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労働新聞 2017年6月25日号 トピックス

世界のできごと

(6月10日〜6月19日)

仏議会選、マクロン新党勝利
 フランスで六月十八日、国民議会(定数五百七十七)の決選投票が行われ、マクロン大統領率いる新党「共和国前進」が約六割の議席(三百五十)を獲得した。一方、共和党など右派は約三割減の百三十七議席、社会党などのグループは四十四議席と八割以上議席を減らした。新党「不服従のフランス」など左派は二十七議席。大統領選で躍進した極右・国民戦線は八議席と伸び悩んだ。国民の生活苦を背景に、二大政党への不信や反発を強く印象付けた。投票率は第五共和制で最低の四二・六%、白票・無効票も約一割に達し、政治・政党不信は深刻。マクロン政権は外交面ではドイツとの連携強化、内政では労働法制緩和に踏み出す構えだが、労働者の反発は不可避だ。

多難な英のEU離脱交渉
 英国の欧州連合(EU)からの離脱をめぐるEUとの初交渉が十九日、ベルギー・ブリュッセルで始まった。英国は離脱後もEUと可能な限り自由貿易を維持するなどの具体策も協議したい意向を示したが、EU側は英国の「精算金」など離脱条件を決めることが先決との立場で、溝の深さを示した。英国ではメイ首相の求心力が総選挙敗北で低下するなど、英側が交渉姿勢を固めきれない可能性も指摘されている。原則一九年三月までの交渉期限までの合意も危うい。

AIIB総会、米日へ加盟呼びかけ
 アジアインフラ投資銀行(AIIB)の第二回年次総会が十六日、韓国の済州島で開かれた。加盟七十七カ国・地域の財務相らが出席、新たにアルゼンチン、マダガスカル、トンガの加盟が承認された。また、計三億二千四百万ドルの融資二件と株式投資一件を承認した。うち一億五千万ドルはインド向けの株式投資。また、「AIIBにはパリ協定を推進する」(金立群総裁)として、地球温暖化対策に結びつく投融資に注力する方針を打ち出した。パリ協定を一方的に離脱した米国を尻目に存在感を示そうという中国の姿勢が反映したもの。米国や日本に対し、「常にドアは開いている」(金総裁)と呼びかける余裕さえ見せた。


米、軍事予算拡大叫ぶ
 マティス米国防長官は十二日、二〇一八会計年度(一七年十月〜一八年九月)の予算要求に関する下院軍事委員会で総額六千三百九十一億ドル(約七十兆四千三百億円)の軍事予算を認めるよう迫った。オバマ前政権下で発動された歳出「自動削減措置」に不満を表明、国防総省の予算要求を完全に満たすことなどを求めた。また朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核・ミサイル開発について、「目下の危険」などと決めつけた。同席した米軍制服組トップは「五つの主要な脅威」として、ロシア、中国、イラン、朝鮮、「暴力的な過激組織」(イスラム国など)を上げ、軍事予算拡大で対抗すべきと述べた。衰退する米国がいっそう軍事力をテコに覇権を追求し、巻き返そうという動きの一環だ。

人民のたたかい

(6月10日〜6月19日)


 英国ロンドンで十七日、メイ首相の退陣を求める集会とデモが行われた。高層マンションの大規模火災に対する政府の対応を厳しく批判する声も上がった。火災が起きた公営住宅を所有する地元の区役所には数百人が詰めかけ、責任追及を求めた。
 スペインのマドリードで十七日、ラホイ政権に難民受け入れの拡大を求めるデモが行われ、数千人が参加した。これは「世界難民の日」(二十日)に向けて行われたもの。欧州連合(EU)の決定にもとづいて同国は一万七千三百人の難民受け入れるはずだったが、実際には約千三百人程度しか受け入れていない。
 米国ミネソタ州セントポールで十七日、黒人男性を射殺した警官が無罪となったことに対する抗議行動が行われ、主要幹線道路を封鎖した。

日本のできごと

(6月10日〜6月19日)

通常国会閉会、「共謀罪」など成立
 第百九十三通常国会が六月十六日、十八日の会期末を前に、衆・参両院の本会議での手続きによって閉会した。本国会では、社会保障関係費の自然増を抑え込む一方、防衛費は五年連続で過去最大とする二〇一七年度予算、国民の内心を裁く改悪組織犯罪処罰法(共謀罪)、規制緩和を進める改悪国家戦略特区法や民泊新法、農業改革関連八法、天皇の退位に向けた特例法などが成立した。安倍政権は数々の悪法を通して、対米従属と多国籍大企業への奉仕を強めたが、加計学園問題なども噴出した。法案成立率が安倍政権下で二番目の九五%に達したように、野党の弱さも際立った。

支持率急落、国民の不満噴出
 マスコミ各社は、世論調査結果を十九日までに公表した。内閣支持率は、三六%(毎日新聞)、四一%(朝日新聞)、四四・九%(共同通信)などと、六〜一〇・五ポイントの下落。「毎日」の調査では、不支持が支持を八ポイントも上回った。加計学園問題や「共謀罪」の成立強行が直接の原因だが、一向に改善せぬ生活苦への不満の高まりが底流にある。安倍首相は会見で「深い反省」などと言い、「経済最優先」への回帰を表明したが、苦境のあらわれだ。

イージス艦事故、「泣き寝入り」か
 静岡県の伊豆半島沖で十七日、米海軍イージス艦「フィッツジェラルド」とコンテナ船が衝突、米軍人七人が死亡した。イージス艦の航路は軍事機密である上、日米地位協定によって一次裁判権が米側にあるため、第三管区海上保安本部による事故原因調査は難航が必至。事故時も、米艦は日本側にいっさい通報しなかった。コンテナ船所有者(フィリピン船籍)である日本企業は「泣き寝入り」させられる可能性が高く、不平等な地位協定によって、わが国の主権が著しく奪われていることが、再度、明らかになった。

日米、南シナ海で挑発的訓練
 海上自衛隊のヘリ空母「いずも」を含む護衛艦二隻が十三〜十五日、南シナ海で米原子力空母「ロナルド・レーガン」などと共同訓練を行った。海自は五月初旬からシンガポールやベトナムなどに寄港、合間に米軍との共同訓練を繰り返している。南シナ海における「岩礁埋め立て」を口実に、中国をけん制するデモンストレーション。今回は、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国の士官を招待するセミナーを艦内で開くなど、ASEANを取り込もうという狙いも露骨だが、米国の先兵役では信頼を得られるはずもない。

日銀政策、行き詰まり露呈
 日銀は十六日、金融政策決定会合を開き、長期金利をゼロ%程度に誘導する金融政策の現状維持を決めた。政策維持は六会合連続。米連邦準備理事会(FRB)が金利引き上げと資産圧縮を表明するなか、黒田総裁は「物価目標二%程度」の達成時期や金融政策の「出口」に一切言及できなかった。逆に会見では、金利上昇で日銀が債務超過に陥って信認が失墜する可能性が質問され、総裁は否定に追われた。政策維持は、日本の金融政策のいちだんの行き詰まりを示してもいる。

村議会廃止、地方切り捨てきわまる
 高知県大川村は十二日、村議会を廃止して「村総会」を設置する検討を始めた。大川村は過疎化が進み、離島を除き人口が最も少ない(三百八十五人)自治体。和田知士村長は、議員の高齢化と「なり手のなさ」を理由としたが、一九七〇年代の鉱山閉鎖とダム建設による村域の水没が大きな要因。国策により地方の衰退がきわまっていることの好例で、「(議会廃止は)一つの選択肢」(高市総務相)などという態度は許しがたい。

地方での休廃業・解散が増加
 企業の休廃業・解散が増加していることが、帝国データバンクなどの調べで十九日まで分かった。一六年の解散は約二万五千件で、倒産の三倍以上。都道府県別では、鳥取、高知で休廃業・解散率が二割以上と高率で、青森、新潟などがこれに続く。また、代表者が六十歳以上の企業が七五%以上を占める。人口減少、地方経済の衰退が進むなか、「余力のあるうちに」事業を断念せざるを得ない事業者が増えていることが伺える。政府・地方自治体による支援策が早急に必要だ。


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