ米大統領は演説で「米国を最優先」と改めて表明、環太平洋経済連携協定(TPP)について「復帰」の可能性を示唆(しさ)したが、「米国に有利な条件の下で」とした。ムニューシン米財務長官もドル安で輸出を後押しすることを正当化した。こうした米国に対し、「(国際舞台で為替に言及しない)ルールから外れている」(ドラギ欧州中銀総裁)などの批判が集中した。ドイツのメルケル首相は人工知能(AI)の進展で増えるデジタルデータが米国企業に集中している現状を批判した。米国の孤立と、各国間の競争と対立の激化を示した。

米、与野党対立で政府機関一部閉鎖
 米議会上院で新年度予算案が成立しないなか、約一カ月のつなぎ予算案も民主党の反対で採決されず、二十日から政府機関の一部閉鎖が続いた。商務、労働両省などの政府職員の一時帰休や、経済統計の発表の遅れなどの影響が出ている。二十二日には二月八日までのつなぎ予算で与野党が合意したが、本予算の成立のメドは立っていない。与野党対立の直接の原因はトランプ政権によるDACA(幼少期に親と不法入国した若者の滞在を認める制度)廃止方針だが、米国内で広がる対立激化と分裂が強く反映したものだ。

米、中韓にセーフガード発動
 米通商代表部(USTR)は一月二十二日、太陽光パネルや洗濯機の輸入増に対抗するため中国、韓国に狙いを定めた緊急輸入制限(セーフガード)を発動した。パネルの発動期間は四年とで一年目は三〇%、洗濯機には五〇%の関税を課す。中国は「国内産業を過度に保護」と非難し、報復措置を示唆。韓国も世界貿易機関(WTO)への提訴を決めた。今回の措置はトランプ政権による保護主義の具体化で、通商政策をめぐる諸国との対立激化の端緒となり得るものだ。


エルサレム首都認定に続く反発
 米国のペンス副大統領は二十二日、イスラエル国会で演説し、エルサレム問題について「二〇一九年末より前に(米大使館を)開館する」と表明した。だが、エジプトのシン首相は「不同意」を明言、パレスチナのアッバス議長も会談を拒否するなど中東諸国・人民の反発は根強い。欧州連合(EU)のモゲリーニ外相もアッバス議長との会談で「エルサレムは二国家が分かち合う首都」と明言、ベルギーのミッシェル首相も国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金の増額を表明するなど、米国との違いを示した。米国に対し、国際的批判が続いている。

人民のたたかい

(1月20日〜1月29日)


  オーストラリア各地で二十六日、先住民への迫害に抗議するデモが行われた。シドニーで約三千人、メルボルンでは二万五千人がデモ行進した。
 パレスチナのエルサレム旧市街やヨルダン川西岸地区など各都市で二十三日、ペンス米副大統領の訪問に抗議するゼネストが行われた。ガザ地区では二十九日、米国が国連パレスチナ難民救済事業機関への拠出金を大幅に減額したことに抗議して同機関職員一万三千人がストライキを行った。
 米国各地で二十日、人種差別と女性べっ視をあおるトランプ大統領に抗議する「女性大行進」が行われ、約百万人が参加した。
 スイス各地で二十三日、ダボス会議へのトランプ米大統領の出席に反対するデモが行われた。
 ベルギーのブリュッセルで二十九日、欧州連合(EU)農相会合に合わせて、農民がEUの農業政策を批判してトラクターデモを行った。

日本のできごと

(1月20日〜1月29日)

施政方針演説で改革力説
 第一九六通常国会が一月二十二日、召集され、安倍首相が施政方針演説を行った。首相は生産性向上のための「働き方改革」を力説するとともに、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を「重大かつ差し迫った脅威」と決めつけた。「インド太平洋戦略」を再度取り上げ、「法の支配」などで中国へのけん制を強化することも示した。だが、米国からの通商要求や国民生活の悪化など、安倍政権を取り巻く環境はますます厳しく、政権の先行きは難題だらけである。

日中、懸案での溝は埋まらず
 訪中した河野外相は二十八日、王毅外相や李克強首相らと会談した。会談は、日中韓首脳会談の早期実現をめざすことや、双方の駐在員による社会保険料の二重払いを解消する社会保障協定の締結で合意した。だが、中国の潜水艦が沖縄県尖閣諸島周辺の接続水域を航行した問題では一致できず、偶発的衝突を防ぐ海空連絡メカニズムの早期運用開始で改めて合意するだけに終わった。両国は、日中平和友好条約の締結から四十周年を期に関係改善を進めることで合意したものの、中国けん制の米戦略に追随する安倍政権では、本質的な日中関係の打開は不可能だ。

日仏が外務・防衛相協議
 日本とフランスは二十六日、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開いた。協議では、朝鮮への「最大限の圧力強化」で合意したほか、自衛隊と仏軍の物品役務相互提供協定(ACSA)締結や、海上共同訓練の実施でも合意した。安倍政権は、朝鮮への敵視だけでなく、台頭する中国への国際的包囲網を意図した。アジアへの影響力拡大をめざすフランスも、これに一定程度合意した形。だが、朝鮮問題では、南北対話を評価するフランスとの間で溝があり、意見の全面的な一致はできなかった。

黒田発言で円高傾向に
 日銀は二十二、二十三日、金融政策決定会合を開き、現行の金融政策を維持することを決めた。黒田・日本銀行総裁は会見で、この方針を説明し、「正常化」に動く米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)との違いを見せた。日銀による異次元緩和策は五年を経たが、日本「デフレ脱却」には遠く、企業と投資家を潤しているのみ。物価目標の達成もできず、黒田総裁も「目標にはほど遠い」と述べざるを得ないほど。緩和策を止めるに止められない一方で、直近では円高・ドル安傾向が進み、緩和政策はますます手詰まりとなっている。

財政再建、またも延期
 政府の経済財政諮問会議は二十三日、経済財政に関する中長期試算を示した。基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化を、従来試算の二五年度からさらに二年後ずれさせた。今回、二二年度以降の成長率と消費者物価上昇率の見通しをいずれも下方修正したが、それでも三・四〜三・五%成長を見込むなど、依然として「机上の空論」。一七年度補正予算と、審議中の一八年度予算案を経て累積財政赤字はさらに深刻化する。支配層には、国民負担の大幅増加やインフレ以外に、打開の道は見いだせなくなっている。

松本内閣府副相が辞任
 松本内閣府副相が二十五日、衆議院本会議で沖縄県での相次ぐ米軍機事故に関して「それで何人死んだんだ」などとヤジを飛ばした。辺野古への米軍新基地建設に関わる、沖縄県名護市長選挙への影響を恐れた安倍政権は翌日、松本副相を事実上更迭した。副相は「誤解を招きかねない発言」などと言い訳したが、沖縄県民の基地被害での苦しみを顧みない安倍政権の性格を示した発言で、沖縄県民のさらなる怒りと闘いは必至だ。


賃上げめぐり隔たり大きく
 榊原・経団連会長と神津・連合会長は二十三日、賃上げをめぐり会談した。連合はベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせて四%引き上げを求めたが、経団連はボーナスを含めた三%とし、隔たりが目立った。経団連の態度は、安倍政権の求める「三%賃上げ」と同じだが、賃上げ手法を各社に委ねており、賃上げに前向きな企業はごくわずかなのが実態。ストライキなどの闘いなしの交渉では、四%程度の賃上げさえ勝ち取ることはできない。


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