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労働新聞 2017年7月25日号 トピックス

世界のできごと

(7月10日〜7月19日)

米中包括対話、鉄鋼などで一致できず
 米中包括経済対話は七月十九日、米ワシントンで開かれた。トランプ大統領が会議前、通商拡大法二百三十二条に基づき、鉄鋼の輸入関税引き上げと割り当てを課す考えを表明したが、ロス商務長官は中国に「貿易障壁の撤廃」など「いちだんと公平な」通商関係を求めた。だが、汪洋副首相は「対立すれば双方の利益が直ちに阻害される」と警告した。米国は朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への圧力強化も求めたが、溝は埋まらなかった模様で、会談後の会見も中止された。米中は四月、「百日計画」で合意したが、米国産牛肉の輸入解禁以外に目立ったものはなく、今後の道筋も示されなかった。米中間の矛盾が拡大してきた。

米仏首脳会談、パリ協定で物別れ
 訪仏したトランプ米大統領とマクロン・フランス大統領が十三日、会談を行った。会談は、マクロン大統領が、米国の第一次世界大戦への参戦から百年になるのに合わせた軍事パレードにトランプ大統領を招待したもの。仏側は米国のパリ協定離脱を再考するよう求めたが、米側は事実上不可能な再交渉に含みを残すことで、離脱撤回を拒否した。トランプ大統領の狙いは石炭産出地域での支持を確保することだが、多くの州政府や企業が自主的な温暖化ガス排出削減を表明するなど、政府は国内でさえ孤立気味。両首脳は、シリア内戦や「テロ対策」などでも協議したが、最大の懸案であるパリ協定問題での溝はさらに鮮明になった。

オバマケア代案、またも失敗
 米共和党指導部は十七日、医療保険制度改革法(オバマケア)見直し案の上院での採決を断念した。見直しはトランプ政権の公約だが、三月に与党内の造反でいったん撤回、その後、再見直し案が下院で可決されていた。今回、低中所得層の負担増を減らす再々修正を行ったものの、上院の四議員が法案に反対し、過半数の確保が絶望的となった。これにより共和党内の分裂は深まり、夏季休会前の法案成立は困難で、大型減税やインフラ投資など、トランプ政権の他の政策への波及も不可避。トランプ政権はやむなく、廃止法案を優先させ、二年程度をかけて代替案を検討する方向に転換する方針。だが、廃止先行では多数の無保険者を出すことになり、国民の生活と健康をさらに圧迫することになる。


文大統領、南北会談を提案
 韓国国防省は十七日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対し、軍当局による会談を開催することを提案した。軍事境界線付近での政治宣伝放送の中止などを議題にする。大韓赤十字会も、離散家族の再会を目的とした赤十字会談を求めた。朝鮮との「対話」を掲げた文政権にとって初の具体的提案で、趙統一相は「緊張緩和のための南北対話と協力は、核問題解決にも寄与する」と述べた。朝鮮の反応は明らかではないが、米日の敵視と包囲とは一線を画し、南北主導での緊張緩和を望む民意を受けた文政権の態度は注目に値する。

人民のたたかい

(7月10日〜7月19日)


  フランスのパリで十三日、トランプ米大統領の訪問に抗議する集会が行われ、数万人がデモ行進を行った。
 ポーランド・ワルシャワで十八日、与党「法と正義」が司法への人事介入を可能にする法律を可決させたことに抗議し、一万人が大統領府にデモ行進した。
 米国ワシントンで十日、共和党によるオバマケア(医療保険制度改革)撤廃法案に反対するデモが行われ、百人以上が議会事務所に突入した。
 米国ワシントンで十二日、連邦通信委員会(FCC)が可決した、「インターネット中立性規則の廃止」に反対する集会が行われた。同案は、ネット利用で大企業への便宜を認めるもの。
 ペルーのクスコで十一日、教職員組合が待遇改善を求めてデモを行い、観光地行きの線路を壊して抗議した。

日本のできごと

(7月10日〜7月19日)

加計疑惑で閉会中審査も逆効果に
 学校法人・加計学園の獣医学部新設をめぐり安倍首相などが便宜を図った疑惑について、衆参両院は七月十日、閉会中審査として文科・内閣委員会の連合審査会を開いた。参考人として出席した文部科学省の前川前事務次官は「はじめから加計学園に決まっていた。決まるようにプロセスが進んだ」と証言、「背景に官邸の動きがあった」とも述べた。これに対し政府側は何の根拠も示さず否定を繰り返した。都議選の大敗など安倍政権への支持率急落を受けて行われた閉会中審査だが、虚偽発言で偽証罪が問われる証人喚問ではなく参考人招致であり、しかも安倍首相本人は外遊先から帰らず逃げ回っている状態。国民の不信は増さざるを得ず、政権弱体化には必至だ。

稲田防衛相に新疑惑、政権ガタガタに
 稲田防衛相は十九日、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠ぺいを自身が了承していた疑惑について、二月十五日に岡部陸上幕僚長らと会議を行っていたものの日報が保管されていた事実は報告されなかったと弁明した。防衛省トップに報告されていないという説明は不自然で、むしろつじつまを合わせるためにデータ消去を指示した疑いも浮上している。疑惑が次々と明らかになる背景には、安保法制下で駆けつけ警護などの任務を強いられる一方、不祥事責任まで押し付けられることに対する陸自内の怒りと不満があるとされる。安倍政権の弱体化がいっそう進んでいることの証左だ。

TPP11会合、米国復帰に道筋
 神奈川県箱根町で開かれた米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加十一カ国の首席交渉官会合が十三日に閉幕した。議長国の日本は、早期発効と米国の将来的なTPP復帰をめざし協定内容の変更を最小限にする方向で議論を主導、現協定と十一カ国で別の協定文をつくる二つの協定併存などを提案したとされる。TPPは本来は米国がアジア太平洋の市場で自国に有利な経済ルールを築くための装置だが、トランプ政権の誕生でその思惑が挫折していた。日本政府の策動は、財界の利益とともに、米財界主流の意も受けたものだ。

共謀罪施行、不当弾圧容易に
 通常国会で安倍政権が強行成立させた犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する改悪組織犯罪処罰法が十一日、施行された。会見で金田法相は「処罰範囲は限定的で、恣意(しい)的な運用はできない」と述べたが、闘う労組や沖縄県民などに対する不当弾圧へのハードルはいっそう下がったことになり、同法廃止への闘いが今後問われることとなる。

沖縄県、辺野古工事で新提訴へ
 沖縄県議会は十四日、名護市辺野古の新基地建設問題で県が工事の差し止めを求め国を提訴する議案を賛成多数で可決した。これを受けて翁長知事は防衛省沖縄防衛局が強行している埋め立て工事の差し止めを求めて那覇地裁に提訴する。新基地の埋め立て工事関係海域の岩礁破砕許可は三月末で期限が切れており、同局は知事の許可なく違法な工事を進めている。民意を受けた翁長知事は「あらゆる手法を使い闘う」姿勢を鮮明にしており、全国からこれを支持する声を上げることが求められている。

連合指導部、高プロ制を事実上容認
 連合の神津会長は十三日、安倍首相と会談し、高収入の専門職を残業代の支払い対象から除外する「高度プロフェッショナル制度」について、年間百四日以上の休日確保などを要望、修正付きで容認する姿勢に転じた。これに対し全国の現場労働者から怒りと不満の声が沸き起こっている。連合指導部の方針転換は、支持率低下や都議選での歴史的大敗で窮地にある安倍政権を支える犯罪的な行動だ。

全漁連、処理水で東電会長に抗議
 東京電力福島第一原発で高濃度汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ処理水をめぐり、同社の川村会長が海洋放出を明言したことに関し、全国漁業協同組合連合会(全漁連)は十九日、厳重抗議した。全漁連の岸会長は「漁業者と国民への裏切り行為で、関係者の怒りと不安はきわめて大きい」などと批判した。漁民の怒りは当然だ。


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