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労働新聞 2017年6月15日号 トピックス

世界のできごと

(5月30日〜6月9日)

米、パリ協定離脱、孤立深まる
 トランプ米大統領は六月一日、地球温暖化対策の「パリ協定」から離脱すると表明した。大統領は、「他国が米国を経済的に利用する仕組み」と決めつけて離脱を正当化、途上国の対策を「支援」する「緑の気候基金」への三十億ドル(約三千三百億ドル)の拠出も拒否した。狙いは、来年秋の中間選挙を前に、石炭産出地域の支持を得ること。世界第二の温暖化ガス排出国の離脱で協定の効力は大きく低下するが、米財界さえ離脱を「競争力低下につながる」と批判、協定を主導した欧州連合(EU)との間の矛盾激化も不可避。EUと中国は二日、協定実行への協力で一致、米国をけん制するなど、米国の影響力はさらに低下する。

米国防報告、中国を「警戒」
 米国防総省は六日、中国に関する年次報告書(二〇一七年版)を公表した。南シナ海問題について「強圧的な方法を用いて海洋権益を主張」と中国を非難、中国がアフリカ・ジブチに基地を建設したことにも警戒感を示した。また、沖縄県尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象であることを初めて明記した。中国は、記述に「断固反対」(外務省)と反発した。トランプ米政権は、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への制裁に中国を引き込む狙いなどから、四月の首脳会談で「協調」を演出した。米国は依然として台頭する中国に対抗する戦略である。

英総選挙で与党敗退
 英下院議員選挙(定数六百五十)が八日に投開票され、事前の予想に反し、保守党が単独過半数を割る敗北を喫した。保守党は三百十八(改選前三百三十)、労働党二百六十二(同二百二十九)、スコットランド民族党三十五(同五十四)、自由民主党十二(同九)、北アイルランド民族統一党十(同八)など。メイ首相はEU離脱交渉を有利に進めるため、選挙の前倒しで求心力を高めようとしたが、社会保障制度改悪を提案して高齢者の反発を買った。一方、労働党は法人税率引き上げや高所得者への増税などが支持を得た。少数与党か連立政権が不可避となり、英国政治は一気に不安定さを増す。EU離脱交渉への影響も必至だ。


サウジなどカタールと断交
 サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、バーレーン、イエメンは五日、カタールとの断交を発表、サウジは陸・海・空路をしゃ断した。サウジは、カタールがエジプトのムスリム同胞団(サウジなどは「テロ組織」と認定)を支持しているとしたが、天然ガス採掘をめぐりペルシア湾対岸のイランと協力しているカタールを締め付けることで「イラン包囲網」を強化する狙い。カタールは反発、トルコも断交を批判したが、トランプ米大統領は「テロの恐怖を終わらせる第一歩」などと、事実上、「お墨付き」を与えた。だが、カタールは米軍基地を有するほか、世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出国でもある。中東のいちだんの不安定化、世界経済のリスクとなりかねない。

人民のたたかい

(5月30日〜6月9日)


 米国百三十以上の都市で三日、「ロシアゲート」問題の解明を求めて集会とデモが行われた。シカゴでは二日、トランプ政権によるパリ協定からの離脱に抗議するデモ行進が行われた。
 スペインで五月三十日、タクシー運転手労組が「ウーバー」などの配車サービスに反対して二十四時間ストライキを行った。
 韓国のソウルで六月一日、人権団体が警察庁前で集会を行い、デモ行進などへの過酷な弾圧に抗議した。金属労組なども参加した。
 アフガニスタンのカブールで二日、ガニ大統領に治安悪化の責任を問うデモ行進が行われた。

日本のできごと

(5月30日〜6月9日)

「骨太の方針」「未来投資戦略」決定
 安倍政権は六月九日、来年度予算の編成指針である「骨太の方針」と、「成長戦略」である「未来投資戦略」を閣議決定した。アベノミクスが行き詰まるなか、「経済再生」を何とか実現しようとする、窮余の一策である。内容は無人小型機ドローン活用やIoT(モノのインターネット)による「生産性向上」などだが、財源の裏付けはない。実行されれば労働者の大合理化につながり、国民生活はいちだんと厳しさを増す。

加計学園問題で時間稼ぎの「再調査」
 安倍首相の友人が理事長を務める学校法人・加計学園の獣医学部新設に関し、首相は九日、文科省が内閣府から「総理のご意向」と伝えられたなどとする文書の存否などを「徹底的に調査するよう指示した」と発言した。野党の追及をかわしながら共謀罪法案成立などを推し進めるための術策だが、首相が友人に便宜を図った疑惑に対し国民世論の批判が高まったことを受けたものでもある。

米国追随の「一帯一路」支持
 安倍首相は五日、中国が提唱する経済圏構想「一帯一路」について「国際社会の共通の考え方を十分に取り入れることで、環太平洋の自由で公正な経済圏に良質な形で融合していくことを期待する」と述べ、「条件付き」関与の姿勢を示した。従来は「中国の拡大路線に手を貸すことになる」と批判的で、その資金調達を行うアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも参加を見送っていたが、米トランプ政権が中国と貿易不均衡問題の具体策で合意するなど歩み寄りを見せていることから、はしごを外されることを懸念し姿勢を変えた。主体性なく米国に振り回される様はまさに従属国外交そのものだ。

現場の声不在の「生乳改革」法成立
 新たな加工原料乳生産者補給金制度を盛り込んだ改正畜産経営安定法(畜安法)が九日の参議院本会議で可決、成立した。酪農家が指定生乳生産者団体(指定団体)に出荷しながら生乳の一部を他の業者にも販売する「部分委託」を解禁、指定団体以外に出荷する酪農家にも補給金が支払われるなど、酪農政策の「五十年ぶりの改革」(安倍首相)。規制改革推進会議が主導してつくられた同法だが、場当たり的な販売の横行で生乳の需給調整が崩れる懸念があるほか、大手乳業メーカーと家族経営の酪農家との力関係の変化などの混乱も危ぐされている。

衆議院区割り法案成立、地方の議席減
 
衆議院小選挙区の区割りを見直す改正公職選挙法が九日の参議院本会議で可決・成立した。小選挙区定数を六減、十九都道府県の九十七選挙区で線引きを変更、七月十六日にも施行され、新たな区割りでの衆院選が可能になる。青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の六県で小選挙区の定数が一ずつ減り、比例区も東北、北関東、近畿、九州の四ブロックで一ずつ減る。定数四百六十五は戦後最少。最高裁判決が「違憲状態」と指摘してきた格差の解消のためだが、地方出身の議員が減らされる傾向に拍車をかける。

県が辺野古工事差し止め訴訟へ
 沖縄県の翁長雄志知事は七日、名護市辺野古の新基地建設で沖縄防衛局が県の岩礁破砕許可を受けずに護岸工事を続けている事態を踏まえ、国を相手に工事の差し止め訴訟を起こす方針を明らかにした。工事の停止を求める仮処分も申し立てる姿勢。知事は「防衛局が岩礁破砕等行為を行うことは確実な状況にあることから、県としては法的措置を求める必要があると判断した」と述べた。また埋め立て承認の撤回については「必ずやれる」と述べたが、時期は明示しなかった。

小池知事が国際金融都市構想発表
 東京都の小池知事は九日、「国際金融都市・東京」構想の骨子を正式発表した。「アジアの金融ハブをめざす」とし、フィンテック(金融技術)などの外資誘致の促進に向けて、法人二税軽減の検討を盛り込んだ。特区税制などによる国税の軽減も掲げ、外資四十社を誘致する目標などを挙げた。また民間のグリーンファイナンス(環境金融)促進も打ち出した。一日には地域政党「都民ファーストの会」の代表に就任、自民党を離党した小池知事だが、大金融資本のための都政をめざす点では安倍自民党と同じである。


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