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労働新聞 2018年1月25日号 トピックス

世界のできごと

(12月10日〜1月19日)

米「新安保戦略」、中ロなどを名指し
 米トランプ政権は二〇一七年十二月十八日、安全保障政策の指針となる「国家安全保障戦略」を発表した。「力による平和」を掲げ、中国とロシアを戦後の米国主導の「秩序」に対する「修正主義勢力」、さらにイランや朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を「ならず者国家」などと名指しし、軍事・経済の両面で対峙(たいじ)する姿勢を打ち出した。中ロへの対抗姿勢は新しいものではないが、自国の衰退を背景に、米国がますます余裕を失っていることを示すもの。この戦略と関連して、トランプ政権は一八会計年度での軍事費一〇%増や、中国への通商要求を強めている。日本などの同盟国がさらなる負担を求められるが、悪あがきの破綻は必至だ。

米、税制改革法案が成立
 トランプ米大統領は二十二日、一兆五千億ドルの減税を中心とする税制改革法案に署名・成立した。三十年ぶりの大改革で、トランプ大統領は「誇りに思う」などと自賛したが、税制改革は法人税率の三五%から二一%への引き下げを柱とするもので、富裕層へのいちだんの奉仕が本質。秋の中間選挙を意識して、基礎控除のわずかな引き上げはあるものの、トランプ大統領を誕生させた没落中間層を救うものではない。減税が経済の活況につながる保証もなく、軍事費増などで財政赤字は拡大、米国の危機は深まる。資金引き揚げなどで他国との摩擦も激化し、国家間関係はさらに厳しくなる。

自主性示した南北閣僚級会談
 韓国と朝鮮による、二年一カ月ぶりの閣僚級会談が一月九日、板門店で始まった。発表された「共同報道文」では、朝鮮が二月の平昌冬季五輪に参加することや、「多様な分野での接触と往来、交流と協力」が明記された。何より、米国が議題を「五輪に限定する」よう圧力をかけるなか、「南北関係で提起されたすべての問題をわれわれ民族が朝鮮半島問題の当事者として対話と交渉を通じ、解決していく」とした。その後、五輪関連では、「統一旗」による合同入場など、十一項目で合意が前進した。米国の敵視政策は続いており、南北関係は今後も曲折は避けられないが、南北の自主的姿勢は支持できる。


朝鮮包囲の外相会合
 朝鮮の「核・ミサイル」に関し、米国とカナダが共催し、二十カ国が参加する外相会合が十六日、カナダのバンクーバーで開かれた。参加国は、国連安全保障理事会決議による制裁措置の実効性を高めるとして、船舶検査の強化や各国による独自制裁などで合意し、共同声明を発表した。ティラーソン米国務長官は、会議に招かれなかった中国とロシアを名指しして「制裁の完全履行」を求めた。他方、南北対話の進展を「歓迎」し「期待」するなどの文言も盛り込まれた。米日は「圧力を緩和するときではない」などと、朝鮮敵視で異常な突出を示したが、参加国でさえ十分な支持を得たとはいえない。

米、イランへの圧力画策し孤立
 国連安全保障理事会は一月五日、イランでの反政府デモをめぐって討議した。米国はイラン政府を非難、「人権」状況の改善を求めた。だが、イランが米国を念頭に「外部勢力が引き起こした確証がある」と反論したのをはじめ、ほとんどの国は「内政干渉」と反発した。「米国は、イラン核合意に対する支持を弱めるために利用しようとしている」「米国の論法に従えば、黒人射殺事件へのデモなどでも安保理を招集しなくてはならない」(ネベンジャ・ロシア国連大使)との非難もあがり、結論に至らなかった。米国は、イスラエルにおけるエルサレムの首都認定問題に続き、安保理でさえ孤立を深めている。

パレスチナ、「エルサレム」で対抗措置
 パレスチナ解放機構(PLO)のアッバス議長は十五日、米国がエルサレムをイスラエルの「首都」としたことへの対抗措置として、イスラエルとの相互承認を含む「オスロ合意」の凍結と、「米国を和平交渉の仲介役として認めない」との声明を発表した。同合意(一九九三年)は二〇〇六年のイスラエルによるガザ侵略で事実上崩壊しているとはいえ、「エルサレムの帰属は交渉で解決する」としている。PLOの声明は、米国の態度変更を迫ったもの。米国の策動により、中東和平は交渉再開のメドさえ立たず、いちだんの騒乱は不可避だ。

オーストリアで極右が連立入り
 オーストリアで十二月十五日、十月の総選挙結果を受け、国民党と極右・自由党による連立合意が成立した。国民党のクルツ党首が首相、自由党のシュトラーヒェ党首が副首相に決まった。合意により、自由党は内相と防衛相、すなわち警察と軍を握ったが、同一の党が両方を握るのは、同国では戦後初めて。また、自由党は、第一次大戦後にイタリア領となった「南チロル」の自国への編入を主張し、イタリアのレンツィ首相は強く反発している。危機の深化を背景とする、右翼など新興勢力の台頭は止まっていない。

人民のたたかい

(12月10日〜1月19日)


  アルゼンチンで十二月十八、十九日、年金制度改悪に抗議して労働総同盟(CGT)がストライキを行った。地下鉄、路線バス、航空機などが停止に追い込まれた。
 イタリア・ロンバルディア州にある米アマゾンの物流センター労働者が二十二日、経営側が団体交渉を拒否したことに抗議して二時間ストを行った。
 ドイツの金属労組(IGメタル)傘下の八万人の労働者が一月九日、六%の賃上げと週二十八時間への時短を求めて警告ストライキに入った。十六日には第二派のストライキが闘われた。
 オーストリアのウィーンで十三日、極右・自由党の政権参加に抗議し、七万人がデモ行進を行った。
 北アフリカのチュニジアで八、九日、ガソリン価格の引き上げなどに抗議するデモ行進が行われた。政府は国際通貨基金(IMF)からの融資と引き換えに緊縮財政政策を強いている。
 ベトナムのハノイで十五日、米ウーバーなどの配車アプリ運営会社が運転手から徴収する手数料を引き上げたことに抗議し、百人以上がストライキを行った。
 中国・台湾の台北で七日、外国人労働者と支持者千五百人が、権利向上と政治参加を求めてデモ行進を行った。台湾は一九八〇年代末に外国人労働者を導入したが、転職制限や仲介業者への多額の手数料が問題となっている。

日本のできごと

(12月10日〜1月19日)

18予算案、国民犠牲いちだんと
 安倍政権は二〇一七年十二月二十二日、二〇一八年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は九十七兆七千百二十八億円と六年連続で過去最高を更新した。軍事費は六年連続の増額で五兆千六百十一億円となり、一七年度補正予算案でも二千三百四十五億円が追加された。米軍への「思いやり予算」や辺野古新基地建設などの米軍再編経費も大幅に増額、米軍関係三経費は過去最高の四千百八十億円となった。また「生産性革命」三カ年計画の初年度予算として「賃上げ」や「IoT(モノのインターネット)投資」を口実にした企業減税も盛り込まれた。一方で医療・介護などの社会保障予算の自然増分は千三百億円削減され、幼児教育・保育無償化などは消費税増税を予定する一九年度以降に先送り。文教予算も四年連続でマイナスとなり、中小企業対策費や農林水産予算、地方交付税なども軒並み削減された。米国や財界のために国民各層を犠牲にする安倍政権の本質が示されている。

空母保有検討、敵基地攻撃能力保有へ
 「読売新聞」は二十六日、日本政府が海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」を短距離離陸・垂直着陸が可能な米軍F35Bステルス戦闘機を搭載できる空母に改修する方向で検討に入ったと報道した。これまで歴代政権が「憲法上許されない」としてきた攻撃型空母の保有に踏み出すもの。小野寺防衛相は会見で空母保有の現時点での検討を否定したが、「さまざまな検討を行うことは必要」と含みも持たせた。政府は一八年度予算に米国製などの長距離巡航ミサイルの調達費も計上したが、能力上は相手国内の基地を狙う兵器にもなる。対米追随の軍事大国化をめざす安倍政権下で自衛隊の「専守防衛」はいっそう形骸化している。

年頭会見で改憲案提出の意思示す
 安倍首相は一月四日、年頭記者会見で「今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示ししたい」と述べ、二十二日召集の通常国会に自民党改憲案を提出する意思を明示した。安倍首相は昨年五月三日、自衛隊明記の九条改憲案とともに二〇二〇年の新憲法施行という改憲の目標時期を明言していた。安倍政権は日米軍事同盟強化や軍事強化と一体となった危険な改憲策動を加速させようとしている。

慰安婦問題で謝罪拒む安倍政権
 安倍首相は十二日、韓国の文大統領が慰安婦問題の「合意」をめぐり「日本の心こめた謝罪が完全な解決」と被害者への新たな対応を求めたことについて「一方的にさらなる措置を求めることはまったく受け入れられない」と批判した。一五年十二月に韓国前政権と合意した「解決」では、日本政府は法的責任も賠償も認めていない。依然として安倍政権は侵略と植民地支配における犯罪にフタをし続けている。

安倍の東欧歴訪、一帯一路に対抗心も
 安倍首相は十七日、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国とブルガリア、セルビア、ルーマニアの東欧六カ国歴訪を終え帰国した。いずれも現職首相として初訪問。バルト三国では、日本との連携強化に向けた「日バルト協力対話」の創設で合意、セルビアなどでは旧ユーゴスラビア紛争後の地域の安定や開発を日本政府が政府開発援助(ODA)などを通じて支援する「西バルカン協力イニシアチブ」の立ち上げを提示した。同六カ国は広域経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国が一二年から東欧十六カ国と毎年開催している会議のメンバーでもある。歴訪には東欧での存在感を増す中国への対抗心もにじむ。

沖縄で相次ぐ米軍ヘリ事故
 基地の集中する沖縄で米軍ヘリ関連の事故が相次いだ。二〇一七年十二月十三日には普天間基地(宜野湾市)に隣接する普天間第二小学校の校庭に同基地所属の大型ヘリの窓が落下した。また一月六日には同基地所属の多用途ヘリがうるま市の伊計島の浜辺に不時着、さらに八日にも同基地所属の攻撃ヘリが読谷村儀間の廃棄物処分場に不時着した。相次ぐ事故後も米軍は日本政府への合意に背き同小学校の上空を飛行するなど野放図さは何ら変わっていない。対し日本政府は米軍に抗議したが、まったく形だけのものだ。


日米原子力協定、自動延長へ
 今年七月に期限を迎える日米原子力協定は一月十七日、両政府とも協定終了の前提となる六カ月前通告を行わず自動延長が確定した。同協定は冷戦崩壊後は中国をにらみ核・原子力分野での日米協力を強化、核分野での米国の世界的覇権を維持するために役立てられてきた。米国のトランプ政権は日本の核・原子力政策を後押しし、いっそうの役割拡大を求めており、この分野でさらなる対米協力を強めることが予想される。警戒が必要だ。


民進と希望、統一会派結成を断念
 民進党の衆参両院議員総会が十七日に行われた。希望の党との統一会派結成には了承が得られず、両党幹部が合意していた会派結成は白紙に戻った。安保や憲法など基本政策を「玉虫色」にすり合わせことなどに異論が続出、会派結成どころか両党内で対立が深まる結果となった。連合の神津会長は「国会の中で働く者の思いを受けた声を大きくしてもらいたいのだが、残念」と述べたが、そもそも労働者や広範な国民の利益を代弁しない数合わせの野合など後押しすべきではない。


経労委報告、さらなる労働者犠牲要求
 経団連は十六日、一八年春闘の経営側指針となる経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)を発表した。賃上げをめぐる基本的な考え方として「三%の賃金引き上げ」にふれ「社会的期待を意識しながら、自社の収益に見合った前向きな検討が望まれる」と言及したが、賃上げ幅が不十分な上に何の保証もなく、「働き方改革」「所得アップ」を演出したい安倍政権を手助けするものにしかならない。一方で「残業代ゼロ・過労死促進」の高度プロフェッショナル制度の創設や裁量労働制の拡大を盛り込む労働基準法改悪案の早期成立を要求、労働者犠牲の「生産性向上」に固執している。


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