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労働新聞 2017年8月5日号 トピックス

世界のできごと

(7月20日〜7月29日)

要職交代でトランプ政権混迷
 米国のトランプ政権が混迷を深めている。八月二十一日にスパイサー大統領報道官が、二十八日にはプリーバス首席補佐官が辞任した。トランプ政権下では、二月にフリン大統領補佐官が「ロシアゲート問題」で辞任、五月にはコミー連邦捜査局(FBI)長官が解任されるなど、政権発足半年で主要ポストの交代が相次いでいる。トランプ大統領は、医療保険制度改革(オバマケア)代替案採決が議会で断念され、法人税の国境調整導入も見送られるなど、就任当初からの肝入り政策の実現がますます怪しくなっている。一方、慎重な姿勢を示していた対ロシア制裁法案への署名を余儀なくされ、米ロ関係修復も困難。度重なるポスト交代で議会との調整がいっそう困難になる見通しで、米国の内外政治も混迷を深める事態は避けがたい。

朝鮮2度目のICBM実験、米に焦り
 
朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の中央テレビは二十九日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の二回目の発射実験に成功したと発表した。ミサイルは前回実験より九百キロも高い約三千七百二十五キロに達し、飛行時間も八分あまり長い約四十七分だった。米国本土に到達する技術を確立したとみる米識者もいるなど、米トランプ政権は危機感を募らせている。米政府は同日発表した声明で、中国とロシアが朝鮮の「核ミサイル開発を経済面で支えている」として「特別な責任」を果たすよう迫ったが、中ロは新たな制裁に消極的。日韓との共同訓練などで朝鮮に圧力をかけたい米国だが、多大なリスクを伴う軍事行動にも踏み切れず、朝鮮との対話以外に解決への道はない。

米、シリアに基地建設、批判集中
 米国がシリア北部に次々と軍事基地を建設、シリア政府や隣国から批判が集中している。AFP通信は二十日、トルコの半国営アナトリア通信がシリア北部の米軍施設などを報道、これに米国防総省が反発したことなどを報道した。同通信は、米軍がシリアに築いた前哨基地八カ所と飛行場二カ所の場所を報道、特殊部隊の数にも触れた。施設はシリアのクルド人組織と民兵部隊を支援するために使われているが、トルコ政府はこれらを自国内の反政府組織であるクルド労働者党の関連組織と見なしている。米国の基地建設には、シリアやロシアも反発している。米国は「イスラム国(IS)との戦い」を掲げるが、シリア国内に一方的に拠点を築く侵略的策動は当然許されず、中東の新たな火種となっている。

人民のたたかい

(7月20日〜7月29日)


  ポーランドのワルシャワで二十三日、裁判官らの人事に対する政府や与党の権限を強める司法制度改革に反対する大規模な抗議デモが行われた。また国内の百市町村でも抗議デモが行われた。ポーランドの右派与党「法と正義」が手掛ける改革については欧州連合(EU)からも司法の独立性が失われると警告されている。
 英国の最高裁は二十六日、二〇一三年に保守党主導の連立政権が導入した労働裁判所の有料化を違憲とし、政府に徴収した料金総額約三千二百万ポンド(約四十六億四千万円)を返還するよう命じた。公共部門労組ユニゾン(組合員百三十万人)が撤廃を求めて提訴していた。
 米国のニューヨークで二十六日、トランプ大統領がトランスジェンダーの米軍への入隊を認めないとしたことに対し、数百人が抗議行動を行った。
 チリのサンティアゴで二十五日、ピノチェト軍事政権下で導入された厳格な妊娠中絶禁止法の緩和を求めるデモ行進が行われた。チリ初の女性大統領で小児科医でもあるバチェレ大統領は、レイプで妊娠した場合などで中絶を認める緩和法案を国会に提出、八月二日に可決された。

日本のできごと

(7月20日〜7月29日)

稲田防衛相辞任、監察結果も公表
 稲田防衛相は七月二十八日、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊が日報を「廃棄した」としながら保管していた問題を理由に辞任した。黒江防衛次官と岡部陸上幕僚長も辞任した。同日、特別防衛監察による調査結果が公表されたが、中央即応集団司令部の幹部が意図的な隠蔽(いんぺい)を指示した事実が明記される一方、稲田大臣が非公表方針を「報告された事実はなかった」とするなど、きわめて不十分。国民の不信と批判を、事実上、大臣辞任でフタをしようともくろむものだが、安倍政権への批判が弱まるはずもない。

閉会中審査で疑惑深まる
 衆参両院の閉会中審査が二十四〜二十五日に行われた。加計学園問題や南スーダン派遣部隊の日報問題をめぐって野党が求め、前回は「外遊」を口実に欠席した安倍首相も出席した。加計問題では、首相が獣医学部新設申請を知った時期に関する答弁が以前と異なっている点などが追及された。一方、文科省に圧力をかけたとされる、参考人の和泉首相補佐官らは「記憶がない」の一点張り。疑惑はいちだんと深まったものの、野党も決め手はなく「水掛け論」に終始、国会審議の限界が露呈する格好となった。

仙台市長選で与党敗北
 仙台市長選挙が二十三日、投開票され、無所属新人の郡和子候補(民進党など野党が支援)が、自民、公明両党が支持した菅原裕典候補に二万票近い差で当選した。投票率は四四・五二%で、前回を一四・四一ポイント上回った。有権者の、安倍政権に対する批判とともに、東日本大震災の復興対策で仮設住宅の撤去を急ぐなど「被災者軽視」の態度を取り、選挙で菅原候補を支持した奥山前市長、村井県知事への批判が噴出した形。安倍政権には東京都議会選挙に続く敗北で、打撃だ。

民進党、蓮舫代表が辞任
 民進党の蓮舫代表が二十七日、辞任を表明した。昨年九月に代表に就任した蓮舫氏だが、支持率は低迷、離党者が相次いで都議選で敗北し、さらに「二重国籍問題」、支持団体である連合にも揺さぶられた。蓮舫氏は会見で、いまや条件がない「二大政党の一翼」と繰り返すほどに、内外の危機に対するピント外れぶりも露呈した。前原元外相、枝野前幹事長らによる代表選が九月に予定されているが、安倍政権への政策的対抗軸を示せないままでは、党勢回復ができるはずもない。

「核のごみ」処分場、選定のあてなし
 経済産業省は二十八日、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の「最終処分場」候補地となり得る地域を示す「科学的特性マップ」を公表した。全国自治体の半分以上にあたる約九百が含まれ、今後、「公募」などで絞り込まれる予定。だが、「ごみ」の危険性は指摘するまでもない。ずさんな原子力行政のツケを地方に押し付けるもので、選定のあてはない。

連合、「脱時間給」容認を撤回
 連合は二十七日、札幌市で中央執行委員会を開き、労働基準法改改悪案に含まれる「脱時間給」制度を容認する方針を撤回し、政府、経団連との「政労使合意」を見送る。連合・神津執行部による「残業代ゼロ」容認に対して、現場組合員はもちろん、多くの産別や地方連合から強い反発の声が上がっていた。安倍政権は、民進党の最大の支持団体である連合の容認を取り付けることで法案成立を狙ったが、思惑は外れた。法案への反対姿勢を堅持でき、闘いを組織できるかどうか、労働運動の真価が問われている。

最賃、わずか3%引き上げ
 厚生労働省の中央最低賃金審議会小委員会は二十七日、二〇一七年度の最低賃金の目安を全国平均で時給二十五円引き上げ、八百四十八円にすると決めた。二年連続で三%台の上げ幅となったが、安倍政権が求めた「年三%程度」の枠内。都道府県での決定は十月の見通しで、目安通りなら、東京では二十六円増の九百五十八円、福島などでは二十二円増の七百四十八円となる。上げ幅は、困窮を深める労働者の生活実態からすれば「スズメの涙」にもならず、都市部と地方との格差はさらに開く。全国一律、時給一千五百円以上への大幅引き上げが必要だ。


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