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労働新聞 2017年6月5日号 トピックス

世界のできごと

(5月20日〜5月29日)

G7、「結束」どころか機能不全
 イタリア・タオルミナで開催された主要国首脳会議は五月二十七日、首脳宣言を採択して閉幕した。会議では「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領と欧州各国との相違が際立った。首脳宣言は「保護主義と戦う」との文言を盛り込んだものの、米側の主張で「あらゆる不公正な貿易慣行に立ち向かう」と併記されるなど、結束のもろさを露呈した。気候変動問題でも「パリ協定」への残留を求める欧州側に対し、米国は判断を示さず、孤立した。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核・ミサイル問題への制裁強化を明記、中国の海洋進出にも強い警戒を示したものの、具体策は打ち出せなぬまま。G7という枠組みが機能不全に陥っていることを示すものとなった。

独首相、米国からの自立表明
 ドイツのメルケル首相は二十八日、タオルミナ・サミットを受けて演説し、「われわれが他者だけに頼れる時代はある程度終わった」と、名指しこそ避けたものの、米トランプ政権に強烈な不信感を表明した。また、「欧州は自分たちの運命を自分たちで握るべきだ」と、欧州の結束の必要性を強調するとともに、米国の影響力を極力排除するべきとの認識を示した。ドイツがさらに「対米自立」に踏み出すものとして注目できる。

米、「中東版NATO」を提起
 サウジアラビアを訪問したトランプ米大統領は二十一日、イスラム圏五十カ国以上を集めた会合に出席し、イスラム国(IS)掃討などを名目に新たな安保協力の枠組みを提唱した。また、米国とサウジ主導で「グローバル対テロセンター」を創設すると明らかにした。中東に北大西洋条約機構(NATO)のような軍事機構をつくる構想で、米国の負担を軽減し、「対テロ」の責任を中東各国に担わる思惑。大国イランを包囲する思惑もある。また、「反イスラム」の印象を払拭する狙いもあるが、中東での存在感低下に結びつきかねないものでもある。


米、「航行の自由」作戦再開
 米軍は二十四日、南シナ海で七カ月ぶりに「航行の自由」作戦を再開、ミサイル駆逐艦が南沙(スプラトリー)諸島内を航行した。中国が埋めたてた人工島から十二カイリ以内での作戦で、中国の実効支配を事実上否定する狙い。トランプ政権誕生後初めてで、米国の中国へのけん制を強化するアジア戦略に、本質上変わっていないことを示すもの。米国の干渉は、地域の緊張を高め、アジア諸国による自主的解決を妨げるもので許されない。

人民のたたかい

(5月20日〜5月29日)


 ベルギーのブリュッセルで二十四日、トランプ米大統領の訪問と北大西洋条約会議(NATO)首脳会議の開催に抗議して約一万人がデモ行進を行った。
 ポルトガルで二十六日、教員を含む公務員労働者によるストライキが行われ、公務労働者の七五%が参加した。労働者は、賃金を緊縮財政策実施前の水準に戻すことを求めている。
 経営再建中のイタリア・アリタリア航空で二十九日、航空管制官組合と従業員組合がストライキを決行、雇用と待遇の維持を求めた。
 イスラエルの刑務所に捕らわれている千七百人のパレスチナ人受刑者によるハンガーストライキが二十七日、四十日を迎えて処遇改善を勝ち取り、勝利した。
 フィリピンのマニラで二十九日、イスラム武装勢力対策のためミンダナオ島で出された戒厳令に反対するデモ行進が行われ、約二百人がデモ行進した。
 韓国のソウルで二十七日、民主労総が最低賃金引き上げ、非正規労働者問題の解決などを要求して座り込み行動を開始した。
 ブラジルのブラジリアで二十四日、テメル大統領辞任を求める約三万五千人のデモが行われ、農牧・食料供給に突入した。

日本のできごと

(5月20日〜5月29日)

共謀罪を衆議院で強行可決
 「共謀罪」を含む組織的犯罪処罰法改悪案が五月二十三日、衆議院本会議で、自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決、参議院に送られた。与党は「テロ」を口実に法案成立にあくまでこだわり、国会の会期延長も策動している。法案は「現代の治安維持法」とでもいうべきもので、日米同盟強化のための国家再編の一環。国連プライバシー権に関する特別報告者でさえ「懸念」を表明しており、廃案以外にない。とくに、労働組合の闘いが問われている。

安倍首相、サミットで朝鮮敵視あおる
 
イタリアでの主要七カ国首脳会議(G7サミット)に参加した安倍首相は、二十七日、会見を行った。首相は、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を「世界全体の脅威」などと敵視を丸出しにし、包囲への中国やロシアの協力も迫った。また、「海における法の支配」を強調し、中国へのけん制も強めた。「共謀罪」についても、法案への「国際的認知」を取り付けようとした。会議を悪用しての策動は、アジアの大国として振る舞いたい安倍政権の意思のあらわれだが、しょせんは米戦略の先兵にすぎない。

加計学園問題、官邸の指示明白に
 加計学園問題をめぐり、前川前文部科学事務次官が二十五日、獣医学部新設が「総理のご意向」などと記した内部文書について「本物」と証言した。前川氏は、「加計学園ありき」が「暗黙の共通理解」だったとし、「行政がゆがめられた」とした。その後、和泉首相補佐官や、同学園理事でもある木曽内閣官房参与による働きかけも明らかになった。「行政の公平性という観点からおかしい」(石破前地方創生相)など、自民党内からさえ批判の声が上がっている。安倍官邸による国政私物化は明白で、徹底究明が必要だ。

TPP閣僚会合、「漂流」さらに
 米国以外の環太平洋経済連携協定(TPP)参加十一カ国による閣僚会合が二十一日、ベトナムで開かれた。共同声明では、早期発効に向けた選択肢の検討を十一月までに終えることが明記された。だが、米国の復帰に期待をつなぐ日本に対し、メキシコなどは第三国の加盟を想定、各国が考える「選択肢」はバラバラなまま。協定内容に踏み込めばさらに異論が出ることは必至で、会合は紛糾を避けるために早々に切り上げられたほど。米国の離脱で求心力は急低下、TPPはますます「漂流」している。

統幕長が改憲を後押し
 防衛省の河野統合幕僚長は二十五日、憲法第九条に自衛隊を明記するとした安倍首相の発言について「ありがたい」などと述べた。首相発言を後押しするもので、自衛隊法で制限された自衛官の「政治的行為」にあたるとともに、公務員の「憲法尊重擁護義務」に反するもの。政府は「問題があるとは思っていない」(菅官房長官)などとしているが、河野氏はかつて、安保法制の成立時期について米軍幹部に意見を述べるなど、「政治介入」を繰り返してきた札付きの人物。安倍政権の反民主的性格を示す好例だ。

南スーダンPKO、限界の末に撤収
 国連南スーダン派遣団(UNMISS)に参加していた陸上自衛隊が二十七日、撤収を完了した。派兵は最長の五年四カ月に及び、安保法制施行後の昨年十一月には「駆けつけ警護」任務が付与された。派兵は、旧スーダンに影響力のある中国をけん制することを狙った米国に追随したもので、紛争当時者間の合意さえなかった。二〇一六年七月に首都で大規模な軍衝突が発生して以降、自衛隊は主任務の道路建設さえままならず、「日報問題」も未解明なまま。政府は撤収理由を「安定に向けた取り組みが進みつつある」(安倍首相)などとしたが、実態は、大国の身勝手な派兵が破綻したものだ。

規制改革会議、新たな改革打ち出す
 政府の規制改革推進会議は二十三日、第一次答申を提出した。働く場所などを限る「限定正社員」導入や労働基準監督業務への民間活用、旅館業法見直しによる「民泊」拡大、ライドシェア、保険外サービスを合わせた「混合介護」の範囲拡大、植物工場への固定資産税大幅引き下げなど、百四十一項目が明記された。総選挙への影響を恐れたり、官庁の抵抗で先送りされた項目もあるため、財界は不満を募らせているが、労働者をはじめ、国民生活に悪影響をもたらすものばかりだ。


連合中央、改憲論議に唱和
 連合の神津会長は二十四日、民進党との会合で憲法議論を進めることを表明し、民進党にも対応を迫った。神津会長は、安倍首相の打ち出した第九条への「自衛隊明記」について「王道ではない」とし、「二〇年施行」論についても「期限を切るのはいかがなものか」などと述べた。だが、論議は三役会を中心に行うとされ、改憲論が強い民間大産別の意見が重視されるのは必至。連合中央の狙いは、当面の総選挙での民進党と共産党の選挙協力にくさびを打ち込むことだが、客観的には、安倍政権、日本経団連などによる憲法改悪論議に加担する反動的なものだ。


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