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労働新聞 2017年10月5日号 トピックス

世界のできごと

(9月20日〜9月29日)

米、朝鮮への独自制裁で屈服迫る
 トランプ米大統領は九月二十一日、核・ミサイル問題を口実に朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対する独自制裁を発表した。内容は、朝鮮を訪問した船舶・航空機の百八十日間の米国への立ち寄り禁止や、朝鮮の建設、エネルギー、金融などの産業などに関与した者や貿易に故意に関与したあらゆる外国の金融機関への制裁。米国は独自制裁によって先の安保理制裁をさらに強化、朝鮮を世界経済から孤立させる事実上の経済封鎖で圧殺、同時に中国への圧力を強めている。

トランプ国連演説に異議相次ぐ
 韓国の文在寅大統領は二十一日、国連総会で演説を行った。朝鮮の核・ミサイル問題について「平和こそが心の叫び」とし、米国による軍事的圧迫に危機感を示した。また中国の王毅外相も「交渉こそ唯一の解決策」と主張、ロシアのラブロフ外相も「軍事的ヒステリーの構築は、致命的になる」と強く警告した。またドイツのガブリエル副首相も「すべての外交手段を生かさなければ」と発言、トランプ米大統領が国連で行った朝鮮への圧殺発言に対する異議が相次いだ。

独下院選、大連立崩壊へ
 ドイツの連邦議会(下院)選挙は二十四日、投開票されメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第一党を維持したが議席を減らし、大連立の一角の社民党(SPD)も大幅に議席を減らした。その一方、移民排斥を掲げる極右「ドイツのための選択肢」(AfD)が初めて議席を獲得した。大連立政権下で大企業優遇と社会保障破壊など国民犠牲が進み、特に旧東独地域では低い賃金水準の下で住民の生活は悪化していた。国民からの反撃を受けたメルケル首相だが、SPDとの大連立は崩壊、少数政党も合わせた連立となり、政権基盤の不安定化は避けがたい。


米政権、法人税削減案も先行き不透明
 米国のトランプ大統領は二十七日、大幅な法人税減税を柱とする税制改革案を発表した。この税制改革案は、法人税率を主要国で最も高かった三五%から二〇%に引き下げるとしていて、レーガン政権以来の大幅法人税減税を目指す。だが、法人税減税により財政赤字が拡大すれば、金利の上昇を招き、ドル高が進むことも予想され、トランプ政権が掲げる製造業の復活にはつながらないという指摘も根強い。


クルド自治区独立めぐり対立激化
 イラク北部クルド人自治区で二十五日に独立の是非を問う住民投票が行われ、賛成票が九二・七%に達した。自治政府のバルザニ議長は中央政府に独立交渉に応じるよう呼び掛けたが、アバディ首相はこれを拒否、国際線の封鎖措置をちらつかせて独立をけん制している。また国内のクルド人に分離・独立機運が飛び火することを懸念するトルコやイラクも国際線や原油パイプラインの停止を示唆するなど圧力を強めている。


人民のたたかい

(9月20日〜9月29日)


  フランスで二十一日、マクロン政権が労働法改悪を閣議決定することに対し、労組、学生組織が呼びかける抗議デモが各地で行われた。一連の行動では道路封鎖や速度制限などの順法闘争が展開された。
 ドイツ各地で二十二日、同国鉄鋼大手ティッセンクルップ社が発表した大規模な人員削減提案に反対し、同社の労働者が抗議行動を行った。西部ポッフムでは約七千人の労働者が工場閉鎖の撤回を要求し、街頭でデモ行進を行った。
 韓国・ソウルで二十七日、教育現場の非正規職労働者で組織する学校非正規職連帯会議が政府の賃金カットに抗議するハンガーストライキと座り込み行動に突入した。市教育庁の前での集会では「すでに崖っぷちにいる学校非正規職は退くところがない」との声が上がり、十月には全面ストを行うことを明らかにした。

日本のできごと

(9月20日〜9月29日)

解散・総選挙も算段崩れる安倍政権
 安倍首相は九月二十八日、召集された臨時国会冒頭で衆議院を解散した。政府は臨時閣議で「十月十日公示、二十二日投開票」の総選挙日程を決定した。所信表明演説も代表質問もなく、森友・加計学園疑惑の審議もいっさい行われないなど、首相は総選挙をにらみ汚点隠しに始終した。二十五日に行われた会見で首相は「国難突破解散だ」など「大義」を掲げたが、その後の世論調査では内閣支持率を再び不支持が上回るなど民意の離散が進んだ。首相の政権維持への算段は大きく崩れている。

小池新党「希望」結党、与党に危機感
 東京都の小池知事は二十五日、国政新党「希望の党」(希望)を結成、自らが代表に就任すると発表した。二十七日の結党会見では党綱領を発表、「日本、東京をリセットしないと世界の激動、潮流に日本が置いてけぼりに」と支配層内の危機感を代弁し、「自民党のしがらみ政治の打破」を掲げて「改革」への意欲を示した。同日、民進党の前原代表は希望への合流容認を表明、二十九日には日本維新の会の松井代表が希望との連携の意を表明した。これらの動きに自公与党は危機感を募らせるが、対米従属で多国籍大企業の奉仕者という意味では安倍首相と小池知事に差はなく、国民の選択肢となるものではない。

首相の国連演説、異常な対朝強硬
 安倍首相は二十一日、国連総会で一般討論演説を行った。十六分間の演説の八割を核・弾道ミサイル開発を続ける朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)批判に費やし、「(朝鮮にとって)対話は時間を稼ぐための最良の手段だった」「同じ過ちを繰り返そうというのか」などと対話による解決を全面否定した。また十一日に安保理が採択した決議の完全履行も訴え、暗に中ロをけん制した。だが国際社会から「米国の忠実な下僕」と目される安倍首相の演説に会場はガラガラで、演説は日本国内に向けた宣伝にほかならない。

日銀、異次元緩和維持、出口遠く
 日銀は二十一日、金融政策決定会合で短期金利をマイナス〇・一%、長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和策の維持を決めた。黒田総裁は会見で二%の物価上昇目標の達成に向け「今の時点で出口の手法や順序を示すのは難しい」「必要があればさらなる緩和も」と述べた。米欧中銀が緩和からの出口を模索するなかで日銀だけが緩和を続ける背景には、米国の意向のほか、円安・株高の維持によって総選挙で安倍政権を援護する狙いもあるが、日銀の保有資産が膨らみ続ける状況に市場の不安は高まりつつある。安倍政権と歩調を合わせる黒田日銀によって国の進路は泥沼にいざなわれている。

TPP11、発効への前途は多難
 米国を除く日本、豪州など環太平洋経済連携協定(TPP)署名十一カ国の首席交渉官会合が二十二日、東京での二日間の討議を終え閉幕した。離脱した米国抜きでの新協定・TPP の早期発効に向け、米国復帰まで現協定の実施を凍結する項目を絞り込む作業を進め、各国から凍結要望があった約七十項目を五十項目程度に集約した。しかし二十三日に投開票されたニュージーランド総選挙では与党・国民党が単独過半数を得られず、凍結項目の国内調整が遅れているベトナムでも十月に政権幹部の人事異動が見込まれるなど、各国の国内事情から今後の絞り込み作業は難航が予想される。米国復帰をにらんだTPPの枠組み維持に腐心する日本政府だが、そのもくろみは前途多難だ。

民間給与、4年連続で格差拡大
 国税庁は二十八日、二〇一六年分の民間給与実態統計調査を発表した。民間企業で働く人が得た平均年収は四百二十二万円で一五年を〇・三%(一万二千円)上回った。増加は四年連続だが、雇用形態別に見ると、正規雇用の四百八十六万九千円に対し、非正規雇用は百七十二万一千円。差は三百十四万八千円で、格差の拡大も四年連続。また年収が二百万円以下のワーキングプア(働く貧困層)は千百三十二・三万人と前年から一・五万人増加、ワーキングプアが千百万人を超えるのも四年連続となった。一方で二千五百万円超(区分最上位)の給与所得者は二年連続で増加、四年半の安倍政権下で格差拡大がいっそう顕著になっている。


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