労働新聞 2003年12月15日号 トピックス

世界のできごと

(11月30日〜12月9日)

露下院選、与党圧勝も課題残る
 ロシアの下院選挙(定数450)の投票が12月7日から行われ、プーチン政権与党の「統一ロシア」などが過半数を占めた。一方、最大野党である共産党や「ヤブロコ」などの改革派諸党は大きく後退、極右の自民党が大きく議席を延ばした。与党勢力が過半数を占めたことで、大統領の任期延長に道を開く憲法改正も可能になる。好調な石油輸出を背景に、経済が6%台の成長を続けていることに加え、経済政策で対立する財閥幹部を脱税容疑で逮捕、国営メディアも駆使するなど、政権上げてのなりふり構わない選挙運動を展開したことが、プーチンの勝因とされる。共産党離党者にテコ入れして与党「祖国」をつくるなど、切り崩し工作も展開した。対照的に共産党は財閥から資金提供を受け、比例候補の2割が財閥関係者という選挙戦術をとり、これまで以上に労働者から見放された。プーチンは政権基盤を固めた格好だが、拡大する貧富の格差やチェチェンに代表される民族紛争など、その前途は多難である。

NATOなど、撤退検討する国も
 北大西洋条約機構(NATO)の外相会議が6日、ブリュッセルで開かれた。会議に参加したパウエル米国務長官は、NATOのいっそうのイラクでの役割拡大を求めた。しかし、ドイツなどはあらためて「軍を派遣しない」(フィッシャー外相)と明言、他の参加国からも否定的な発言が相次いだ。またイラクに兵を派遣しているイタリアも、2700人いる部隊について縮小する意向を表明している。イラク派兵問題では、タイも「戦況悪化すれば撤退も」(スラキアット外相)と表明した。ブッシュ大統領に続いて6日にはラムズフェルド国防長官がイラク入りするなど、占領固定化に向けてやっきとなっている米国だが、激しいイラク国民の抵抗を前に、各国の協力を取り付けようというを意図は、ことごとくくじかれている。

アフガン、人民の抵抗で会議延期
 「対テロ戦争」の「模範」とされてきたアフガニスタンの首都カブールで4日、米大使館付近にロケット弾が打ち込まれるなど、占領軍に対する抵抗が激しさを増している。米軍などは掃討作戦を展開しているが、多くの民間人が死傷、反米感情がいっそう高まっている。米軍の肝いりで10日に開催が予定されていたロヤ・ジルガ(人民大会議)も延期に追い込まれるなど、イラクと同様、米国は窮地に立たされている。

中国首相訪米、対立先送り
 訪米している温家宝・中国首相は9日、ブッシュ米大統領と会談した。会談の中で、ブッシュ大統領は台湾が来年に準備している「独立」に向けた住民投票について、「反対」を表明した。イラク問題で手を取られている米国が、一定、台湾問題で中国に配慮を示した形であるが、中国側に対しても「一方的な動きには反対する」とけん制している。また朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「核問題」では、ブッシュが北朝鮮の武装解除を求めたが、米中間で具体的な合意はなかった。貿易摩擦問題でもハイレベルの通商協議の開始では合意したものの、温首相は記者会見でその問題に触れないなど、対立を残した。

人民のたたかい

(11月30日〜12月9日)

 イタリアのローマで6日、3大労組の呼びかけによる年金制度改悪反対のデモが行われ、100万人以上が参加した。
 フランスで1日、外務省への予算抑制に抗議して、外務省職員が24時間ストを行った。外務省で単独ストが行われたのは史上初めて。
 韓国・ソウルで6日、イラク派兵に反対する集会が開かれた。政府による新たな派遣計画の決定に抗議して、約8万人が参加した。民主労総などでつくる「全国民衆連帯」が呼びかけたもの。

 

日本のできごと

(11月30日〜12月9日)

与党、国の進路誤るイラク派兵決める
 小泉政権は12月9日、イラクに自衛隊を派遣する基本計画を閣議決定した。計画によると、1年間の期限で自衛隊員600人以上を派遣、重火器を携行し、米軍の占領政策を支える輸送・建設業務などに従事する。計画を受けて防衛庁が実施要項の策定に入るなど、政府は「外交官死亡事件」も利用しながら、対米公約である自衛隊派兵を急いでいる。しかし、この問題では、マスコミの世論調査でさえ「反対・慎重」が8割以上を占め、自民党内にさえ根強い慎重論がある。これらを無視して派兵を強行することは、わが国を中東諸国と敵対させ、国の進路を誤らせるものだ。(関連記事1面)

21世紀臨調、マニフェスト実行迫る
 新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)は4日、「第2次小泉内閣に対する緊急提言」を発表した。それによると、総選挙時のマニフェスト(政権公約)の実行に向けた「実行計画」(工程表)や、進ちょく状況をまとめた「年次報告書」を作成・公表することを求めるという。政策内容では特に、地方への補助金削減と公務員制度改革、マニフェスト配布の規制緩和などを求めている。提言は、財界が、小泉に対して期限を区切った改革の加速・徹底を迫ったものであると同時に、マニフェストで政党・議員を拘束し、保守2大政党制への流れを強めることを狙ったもの。多国籍大企業が国際競争に打ち勝つための社会・経済システムをつくるため、財界は焦りにかられて政治介入を強めている。

年金改革前から給付引き下げへ
 政府・与党は9日、基礎年金の国庫負担率を2分の1に引き上げる財源と称して、保険料の引き上げ(年収の18%、現行13.5%)と、給付額の引き下げ(現役世代年収の50%程度)など、国民犠牲の年金制度改革案を決めた。さらに、政府は5日までに、来年度の年金給付額を0.2〜0.3%引き下げる方向で検討に入った。デフレによる物価下落が口実だが、実施されれば、年間で約5600円〜8400円の減額となるなど、改革前から犠牲転嫁が進んでいる。だが、財界は、消費税引き上げを財源とする抜本的制度改悪を狙っており、民主党もこれに追随している。国民負担が増える一方で給付は下がり続け、国民は安心して老後を過ごせない。

自民税調、増税案続々と
 自民党の税制調査会は4日までに、04年度税制改正案の大枠を決め、与党公明党との論議に入った。それによると、住民税の均等割部分を3000円程度値上げ、年約7000円とする。また、所得のある妻に対する非課税措置は廃止を検討。この両者が実施されれば、町村部の住民税負担は、現行の年3000円から約1万4000円と、4倍以上になる。所得税の公的年金等控除と老年者控除も縮小、65歳以上の高齢者への課税を拡大する。一方、連結納税制度を採用した企業に課税する連結付加税を廃止、大企業優遇をさらに進める。選挙が終わるやいなやの国民犠牲で、「小泉改革の正体見たり」だ。

大企業優遇のダイエー「再建」策
 ダイエー福岡事業の再建計画が2日、発表された。米投資ファンドに同社所有の球場やホテルを売却、主力銀行は総額260億円の債権放棄に応じる。3月に産業再生法の適用を受け、「社会的影響の大きさ」を口実に、8月に1700億円の債務免除などが行われたことに続くもの。だが、同社はいまだ1兆円以上の有利子負債を抱える。福岡事業については、計画確定まで曲折があったが、結局、ばく大な借金を棒引きされたあげく、外資に買いたたかれることになった。大企業だけに債権放棄を行うという現実は、銀行から過酷な貸し渋り・貸しはがしにあっている中小商工業者の実態とあまりにかけ離れた、許し難いものだ。

労組組織率20%割り込む
 全国の労働組合の推定組織率が、今年6月末時点で、戦後初めて20%を割り込むことが、8日までに明らかになった。組合員数は前年比約25万人減、組織率は約0.5ポイント減の19.7%で、22年連続の減少。大規模なリストラで正規雇用社員数が減っていることのみならず、春闘で3年連続でベア統一要求を断念するなど、労働組合の存在意義を自ら放棄する連合中央の路線が原因だ。


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