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労働新聞 2017年8月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月30日〜8月19日)

米国の分断深刻、政権危機深まる
 トランプ米大統領は八月十六日、助言組織である「製造業諮問委員会」と「戦略・政策フォーラム」の解散を発表した。バージニア州で起きた白人至上主義団体による反対派住民の殺害に対し、大統領が下手人側を事実上擁護したことから、二組織構成員の辞任が相次いでいた。事件をめぐっては、陸海空三軍トップも大統領と一線を画すコメントを発表する、異例の事態。また、「米国第一主義」の主導者で「最側近」と言われたバノン首席戦略官・上級顧問までもが辞任、政権の混乱が深刻化している。トランプ政権の下、米国の社会的分裂はますます深刻だ。

朝鮮に不当な制裁強化決議
 国連安全保障理事会は五日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が七月に行った大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射に対し、新たな制裁決議を採択した。朝鮮からの石炭や鉄鉱石、海産物などの輸入を禁止するほか、朝鮮との新たな合弁事業を禁じるなどの内容。原油禁輸を含まないなど、中国、ロシアの要求も一部加味された。米国は、再度のICBM発射を強くけん制、またも朝鮮半島の緊張が増している。制裁は過酷で不当なものだが、米国に実行できることはほぼなく、中国を追い込む手段の一つでもある。朝鮮は屈せず、闘う姿勢を維持している。

トランプ政権、対中通商要求を準備
 トランプ米大統領は十四日、米企業の知的財産権をめぐり、中国への制裁措置を含む通商法三〇一条の適用を視野に入れた調査を通商代表部(USTR)に指示した。知的財産権をめぐる係争は以前からあったが、トランプ大統領は「数百万人の雇用喪失と数十億ドルの損失」と、中国を非難した。対する中国は、制裁された場合の報復を示唆(しさ)した。調査は一年程度かかる見込みだが、米国内向けの「点数稼ぎ」策であると同時に、朝鮮問題と絡めた、対中けん制が狙いだ。


対ロ制裁法、米ロ関係緊張
 トランプ米大統領は二日、ロシアへの制裁強化法に署名した。ロシアが二〇一六年の米大統領選挙にサイバー攻撃で介入したとされることが理由。ロシア企業・個人の資産凍結、米企業との取引禁止などの内容で、制裁緩和・解除には議会の事前承認が必要。ロシアは対抗して米外交官の削減を要求、外交施設二カ所を接収するとした。六日、フィリピンのマニラでティラーソン米国務長官とラブロフ・ロシア外相が会談したが、前進はなし。対ロ関係改善を望んでいるとされるトランプ政権だが、「ロシアゲート」問題で揺さぶられ、逆に緊張を招いている。


NAFTA再交渉、一致できず
 米国、カナダ、メキシコによる北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉が十六日、米ワシントンで始まった。域内の部品調達比率を定めた「原産地規則」などを協議した。米国は、乗用車の場合、関税ゼロを域内調達比率六二・五%以上とするよう求めたが、メキシコが応じず、一致できなかった。窮地のトランプ政権にとって、NAFTA見直しは支持層をつなぎ止める重要な施策だが、合意のあてはない。


イラン大統領、米国を非難
 イランのロウハニ大統領は十五日、トランプ米政権が実施した六企業への追加制裁措置を批判し、「核合意から離脱もあり得る」と警告した。ロウハニ大統領は「合意に違反する最初の国にはならない」と米国をけん制してきたが、無視された格好。制裁解除をにらんでイラン進出を計画する米企業が増えていたが、追加制裁で気運は一気に冷え込んだ。イラン議会は、強まる反米気運に押され、ミサイル開発や革命防衛隊の活動強化のための予算の増額を決めた。トランプ政権によって、中東情勢も緊張の度を増している。


英、関税同盟維持を提案
 英政府は十五日、欧州連合(EU)離脱後も関税同盟を維持するという交渉指針を公表した。関税同盟を二年ほど維持する間に新たな貿易関係を構築、企業の対応を進めるなどで離脱の悪影響を最小限に抑えるもくろみ。提案は企業の要求に応えたものだが、EU側は、在英EU市民の権利保護や、「清算金」の支払い要求を優先させる構えで、受け入れるかどうか不透明。国内矛盾を背景に「離脱」を決めた英国だが、先行きは「イバラの道」だ。


人民のたたかい

(7月30日〜8月19日)


  米国ボストンで八月十九日、白人至上主義に反対するデモが行われ、四万人の人びとが、団体を事実上擁護するトランプ政権にも抗議した。
 ドイツのベルリンで十九日、ネオナチの行進に対する抗議デモが行われ、五百人が怒りの声を上げた。
 ギリシャのアテネで三日、シリアからの難民数百人が、欧州連合(EU)圏の国境ゲート閉鎖によって家族と離ればなれにされていることに抗議し、ドイツ大使館までデモを行った。
 スペイン・バルセロナのエル・プラット空港で四日、警備会社がバカンスシーズンの人員増加を求めてストライキに入った。
 韓国で十日、現代自動車労組が四時間の時限ストライキを行った。十五万四千八百八十三ウォン(約一万五千円)の賃上げを求めたもの。
 韓国ソウル州で十五日、主権回復と朝鮮半島平和実現のための汎国民平和大会が開かれ、一万人が米韓合同軍事演習の中止などを求めて集会とデモを行った。
 韓国星州で十九日、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の追加配備に反対する汎国民平和行動が行われ、約八百人がデモ行進を行った。
 韓国文化放送(MBC)が九日、会社側による社員の「ブラックリスト」が公開されたことに講義し、カメラマンなどの制作スタッフ百人以上がストライキに入った。十一日からは取材記者も合流、社長の辞任を求めた。
 メキシコのメキシコ市などで十六日、数千人の労働組合員が、大企業のための北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉に反対して集会とデモを行った。
 中国・台湾の台北で十九日、蔡当局による年金改革に反対するデモ行進が行われた。激しい抗議によって、近隣で開催されたユニバーシアード大会の開会式が一時中断に追い込まれた。

日本のできごと

(7月30日〜8月19日)

内閣改造も大きな支持率回復なく
 第三次安倍第三次改造内閣が八月三日、発足した。第三次安倍政権での内閣改造は昨年八月三日以来、一年ぶり。麻生副総理・財務相と菅官房長官を留任させ政権の骨格を維持、初入閣は前回の改造より二人少ない六人に抑えるなど「手堅さ」を重視する一方、政権と距離を置いてきた野田聖子氏を総務相に起用するなど挙党態勢を演出した。七月の東京都議選での自民党の歴史的惨敗など政権支持率の急落が顕著ななか、森友・加計学園疑惑や南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報問題から国民の目線をそらす必要に迫られての苦肉の策としての内閣改造。安倍首相は疑惑について「反省」の意を示しつつ「仕事人内閣」「経済最優先で政権運営にあたる」とアピールしたが、「お祝儀」以上の支持率の回復はなく、以降の政権運営は容易ではない。

日米2プラス2、自衛隊の役割拡大
 日米両政府は十七日、米ワシントンで外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開いた。両国は朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の「脅威」に対し同盟を強化することで一致、中国の積極的な関与を求めることや、米国が核兵器を含むあらゆる戦力で日本を「防衛」すること、最新鋭の能力を持つ次世代戦闘機を日本に展開することを確認した。また小野寺防衛相は自衛隊の役割を拡大することや、その一環で陸上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を導入する意向を表明した。河野外相は中国の東シナ海や南シナ海への進出に懸念を表明、インド太平洋地域の沿岸国を対象に二〇一九年までに約五億ドルの援助をすると発表した。朝鮮や中国の「脅威」を口実にいっそう対米従属強化と自衛隊の役割拡大をめざす姿勢を鮮明にした。

オスプレイ墜落、普天間所属機2件目
 オーストラリア東部クイーンズランド州・ロックハンプトン沖合で五日、米普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属の垂直離着陸機オスプレイ一機が墜落、隊員三人が死亡した。同基地所属のオスプレイ事故は昨年十二月に名護市に墜落して以来二件目。今回の事故を受け、安倍政権は翌六日に、米軍に飛行自粛や情報提供を申し入れたものの、抗議の意思さえ示さず、米軍が「運用上必要な飛行」などと飛行再開を強行すると、十一日にはこれを「合理的な措置」と評価し追認した。米国のいいなりで国民ないがしろの安倍政権の本性が如実に示された。

朝鮮ミサイル口実にPAC3配備
 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)が公表した米領グアム沖への弾道ミサイル発射計画を受け、小野寺防衛相は十一日、ミサイルが上空を通過すると予告された中国・四国地方の四カ所に、地上配備型迎撃ミサイル・パトリオット(PAC3)展開を指示した。防衛相は「日本国内に落下する可能性を排除できない」と説明する一方、グアム沖へのミサイル発射について「安保関連法が定める存立危機事態と認定し集団的自衛権を行使して自衛隊が迎撃するのは可能」との認識を示した。今回のPAC3配備は軍事上まったく無意味で、「集団的自衛権の行使が可能」との見解もあまりにデタラメ。同盟強化のための策動でしかない。

防衛大綱、敵基地攻撃能力検討へ
 安倍首相は三日、二〇一三年末に決めた防衛大綱の見直しを小野寺防衛相に指示した。見直しは概ね十年程度の防衛政策の指針を定めているが、「朝鮮の核・ミサイル開発などを受け防衛大綱の見直しが必要」との認識を示した。項目としては弾道ミサイル防衛、南西方面への対応、宇宙・サイバー分野を挙げ、防衛省が検討する敵基地攻撃能力については「日米の役割分担の中で米国に依存している。現時点で具体的な検討を行う予定はない」としながらも、「今後さまざまな検討を行っていくべきだ」と可能性は排除しなかった。小野寺氏は今年三月、自民党の検討チーム座長として「わが国独自の敵基地反撃能力の保有」などを盛り込んだ提言を首相に提出しており、政府としての検討も時間の問題だ。

被爆地から「核の傘依存」に批判噴出
 被爆七十二年目となる原爆の日を迎え、広島市で六日、平和記念式典が開かれた。松井市長は平和宣言で七月に国連で採択された核兵器禁止条約に触れ、「核保有国と非核保有国との橋渡しに本気を」と条約に参加しない安倍政権の姿勢を批判した。続いてあいさつした安倍首相は条約に言及しなかった。九日に長崎市で開かれた平和式典でも田上市長が「条約の交渉会議にさえ参加しない姿勢を被爆地は到底理解できない」と明確に批判、「核の傘に依存する政策の見直しを」と訴えた。また同日、長崎の被爆者団体の代表して首相に要望書を手渡した長崎県平和運動センターの川野議長は「総理、あなたは、どこの国の総理ですか。国民を見捨てるのですか」と厳しい口調で核兵器禁止条約への参加を迫った。

「小池新党」に動揺する民進党
 東京都の小池知事の側近である若狭衆院議員は七日、政治団体「日本ファーストの会」の立ち上げを表明した。事実上「小池新党」の第一歩だが、これに民進党が大きく動揺、十日には細野元環境相が離党し、その後も党代表選挙を前に国会議員の離党が相次いでいる。また代表戦に立候補した前原元外相も同会との連携に「政策理念が出されたときに判断したい」と含みを持たせ、党内の連携派に秋波を送っている。小池氏は米国や多国籍大企業の忠実な手先で、これとの連携は労働者・国民の利益にならない。


食料自給率38%、史上2番目の低さ
 農水省は九日、二〇一六年度の食料自給率がカロリーベースで前年度から一ポイント減の三八%だったと発表した。一九六五年以降では冷害でコメの大凶作となった九三年度の三七%に次ぐ史上二番目の低さ。自給率の高いコメの需要減に加え、北海道での大雨による畑作物の不作の影響が重なった形だが、環太平洋経済連携協定(TPP)や豪州、欧州との経済連携協定(EPA)を推進、農産物の市場開放を推し進める一方で国の食料安全保障を軽視する安倍政権の農政の帰結だ。


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