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労働新聞 2017年12月15日号 トピックス

世界のできごと

(11月30日〜12月9日)

エルサレム問題で米国へ批判集中
 トランプ米大統領は十二月五日、現在テルアビブにある駐イスラエル大使館をエルサレムに移転すると表明した。大統領は昨年の選挙公約で移転を掲げ、就任後には対パレスチナ強硬派をイスラエル大使に起用していた。米国では一九九五年にエルサレム移転を定めた法律が制定、同時に執行延期も決め、歴代政権は継承してきた。一方的な発表に対し、「挑発的で愚か」(イラン)、「欠陥だらけの決定」(トルコ)など、反発が広がっている。欧州からも「不同意」(メイ英首相)など批判が噴出した。選挙公約実現のメドが立たないトランプ政権は支持者つなぎとめのために欺まん的な「中東和平」さえ投げ捨てる姿勢で、中東での影響力をいっそう減退させている。

「先制攻撃」想定の米韓演習
 米韓空軍による合同演習「ビジラント・エース」が四日、韓国と同国周辺で始まった。十月中旬に海軍の合同演習をしたのに続くもの。演習にはステルス戦闘機やB1戦略爆撃機も参加、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を試射した朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への先制攻撃を想定するなど軍事面でも「圧力を最大限高める」(トランプ米大統領)姿勢を鮮明にしている。しかし、韓国の文在寅大統領、「先制攻撃容認できす」と発言。朝鮮は演習に反発、中国も批判するなど情勢は緊張をはらんでいる。

米で法人税減税柱の改革法可決
 米連邦議会上院は二日、共和党が提案した税制改革法案を賛成多数で可決した。すでに下院では通過済み。上院案は法人税の現行税率三五%を二〇%に大幅に引き下げ、州・地方税などの控除や相続税を縮小するという内容。トランプ大統領の選挙公約でもあるが、同法案によって今後十年間で一兆ドル(約百十三兆円)の財政赤字が発生するとの試算もある。また、富裕層の減税の一方、低所得・中間層へは増税となるなど、米国の階級矛盾をいっそう激化させる。


減産延長でOPECとロシアが合意
 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど主要産油国は十一月三十日、オーストリアのウィーンで開催した閣僚級会合で、二〇一八年三月末に期限を迎える日量計約百八十万バレルの協調減産について、十二月末まで延長すると決めた。今年一月の協調減産以降、原油価格は持ち直しており、減産継続で原油相場を下支えする狙い。だが、ロシアは米国のシェールオイルにシェアを奪われると危機感を示し、市場の状況に応じて措置を見直すことでも合意した。また、中東の政治情勢の悪化から、産油国間の足並みが揃わなくなる可能性も指摘されている。

人民のたたかい

(11月30日〜12月9日)


  トランプ米大統領によるイスラエル大使館のエルサレム移転決定に抗議する行動が中東やアジアのイスラム諸国で広がっている。パレスチナでは十二月八日までを「怒りの日」との呼びかけが行われた。ヨルダン川西岸では十二月七日、数千人が集会を開き、米国との断交を求めた。エジプトのカイロでも数百人が集会を行った。チュニジアのチュニスでも数百人が集会を開き、星条旗を燃やした。マレーシアのクアラルンプールでも八日、数千人がデモ行進を行った。
 イタリア各地で十二月二日、労働総同盟(CGIL)が呼びかけた年金制度改悪に抗議する集会とデモが行われた。
 ドイツのハノーバーで十二月二日、同地で開かれた極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)全国大会に抗議するデモが行われ約八千人が参加した。市民団体や労組などが共催して行われたもので「AfDはニセの代案」とのプラカードが掲げられた。

日本のできごと

(11月30日〜12月9日)

「新たな経済政策」は増税が前提
 政府は十二月八日、「新たな経済政策」を閣議決定した。賃上げした企業への法人税減税、設備投資への固定資産税減免、幼児教育の一部無償化、低所得者への高等教育無償化などが柱で、二〇一八年度予算案に反映される。政府はこれらを「人づくり革命」の一環とし、「二〇年度までの設備投資一〇%増」「労働生産性二%向上」などをめざしている。これは、財界の要求に沿ったもので、消費税増税や年千三百億円前後の社会保障費削減などの国民負担増を前提にしたもの。目標が実現できる保証はなく、厳しさを増す国民生活を改善できるはずもない。

与党税調、増税案次々と
 自民党税制調査会と公明党の税制調査会が七日、所得税控除の見直しなどで合意した。年収八百五十万円以上の会社員に対する給与所得控除を十万円縮小、上限を百九十五万円とすることと、全納税者が対象になる基礎控除を十万円引き上げる。年収九百万円の勤労者は、年一万五千円程度の増税になる。また、自民党は加熱式たばこの増税、「国際観光旅客税」の新設、「森林環境税」という名目での個人住民税の引き上げなどが検討されている。まさに「取りやすいところから取る」発想で、「年収八百五十万円以上」も順次、引き下げられ、増税対象が広がることは必至だ。

生活保護見直し、削減が前面に
 厚労省の専門家会議は十一日、生活保護制度の見直しに関する報告書案を討議した。食費などに充てられる生活扶助の基準額見直しや大学進学時の一時金支給案などのほか、「無料低額宿泊所」に対する規制を強化案が討議された。来年の通常国会に提出する改正案に盛り込まれる予定。宿泊所規制案は、劣悪な環境で高額の利用料を取る「貧困ビジネス」への対応を理由とするが、被害が相次ぐなかで政府の対応は遅すぎる。何より、生活扶助の見直しは給付の大幅削減につながり、進学一時金も生活費の減額が前提。これでは、貧困問題の解決につながらない。

「一帯一路」ガイドラインを策定
 政府は三日までに、中国が主導する「一帯一路」に対する経済協力のガイドラインを策定した。「省エネ」「環境」を中心に、インフラ需要などに政府系金融機関による支援なども検討する。安倍政権は、対中関係の一定の改善と財界の利益を後押しすることを狙っている。ガイドラインでは「軍事利用の恐れがある案件」への支援を否定しているが、完全な区別は不可能で、対米従属下で対中関係に苦慮する支配層のジレンマが透けて見える。

「敵基地攻撃」の空対地ミサイル導入
 防衛省は九日、空対地ミサイルを導入するための経費として約二十二億円を一八年度予算で追加要求した。航空自衛隊のステルス戦闘機F35に搭載する計画だが、射程が五百キロあるなど、事実上の「敵基地攻撃能力」を保有することになる。射程がさらに長いミサイルの導入も検討するという。安倍政権は中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の「脅威」を口実に、対米従属の下、武装の面でも「専守防衛」の建前を投げ捨てようとしている。

天皇退位を政治利用
 政府は八日、天皇の退位日を一九年四月末とし、皇太子の即位を翌日と定める政令を閣議決定した。政府は菅官房長官をトップとする準備組織を発足させ、改元などの準備を進める計画。退位は、天皇の高齢化で対米従属下の国民統合という象徴天皇制の役割が困難となったことによるもの。安倍首相は「国民がこぞってことほぐ」などと力説したが、狙いは、統一地方選と参議院選の間に「代替わり」を押し込み、国民統合に利用することだ。


保育園に落下物、米軍被害際限なし
 沖縄県宜野湾市で七日、米軍ヘリが保育園の屋根にビン状の物体を落下させる事故が発生した。けが人はなかったが、約五十人の園児が遊んでおり、大惨事となる可能性があった。だが、米軍はヘリ関連部品であることを認めつつ、落下を否定する許しがたい態度。五月の戦闘機による部品の海上落下、十一月のパネル落下など、米軍による落下事故が相次いでいる。県民の命と生活は危険にさらされており、翁長知事が「とんでもない話」と怒りをあらわにしたのは当然だ。


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